2009年9月14日 (月)

マカロニ ③

Dscf1645

お店の外は、太陽が真上を越えて建物の大きな日陰を作り始めていた。
さっきよりも大勢の人で賑わってきて、たまに大きな笑い声があがる。それが少し怖い気がする。
真ん中にいる人はよく平気だなぁ。私があの場に出されたら怖くて一瞬ではじけ飛んでしまうかもしれない。
小さい頃のお祭りは、スゴク楽しいと思えたけど今そう感じてしまうのは、私がいかに人目を避けなきゃならなかったかってことなんだろうね。

Dscf1648 「何のお祭りなんですか?」

「うーん いわゆる夏祭りなんだろけど、時間によっては神輿が出たり、夜は盆踊りもあるよ。それだけじゃなんだから昼間はいろんなイベントしててね。毎年、大道芸人も来るんだよ」

「ふーん」

「こういうの好き?」

Dscf1605 「人の多いところ、苦手なんですよ。…慣れてないので」

「じゃ、ここ離れよう。おいで!」

彼についてわき道の方へ─
高い建物が多くて、コロン(連れの石の魂)と待ち合わせてる大きな看板が見えなくなった。
行った先は車がたくさん停まってる。ここ駐車場?
その中の1台のところへ彼は、歩いていった。

「えっ?私…そんなに遠くまでは…sweat01

「そんなに走らないよ。少し気分転換さ。まだ時間、充分あるじゃない」

「そうですけど…」

Dscf1822

断わる理由も思いつかなくて、隣に乗る。
大丈夫かな…今何時だろ。どのくらい経ったかな?

Dscf1929_2 車は駐車場を出て、ゆっくり通りへ出て行った。
お祭りの店がたくさん並ぶ通りを過ぎると嘘みたいに歩く人がいなくなる。
街じゅうの人が、さっきの通りに集まっていたみたいだ。

甘い香りの漂う車の中…聞いたことのない音楽…。
高い建物が後ろへ走り去る様子は、映画を見てるみたい。
いつも空の上から見る地上は、みんなゆっくり走っているように見えるのに車の中からだととても速く感じる。
当たり前なのかもしれないけど、それが私だけの発見みたいでなんだか嬉しくなった。

002424 「なに?」

「はい?なんですか?」

「笑ってたよ」

「そうですか?sweat01ちょっと嬉しかったんで…」

ヤバイ! 景色が流れるのが早いから…とか言うのは変だよね。
それにしてもこの人、私が幽霊と知ってもなんとも思わないのかなぁ…
もしかしたらこの人も幽霊だったとか…。

Dscf1945

「あのーっ幽霊とかどう思います?」

「…どうって別にねー。たまに友達と心霊スポットへ行ったりするよ。夏とかには…」

「心霊スポット?」

「幽霊屋敷の噂があるとことか、地縛霊がいるらしいとことかね」

「自爆霊ですか…」 なんだそら…gawk

002085 失敗とか多い私は、たしかに自爆霊に違いない。
そういうのが集まるところでもあるのかな?

それにしても、本当は、私が幽霊だってこと信じてないんだろうか?
そういえば昼間から街中をフラフラして、マカロニグラタンを食べる幽霊なんて私だけかもしれないsweat01きっとそうだよ。despair

「そういうところで幽霊を見たことあるんですか?」

「ないよ!話ではずいぶん聞いたけどね。結局“きもだめし”だから。ホントに出たら行かないよ。呪われちゃたまんないし」

「えーっ“呪い”だなんて…sweat02

ヒドイこというなぁ…元は同じ人間なのに…angrysweat01

「良く行くの?ああいう廃墟みたいなとことか」

「へ?」

行くのかなぁ…行くというか夜は、回りが見えないから屋根のあるところで休んでるだけなんだけど…。まさか普通のホテルに泊まれるわけじゃないし…。

「いや…行かないです。sweat02幽霊もいろいろだと思いますよ。そんな気味の悪いものじゃ…」

「そういや、ナギサちゃんも幽霊だったよね?」

「でも半人前だし、あまり幽霊に向いてないですけどね…」

「幽霊にも資格がいるの?死ぬのも面倒なんだなぁ」

「落第もできないんですよ」coldsweats01

「ははは…♪試験も何にもない♪ってか」

「ハハハ…sweat02

それって、妖怪じゃないかなぁ…
生きてる人のフリしてここにいる私も考えると人に化けるキツネやタヌキと一緒なのかも。

…やっぱり私が幽霊だってことは、本気にしてないみたいだ。
だよね…。私も「トイレの花子さん」とか怖いなぁ…と思ってたから。

自分がそういう身になったら、むしろ生きている人のほうが怖くなってしまったようだ。その「怖さ」というのは、自分がどんな目で人から見られるかということで、人のことが怖いわけじゃない。どこか“仲間はずれ”にされている気持ちと似てて、スゴク孤独な空気に縛られる感じがするんだ。

Dscf1975

あれ…? 気がつくと、景色から高い建物がほとんど逃げ去っていた。

「どこまで行くんですか?」

「どこか行きたいとこある?」

「いえ…近ければどこでも行きます…」

「うん、わかった」

コロン、何してるのかなぁ…
さっきのお祭りのどこかにいたんだろね。一緒に行けば良かった…。

Dscf1940 車は、スーッとスピードを落として左へ…

「ここは?」

「ちょっと休んでこ」

「はあ…」

地下室みたいなところに車を止めて、言われるまま付いていく…
昼間なのになんだか薄暗い…オバケ出そう。(自分がそうか…)
彼がうっすら明るいところのガラスの棒みたいなのを取ると廊下がパッと明るくなる。

Dscf4525

「あーっ青空!」

天井や壁一面に白い雲が流れる青空が…これは、絵だよね。でも青空を見たら少し安心してきた。動かない雲 焼けることのない空…

「ここだよ」

「あ…はい!」

 バーッ

Dscf4513 ドアから入ると水道の勢いよい音が聞こえた。隣にお風呂場があるみたい。
ふーん…こんなとこ初めて。
いつも夜休ませてもらう空家とは大違いだね。
どこからかかすかに音楽が聞こえる。

「部屋はそっちだよ」

「はーい」

えーっなに?この部屋!薄暗くて窓がない!
外が見えなくてどうするの???
中は部屋いっぱいの大きなベッドと テレビと 椅子と小さなテーブル
そんなもの…

002885 「あのーっ…ここ、なんですか?」

「えっ?なにって…ホテルだけど?初めて?」

「たぶん…ですね…」

「…まあいいや。ゆっくりしてこうよ」

「…」

変なとこだなぁ…そんなに広いところじゃないし…

枕元にスイッチがたくさんある。
入れてみたら部屋が明るくなった。
こっちは何だろ?

「…続いてのニュースは、また行楽シーズンの痛ましい事故です…」

わっsign02 テレビか…
ベッドの端に座って、しばらく見てた。何のことを言ってるのか全然分からないけど…
─とバスタオルを腰に巻いた彼が部屋に入ってきた。sweat01

002286 「テレビに夢中だったから、お先に使ったけど、お風呂入れるよ」

「えっ?」sweat01

「今日は、朝から暑いしねー」

「はあ…」

お風呂に入ることになった。まだ昼間なのに…
なにしてるんだろ私…今日は変な日だよ。
とりあえずお風呂には、入らなきゃならないみたいだし─
大きな鏡のある前で服を脱ぎだした。

impact「えーっsign02sweat01

002886鏡に映る自分を見てビックリした。

「私って─こんなにオトナだったんだ…」

何をいまさら…って感じだけど、こんなふうに自分の体を見たのは初めてだった。
いつも大して考えもしないで人に化けたりしたけど─

「どしたのー?」

「いいえーっsign01なんでもないですーっsign03sweat01

000080ともかく─
自分が自分じゃないことを思い知った気がした。
なんだか…なんだか…なんだかすごく恥ずかしい…sweat01

鏡を見ながら思わず手で顔を覆った…
指の隙間から見えるのは…見えたのは… 『あぁっsign01
爪の色がすっかり変わってる。
まずい!時間じゃないか! いつの間に時間が経ってたんだろ!
早く元に戻らないと、この体から出られなくなる!

あれ?いくらなんでも遅いな…「ちょっとーまだ上がらないのー」
あれ?いない!あれ?あれれっ?逃げられた?

Dscf1747

「すっかり、お待ちさせたでしたsweat01ナギサーン。大盛りでお待ちですか?」

「ううん。そうでもないよ─」

「お楽しみかったらしさです。笑わせた人がたくさんあったから」

「ふーん…良かったですね」

「ナギサンは、何をおこなってたんでしょうか?」

「私?いや…sweat01何もしてないよ」

「だから ご一緒したきたら良かったのにですより…」

「うーん…そうだね。次はそうするよ…」

「なんだか、お元気が台無しですね。ナギサン?」

「そんなことないよっ。sweat01 もう行こsign01暗くなってきたから」

Dscf1742

赤から紫色に変わり始めた夕日の下で、相変わらずにぎやかな音がしてる。
夜が怖くない人たちの笑顔は、大人も子どもも、どれも同じに見えた。

Dscf1178 今日のことはコロンには黙っておこう。
何言われるかわからないから…

それにしても勝手に逃げちゃって悪いことしたな…
でも、おいしかった…マカロニ

Youtube 「マカロニ」 Pafume

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2009年9月 3日 (木)

マカロニ ②

Dscf1642

「飲み物は?」

「い…いいえsign03水でいいです」sweat01

「じゃ…それで」

「かしこまりました。アイスコーヒーおひとつ、マカロニグラタンがおひとつ。以上ですね」

「はい」

002011_2まいった…sweat01
うっかり大声で言っちゃった…sweat02

「もしかして、お腹空いてた?」

別にお腹が空いていたわけじゃない。
目の前のことと頭の中が別のことを考えていたんだ。

「は…ははははは…sweat01すいません。つい…何年も食べてなかったので…sweat01

「えぇっ?」

「いや…食べてます。飴くらいは」

「飴だけ?」

「い…いやsweat01食べてます。人間だから…」sweat01

うっわ~話せば話すほどボロが出てくるよ…sweat02
今すぐにでも逃げ出したい。
向かい側から、ジッと私のほうを見てる。
怪しまれてるかな…私が本物の人かどうか…

Dscf1620

「ところで、この辺の人?」

「いえーっ旅の途中で、ちょっと立ち寄っただけなんです。友達が見たいものがあるとかで…」

「そっか、お祭りだしね。その友達ってのも女の子?」

「はい。今日は…」

「今日は?」

「いやいやsign01今日もですsweat01

マズイぞ!絶対マズイ!sweat01sweat01
なにか話を変えないと…

Dscf1522

「あの…あの、あなたは何者なんですか?」

「ナニモノってかい?そう…たぶんキミが待ってた人」

なに?ちょっと待てよ!名前が同じとしても、この人が私のカズ君のはずないよ…
もしかしてコロンが私を騙そうとしてるのかな?…いや、そんなはずは…
待てよ…落ち着けナギサ!混乱してると相手の思うツボだ。sweat01
普通に振舞わないと…普通に…

「私もそう思います」

「へぇッ!話が早いね」

その気になれば何とかなるもので…何とか話に慣れてきた。
車がどうとか仕事がどうとか、よくわからない話をズーッと聞かされたけど、何となく返事をしていれば勝手に話してくれるから楽だな…

Dscf1518

「幽霊?」

ドキッとしたsign03sweat01 店のどこからか、そう聞こえた。
少し離れている席の女の人らしい…。
背を向けているけど、私の正体を見破ってるのかな?
それとも私の変身がヘタで正体がバレバレなのか…sweat02

「お待たせいたしました」

Dscf1176

懐かしい香り─
小さい頃の…生きていた頃の…思い出の香り。
フツフツと香りを立ち上らせる黄金色のマカロニグラタン…
しばらく見とれていた。

「食べてていいよ」

Dscf1188「…あ…はいsweat01 いただきまーすsign03

アチッ…アチチチチ…sweat01

「そんな、あわてることないのに…」

「すいません!死んでから、しばらくこういうの食べてなかったので…」

「えっ…? もしかして…ナギサちゃんてさ、幽霊さんなの?」

あ…sweat02 しまった…。グラタンに夢中になって自分でバラした…。sweat02

Dscf1550 「なんか変わってる子だなぁって思ったよ」

「ごめんなさい…騙すつもりじゃなかったんですけど…」sweat02

「でも、こんなカワイイ幽霊なら歓迎だけどね」

「怖くないですか?」

「うん、いろんな人と知り合ったことがあるよ。マリー・アントワネットの生まれ変わりだーとか、実は金星人なんだーとか…他にもいたかな」

「金星?」

私みたいなのの他にもいろんな人がいるんだ。
それにしても幽霊が怖くなさそうな人に驚いた。

「でもさ、幽霊って昼間でも大丈夫なの?」

「始めは…幽霊になった頃は、陽に当たると溶けちゃうと思ってたんですよ。でも違うってことに気がついて…それから風に乗っていろんなところを旅してきました」

008013_2 「風?自分で飛ぶんじゃないの?ユラユラ~って」

「いやぁsweat01風船じゃないんですよsign03

「ハハハ…」

「へ…エヘへ…」sweat01

自分が幽霊だということにズッと引き目を感じていたけど、話を聞いてもらうと、今まで縮こまっていた気持ちがほぐれてきた。

「やっぱり幽霊になるってのは、この世に未練とかあるのかなぁ」

「無いですよ。私は…。気がついたら幽霊だったし…それに始めは、そのことにも気がつかなかったけど。でも…悔しいとか、悲しいとか、そういう気持ちでいっぱいになっちゃってる人もいました。スゴク可哀そうで…」

「えっ?えっ?impactえぇぇっっsign02

また向こうで女の人が大声を出した。sweat01
あれ…?

Dscf1125

「騒がしい店だなぁ…食べ終わったらどこか他所で話そうよ」

「はい」 …向こうの人たち…どこかで会ったような気がするなぁ…。

(つづく)

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2009年8月24日 (月)

マカロニ ①

Dscf1807

「ナギサーン 地面に降りませんか? 空ばかりで たくさん つまらないです」

Hands1 「えっ…あっ…そう?」

相変わらず言葉のヘタな『石』…。私が教えてるから仕方ないけど…。
今は時計の姿で私の左手に巻きついているコロンさん─ 
旅の道連れになった「石」のことをそう呼ぶことにした。コロコロ転がる石だからコロン。
石といっても、お地蔵さんだったけど。元から名前は無いそうだし、付けられた名前も知らないらしいから。
言葉に慣れていないコロンさんは、私を『ナギサン』と呼ぶ。
「ナギサ さん」じゃなくて「ナギサ ん」
別に「ナギサ」でいいんだけど…

「どこか…行きたいところ、ありますか?」

そう言っても風任せだから思うほど好きな方へ行けるわけじゃないけどね。

「群れの 人達のいる地面 いいですね」

「えーっそれはちょっと嫌だなぁ…sweat02

「何だから ですか?」

「いや…誰かに見られたらヤだなーって…sweat01

Dscf6821

風に乗って青空の中にいる私は、これでも幽霊だ。
人に見られたりするのは、好きじゃない。
怖がったり、驚いたりされるから…
要領のいい幽霊なら、そう簡単に見られることもないだろうけど、わたしはどちらかと言うと「へたっぴ」だから、やたら見られたりする。

Dscf1690 「ナギサン ホントは 人に見られたいじゃないですか? 本当は 見られたくないじゃなくて。 ワタシ 見られない しかできない ですから」

う…鋭いこと言ってるかも…
確かに仮の体を作って中にいるときは堂々としてられるけど、今のまま人目に出るのは、すごく怖い…
心だけの存在のような私は裸同然ということになるだろうか。
だから見られそうな気がしてオドオドして、かえって人目につくのかもしれない。

「ちょっとだけですよー。ならいいけど…」

「はい ガッテン 承知でした」

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風の進む先にてっぺんがキラキラ光る塔のようなものを見つけて、そっちへ向かってみる。
思ったとおり街の方にやってきた。いざ街へ入るとなると、なんだかドキドキしてくる…。
とりあえず、なるべく人目につかないところを見つけないと…大きな看板が見える。
あちこち剥がれ落ちているみたいで網のようなものをかけてある。とても古そうな看板。あそこならそれほど見られないかな…

Nagisahawaii 「ここで待ってるから行ってきていいですよ。いつまでにします?」

「そね。5時 どうですか?」

「えっ?sweat01かなりあるじゃない」

「短くですか?」

「いや…別にいいよ…sweat02

コロンさんは「待ってました」とばかりに私の腕から離れて形を人の姿に変えた。
今日は─ 女の人の姿 
「石」だから男女の区別は、無いらしいけどホントのところどうなんだろう…

Dscf1615 「ナギサンも 来るといいよ。 見える姿なら 恥ずかしい ナイね」

「でも、私幽霊だから…sweat02

「暗いだな。いつも空飛ぶだから 上昇志向 ですよ」

ヘンな言葉知ってるなぁ… 石のクセに軽いし…

「うん…考えとく。ここに飽きたら降りてみるよ」

コロンはニコッと笑うとビルの谷間に飛んでいった…
いつもは、あまり動きたがらないから左腕に巻きついたままだけど、こういうときは動きが早い。前に「人間 見るの好きです。大盛りで…」とか言ってたけど

「あっsweat01 時計が行っちゃったsign03

忘れてた…sweat01 どうしよう。時間が分からないとどこにもいけないや…。

Dscf1779

Dscf5390 しばらく空を飛んでいたけど遠くまで行くわけにも行かないので結局、街に戻ってきた。
ビルの間に挟まれたところを人がたくさん行き来して、どこからか楽しそうな笑い声も聞こえる。 …私も下を歩いてこようかな…
少しくらいなら仮の体降りれば大丈夫だよね。でも、あと何時間あるかなぁ…

人気のない薄暗い通りを見つけて、体を造った。
街の中は、道から車が締め出されていて、人が大勢車道を歩き、あちこちになにやら人の塊があった。それを見ているだけで不安になってきた…
さっきの通りには、全然人がいなかったのは、皆ここにいたからかな?
どうやらお祭りかなにかのようだ。

ドキドキする…sweat02体があるからホントに胸がドキドキしてる…

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Dscf1581 空のこぼれ種と 緑の食べ残しと 大地の吐息
そういうものをかき集めてこね上げた私の体。それでも人と同じように動く。
ドキドキとは、しているものの「体」という鎧の中から外を見ている安心感があるから、すぐにでも逃げ出したい気分も少しは薄れるよ。
でも、すれ違っていく人が急に立ち止まり
「おや?キミはホントの人間じゃないな」と聞いてきたらと思うと、ちょっと憂鬱だ…。

「ちょっとキミ?」

000153impactうわあぁぁっっsign02sweat01

振り向くと知らない男の人sign03
嫌だ…正体バレたっっ?

「すっごい驚き方だね。こっちが驚くよ!」

「あ…すいません…。あの…なにか?」

「何か探してるの?」

「いえーっヒマなんでー。ただブラブラと…」 普通にしないと…普通に…sweat01

「だったら、そこの店で少し話しようよ。外は暑過ぎるしさぁ」

Dscf1627 「でも…」

こまったなぁ…sweat01 でも幽霊とはバレていないようだ

「誰かと待ち合わせ?」

「はい…友達と5時に向こうの通りのビルの屋上で…」

「屋上?」

「いえsign03ビルの中ですsweat01

「5時なら、まだまだじゃん。適当に時間つぶしにもなるでしょ?」

「…はい、少しなら…」

Dscf1584

理由が見つからず、言われるままにその人に付いて近くの店に入った。
うーん…困ったな…sweat02

000643 「いらっしゃいませー」

「ふたり!」

「2名様ですね。こちらへどうぞ」

うっわーっsweat01 こんなところ初めてだ…。

「こちらのお席へどうぞ。 お決まりになりましたら、そちらのベルでお知らせ下さい」

なんていうんだろ…お店の中、外国みたい…。
明るくて、なんだか天国みたいな気がする。
よく夜を過ごす空家とは大違いだなぁ。

000640 「なんにする?」 向かいの彼がメニューを私に手渡す。

sign02 ナニこれsign03 写真載ってないsign01文字ばっかりだ…英語まで書いてある。sweat01
小さい頃、両親と3人で大きいレストランへ行ったことがあったけど、あそことはずいぶん違うなぁ…そういえばあの時、何を食べてたんだっけ? うーんと…sweat02

「名前聞いていい?」

「ま…まだ決まってないですsign03sweat01

002086「いや…それはゆっくりでいいよ。君の名前の方さ」

「あっ…ああ…私ナギサです」
 
なんだ…ビックリした…sweat01すごく、ぎこちない私…sweat02

「素敵な名前だね」

「はい…ありがとうございます…」

「…僕の方は聞いてくれないの?」

「ご…ゴメンナサイ!sweat01 お名前は?」

「カズヒロ!」

「なにsign02…」

008003 この人もカズ君と同じ名前sign01
私の行く先には「カズヒロ」って名前の男しかいないの?

「…いや、ステキなお名前です」

「女性にそんなこと言われたのは初めてだなぁ。すごくありふれてると思うけど」

「そんなことないです!たぶん…絶対…」

     ミーッ…

「なにsign02 何の音sign03sweat01

「オーダーしないと…まだ決まってなかった?」

…忘れてた。sweat02

「お決まりですか?」

「アイスコーヒー!ナギサちゃんは?」

えーっ! えーっ!sweat01 どうしよう…sweat01sweat01
あ…そうだsign03思い出したsign03

「マカロニグラタンsign03

「えぇっsign02

Dscf0910

     (つづく)

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2009年8月 9日 (日)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』②

Dscf0329

「へーっここ遊園地かなにか?」happy01

virgo「いえ…ラブホです…」

「えっ?ランボー?」catface

virgo「ラブホですよ」sweat01

「らぶ…。あっあぁ~っsweat01ラブホテルね。なんだ…変なとこーっtyphooncoldsweats01

Dscf0265 変なとこって…sweat02
しかし、廃墟嫌いと言いつつ、ケロッとしてるなぁ。
自分で来たいって言った手前、仕方ないだろうけど。

「良く見たらスペースシャトルの形だ。キレイな時だったら来ても良かったねぇ…」happy01

virgo「…」

「こういうところ、良く来るのぉ?」happy01

virgo「いや!ラブホは行かないですsweat02

「はぁ?廃墟のことだよ」coldsweats02

Dscf0305 う…墓穴掘った。sweat02なんか調子狂うなぁ。down
なんていうか、いかにも理解のなさそうって感じの人と来ると、私もこんなところで何やってるんだろ…って気がしてくる。
師匠だったら、私が言ったことに的確にリアクションしてくれるけど、趣味が違うからなんだろうけど。
師匠は聞き上手だよ。やっぱり…
あ~っ神経が疲れてくる…down

Dscf0290virgo「営業していた頃は、まだ上水道が来てなくて地下水汲み上げだったそうです。それが近くの道路工事の影響で水が上がらなくなったと聞きましたよ」

「それでこんな有様に…中、見れれる?」smile

なんだか美玖さんのほうが乗り気だなぁ…
彼氏と廃墟へは行ったことがあるらしいから慣れてるんだろけどね。
好き嫌いは感受性の差なんだろう。
シャトルルームの中でも割と中がきれい目なところを選ぶ。
と、言っても、どこもかしこも木片や誰かが放り投げた室内電話や消火器とかの備品も散乱している。
いつから放ってあるのか知らないけれど消火器は、破裂することもあるらしいからなるべく近づかないようにしてる。

virgo「気をつけてくださいよ。頭の上とか…」

Imga0237

Imga0236「わーっ汚ったないsign03でも広いんだなぁ…。こっちは、お風呂だsign03腐ってるーっsign03sadsweat01

virgo「…」

こう、わかってくれそうな人だったら「ここがいい!」とか「ここはキレイだね」とかも言えるけど今日の場合は難しいなぁ…。私が私らしくなくなる。

Dscf0249

「どのくらいやってるの?」delicious

virgo「えっ?何がですか?」

「こういうところに来るのをさ」wink

virgo「そう…5年くらいになるかなぁ…始めは同じような趣味の人を知らなかったから、ずーっとひとりで…」

「ふーん…でも今は、理解ある彼氏がいるからいいよね」happy01

virgo「へっ?誰sign02…まさか師匠の話sign02

「うん」wink

virgo「ち…ちょっとぉsign03sweat01なに言ってるんですかsign02勘弁してくださいよsign01sweat01

「だってぇ、こんな怪しいところに一緒に来れる人ったらそうじゃないのぉ?」smile

virgoimpactないないsign03ないですsign03かんぐり過ぎですってsign01sweat01

「もう外へ行こ。なんだか空気がスゴク重たい感じがするよ…ここ」bearing

ふーっ。sweat01いきなり何を突っ込んでくるのさ…あ~っ早く帰りたいsweat01

Dscf0272

Dscf0229 シャトルを出て、管理室と通常ルームのつながる棟へ。
真っ暗なボイラー室を通り抜けるとき、美玖さんが背中にピッタリ張り付いてきた。
反対側の客室の棟はいくつか部屋が並んでいるけど端から2部屋は内装作製中に工事中断して、柱とかが剥き出しのまま。
たぶんシャトル棟だけで用が足りたので全てを完成させずに営業していたんだろう。
一番手前の部屋もボイラー室から直接繋がっているので客室ではなく、乾燥室に転用していたようでタオルや浴衣が散乱して、天井には物干しがたくさん。
のこり3部屋が客室として使われていた。もっともひとつはガレージのシャッターが閉まったまま壊れているので『開かずの間』と化している。

Dscf0283 「ずいぶん人が来てるんじゃない?あちこち壊されてるけど…」catface

virgo「たぶん、肝…」 マズッsweat01

「なに?」gawk

virgo「いや…sweat01 危ない危ない…sweat02

Dscf0308

「小さいころさぁ…小1くらいの時かなぁ!捨て猫を拾ってさ、真っ黒いけど目がビー玉みたいにキラキラの子猫。近所の子とこんな狭い階段のある空家の2階で飼ってたことあるよ。その頃、私んち社宅だったし、他の子の家もダメだったから…」despair

Dscf0315 virgo「そうですか…」

「カワイかったんだぁ。すぐ死んじゃったけどね…っていうか殺されたんだけど」despair

virgo「えぇっ?」

「みんなの秘密基地にしてたけど、ひとり男子がさぁ、じぶんの兄ちゃんに教えちゃったのさ。後で白状させたけど…。その子達、行ったみたいで“黒猫は悪魔の使いだ!”って寄ってたかって蹴り殺しちゃったらしい…見つけたときはもう、ボロボロで冷たくなってた。あんなやつら呪われてしまえばいいのに!」pout

virgo「…sweat01

「それからこんなとこ来なくなったよ…」gawk

そういうことあったのか…
ないとしても普通は、廃墟好きにならないだろうけど…

Imga0249

「もういいや…帰ろうsign01think

virgo「なにかに…なりました?」

「うーん…よくわかんないsign01私には、さっぱりさぁ…」happy01

その横顔からは、廃墟が好きだとか嫌いだとか、そういうことは読み取れない。
意外とスッキリしたような表情ではあるけど…
ただ、ここに来てみた─それだけなのかもしれない。

Dscf0268

「このシャトルがホントに飛んでいったら私たちの街の上だよね」happy01

Dscf0345 朽ちかけながらも整然と並ぶシャトルは確かに街のほうを向いている。
夜なら、空と地上の星に挟まれる…ここは天と地の境目がわからなくなる景色なのかも…
でもシャトルは、静かに…ただ静かに空を見上げるだけ
鳴り物入りで打ち上げるスペースシャトルとは違うから…

「たまに…アツシも誘ってあげて」bleah

virgo「いいんですか?sweat01

「うん!たまにならね。アキさんの彼氏と3人なら構わないよ」delicious

だから…sweat02違うって…sweat01

Dscf0306

Dscf0301 eyesweat01「あーっビックリした…sweat01人が来るとは思わなかったよーっsweat01sweat01

watch「そうですなんですか?人間はいろんなとこへ来るあるますね…」

「そう…“あるます”だよ…heart

Youtube/JUDY&MARY『小さな頃から』

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2009年8月 5日 (水)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』①

Coffee

virgo『幽霊?』

『う…疑うの?アキさん』pout

virgo『いや…そういうわけじゃなくて…』

『ホントにあの時見たのさ!annoyあの炭鉱で…』angry

Dscf9574

美玖さんに相談があると言われ週末、街で会うことになった。
久々の青空の下は気温もグングン上がり、通りは歩行者天国。夏のイベントでごった返している。どうも人の多いところは私の性に合わない…sweat02
待ち合わせた美玖さんは、この前、写真の師匠である神さんと行った山奥の炭鉱跡で偶然出会った。
彼氏に連れられてそこに来た美玖さんは『廃墟趣味』ではないらしく、あの草深い森の中では当然のごとく不満そうで…。
途中、ちょっとしたことから機嫌を損ねて遺構と樹木でうっそうとした森の奥を突っ走って行方不明になってしまった。しばらくして無事、見つかったけれど…

後日、その美玖さんが師匠を通じて私に連絡してきた─
まさかとは、思ったけど…

『名刺を見つけたの。アツシの部屋で。神っていう人の…それで連絡してみたんだ…』think

Nagisamiku なんの気なしに会ってみて、幽霊の話とは驚いた。sweat01
悪いけれど私は幽霊を信じる方じゃない。というかまったく信じてなどいない。
信じてたら廃墟など絶対行かないよ。
しかも、あの時に見たって…あの時は、まっ昼間じゃないのさ。

『すぐ近くにいたんだよ!はじめは、なんだろ?って感じだったけど、振り向いて“大丈夫ですよ”とか話してきてさ…』coldsweats02

virgo『えぇっ…?sweat01…で、どんな感じでした?』

『うーん…白っぽくて少しユラユラしてて…影っていうか…そう、若い女の人の影に見えた!』gawk

virgo『女?』

『そう!若くて…ワンピって感じ』catface

virgo『…sweat01 

古い炭鉱跡に昼間っからワンピースの女の霊?それは誰も信じないでしょ…sweat01まいったなぁ…

Dscf9533

『信じてないっしょ?』gawk

virgo『いや…そういうわけでは…』sweat01

『ホントは、私も今になったら本当のことだったか怪しくてさ…。幽霊じゃなかったら宇宙人かなぁ…』despair

Dscf9516virgosweat02その…あの、彼氏の人には話したんですか?そのこと…』

あの森の中で私と師匠、美玖さんとその彼氏、4人が右往左往していたのは、ついこの間のこと…
その日以来、雨の日が続いて思うように探索はしていない。
彼女ともそのときぶりだけど、神経質そうだったあの子が私に会いたいと連絡してくるとは思わなかった。

『そうなのさ!』sad

わっ!sweat01なんだ急に!

『あの日以来、ああいうとこ行かなくなったんだよね。アツシ…ひとりでも行かなくなったみたい。前は、ちゃっかり計画してて当日発表みたいなー』despair

virgo『それは、まあ…ああいうことのあった後ですからね…』

『映画とか…ショッピングとか…連れて行ってくれるんだ。郊外へ出かけたって「また?」と思ったけど全然寄らなくなった』think

virgo『それはそれで、良かった…んじゃないですか?』

『…』 despair

Dscf9521

美玖さん…黙ってしまった…。
返す言葉に失敗したかな?
師匠に今日、美玖さんと会うんだと話したら…

shadow『気をつけてくださいよ。あの子、神経質そうだから…』

virgo『大丈夫です!師匠より女の扱いには長けてますから』

shadowそ・れ・が!イカンのですよ。話すときは、しっかり噛み砕いてからにしたほうが…』

virgo『買いかぶらないで下さい。これでも私、ご飯は、しっかり30回噛むんですよ!』

shadow『会話の話ですよ。それに、それを言うなら“見くびらない”です』

やっぱり師匠にも来てもらえば良かった!sweat01
用事で札幌へ行くって言ってたけど確信犯だなぁ…
なんだか、緊張してきた…。sweat02
お腹空いたなぁ…緊張するとお腹空いて来るんだよ…
あーっこの暑いのに熱いグラタン食べてる子がいる。変なヤツだなぁ…

Dscf9426

『ねぇ!ちょっとアキさん!聞いてるの?』coldsweats01

virgo『あ…はい!聞いてます!』sweat01

『で…ものは相談なんだけどさ!どこか知ってる廃墟に連れてってsign03happy02

virgo『えっ?えっ?impactえぇぇっっsign02bomb

思わず大声が出て、回りの視線が一斉にこっちへ…sweat02
美玖さんもグラタン女もキョトンとした顔で私を見つめてる…
うわぁーっ恥ずかしい…sweat01
美玖さんが急に思いもしないことを言い出したからじゃないかーっsign03sweat01sweat01

『私、廃墟なんか嫌いだよ!でもさ…ああいうところでアツシは幸せそうな顔を見せてくれたのさ。今でも笑ってくれるけど…違うんだよね。なんだか自分にウソ付かせてるみたいなのさ…』despair

virgo『はあ…』sweat02

『一緒に行ってても“こんなとこ嫌だ”って感じで見てたから、アツシの感じるものをわからなかったんだなぁって…。そういうのを理解したい気持ちもあるんだけどアツシ行こうとしなくなっちゃったし。ああいうことのあった後だから私から言えないし…』think

この前、グチってばかりいた子とは思えない。
今時、こんな理解力のある子、いないじゃないか。
私もこういう理解ある彼氏欲しいなぁ…廃墟趣味に理解のある…sweat01

Dscf9572 virgo『愛してるんですね…』

『へへっ…sweat01 まあね…』smile

virgo『で…いつ行きます?』

『明日でも、どう?時間ある?』coldsweats01

virgo『明日sign02

『アツシ、明日まで仕事で出張だからさ。近いとことかないの?』bleah

virgo『いや…あることはありますけどね』sweat02

弱ったなぁ…師匠もいないし…
近場か…近いとこ…ないことはないけど…sweat02

Dscf0266

virgo『こんにちはーっ』

おやぁ?またあんたかい!物好きだねぇ…こんなとこばっか来てたら嫁の貰い手なくなるべさ』

virgo『だいじょうブイです!すいません今日も見てきていいですか?』

ああ!怪我だけは、しんようにね。あんなとこだしさ…。また写真かい?』

virgo『いえ!今日は見るだけで…。あっちのバリケード、大きくなってましたけど、また誰か来てたんですか?』

Dscf0267 師匠と一緒に来たことのあるこの廃墟は、ずいぶん前に閉鎖されたラブホテル跡。
高台の突端にあるので上水道の充実していなかったころに近隣の道路拡張工事の影響で地下水脈が変わり、地下水を汲み上げられなくなったのが閉鎖の原因とも聞いている。
この廃墟に隣接している裏の道は一見、ここの道のように見えるけど、まったく無関係で、奥にある家の私道だ。心霊スポットの噂もある場所だから夏になると肝試しの連中が毎夜のように来るらしい。
事情を知らない人が奥の家をホテルの廃屋と思って勝手に覗きに行くことがあったんだそうだ。
そういうこともあるので、ブログに場所のことは載せられないし、時々来る情報照会のメールも丁重に断わるようにしている。

『この前の連休あたりからね。ボチボチ出てきてるよ…annoy

virgo『あまりひどかったら通報した方がいいんじゃないですか?』

『いんや、そこまで迷惑こうむってるもんでもないし…ウチのもんでもないからさ』

Dscf0328 心霊の噂もあるここは、夏場になると肝試しのハッテン場になっているらしい。
噂の信憑性は、近所で聞いて回っても「そんなこと初めて聞いたよ」と言ってたくらいだから、やっぱり怪しいんだろう。
それでも冷やかしの連中は良く来るらしく、中はずいぶんと荒らされてる。それとは別にこっそり不法投棄していく人も相変わらずいるみたい。
他にも銅線の窃盗目的で来る人もいるらしく、あちこちの電線が切断された跡がある。
天井裏にまで入った痕跡もあったし…

Dscf0262

『ずいぶんかかったね。面倒なの?』gawk

virgo『いえ!世間話ですよ…。ホントにいいんですか?』

『…うんsign03think

今まで、いろんな廃墟を見てきたけど、こんなに気が重いのは初めてだ…
とりあえず、近場と言えばここしか知らないし「心霊の噂」だけは黙っておこう…

(つづく)

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2009年7月26日 (日)

みっつめの朝

Dscf0481

始めの朝は 生れたてきた日、最初の朝
次の朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝は…

「今日、泊ってくの?峠は大雪らしいよ」

「えぇっ?!」coldsweats02

Dscf0415 GWの最終日、これから200㎞以上の距離を家まで戻らなければならないというときに友人から驚くことを聞いた。この季節、大雪といっても北海道では、驚くほどのことではない。
自分が通る用事がなければ…
でも、数日前は夏日に近い日もあったことだから、そんなことあるはずないと思っていた。

行きの峠道は緑も芽吹き始め、春の小花もあちこちで見えていた。サクラはまだ峠を越えてはいなかったけど。
だから、とっくに夏タイヤ。ほとんどの人がそうだったと思う。
天気予報で峠が雪といってもチラつくくらいだったし。

「明日、仕事あるから、とりあえず行ってみる。どの程度の雪か解らないし…」

Dscf0416 とりあえず友人と別れて帰途につく。
峠のある町まで、普通に春の夜道。
真冬の大雪と春先の大雪は感覚的にも違いもあるから、降っても数センチかなぁ…でも峠に入ると路面凍結…?

最高点標高1,023mの峠は、急勾配と急カーブの連続で、樹海と高い岩山に囲まれている。それでも重要産業道路であることから末端両町の合意で村道として開通した道は昼夜を問わず通行車が多い。
夏場は霧に悩まされ、冬は、その交通量から圧雪・アイスバーンになりやすく重大交通事Dscf0477 故も多発。近年は、高速道の開通部分が延長されて険しい部分は回避できるようになって、交通量が激減した。
それでも道東への流通を担った道には違いなく、今でも流通のトラックは覆道と長いトンネルの連続する道をグングン登っていく。

峠の町まで近づくと、話の通り路肩に季節外れの雪が目立ち始めてきた。それでも路面は乾いている。

「もしかして行けそう?」

Dscf0474 やがて、進むほどに積雪量はどんどん増えて、峠手前の市街地は、お祭りでもあるのかというほどトラックや乗用車でごった返していた。
峠は荒天のため一時封鎖されており、越えるのは不可能。
少し戻ったところからもうひとつの峠に迂回する道も積雪が及んでいるため冬タイヤかタイヤチェーン装備の車両でなければ無理らしい。
海沿いから遠回りする道もあったけれど、そっちへ回る気にはならない。
「明日、峠が開くまで待つしかないなぁ…どうせ待つなら札幌で待てば良かった…」
そう思うほどに峠の町の夜は早く、すでに全ての店は閉まっている。
その頃は、まだコンビニや道の駅ができる前で、物産館駐車場からあふれた車は、国道の両側に路上駐車。
歩道に乗り上げたり、私有地に入り込んだり、エンジンかけっぱなしで地域住民とトラブルになっている様子あった。

Dscf0414

「この辺じゃ待てないなぁ…」

喧騒の市街地を離れ、暗い道を引き返す。
路面に溜まるシャーベット状の雪の上、時折タイヤが空転しているような気がした。
夜というのはこんなに暗いものなんだと思い返すほど暗い道だった。

街からほどほど外れたところにポッカリとドライブインらしきところが見えてくる。
少しでも峠近くで待機!と言わんばかりに集まった車両は、ここにおらず、大型トラックが数台だけ…

Dscf0421

「とりあえず、ここにしよう…」think

Dscf0425 春の重たい雪が積もるパーキングに車を滑り込ませて、外灯近くのなるべく明るいところに駐車。
エンジンを切ると5月だというのにミルミル車内の温度が冷えてくるのが分かった…タンクの残量を考えるとエンジンをかけっぱなしというわけには、いかないし…。
とりあえず荷物からパーカーやらシャツを引っぱり出して着ぶくれに着込んでみる。気が付くとウインドーは内側から曇りだしていた。

「なんだか情けなくなってきたな…」sweat02

少し、窓を開けると遠くからチョロチョロと水が滴る音がする。

「?」

明かりの中ぼんやりと浮ぶキャンプ場の洗い場みたいなところのひとつが蛇口を開けたままで、下のバケツに水を溢れさせ続けている。たぶん凍結防止のためかな? まだこの辺りはそんなに冷え込むんだろうか…?

Dscf0424 この辺りのドライブインは、「ミツバチ族」とか「ブンブン族」と呼ばれてた道内2輪旅行者が利用する素泊まり宿が多い。
ドライブイン兼なので食事も可能。脇の大きなプレハブ小屋が宿で、洗い場みたいなところも泊り客用のものらしい。
5月では、まだ気の早い旅人はいないらしく宿泊棟に明かりは点っておらず、オートバイも見当たらない。

にわかにドライブイン正面から人が出てきた。
やおら空を仰いでいたその人がこっちを見たかと思ったら、そのままこっちに向かって歩いてくるじゃないか。

Dscf0423 「うわ~ッヤだなぁ…私有地だから出てけ!って言われそうだな…」despair

そばまで来たその人は、こっちが車の中にいるのを覗き込んで、

「どしたの?こんなところで…」

「いえ…峠が通行止めなんで…」despair

「あ~っやっぱり通行止めなったかい!こんな時にこんだけ降ることなんか滅多にないんだけどね」

「はあ…」 早く行っちゃってくれないかな…catface

「ここで夜明かししたらシバレる(凍る)よ。まだ霜も降りるし」

「えぇ…でも、行けるところもないですし…」

「裏、開けてあげるから寝てきな!布団はあるから!」

「いや…でも…」coldsweats01

「お金は、いいから泊ってきな!こんなとこいたら凍死するわ!」

Dscf0442

半ば不安に苛まれながらも強制的に案内される。
鍵を盗りに行ったご主人は、奥のプレハブの中へ案内してくれた。
決して明るいとは言えない照明を点けると両側にドアがいくつか並んでいる。
そのひとつに入ると、どこも相部屋らしく布団が数組並んでいた。
ご主人はポータブルストーブに火を入れながら

「夏休み頃だとライダーでいっぱいなんだけどね。まだちょっと早いんだ」

「なるほど…」coldsweats01

「好きなとこで寝ていいよ。寝る前に火だけは消しといてね」

「はい…ありがとうございます」coldsweats01

「ご飯、食べたの?」

「いえ!大丈夫です!」coldsweats01

「そっかい。じゃあゆっくり休んでや」

Dscf0430 話もそこそこにご主人は引き上げて行った。いつもあるのかな?こういうこと…

ゆっくりと温まる部屋の中。
古い雑誌や文庫本がたくさん積まれている他には、ポータブルテレビがひとつ。
宿というより工事現場の仮宿舎みたい。
でも車内泊が思わず布団でノビノビ眠れることになった。しかもタダで。
布団は冷たかったけれど心地よい眠りに付くには充分だった。

Dscf0457 

「すいませーん…すいませーん…?」gawk

翌朝、ドライブインへお礼だけでも言っておこうと寄ったが、いくら呼べども返事はない。

「出かけてるのかな?」gawk

Dscf0433_2 前日とは打って変わって早朝から温かい春の空。
陽射で融けた雪の雨だれのような音で目が覚めたほど。
駐車場も道もほとんど乾いてきている。
相変らずご主人のいる様子が無いので今度来たときに礼をしようと出発することにした…
建物の壁に「素泊まり1500円」とある。
峠は路肩に雪が積もっていたけれど路面は、すっかり乾いてコントラストが際立っている。
結局、この日、仕事は休んだ。

それから程なく国道は新路線の完成により、このドライブイン前を走る車は激減した。
そのうち…と思っていた自分でさえ、再び訪れたのは何年後になったのだろうか。

長雨がようやくあがった朝 ようやく訪れる。時間は経ちすぎていた。
たった一夜の思い出だけど、この変わりように寂しい。
あの後、ここで何があったんだろうか。
屋根板の剥がれ落ちた屋内でとっくにあがった雨は、まだ降り続いていた。

新しい道は、かくも残酷な結果をもたらすのだろうか…。
いくら「廃墟好き」と言ったって「廃墟」になって欲しくないものもあるよね…。あるんだよ。

はじめの朝は 生まれた日、最初の朝
つぎの朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝─ それは 大事な何かが一緒に来なかった朝

Dscf0447 朝は、いつもやってくる。一日をリセットするみたいに。
ある意味、過去への訣別として。
爽やかな朝を繰り返して、時は積み重なっていく。
友達は親の都合で引っ越して 子どもは遠くに巣立ち 親は加速して年老いていく…
歯が抜けていくように不安になって、何かを悟ったようにぼんやりした答が波のように打ち寄せる。
時の重さに気がついて 朝が来ないように祈ったとしても、それは私的な我儘(わがまま)にすぎない。
人の心は、まだまだ繊細です。他の生き物達に比べると。
皇帝も独裁者も神々の名の下にある人も…終わりがあるのは自然の中の約束事。
そんな静かで無関心な朝の訪れは、時として残酷なものかもしれません。

でも朝には悪意も差別も中傷もない…朝ってそういうものでしょう? そうだよね。
無意味に迎えた朝はあっても 無意味に明けた朝などないのだから。

Dscf0976

あの 朝日の後で また会いましょう。

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2009年7月17日 (金)

いちごいちえ ③

Dscf8087

ザーン… ザーン… 海の見える山の上まで来た。ここまでも潮騒が聞こえる。
下の道を忙しく走る車の音もなんだか波の音のような気がして心地いい。
海はやっぱりいいなぁーッ
港に大きな岩が見えた。船よりもとても大きくてまるで山みたいな…。
実は大きな海亀がジッとしているだけだったりしてね…

Dscf8079

『ここにいるところがワシどものいる山でした』

『いいところですねーっ海が見渡せられて…ここは、なんて山ですか?』happy01

『下に住みいる人物は“かんのんやま”というわな』

かんのんやま… 観音山…? 観音様がいるんですか?』coldsweats02

『どこさかは知らんしな…でゃが、わちきもそのひとつらしきことです』

『…? あなたの体はどこなんですか?』

『あの木な下におります』

Dscf8082

遠くまで海を見通せる山の中に細い道がずーっと続く。
その両側にはたくさんのお地蔵様が並んでて優しく微笑んでいる。その目は何を見ているのだろう。
昔(生きていたころ)、人は死んだら神様の元(天国)へいけると思っていた。
でも、幽霊のこの身になって、いまだに神様にあったことがない。
ホントは私にとって行かなければならないところがあって、そこにはたぶんいるんだろうけどね…。
それは、私がさまよっているから…迷っているから…迷ってるのかなぁ…think

Dscf8086 『こいつが、吾ですねぇ…』

『えっsign02これって神様(仏様)じゃないですかsign02あなたは、神様だったんですか?』coldsweats02

『いやさ、ここまで人共が持ち上げて、こな形したです。何かに見せたいだろね。ワシらば当たり前の石ですねい』

『ほかの…お地蔵様もそうなんですか?』

『きとね…そうだしょね』

Dscf8084 木の根元に並ぶお地蔵様の端で、柵に寄りかかる一際小さなお地蔵様が、この人(石)だという。
確かにお地蔵様の形はしているけど石には違いない。
私のいた家の近くにも小さな神社のような家があって、その中にお地蔵様が入っていた。
一度、覗いてみると、その顔はとても怖かったけど…。覗いたので怒っていると思ったものだから学校帰りにそこを通らず遠回りするようになったっけ…

『いいですね…お友達がたくさんいて。人もたくさん会いにくるだろうし…』

『いんにゃ!人々と同じもので。小さくなると、それずれ、あちらの考えること分からんようなりす。元よりし、動かぬからに…』

『じゃあ…ここに並ぶほかの人(石)とは…?』

『話もたなです。話したは、ここに訪れはった傷をした小さの人だけ』

『傷? 小さい人?』

『女な人だに。顔に大きの…小さのたくさん傷ついてさ、背をこう…曲げなさったな人』

『…おばあさん…sign02 その人と話をしたの?』

『話せなんだす。こちさ話、聞こえなで。そん人な、いつも“なまんだぶ…”ゆうだけでた。なんことだろかな』

Dscf8081

その、おばあさんは、お地蔵様の姿をした石の人をお参りに来ていたんだということは想像できる。
“なまんだぶ”…お経だろうけど何て説明したらいいのかなぁ…

きっと、あなたの姿が神様だから願い事されていたんですよ』confident

『ふむ、そら思いた。何か願いばされてんね、何かしねばならん思いした。でも聞いたは“なまんだぶ”いっこです。そっていつか来なくなりやった…』

来なくなった… 来れなくなったんだ。そんなおばあさんに高い山の上はね…

『でやから、下へよって探しいたりてたり、人の言うことを聞くことやってしとりました。人の日は短けけどもみんなさん滅茶知っとります。石ん日は長けども、見て聞いとらだけやす。人は面白て飽きまへん』

『そうかもしれないですね…』

Dscf8066

『おで、おまさんは、人なだすか?』

えーっsweat01 急に何を聞きだすんだよ…。難しいこと聞くなぁ…despair

もちろん人ですよ…。体は…ホントの体とは離れてしまったけど…今は心だけで生きてます』

Dscf8046 『人んてのは、みな、あゆこと出来ようなるんですか?』

『あゆこと?って…』

『辛抱ない石を細くするやとか…』

『えぇっsign02 あれは…わざとじゃないって言うか…わざとか…。sweat02その…すいません。あれ、仕方なかったんです』coldsweats01

『なんらOKです。石らは小さなるだけんで何も変わらす。あの、空さ飛んで来くるのは良かすな。遠くんの人も見て来れる』

『気持ちいですよー風に乗るのは。思い通りの方へ行ってくれないから風任せだけど…』

Dscf7978 そういいつつ、この海に来るまでずいぶん苦労したことが頭をよぎり、自分ながらおかしなことを言っている気もした。

『連れてたもらねんばできんかな?うぬもそうして沢山人ん話ば聞いて、見てきたす…』

『うーん…じゃぁ…風の乗り方、教えましょうか?コツさえ覚えれば簡単ですよ。数日も練習すれば』

Dscf8078 『じゃがま、うぬら石は、よう転がりしも手前で動きらすんのは、上等でなさするしな…。よか、簡単手前手法があるますわ』

そういうと石の人は、人の姿を崩して小さな塊に変わっていく…

『その手の方一本、上げ立ててもらえぬかない』

『???』

言われて手を上げると石の人は、ヒュルヒュルと左手首にまとわりついてきた…。

Dscf0441 『えっ?なに?』coldsweats02

気味が悪くなって、思わず払いのけようとしたところで、その形が固まりだして…
どうなるのかとジッと見ていると、形がハッキリしてきた─

『時計?─』

『そすな。人は、みな、こげんなものをしとるましたから』

『これって…時間合ってるんですか?』

『いちおクオーツ(水晶)だすらら、石んは得意なこってす。ほな、行きまっせら?』

時計─ 時計だーっ変な言葉で話す時計─。
妙な時計…じゃなくて石と知り合ったなぁ…

『何しすたか?』

『いや…なんでもないです。sweat01 じゃあ…行きましょうか』

『よろしく頼もす…』

Hands1

やさしい潮風が山のてっぺんにある森に吹き込んできた。
海に浮かんでいる小船みたいにちょっと妙な気分と何だか説明しずらい気持ちも心の中でプカプカ浮かんでいた。
いいや!とりあえず旅の道連れ、ということで…
風に飛び乗って小路を突き抜けて空高く上がっていく。

今の正直な気持ち…
私の時計─ なんだか嬉しい─ heart01

Youtube 『いちごいちえ』 やなわらばー

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2009年6月23日 (火)

いちごいちえ ②

Rockfallnega私に向かって崖のてっぺんからゆっくりと回りながら落ちてくる岩を見ながら思った…

「また、厄介なことに巻き込まれるんだな…」

Nagisabom 人の目に触れないように風任せの旅をしていても、行く先々で何かしら事件が起こる。
厄介なことは、人の世界だけではないようだ…
いろんなものと出会って いろんなことになって…その度に何とか切り抜けてこれたけど、いつまでも幸運が続くとは思えないなぁ
あの岩を私めがけて落としてきたあの人の考えていることが何かはわからない。
でもなにかしらたくらんでいるのは間違いんだろう。

Rockshot

逃げようが無いことになって、かえって開き直った。
借り物の体を開放してこみ上げていたイライラを岩に全部ぶつける。

        バーン…

パラパラと小石になった岩が夕立みたいに撒き散らされる音が波の音をかき消す…
どうにもならないことになって私は、ホントに開き直ってしまったようだ…
一番避けたかったこと 一番見られたくないところ 
そして、たぶん相手が確かめようとしたこと
あの大きな岩の下敷きになっても、私がこれ以上死ぬようなことはないけど。
なぜなら私は幽霊だし…
問題なのは、私が人の皮を被った幽霊であることで、それを他の幽霊に見られてしまったということ…
粉々に ホントに粉のように飛び散った岩の土煙があたりに漂って、そこにいた敵は見えなくなっていた。

Brind

『さて、どうしよう…でも、戦わないといけないんだな…』

人に化けるのが問題じゃない。
人に化けようとする幽霊がどんな考えを持つかということ。
時間に限りがあるといっても人と霊の世界を行き来することが容易くできるとしたら、それは場合によって良くない結果になるらしい。
私がその力を教えてくれた人が、そんなことを言っていた。
それに簡単に人と霊の間を行き来することは『神様』の意思に逆らうことになりはしないだろうか?
そう思うことがあって誰彼教えることのできる力ではないと思った。

薄らいできた土煙の向こうの「あいつ」の気配は、まだ確かにそこにある。
あいつが何を考えているか、私にはわからない。
人であっても霊であってもそれは同じ。心の中まで読むことはできないから…

Nagisaangry

『あーっ大丈夫だねったね。良かたなや』

相手が敵となったら、本格的にその妙な言葉使いがイラッとする。

『さあ!もう急ぐ必要はなくなったよ!何が望みなの?』

『そうなの?じゃあ教えて欲しかことがあるだよ』

そらきた。人に化ける方法を聞こうと言うんだな… 

Dscf8063 『なにsign02

『人の言葉の作り方、知りたです。どうも難しいよしな』

『はぁっsign02』 何を言ってるのこいつ…coldsweats02

『ずっと人の声、聞いてきたけな、男とか女とか、小さのとか大きの、様々で色々でわからないのよ。だからオラ話すことも…めっさワヤじゃから教えて欲しいもし』

なに?言葉を教えて欲しいって? なんだか思いもしない言葉が返ってきて構えていた私は少しうろたえてしまった…

『そのために私に向かって岩を落としたんですか?』angry

『いや…あれらは、しごく辛抱なかったんらわ。奴ら、もう辛抱できなす。それ、そこの見て後ろごらんね』

Dscf8050

なに?うしろ…? あーっ…coldsweats02
道いっぱいに岩が崩れて小山になっている。
「こいつ」のことが気になっていて目に入っていなかった。
ずっと歩いてきた道は、見上げるほどの山肌に鉄の網が張り巡らされていたけれど、ここはみかんのネットみたいにボロボロにちぎれて岩があふれ出したみたいになっている。

Dscf8046 『本日は、もう落ちれんど、次の来週ふたつ落ちるつもりするす。この奴らは生まれつきの辛抱ないらしいですのな』

『どうしてそんなことがわかるんですか?』gawk

『わらもそいつらと同じ岩ころでから。当たり前、出場所はちゃうけどねん』

『岩?あなた、石なんですか?』coldsweats01

『はいです…』

『でも人の姿してるし…』gawk

Aitsu 『こうしていねとな、貴方みたいな方と会っても話しないの多い。今カッコもホントものでなく、あしは、岩ころだから元よりオスでもメスでもねいよね』

変な話かた…なんだか混乱してきた…happy02sweat01
この人は私みたいな幽霊じゃなくて、なんだ。石の心なのか…石がしゃべるか?
まてよ、わたしに色々教えてくれたのもおしゃべりな石炭だったっけ。

Dscf8053 『で…何を知りたいんですか』gawksweat01

『そね。“なまんだぶ”まず、というのを分るたいなす』

『なまんだぶ?えーっそれはちょっと…なんでまたお経なんかを?』coldsweats02

『“オキョウ”てか?アタのとこ来るンは、皆しゃべる。でも知らんだら』

 

うっわ~っsweat01ますます調子の狂う話し方だな…色んな言葉がゴッチャゴチャしてるみたいだぁ。happy02

『ウラん居るとこぁ、この向こうあっちのほうのどっしり山なだ。行っててみますか?』

この自分が石だという人のことに興味が出てきた。
少なくとも─私の持つ力を知りたいのではないようだ。

『はい。行ってみたいです』

『だいぶ歩くますからけども…』

Fallup 海から新鮮な潮風がシュンと吹き上がるのを感じる。confident うん─

『大丈夫。手をつないでください』

『うっはsign03sweat01

そいつの腕を引っぱって風に飛び乗ったとき、ずいぶん驚いたようだ。
新しい風はとても乗り心地がいい。
風は弱々しくも高くそびえる岩肌を一気に登りつめていく…

気持ちいいーっheart01

(つづく)

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2009年6月 7日 (日)

いちごいちえ ①

Rousoku

『ほら!あれだよ!ローソク岩』

『あれ…?ローソクっていうよりお米の粒みたいですね…』

『うーん…そう言われりゃそうか。でも、あれだよローソクの炎の形にも見えるっしょ!』

波打ち際にどっしり座った大きな石。
こんな大きなのは見たことがない。
ちょっと押したら倒れてしまいそう…。

Road ようやく海に来たーっ。
すぐにでもここから飛び出して行きたいくらいだよォ
いつ以来だろう。ずいぶん長いこと来ていなかった気がする…
トラックのおじさんに乗せてもらって、ずーっと話をしながらここまで来たけれど
海が見えだしてから、あんまり嬉しくて何を言われても半分、上の空だった…
ここまで来る間中、おじさんの家族やおじさんが子どもの頃の話を聞いた。
人(生きている)の話をこんなに聞くのもずーっとなかったなぁ。
まさか、おじさん隣に座る私の正体が「幽霊」だなんて思わないだろうね。

『伝説じゃさーっ…お腹のすいた神様がこの辺でクジラをつまみあげてヨモギの串で焼いてたんだとさ。その串の折れたのが、あの岩だってよ』

『えっsign02そんな大きな神様がいたんですかsign03

『ハハハ…伝説だってsign01で…どの辺りまで行くの?おっちゃん、このまま隣町まで行くんだけどさ』

『そうですねー。どこか止めやすいところでいいです。早く海のそばまで行きたいんで…』

『じゃあー街の入口あたりで止めるよ』

Dscf1604

おじさんは、このあたりの町へ荷物を配達するのが仕事なんだそうだ。
海のほうから潮の香りの風がどんどん吹き込んでくる。
風に乗ってこようと頑張っていたら、気まぐれな風に流されてどこに行ってたかわからない。

Dscf7994 私の爪は、まだピンク色。
これが緑色になってきたら仮の体(命の元を集めて合成した体)から出る時間。
出ないと時間切れになって、この海辺に転がる岩の塊みたいに小さく固まって出られなくなる。
爪が緑色になってくるのがその始まり…それまで4時間ほどだろうか。
少しの時間しか持たないこの体…おじさんは知るよしもない。
目の前で時間切れの私がはじければ別だろうけど…

「あっちの方に古い道があって、親子岩とか眺めのいいところがあったんだけどさ、岩盤が不安定でガケ崩れが良くあったもんだから通行止めになっちゃったさ。この新しい道からだと一番いい景色が見られなくなっちゃったんだなぁ」

「そんなに危ないんですか?」

「まぁねえ…通行止めで仕事にならなかったこともあったよ。道が良くなってから仕事は楽になったけどね…あっこの辺で止めるよ」

プシーッ

空気が抜けるような音がして、大きなトラックは「ウワン ワン」と体に似合わない小さな泣き声を出して止まった。

「すいません!ありがとうございました!」

「泊るとこあるの?知り合いの旅館なら顔が効くよ」

「いいえーっ当てはあるんです」
と、言ってもあるわけじゃない。たぶんどこかの空家にお願いして泊めてもらおうと思う…

Dscf8074 「そっかい!なら気をつけてね。あーっ良かったら、おっちゃんとメル友になってくんないかなァ」

「メルトモ?」coldsweats02

「えっ携帯持ってないの?」

メルトモ? ケータイ? なんだそれ?

「ケータイ…? たぶんないです…」coldsweats01

「へーっ珍しいね。まぁいいや!毎日ここ走ってるから、また会えたらいいね。いつもは退屈な道だけど楽しかったよ」

「はい!私も!」happy01

Truckdown

大きなタイヤがゆっくり動き出して、おじさんの大きなトラックが道に戻っていく。

パーン…

Greennail手を振っているとラッパみたいな大きな音がして、ビックリして手を引っ込めた。sweat01
「あ…」目に入った爪はいつの間にか薄っすら緑色…
もう時間か…ギリギリで間に合った。sweat01
いつもうっかりしそうなので、人のフリをするのが正直まだ怖い。

とにかく、人目につかないところを探さないと…人がはじけるところなんて見せたらエライ騒ぎになるだろうから。
でも、山と海の間に続く細長い街には隠れられそうなところが意外と見つからない。どうしても目の届くところにチラチラ人が見え隠れする。
どこか、いいところは─ あっ♪happy01

Nagisasea

─視線の奥に海のほうへ向かう柵のある道が目に入った。
ちょっとつかわれていない感じの…あそこへ行ってみよう─

ここが、さっきおじさんの言っていたガケ崩れのあった道らしい。
時間は、あまりないけど慎重に回りの様子を伺いながら道を進む。
海から ザーン ザーンwave と波が来て、時折飛んでくる飛沫が心地いい。
『生きている』shineってこういうなんだなぁ…

Dscf8061 私にまだ自分だけの体があった頃─
学校から帰って、いつも海へ来ていた。
波が行ったり来たりするのをずーっと見ていたり、貝殻やまあるく角の取れたガラスの欠片を拾い集めたり、浜で変な虫がピョンピョン跳ねてるのを見て逃げたり…
楽しかったなぁ…海の向こうのことを考えたりして。
今でも私は海のこっち側にいるけどね…カズくんは、この海の向こうにいるんだろうか?
いるところがわかればすぐにでも飛んで行きたいけれど、私にとって海は、まだ越えちゃいけないものな気がする。
その気持ちがどこから来るのかは、わからない…
 『…おや?』

人がいる!coldsweats01 …釣りの人かな?
まいったなぁ…時間もないし、ここまで来たら戻るわけにもいかない。脇道もなさそうなぁ…
でも変な人だなぁ。 人じゃない? もしかして幽霊?(自分も)
かえってマズイよ。sweat01秘密を見られるわけに行かないし…

Dscf7989

私が仮の体を使うことを良くない考えの霊に見られたら、きっとその方法を知りたがるだろう。
生きている人たちに何か悪いことをすると考えたらゾッとしてくる。
うーん とりあえず、見えないフリして向こうまで行こう…あっちまで行ければ。

「普通の人 私は普通の人だよーっ わたし幽霊なんか見えないよー 全然わからないよー」happy02

Goo「…こんちはー」

「…」 無視無視っgawk

「どこ行くんだべ?」

「…」 なんだ?この人despair

「見えてるんじゃないかしら?」

「…」 うっわぁーっsadsweat01

「頭にクモつけてるじゃん」

impactひーっsign03 どこsign02 どこぉっsign02sweat01  …あsweat02

「ごらんなさい!やっぱなあ!」

う…騙された…crying

「見えんフリすることないじゃないですか。別にへんなことする気ないのにヨォ…」

「いえ…あのーっ急いでいるので…」despair

「なんでじゃ?こんな人の来ない道でさ。このまま進んだって海と岩しかないっしょや」

…変な話し方。それをひょうひょうとしゃべるその人(幽霊)は話し相手が来たと喜んでいるのかもしれない。
でも、今の私にはそんな時間は… sad あーっ爪の色、濃くなってきた。sweat01こんなところで捕まってる場合じゃない!sweat01

Dscf8004

「この辺の人じゃないべ。どこから来たのかしらん?ワシが見えるんだば普通の人でねーしょ?」

「か…関係ないじゃないですかsign03私、時間ないんですsign01annoy

あせっているのと、バカにされてるような口調についイライラして怒鳴ってしまう。

「いっやぁ~あずましくないねぇ…少し話相手してくれてもいいじゃない?」

パラ パラパラパラ…

Dscf8030

岩の壁に張り巡らされた網の向こう側で小さな欠片が落ちる音がした。

「危ないよね。あまり大きな声をだしたらばぁ…」

「すいません!失礼します!」pout

Dscf8062 これ以上相手してるわけにいかない。
その人が付いてこないか心配だったけど私がスタスタ歩き出しても、ズーッとそこに座ったまま…
そのままそこにいて!お願い付いてこないで!sweat01

「今は、そっちへ行かないほうがいいだよ。もう本当に踏ん張りが効かんみたいですから」

もぉーっ何言ってるんだコイツぅ!
…とにかく今は無視して行こう。
とりあえず、こっちの都合を終えてからちょっと懲らしめてやろうかな…
annoy

「行かんといてやsign03やめておいたらばsign02

あーっうるさい!うるさい!

「ホラ見れsign03上が来たですsign03逃げれーsign03

何?何なの?…bearing

「あ…うわぁ…っ」coldsweats02sweat01sweat01

Rockfall

思わず見上げたら
こっちに向かって落ちてくる大きな岩が目に入った…

                      (つづく)

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2009年5月17日 (日)

鮮やかな地獄

Dscf8648

●へ

Dscf8661いつも元気な●は
最近、どこか弱気が見える
2年前はまだまだいけいけだったョネ!
もうあの時から10年くらいたったような●に
最近はそう思います

母は心配はしていません!(何事も経験)
あなたを信じているから
まだまだ地獄があるんだョ!

母もあなた以上に年(歳)の分、地獄を見たし
体験もしてきました。
みんな体験または経験をしているのです。
それ以上の人々もたくさんいるのです。
まだまだ●は幸福だと思うョ!
母の声を聞きたくなったらいつでもTEL下さい!…

Dscf8653

戦後並とも言われる景気の低迷。
失業率6%台も間近と言われています。
新卒者の就職内定取り消しや自宅待機。
とりあえずの就職内定率を誇る学校もその内訳には微妙な感が…

Dscf8670 『仕事があるだけましだよー』

『ボーナスでるだけマシと思わなきゃ』

『時代は変わったんだよ…』

戦いを忘れた群れが四列縦隊で進む様
うつろな目 うつろな子どもの目 うつろな芽生え
リアルと見分けの付かない敵に無制限な銃を向けてうつろに撃ちまくる。
『あっ!民間人だった』 減点…

Dscf8666 時間を縮める機械 時間を省略する機械 時間を先に進める機械
何も変わらないようでいながら人は機械の一部になって機械に奉仕してるみたいだ。

気難しい機械 気難しい自分 気難しい夢
それでも手放しがたい恍惚の桃源郷。

ショボいユートピア ダサいフロンティア マイブームなサンクチュアリ
ひとりだけの夢 ひとりだけの居場所 ひとりだけの応接間
ホラごらん…居酒屋のウリだって『隠れ家の雰囲気』だってさ。

Dscf8672人生に借りがあるのか 貸しがあるのか
手の届くものが取れないみたいで 実はてを出してもいない
心の傷だけが生きている証明のような気がして、癒えた傷の痛みさえ懐かしくて懐かしくて…ただ懐かしくて

でも案ずることはありません。
時代の良し悪しに関係なく、何時もたわわの実りを得る人もいれば、空の器をただ眺めるだけの人もいるのです。
自分も含めて、みんなキリギリスなのかアリンコなのかさえも判りません。
いくら時代が良くても世を儚みたくなる人はいたのです。
始まりから極論 そして弁解

実りは餅撒きのごとく手が届いた人のところへ
そして痛みは皆に公平に分配。
傷つけられる覚えの無い人まで平等に

Dscf8656

広い空 新緑芽吹く広大な北の台地。
北海道らしい風景の中に北海道の象徴らしくサイロと牛舎がポツーンとたたずむ。

いるはずのものは居らず 住んでいるべき人も忘却の彼方。
ただ そこに営みがあった証明だけが現代遺跡のようにそこに存在するだけ。
さても その大地の同胞(はらから)にブルーの不似合いな袋が大量に置かれてる…。

Dscf8663

『また、不法投棄か…』

Dscf8665 近頃は、ごみ排出も有料化の市町村もほとんど。
それほどに地域財政も逼迫しているわけ。でも処理費用は行政との折半(税金)です。
分別もルール化しているから指定外物の混入は回収されません。
だからといって他所の町に置くのは筋違いですよ。
でも よくもまぁ こんなところまで……?

違う…ごみじゃない
きれいにたたんだ衣類 子どものオモチャ 布団や日用品…
不要になったというよりも 手身近な荷物入れにしたような感じ。

束ねられた書簡はライフラインの支払い催促通知と供給停止勧告。
それら全てが仮にここへ置かれたのか 用を無くしたのかは計れません。

地獄 生き地獄にいた
それが自ずからはまり込んだ地獄なのか すべからず堕ちてしまったところなのか…
とりあえず逃げ出した道行の途中がここであったことには違いありません。

Dscf8664地獄と天国が絶えず交差するこの世。
まだまだ捨てたのもじゃないと…思うけれど
この有様を前にして何す術も その力さえも ましてや救う手立ても そして行方さえもわからない自分には
ただ静かに涙するほかに なにもできません。

空の財布の中に 母からのせいいっぱいの励ましが記された言伝が残されていて…

地獄と称された大地に春は芽吹き 雲が青空を流れていく
あまりにも美しい地獄絵図は 昔からそうであったように
未来にかけて地上の出来事に無関心です。
寛大に残酷に実り 癒し続けていく

春の香りは “甘く危険な香り”…なのかな

地獄から何とか抜け出せていられればね。
それだけは祈ります。

Dscf8668

救済が流行とは無縁なものであり続けますようにthink

生意気言ってすいませんsweat02

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