2008年10月24日 (金)

テントウムシ祭りと『ブキミちゃん』

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今年の秋の入り口も暑かったです。 とても…
紅葉は来るのだろうかと心配してたけど 

ちゃーんと来ましたよ。お山のほうからね。

Dscf4501 一面の緑の園が 鮮やかな赤や黄色に彩られて
こんなに視界いっぱいの暖色のなのに
寒々と感じるのはなぜだろうね。

緑好きの画家たちは
今年の絵具を使い残せないから
余した色を使い切るために秋が来る。
完成した絵画は、絵具の乾ききらないうちに
どんどん画商に運びだされ
画家は、真新しいカンバスを前に
次の春の構想を練るのだ。

そんな最中の赤い大地を北へ向かう
もう何度も通った道 地図もナビもいらない
山の「赤」に負けない熱い「赤」の牧場めざしていた。

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北海道津別町相生 道の駅から釧路市阿寒方向へ少し走ったところに
『シゲチャンランド』がある。

毎年通うようになって5年ほどだろうか。
もう すっかり顔も覚えてもらって…でもそこの住人の顔はいまだに覚えきれない。

Dscf3959 人には 誰しも『ふるさと』があって
でも 生まれ育った『ふるさと』のほかに
誰しもこころの『ふるさとも』もいくつかあるんですよ。
自分には、この『シゲチャンランド』がそうです。
同じ気持ちの人もきっとおられることでしょう。

紅葉深まる秋とは言えど 暖かい。
この季節
『シゲチャンランド』には秋の風物詩…というか名物の
『テントウムシ祭り』がある。
正直なところオジャマ虫の彼らが大挙して
ランドに集まってくるのだそうだ。

Dscf4502 『いやぁ 今日は、なぜか少ないんだよねぇ。昨日はすごかったぁ…』

気温が下がってくると 少しでも暖を求めるのか
テントウムシたちは陽で暖められた家の外壁にビッシリとくっついてくる。
ウチもそうだけど
日中は下手に家の中に出入りできない。
さもないと春を心待ちにする家族が一挙に増加するからです。

ランドは昼間の開園中、オープンドアなので一般入場者のほかに
紅葉の鮮やかさに劣等感を感じたやつらが山から降りてくるというわけ。

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「毎年ものすごいもんだから シゲもすっかり神経質になっちゃってね…」 
パ-トナーのココさん談

「うちもたくさん来ますけど、天井の隅のやつは『もういいや』って開き直ってますよ」

Dscf3997_2その数はウチと比べ物でないらしく
閉園時間の午後5時から7時まで「やつら」の掃きだしに費やすのだそうだ。
それもすごいね…
なーんにも気にしないのは ランドの住人たちだけ

秋の小春日和の空の下
ボツボツ人も訪れだして
笑い声やら 喚起の声やら 感嘆の声…
数の多さもさることながら どいつも個性が強い。

Dscf3953 訪れだした はじめの数年は
ひとつでも多く見て 写真を撮ろうと躍起になっていたけど
今は ここでゆったり身を置くようになった。
新しい顔や居場所の変わった顔を探したりなんかして…
見に行っているのやら
こっちが見られに行ってるのやら

10月末頃で『シゲチャンランド』は冬の眠りに付く
熱い牧場は白い雪に包まれて
ここの住人たちは長い休みに入る。
今年のシーズンのお客の話なんかしたりしてね。

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帰り際 ショップで、どーも気になった人形があった。

『ブキミちゃん』?

「いやぁ~ちょっと急に縫ってみたんだよね。こういうの作りそうもないって言われちゃうんだけど…フフフ」

うーん ココさん ジュエリーが専門みたいなイメージありますからねぇ…
でも この表情、ブキミというよりとぼけた感じ。

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そんなわけで 気になって仕方なかった『ブキミちゃん』
ウチの部屋でチンマリ座っています。
来年からは、里帰りもさせよう。

シゲチャンランド紹介を含むHP  『Wild Little Garden』 SevenCatさん

今回は『シゲチャンランド』で知り合った親友の『∋(◎v◎)』さんへ送ります。
ランドから離れたところで生活していますが、また元気で会えることを心待ちにしています。  (ねこん)

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2008年8月21日 (木)

あなたがここにいてほしい②

Top

この子の魂を引きずり出しちゃった…
そんなーっこんな簡単に出るなんてどうかしてるよ。
ミハルちゃんは驚くでもなく、まん丸な目でキョトン!としながら目の前の自分の体と今の自分の手を交互に見ている。

Miharu 「お姉ちゃん!」

「は…はい まいったなぁ…

「すごいことできるんだね!わたし、自分で動いたの始めて!なんだかスゴイ!」

急なことだったので泣き出すかと思ったら、嬉しそうに手をグーパーさせてジッとみている。

「そっ…そう?良かった… さて、これからどうしようか…元に戻せるのかなぁ

「ねぇ!お姉ちゃん。どうやったら歩けるの?」

「歩く?」 そうか、この子歩いたことはないんだな…

「えっと…まず、片足を上げて…いや、ちょっと待って!私が手を繫いであげるから…」

右・左・右・左…自分の足元をジッと見ながら一歩づつぎこちなく前へ出していく。なんだか赤ちゃんみたいで可愛いなぁ。

Kumo 「どう?」

「たのしいよ!すっごく!」

「良かったら、お空にも連れてってあげようか?」

「お姉ちゃん飛べるの?!」

「うん!しっかり手を繫いでてね」

海の方から来る風を見つけてサッと飛び乗った。

「わぁっ!」

先頭を競り合う風の背を次々にどんどん移ってどんどん上までいく。
私もいつのまにか、こんなことを得意げにできるようになってたんだなぁ…
ミハルちゃんは、怖いのか目をギュっとつぶってたけど、やがて上やら下やら頭をあちこちに向けて目を丸くしていた。

Sky

「すごい!すごい!お姉ちゃんって天使なの?」

Sea 「天使…? うぅん違うよ。普通の幽霊だよ…」

それから山の向こうへ行ったり、海辺に下りて遊んだり…。
うん 楽しいなぁ…このままこの子を妹ってことにして一緒に旅するのも悪くないなぁ…ミハルちゃんもその方が楽しいかもしれない。波と追いかけっこする姿を見ていたらそう思った。“お姉ちゃん”って呼ばれることが何だか嬉しく思えた。

Holga_school「お姉ちゃん?あそこは…?」

街の上を飛んでいたときグラウンドと校舎が見えて、ミハルちゃんは、私に聞いてきた。

「あれは学校だよね。今は、なんの時間かな…」

Holga_ground「そう…」 

「疲れた?」

「うん、少し…なんだか帰りたくなってきちゃった…」

調子にのって、いきなり連れまわし過ぎたかもしれない。
少し休んだら「いっしょに旅しようよ!」って言ってみようか。

さっきのところへ戻るといつのまにか奥にトラックが1台止まっている。
そーっと様子を伺うと、中で男の人が、いびきをかいて昼寝しているのが見えた。

「ここにいつも来るおじさんだよ。私をここに置いたのもそう。いつも何かを運んだり降ろしたりしてるの」

ミハルちゃんって今までずっと荷物の見張りをしてたんだろうか?かわいそうにー。
一緒に連れて行ったほうがこの子の為だよね。

「ねえ お姉ちゃん!わたしを体の中に戻して」

「えっ?」 言い出そうとしたとき、その言葉に驚いて思わず引っ込めた。

「わたしミハル。だから、ここで見張ってなきゃならないの。それが仕事だから」

「でも…ここは学校の近くじゃないよ」

「うん。そのほうが良かった…でも、わたしの体をひとりぼっちにしておけないから…」

そういってミハルちゃんは大粒の涙をポロポロ落とした。
さっき、学校を見て疲れた感じに見えたのは、寂しかったんだなぁ…
私、ミハルちゃんの気持考えていなかったか…
そうだよね─

Hacca 「はい!」 ハッカ飴を取り出してミハルちゃんに渡した。

「なぁに、これ?」

「飴だよ。不思議な気持になれるから」 私もひとつ自分の口に放り込む。

ミハルちゃんも珍しそうに包みをガサガサひねりまわしてようやく飴を出すと口に入れた。

「ホントだー何だかふしぎーっ 体の中から風が吹いてくるみたい!」

Back「ミハルちゃんの願いを叶えてあげる…」

両手をギュッと握るとミハルちゃんはニッコリ微笑む。
その笑顔に光がにじんでやがてその姿は輝く光の玉に。
そのままそっと人形の胸へ持っていくと乾いた土に水が染み込むみたいに光は中に染み込んでいった。

─ありがとう─

ううん これからだよ
心の底から無数の糸を繰り出して、回りをさまよっている『素』を絡め取る。
私の中心に集められた『素』は、やがて何かを思い出したかのように合わさりだして、更に回りの『素』もどんどん引き込みだしていく。
万物を作る『素』は、それ自体がひとつになろうとする想いを持っているから、それに私の想いも重ねて4時間だけの私の体は作られる。

「お姉ちゃんって…スゴイ!」

Henshin

Tech 「すいません!お昼寝中すいません!」

「…え?あぁっ?なんだねぇ?」

「あのーっ 私、街の小学校の方から来たのですが」

「はぁっ?先生?うち子どもは、おらんですよ…孫はいますがな。そんでなんですか?」

「あの、あそこのお人形のことなんですが」

「あ?あれ!向こうにあった学校を壊したときの雑品なんですよ。人の形してるから潰せんかったんでね。ああやって置いとります」

「そうですか…ああいうのって子どもの安全のためにも学校近くの横断歩道にいたいと思ってるんじゃないでしょうか…」

「思ってる?」

「いえっ そうじゃないかなーって

「ところで…先生様、どちらの学校ですか?」

「あーっ 街に入ってすぐ近くの空から見たらL字型の学校です…」

「へぇっ? あーっ●●ね。孫も通ってますよ。先生は何年生の受け持ちですか?」

「いえっ 私は担任じゃないんで…ところであのお人形のことなんですけど、お孫さんも通ってるってことですし、近頃はやたら飛ばす車も多いですから、ぜひ…」

「えぇまぁ…今日の受け入れが終わったら構わんですよ。帰りに置いてきますよ。」

「ありがとうございます ヤッター!

「ところで先生様、ここまでどうやって来よったんですか?」

Ashi「あーっ… もう少し先のところに置いてきたんですよ。このあたり止められそうもなかったので…

「はぁ…?」

「すいません!ちょっと急ぎますんで、よろしくお願いします!あまり手荒に扱わないように優しくお願いします。それじゃあこれで…

うっわーっヤバイヤバイ… あーっミハルちゃんクスクス笑ってるわ…
先生のフリ、難しい…
おじさんは、まだ不思議そうに私を見ていた。
ここにいる訳にもいかず、海の方へ向ってトボトボ歩いた…。

ようやく陽が落ちてきたころ 体から飛び出してミハルちゃんのところへ。
もうそこにミハルちゃんの姿はなくて、まあるい跡が残ってるだけ。

「おじさん ちゃんと運んでくれたんだね ありがとう」

暗い中で風に乗ったことはないけれど、ちゃんと街へ行けたか気になった。
夜の風は静かになることが多い。一日中競って飛び回るから疲れてしまうんだろう。
とりあえず頼りなげな風に乗って街の方へ向ってみる。

Night

街の駅前にある大きな通りでミハルちゃんは、すぐ見つかった。

「あっ お姉ちゃん!来てくれたんだ。もう行っちゃったかと思ったよ」

「ミハルちゃんがちゃんと来られたか見とどけたかったからね」

「そういえば お姉ちゃんの先生役、可笑しかったよ」

Miharu_stand 「え…やっぱり? らしくなかったかぁ…

「でも、ありがとう 嬉しかったよ。願いがかなったんだから、とっても!」

「うん!よかった!じゃあ お姉ちゃん、もう行くね」 
夜とはいえ人通りもあるから、あまりここにはいたくなかった。

「これから どこに行くの?」

「うーん…決めてないなぁ 帰る家はあるんだけど、まだその時じゃないから」
遠くから人が歩いてくるのが見えた。もう、行かなくっちゃ…

「ごめんね…」

「えーっ? なにが?」

「あの…いろいろ してもらって…」

Fright 「別にたいしたことなんかしてないよ。元気でね!ミハルちゃん」

「ありがとう! 元気でね!」

飛び乗った風の上で振り返ると─ 
ミハルちゃんのまっすぐ上げた右手は、私に向って振っているように見えた。

Miharu_town

きれいだなぁ青空 あそこまでいったんだよ
お姉ちゃんといっしょに…
わたしのお姉ちゃんと─

Youtube 「あなたがここにいてほしい」/元ちとせ

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2008年8月13日 (水)

あなたがここにいてほしい①

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「彼氏とケンカでもしたんでしょ?」

「えっ?! どうしてですか?」

「だってさ…近くに家もないし…なんだか、この辺の人っぽくないしさ。この辺じゃ人が歩ってることなんかないし、夜だったら幽霊かと思っちゃうよ。バッグも持ってないから、ケンカして彼氏の車から降りてきたんじゃないのかなーって…」

えーっ?そんなに変なのかなぁ…私、普通の人に見えない?
この服、かわいいと思ったんだけど

Scnd 

あの丘の家を出てからは、風に乗れないから、ずーっと歩いてきた。クマには会わないですんだのは良かったけど…
空の上にいるときは全然気にしてなかった道がすごく長く感じたし、慣れない体の重さも感じていたからすぐにくたびれてきた。
なんとか大きい道まで来て、車が横を走りぬけるのに怯えながら歩いていると大きなトラックが私の横にゆっくり止まって─

「どこまでいくの?港まで走るけど乗るかい?」

正直、助かったーって思った。

Hamabe

「ハハ… そうなんですよ。実は…

「心配してんじゃないの?彼氏、探してるかもよ」

「はい… いえっ!大丈夫ですよ」

Nail 「それにしても近頃の娘(こ)っていうのは、すごいねー。爪の色とか…オッちゃんの世代じゃ信じらんない色だよねぇ」

「えっ!!」

あわてて手を見た。あ…いつの間にか爪が緑色になっている!
さっき見たときは、どっちかというとピンク色だったのに!

─爪が緑色になったら体の外にでなければならない。緑が濃い茶色になったら時間切れだ─

もう、そんなに時間が経ってたんだ。ずいぶん長いこと歩いていたから…

「すいません!ここで降ろしてください!」

「あぁっ?ここで?まだ近くの街もしばらくあるよ」

「ごめんなさい!大事なこと思い出したんです!」

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プシューッ

空気が勢い良く抜ける音を出しながらトラックは大きな体をゆっくりと止めた。

「ホントに大丈夫かい?街まで、まだ5キロくらいあるよ」

「すいません!助かりました。ありがとうございます!」

バタン!

お礼もそこそこに車から飛び降りて脇道をさかのぼって走り出す。
肩越しに振り向くとまだトラックのおじさんがキョトンとした顔でこっちを見ていた。変なヤツだと思うだろうな…絶対思ってる!

お願い!早く行って!見られるわけにいかないの…
あ…さっきより爪の色が濃くなったような気がする!
まずいよ…回りを見回すと、身を隠せるようなところが見つからない。
道はまだしばらく真っ直ぐだった。

「もうダメ!ダメ!間に合わない!」
もう一度振り返ると ─あっ行った!今しかない!
中からこの体に力を込めて一気にはねのける

パー…ン

Nagisa_blast

かすかだけど 乾いた 花火みたいな音がして カラダが光の粒になって飛び散って消えていった

─さよなら さっきまでの私…─

「えぇっ?なんなのこの人?!」

「え…今の声…見られた?  トホホ…先行き悪いなぁ…

体が消えたから今はもう見えてないよね… そーっと声のした方を振り返ると…あれ?誰もいない…気のせいだった?

「この人なんだかユラユラしてるーっ!エーッなにぃ?」

Whatnow

やっぱりいる!えっどこ?私には見えない…見えるのは何事もなかったように通り過ぎていく車とか何かの看板とか…何かの工事道具置場…その横に片手を上げた黄色い服の子どものお人形くらいしか…

Dscf1583 ─お人形ー?─
そっか!このお人形が話してたんだ。そうだよね!
そんな気がして、そのお人形の方へ近づいてみた…

「あっ!こっちに来た!」

やっぱりそうだ!このお人形が話してる!
姿勢正しく片手を上げてジッと空を見ているけど、ココロは私のほうに向いてる。

「こんにちは!」

「えっ?あなた私の声が聞こえるの?」

「うん!聞えるよ!ごめんね驚かせて…」

「あなたって…人間じゃないの?」

えーっ変なこと聞かれたなぁ… でも人間…じゃないか…

Vs

「私、ナギサ 幽霊なの。あなたは?」

「わたし…ミハル 子ども達のために車を見張ってるの」

「…子ども達?ここに子どもが来るの?近くに学校は、ないみたいだけど…」

Dscf1586_2 「前はいたの…この道のもっと先で、ずっと前だけど。私も知らない昔は街もあったそうだよ。今はここで時々トラックの出入りを見てるの。車を見張るのが私の仕事だから」

見えるところには学校があったようなところには見えない。ここ以外には草原や点々とした木立、遠くに山が見えるくらいで、さっきのトラックのおじさんが言っていたとおり人が歩いていそうにないところだ。

「あなた…さっきは大人の人だったのに今は、どうして変わっちゃってるの?」

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「ヒミツ…守れる?」 (私も軽いなぁと思うけど言ってもいいよね)

「うん!」

「私、自分の体がなくなっちゃって、ずっとこんな感じだったんだけど、人間そっくりの体を作って中に入ってるの。さっきまでのがそうなんだけど、中にいられる時間が短いんだよね。ホントは小学3年生だけど…そのときからずーっと3年生だけどね」

Dscf1584 「ふーん でもいいよね 自由に動けるんだから…」

「あ…ごめん…」

「あーそういう意味じゃないの。わたし子ども達のいるところにいたかったけど、自分じゃ動けないし…だからいいなぁーって思ったの。わたし、立っているために生まれた人形だから。毎朝、お友達が『おはよう!』って言ってくれるのが嬉しかったけど…」

そっかぁ…自分のいたい所に行けなかったんだ。かわいそうだなぁ…

「私が何とかしてみようか?」

「そんなことできるの?わたしホントはすごく重いんだよ。大人の男の人でもやっとだから…。風の強い日でも倒れないように重くなってるんだけど」

自分から言い出しておいて…よわった。
そんなに重いんじゃ、もう一度体を合成しても運べないかな…さっきのおじさんも近くの街まで5キロあるって言ってたんだな…
でも、話を聞いて「さよなら」とも言えなくなっちゃったなぁ…

Hands 「とりあえず…どれだけ重いのかちょっと見させて」

へぇーっかわいい手 色白だなぁ…

あれ?なんだこれ?
あれれ?どんどん出てくるー

Doll_out 「あぁっ! わたし、どうなったの?!」

その子自身である人形は、そのまま立っていた。
私がいま手をつないだ子は…

「あ…あのーっ 私、中身を引っぱり出しちゃったみたい…

(後編へ)

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2008年1月28日 (月)

がんばれ みはるちゃん

「みはるちゃん」は、小学生だけど学校へは行きません。
学校の近くの横断歩道にいて、みんなの行きと帰りに乱暴な車がいないかどうか見張り続けているのです。

Photo

Dscf3584_2 朝も夜も 雨の日も そしてこんな雪の日も 暑い夏や凍てつく冬さえも…
そんな「みはるちゃん」にみんなは『おはよう!』と言ってくれます。
そうではない子もいましたが多くの子ども達に「みはるちゃん」は愛されていたようです。
みんなのその声に応えられないのは「みはるちゃん」の心の切ない部分でしたが、みんなの笑顔がそれを支えていました。 

みはるちゃんには、片思いの彼がいました。いつも道をはさんだ横断歩道の向こう側に同じような大事な仕事をしている「まもる君」です。
でも、みはるちゃんは、とっても恥ずかしがり屋さんなので一度も「まもる君」に話しかけられませんでした。

Dscf3589 …でした。 そう「まもる君」はどこかへ引っ越してしまったようです。
一度も想いを伝えられないまま、「みはるちゃん」の前から消えてしまいました。
悲しい出来事はそれだけではなく、今度はいつも「みはるちゃん」に声をかけてくれていた子達がもうここへは、こないことになってしまったのです。

「みはるちゃん」 学校がなくなっちゃうんだよ…
毎朝「おはよう!」「さよなら!」を言ってくれる同じ黄色の帽子を被った女の子が教えてくれました。

このあたりには、昔は家がたくさんあったのにいつのまにか数えるほどに減ってしまいました。家が減ってしまうと子ども達も減ってしまうそうです。それで学校が学校であり続けることができなくなってしまったのです。

Dscf3587 「さよなら『みはるちゃん』」
「さよなら…」 黄色い帽子の子も泣いていました。

「みはるちゃん」は泣きません。泣かないのです。
どんなことがあっても泣けないのです。
でも心の中は誰よりも悲しかったのです。

それからずーっと長い日が流れました。
すっかり広々となってしまった街の跡。誰もこない道。
相変わらず「みはるちゃん」を見てスピードを緩めていく車はありましたが、側まできて話しかけてくれる人はいません。「上げた右手もなんだかくたびれてきた…」
意味もなく立ち続けて、とても悲しくなります。

そんなある日、「みはるちゃん」の前に黄色の車が止まった。

「みはるちゃん、こんにちは!」
大人の女の人が笑顔で目の前に来ました。 『はてな?』
おや?ぼんやりとした記憶の中の黄色い帽子の女の子の笑顔とこの大人の人の顔が何だか重なってきた…。

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「みはるちゃん」は今日も元気に立っている。
真っ直ぐつきあげた右手は忘れかけた大事なものに手が届いたような気がして力が入ります。
「わたしも あんなふうに なれるかなぁ」
この間のきれいな女の人を思い出します。

たぶん きっと それは まちがいなく 叶うことでしょう
そのときは「みはるちゃん」も笑顔の素敵な女の子に生まれ変わっているはずです。
がんばりやさんのこの子なのですから…

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2007年9月29日 (土)

ブラボー!聖マッスル

 ビリーも顔面蒼白になるような筋肉質の肉体。その肉体を誇示しながらも恥ずかしさ故、噴射するような汗。
 モラリストの本心とマッスルマニアの本音がぶつかり合うブロンズ色の兄貴。

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 我、師匠によると『山上たつひこの漫画でこんなのがあったね…』
そういえば海パンひとつで蝶ネクタイ。虚ろな目をしたキャラクターがいたような気もします。
 超プレミア付き漫画古書で『聖マッスル』というのがあったそうです。

 男が花畑の中で目覚めると以前の記憶が一切無い。ふと気がつくと自分が彫刻のように完璧な筋肉の体を持っていることに気がついて、しばし自分に惚れ惚れするという始まりの話らしいです。連載当時は中途強引打ち切りの様相もあったそうですが、かなり奇想天外な話の筋らしく既に絶版の今、さらにプレミアが付き、専門店でも高額の買取をしているそうです。

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Dscf9385 さて、こちらの『聖マッスル』はドライブインの横手の池の淵にゆったりと構えていますが、手前の巨大な地域案内マップの看板に隠れて、ほとんど認識されることはありません。
 地域の人が山側へ向かうとき近道に使っている道につながる沿道なので土地の人には認識されているのでしょう。
 池にむかって放水するバルブを隠すためにかぶされていますが、管理が行き届いているともいい辛く、池に肝心の魚がいるような気がしませんでした。仲間がいるかと周囲を探しましたが、どうやら彼ひとりのようです。
 欧風、とくにローマかギリシャのイメージを作ろうとしたのかもしれませんが、付帯した施設はすでに閉鎖されてしまい。ドライブイン本体を除いては現役は彼ひとりになってしまいました。

Dscf9400  前を走る道の先はレンガ建ての工房(倉庫を改造再生したものか?)だったところでした。
そこは数年前に閉鎖されてしまい、間口を預かる案内役でもあった彼は、存在意義を無くしてしまい、結果として自分の筋肉に対してストイックなほど固執するようになったのでしょう。

 ボディビルダーのように異形のごとく肥大した筋肉ではなく、まさに美と呼ぶにふさわしい彼の体にエールを送りましょう。何かと噂の渦中になるこの街に活気をもたらすためにも…

ブラボー! マッスルでハッスル!

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2007年9月16日 (日)

ウルトラマンルイン

一度も思いませんでしたか? 
なぜウルトラマンが遠い星から地球を守るために来るのか。
それも命がけで…

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Dscf8781  小雨が降っていたためか、子どものいない公園。
ブランコや滑り台などの定番遊具が並ぶ一面の芝生の中、ウルトラマンが光臨しました。
彼の目的は少子化の時代、不審者から子どもを守るためです。
それは現在、化面ライダーも忘れてしまったヒーローの原点ですね。
 ウルトラマンサイズだと地球の平和を平和を守るのが最もふさわしいのですが、彼は基本を重視する主義のようです。ちなみにカラータイマーは、はなから壊れているのでフル在駐が可能。

 でも、この公園芝生にしては、伸び気味。しかも、あまり痛んではいないので子どもがここで遊んでいるのだろうかと心配にもなります。このウルトラマンの正体、ゲームセンターなどで見かける本体がファイバー製の100~200円を入れて遊ぶタイプの遊具。
 更に驚くのは、この一帯は農村地域の一部を宅地に分譲したようで戸数は少ない集落ですが、ほとんどの家の庭にこれらの遊具が据えられています。
 キティ・アンパンマン・ポケモン他…この公園に負けない、4~5台を所有する家もありました。それで、この幹線を通ると奇妙な感じがします。

Dscf8784  公園を取材中、通りがかった近隣のお年寄りにお聞きしました。
「確かにこの辺の家は、ほとんど持っているよ。雑品屋がユニックで運んでくるね。うちは無いけどさ…」
 おそらくは、どこかのゲームセンターかメーカーの廃棄物を仕入れた廃品業者の金属的価値の少ない商品を誰かが安価で買い付けたのが、子どものいる家用に。あるいは、斬新なガーデニング素材として集落でブームになった…そんな気がします。
 確かに近郊にそれらの業者が数件見られました。それにしても雨や陽に照らされているのに退色も始まっていないので最近、ブームになったようでした。

 これが、あまりにも広まってしまったため、各家がそれぞれ遊園地になってしまい、肝心の公園の人気が下降してしまったような気もします。

がんばれウルトラマンルイン! 
外敵には強いが守るべきものがいないと寂しいよ…

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ウルトラマンがなぜ、遠い地球までくるのか…
母星は、みんなヒーローで守るものがなかったからか…?

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2007年7月30日 (月)

ドドメ~ン!

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 いくつ分かりますか? 世代が露骨に表面化するので軽率な回答は墓穴を掘る恐れがあると思います。
 例えば『ドラえもん』や『オバケのQ太郎』をアニメ(最新版)で見ていた世代の始まりはほぼ20代ですからね。『ドラハッパー』と関係深い頃ですね?

 一番右の金髪の女性は『宇宙戦艦ヤマト』に出てくる森ユキ(だった?)さんです。
一世を風靡したアニメでしたが髪が短いうえ滅茶苦茶なので半信半疑になってきますがほぼ、間違いないでしょう。

 問題は左端と右から2番目です。これは今となるとメジャーだったのか、マイナーだったのか判断に困るところですが、劇場用アニメも公開された経緯もあることから知名度はあったのでしょう。

Dscf2706  少年サンデー誌上で連載された梅図かずお氏のギャグマンガ『まことちゃん』の主人公と彼に付く「まこと虫」です。恐怖漫画家の梅図氏はその作品歴において「ロマンスの薬(惚れ薬を手に入れた少女がその薬で騒動を起こす話)」というラブコメを描いた辺りからギャグに対する憧れが生まれてきたようです。本作はヒットには至らず、恐怖漫画に定評があることですし、経歴も長いことからギャグの創造にはぎこちなさがありました。
 後にこの「ロマンスの薬」のバリエーションとして老人が中学生に若返る薬を手に入れて学園に大騒動を巻き起こすギャグマンガでした。この中に出てくる孫が後の「まことちゃん」の原形になります。

Dscf2707  恐怖漫画家がギャグに踏み込んでみる例は以外に多く、ギャグから出発したつのだじろう氏は別として「地獄小僧」や「蔵六の奇病」などグロさの際立つ日野日出志氏の自伝とも取れる「狂人時代」は唯一といえるギャグの形は取りながらもグロから不気味さが際立ってギャグにはなりきれませんでした。

 もう一人「エコエコアザラク」で知られる古賀新一氏(ホラーシーンになると恐怖映画のカット模写をやたらと使っていた)は少年チャンピオン連載中の一時期、マンネリ化からなのか展開が急にコメディ調になった時期がありました。シビアな内容で敵には易々と死を与える黒井ミサが転じてドジを踏んでギャフンという表情は、これまた違和感の極みでした。

梅図氏は恐怖漫画では、多くの世代共通の作家で表現も常に斬新でアイディアの枯渇を知らないかのようなバイタリティには感服します。その代表作は「まだらの恐怖」「黒猫の怨霊」「怪」など多くにわたりますが、ねこんは人間の心に起因する恐怖に翻弄される人々を傍観する不思議な少女の話「おろち」が氏の恐怖に関する大きな転機になっているということで選んでみます。特に「骨」という下りのプロローグにこんな語りがありました。

骨 人はなぜ骨を忌み嫌うのか
骨は美しい
いやらしいのは、その上に着いている肉の方ではないか…

 当時、小学生ながら「これは真理だ」というような気がすごくした覚えがあります。
それが「まことちゃん」では『ドドメ~ン』とか『バサラ』とか良く分からない流行語の乱発と、この絵でギャグするのか?というのが返って恐怖を感じました。

 意外と連載は長かったんだよね『まことちゃん』
梅図漫画といえば何を読みましたか?

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2007年4月28日 (土)

頭上の苦悩

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 国道を走っていると視界に奇妙に違和感のあるものが…

ええええっ??
スパイダーマンだ!こんな北の地にまで出張とはヒーローも辛いものです。その点、ポアトリンみたいなヒロインは、ご町内の平和を守るのだからストレスが少なく健康的ですね。

 なんでもスパイダーマンは始めに日本に来たときはバブルのあおりのためか巨大ロボットも持っていたようですが散財して本国に帰ってからは、また身ひとつの存在になってしまったようです。

 映画に出演するようになってからもギャラが安いのかキャンペーンにも自ら出なければならないようです。この日はオフなのにバイトでイルミネーション照明の取り付けをしていました。

Dscf2096  この時はまだ3月の北海道。この寒いのにヒーローもつらいものです。
せめてもの救いなのは、ここにはオクトマンもグリーンゴブリンもこないことですね。
この場所はガーデンエクスステリア関連のお店。国道側の壁とはいえ、お店の正面からは全く気付かれないこの場所、既存のヒーローと比べても彼は明らかに人間くさく、私たちに近いところにいるヒーローです。

…今回はえらく脱線。

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