2009年12月 8日 (火)

Open your mind

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郊外とはいえ、舗装路面もあらゆる方向に縦横無尽に伸びて、こんな人通りの少ないところにさえ縄張りを広げてた。
あたりには、まだ点々と家が並んでて、人の住む気配もあるけれど、どこか乾いた感じが拭えない。
元々このあたりにも、ちょっとした店が数件は並んでいただろうけれど、今は寂しさに耐えられなくて自然と集まった家の集会場のように思える。
そんな萎縮した空気の中、妙にオープンな家がそこに…

Dscf4681 明らかに長いこと人が住んでいる風ではなくて、ただ玄関も窓も開け放たれていた。
開け放たれたというよりも窓も玄関の引き戸も外されているみたい…
しかし、入ってくれと言わんばかりなのです。
これが『廃墟マニア捕獲用の罠』ならいかにもですね。
それ以前に廃屋と思って覗いたら、中で家主がお茶を飲んでいる場と鉢合わせ…というのはいただけません。。。

少し傾き掛けた木造の民家で、屋敷回りは木やら雑草やらが伸び放題。
家に通じる畑に挟まれた道も畑と区別が付かないような踏み固めた土で、轍の間の雑草も車の底を擦るくらい伸びている。
トタンの屋根も元の色が分からないくらい赤錆にまみれているから、どう見ても人の手を離れて熟成が進んだ建築物にしか見えない。

あれを撮りに行こうと思い立ち週末の初冬の朝、行ってみると煙突からモウモウと煙が上がってた。。。

「おかしいなぁ。。。夜も光は漏れていなかったのに。。。」coldsweats01

Dscf4685 どうやらよほど厚いカーテンを引いていたようだ。
それよりも何よりも人様の暮らす家を廃屋と思い込んだ自分も情けない。

冒頭の家は、歩道から覗いてみる限り、人は住んでいないようだった。
年季は入っているけど、大きな歪みは出ていないので、直して住もうと思えば、まだ充分住めそう。

図書館で骨董関連のコーナーとかを見ると、古民家再生に関する本があったりして『こういう住み方もあるんだーっ』と思った。そういう静かなブームがあるらしい。
行きなれた廃屋でそういう人を見かけることもある。
近所にその類の業者もいて、数年前まで草木に埋もれていた家が古いアルバムから切り抜いてきたみたいに再生されたのを見ると、使える材料が制限されている分、スゴイ仕事だと思います。

Dscf4684 廃好きといってもそういうのもキライじゃない。
取り残された家が自らに幕を下ろすかのように徐々に崩れ落ちていくのは、やはり感傷的にならずにはいられない。
感傷的でもあるけれど、何も考えない『無』な状態になってしまう。
普段生きている世界の喧騒とは縁の無い部屋。
しかし、そんな部屋にも団らんや、まどろみや、いつまで経っても終わらない兄弟ゲンカなんかもあったはずで、そういう名残を探してしまう。

ここへ何しに来たのだろう…
何を探しに? 何を求めて?

それは、そう!
たぶんね…そのうち見つかるでしょう。

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あらゆるものが手に入りやすい世の中だけど、手に入りにくいものもある。
『金で買えないものなんて、この世の中あるのかよ!』と誰かが言ってました。

買えないものは無いのかもしれないけれど、そのお金をいくら積んでも取り戻せないものが、それはもう数え切れないくらいにあるのです。

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2009年10月22日 (木)

遠ざかる空

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逃げるみたいに遠ざかる空
見透かしたように流れていく雲
山は白い余暇を前にして1年かけて用意した衣装を競い合う
この景色をどれほど見たことでしょう
その何度かは 旅立っていった“あなた”と見上げたものです

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あなたが初めてここに来た日
まだ、見ることを困っていたような眼差し
捉えるものを捉えきれない小さな手
そんなあなたを迎え、思わず声にならない歓喜の声を上げてしまったものです
聞こえたはずもありませんが…

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あなたが その足を自在に使うようになり
今日のような空や山を見上げた日
その目に映ったものを言葉にできなくてカリカリしていたこと
近くの川の水が留まることなく流れていくのをただジッと見下ろしていたこと
そんな様子をこの窓から見つめていたものでしたが
その時と同じ景色がここから見て、つい思い出してしまいました。

Dscf3336 柱の線がその間を広げ始めて
塊のひとつに過ぎなかった私のところへあなたが来ました。
私があなたのものになった日
それもつかの間、夜の帳(とばり)が下りる頃には、母の元へ
私があなたの夜をいさめるには まだ器が相応ではなかったのでしょうか。

夜の寂しさより、心の平安を愛すようになって
あなたと過ごす時が増えた始めた日
たくさんの写真が壁を覆いました。
あなたは写真をながめていただけかも知れないけれど
私自身が見つめられているような不思議な気分になりました。

Dscf3338 あなたの伸ばす手がずっと近づいてきた日
喜び 悲しみ 迷い 嗚咽 静寂 怒り 憂鬱 後悔 妬み…
人には見せないあなたの秘密を共有しました。
それをあなたが望んだのかは計れませんでした。

そして唐突な あまりにも唐突な別れの日
あなた自身も思いもしなかったような…
あの時も空は今のように遠ざかり
雲も何かを見透かしていた…。

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Dscf3340 今もあなたは、この遠ざかる空に思うことがあるでしょうか
見透かした雲を見上げるのでしょうか
山は今日も忙しく衣装替です。

いつか いつの日か
この身があるうちにひと目あなたに会えるなら
私を懐かしく訪ねてくれることがあったなら
とても嬉しく思います。

何も語らず、単に包み続けた私。
小さな一間ながら、あなたの城であれたことだけが誇りでした。
それが「一間の部屋」としての私の想い出…。

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あと何度、この景色を見ていられるだろうか─

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2009年7月26日 (日)

みっつめの朝

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始めの朝は 生れたてきた日、最初の朝
次の朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝は…

「今日、泊ってくの?峠は大雪らしいよ」

「えぇっ?!」coldsweats02

Dscf0415 GWの最終日、これから200㎞以上の距離を家まで戻らなければならないというときに友人から驚くことを聞いた。この季節、大雪といっても北海道では、驚くほどのことではない。
自分が通る用事がなければ…
でも、数日前は夏日に近い日もあったことだから、そんなことあるはずないと思っていた。

行きの峠道は緑も芽吹き始め、春の小花もあちこちで見えていた。サクラはまだ峠を越えてはいなかったけど。
だから、とっくに夏タイヤ。ほとんどの人がそうだったと思う。
天気予報で峠が雪といってもチラつくくらいだったし。

「明日、仕事あるから、とりあえず行ってみる。どの程度の雪か解らないし…」

Dscf0416 とりあえず友人と別れて帰途につく。
峠のある町まで、普通に春の夜道。
真冬の大雪と春先の大雪は感覚的にも違いもあるから、降っても数センチかなぁ…でも峠に入ると路面凍結…?

最高点標高1,023mの峠は、急勾配と急カーブの連続で、樹海と高い岩山に囲まれている。それでも重要産業道路であることから末端両町の合意で村道として開通した道は昼夜を問わず通行車が多い。
夏場は霧に悩まされ、冬は、その交通量から圧雪・アイスバーンになりやすく重大交通事Dscf0477 故も多発。近年は、高速道の開通部分が延長されて険しい部分は回避できるようになって、交通量が激減した。
それでも道東への流通を担った道には違いなく、今でも流通のトラックは覆道と長いトンネルの連続する道をグングン登っていく。

峠の町まで近づくと、話の通り路肩に季節外れの雪が目立ち始めてきた。それでも路面は乾いている。

「もしかして行けそう?」

Dscf0474 やがて、進むほどに積雪量はどんどん増えて、峠手前の市街地は、お祭りでもあるのかというほどトラックや乗用車でごった返していた。
峠は荒天のため一時封鎖されており、越えるのは不可能。
少し戻ったところからもうひとつの峠に迂回する道も積雪が及んでいるため冬タイヤかタイヤチェーン装備の車両でなければ無理らしい。
海沿いから遠回りする道もあったけれど、そっちへ回る気にはならない。
「明日、峠が開くまで待つしかないなぁ…どうせ待つなら札幌で待てば良かった…」
そう思うほどに峠の町の夜は早く、すでに全ての店は閉まっている。
その頃は、まだコンビニや道の駅ができる前で、物産館駐車場からあふれた車は、国道の両側に路上駐車。
歩道に乗り上げたり、私有地に入り込んだり、エンジンかけっぱなしで地域住民とトラブルになっている様子あった。

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「この辺じゃ待てないなぁ…」

喧騒の市街地を離れ、暗い道を引き返す。
路面に溜まるシャーベット状の雪の上、時折タイヤが空転しているような気がした。
夜というのはこんなに暗いものなんだと思い返すほど暗い道だった。

街からほどほど外れたところにポッカリとドライブインらしきところが見えてくる。
少しでも峠近くで待機!と言わんばかりに集まった車両は、ここにおらず、大型トラックが数台だけ…

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「とりあえず、ここにしよう…」think

Dscf0425 春の重たい雪が積もるパーキングに車を滑り込ませて、外灯近くのなるべく明るいところに駐車。
エンジンを切ると5月だというのにミルミル車内の温度が冷えてくるのが分かった…タンクの残量を考えるとエンジンをかけっぱなしというわけには、いかないし…。
とりあえず荷物からパーカーやらシャツを引っぱり出して着ぶくれに着込んでみる。気が付くとウインドーは内側から曇りだしていた。

「なんだか情けなくなってきたな…」sweat02

少し、窓を開けると遠くからチョロチョロと水が滴る音がする。

「?」

明かりの中ぼんやりと浮ぶキャンプ場の洗い場みたいなところのひとつが蛇口を開けたままで、下のバケツに水を溢れさせ続けている。たぶん凍結防止のためかな? まだこの辺りはそんなに冷え込むんだろうか…?

Dscf0424 この辺りのドライブインは、「ミツバチ族」とか「ブンブン族」と呼ばれてた道内2輪旅行者が利用する素泊まり宿が多い。
ドライブイン兼なので食事も可能。脇の大きなプレハブ小屋が宿で、洗い場みたいなところも泊り客用のものらしい。
5月では、まだ気の早い旅人はいないらしく宿泊棟に明かりは点っておらず、オートバイも見当たらない。

にわかにドライブイン正面から人が出てきた。
やおら空を仰いでいたその人がこっちを見たかと思ったら、そのままこっちに向かって歩いてくるじゃないか。

Dscf0423 「うわ~ッヤだなぁ…私有地だから出てけ!って言われそうだな…」despair

そばまで来たその人は、こっちが車の中にいるのを覗き込んで、

「どしたの?こんなところで…」

「いえ…峠が通行止めなんで…」despair

「あ~っやっぱり通行止めなったかい!こんな時にこんだけ降ることなんか滅多にないんだけどね」

「はあ…」 早く行っちゃってくれないかな…catface

「ここで夜明かししたらシバレる(凍る)よ。まだ霜も降りるし」

「えぇ…でも、行けるところもないですし…」

「裏、開けてあげるから寝てきな!布団はあるから!」

「いや…でも…」coldsweats01

「お金は、いいから泊ってきな!こんなとこいたら凍死するわ!」

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半ば不安に苛まれながらも強制的に案内される。
鍵を盗りに行ったご主人は、奥のプレハブの中へ案内してくれた。
決して明るいとは言えない照明を点けると両側にドアがいくつか並んでいる。
そのひとつに入ると、どこも相部屋らしく布団が数組並んでいた。
ご主人はポータブルストーブに火を入れながら

「夏休み頃だとライダーでいっぱいなんだけどね。まだちょっと早いんだ」

「なるほど…」coldsweats01

「好きなとこで寝ていいよ。寝る前に火だけは消しといてね」

「はい…ありがとうございます」coldsweats01

「ご飯、食べたの?」

「いえ!大丈夫です!」coldsweats01

「そっかい。じゃあゆっくり休んでや」

Dscf0430 話もそこそこにご主人は引き上げて行った。いつもあるのかな?こういうこと…

ゆっくりと温まる部屋の中。
古い雑誌や文庫本がたくさん積まれている他には、ポータブルテレビがひとつ。
宿というより工事現場の仮宿舎みたい。
でも車内泊が思わず布団でノビノビ眠れることになった。しかもタダで。
布団は冷たかったけれど心地よい眠りに付くには充分だった。

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「すいませーん…すいませーん…?」gawk

翌朝、ドライブインへお礼だけでも言っておこうと寄ったが、いくら呼べども返事はない。

「出かけてるのかな?」gawk

Dscf0433_2 前日とは打って変わって早朝から温かい春の空。
陽射で融けた雪の雨だれのような音で目が覚めたほど。
駐車場も道もほとんど乾いてきている。
相変らずご主人のいる様子が無いので今度来たときに礼をしようと出発することにした…
建物の壁に「素泊まり1500円」とある。
峠は路肩に雪が積もっていたけれど路面は、すっかり乾いてコントラストが際立っている。
結局、この日、仕事は休んだ。

それから程なく国道は新路線の完成により、このドライブイン前を走る車は激減した。
そのうち…と思っていた自分でさえ、再び訪れたのは何年後になったのだろうか。

長雨がようやくあがった朝 ようやく訪れる。時間は経ちすぎていた。
たった一夜の思い出だけど、この変わりように寂しい。
あの後、ここで何があったんだろうか。
屋根板の剥がれ落ちた屋内でとっくにあがった雨は、まだ降り続いていた。

新しい道は、かくも残酷な結果をもたらすのだろうか…。
いくら「廃墟好き」と言ったって「廃墟」になって欲しくないものもあるよね…。あるんだよ。

はじめの朝は 生まれた日、最初の朝
つぎの朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝─ それは 大事な何かが一緒に来なかった朝

Dscf0447 朝は、いつもやってくる。一日をリセットするみたいに。
ある意味、過去への訣別として。
爽やかな朝を繰り返して、時は積み重なっていく。
友達は親の都合で引っ越して 子どもは遠くに巣立ち 親は加速して年老いていく…
歯が抜けていくように不安になって、何かを悟ったようにぼんやりした答が波のように打ち寄せる。
時の重さに気がついて 朝が来ないように祈ったとしても、それは私的な我儘(わがまま)にすぎない。
人の心は、まだまだ繊細です。他の生き物達に比べると。
皇帝も独裁者も神々の名の下にある人も…終わりがあるのは自然の中の約束事。
そんな静かで無関心な朝の訪れは、時として残酷なものかもしれません。

でも朝には悪意も差別も中傷もない…朝ってそういうものでしょう? そうだよね。
無意味に迎えた朝はあっても 無意味に明けた朝などないのだから。

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あの 朝日の後で また会いましょう。

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2009年5月17日 (日)

鮮やかな地獄

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●へ

Dscf8661いつも元気な●は
最近、どこか弱気が見える
2年前はまだまだいけいけだったョネ!
もうあの時から10年くらいたったような●に
最近はそう思います

母は心配はしていません!(何事も経験)
あなたを信じているから
まだまだ地獄があるんだョ!

母もあなた以上に年(歳)の分、地獄を見たし
体験もしてきました。
みんな体験または経験をしているのです。
それ以上の人々もたくさんいるのです。
まだまだ●は幸福だと思うョ!
母の声を聞きたくなったらいつでもTEL下さい!…

Dscf8653

戦後並とも言われる景気の低迷。
失業率6%台も間近と言われています。
新卒者の就職内定取り消しや自宅待機。
とりあえずの就職内定率を誇る学校もその内訳には微妙な感が…

Dscf8670 『仕事があるだけましだよー』

『ボーナスでるだけマシと思わなきゃ』

『時代は変わったんだよ…』

戦いを忘れた群れが四列縦隊で進む様
うつろな目 うつろな子どもの目 うつろな芽生え
リアルと見分けの付かない敵に無制限な銃を向けてうつろに撃ちまくる。
『あっ!民間人だった』 減点…

Dscf8666 時間を縮める機械 時間を省略する機械 時間を先に進める機械
何も変わらないようでいながら人は機械の一部になって機械に奉仕してるみたいだ。

気難しい機械 気難しい自分 気難しい夢
それでも手放しがたい恍惚の桃源郷。

ショボいユートピア ダサいフロンティア マイブームなサンクチュアリ
ひとりだけの夢 ひとりだけの居場所 ひとりだけの応接間
ホラごらん…居酒屋のウリだって『隠れ家の雰囲気』だってさ。

Dscf8672人生に借りがあるのか 貸しがあるのか
手の届くものが取れないみたいで 実はてを出してもいない
心の傷だけが生きている証明のような気がして、癒えた傷の痛みさえ懐かしくて懐かしくて…ただ懐かしくて

でも案ずることはありません。
時代の良し悪しに関係なく、何時もたわわの実りを得る人もいれば、空の器をただ眺めるだけの人もいるのです。
自分も含めて、みんなキリギリスなのかアリンコなのかさえも判りません。
いくら時代が良くても世を儚みたくなる人はいたのです。
始まりから極論 そして弁解

実りは餅撒きのごとく手が届いた人のところへ
そして痛みは皆に公平に分配。
傷つけられる覚えの無い人まで平等に

Dscf8656

広い空 新緑芽吹く広大な北の台地。
北海道らしい風景の中に北海道の象徴らしくサイロと牛舎がポツーンとたたずむ。

いるはずのものは居らず 住んでいるべき人も忘却の彼方。
ただ そこに営みがあった証明だけが現代遺跡のようにそこに存在するだけ。
さても その大地の同胞(はらから)にブルーの不似合いな袋が大量に置かれてる…。

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『また、不法投棄か…』

Dscf8665 近頃は、ごみ排出も有料化の市町村もほとんど。
それほどに地域財政も逼迫しているわけ。でも処理費用は行政との折半(税金)です。
分別もルール化しているから指定外物の混入は回収されません。
だからといって他所の町に置くのは筋違いですよ。
でも よくもまぁ こんなところまで……?

違う…ごみじゃない
きれいにたたんだ衣類 子どものオモチャ 布団や日用品…
不要になったというよりも 手身近な荷物入れにしたような感じ。

束ねられた書簡はライフラインの支払い催促通知と供給停止勧告。
それら全てが仮にここへ置かれたのか 用を無くしたのかは計れません。

地獄 生き地獄にいた
それが自ずからはまり込んだ地獄なのか すべからず堕ちてしまったところなのか…
とりあえず逃げ出した道行の途中がここであったことには違いありません。

Dscf8664地獄と天国が絶えず交差するこの世。
まだまだ捨てたのもじゃないと…思うけれど
この有様を前にして何す術も その力さえも ましてや救う手立ても そして行方さえもわからない自分には
ただ静かに涙するほかに なにもできません。

空の財布の中に 母からのせいいっぱいの励ましが記された言伝が残されていて…

地獄と称された大地に春は芽吹き 雲が青空を流れていく
あまりにも美しい地獄絵図は 昔からそうであったように
未来にかけて地上の出来事に無関心です。
寛大に残酷に実り 癒し続けていく

春の香りは “甘く危険な香り”…なのかな

地獄から何とか抜け出せていられればね。
それだけは祈ります。

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救済が流行とは無縁なものであり続けますようにthink

生意気言ってすいませんsweat02

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2009年5月12日 (火)

ひとりじゃないの

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私はナギサ 風に乗って青空を旅する幽霊。
どうにもこの辺りはイジワルな風が多いのか海に行こうとしているのになかなかたどり着けない。
昨日なんか高いところから海が見えていたのに風に引き戻されて、また山の方へ戻ってしまった。

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「ホントにもぉー」

「何を怒ってるんだい?」

Dscf9180_2 家が話しかけてきた。
あちこち痛んで、骨ばかりになった屋根から白々と明けて空が見えている。
風は昨日と同じで山の方に向かって吹いているようなので、また足止めかと思ってうんざりする…

昨日も数え切れないくらい風を乗り換えたけれど、進んでいるような、いないような…
必死(幽霊だけど)になっても仕方がないので、この家に夕べから泊まっていた。
幽霊といっても私もやっぱり人だから、夜は何かにぶつかるのが怖くて飛ばないし、屋根のあるところで休みたい。
もちろん、生きてる人のいるところには行けないし、崩れているとか汚れているとか…そういうのは幽霊の私に関係ない。

「風が…言うこと聞いてくれないんです。海に行きたいんだけど…」

「海?そこのテレビで見たことがあったなぁ。わしも行ったことはないけどね…でも今ごろは、南からくる温かい風が多いから風に言うこと聞かせるのは難しいだろうね。故郷を目指す鮭みたいなもんだわ」

「そうですか…やっぱり。もう少し明るくなったら、海の方へ向かう車に乗せてもらおうと思うんですけど…海に向かう車って、この前の道、通りますか?」

「うーむ…車のことまでは分からないな…でも南の方から、この辺とは香りの違う車が通るから左の方へ向かう車なら行くんじゃなかろうかね」

「はい、そうしてみます…」

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南の風が穴の開いた屋根から吹き込んできて私をからかうように剥がれかかった屋根の鉄板をカラカラ鳴らしている。

Dscf9195 「こんなになっちゃって屋根…痛くないですか?」

「いや…別になんともないさな。冬の北風が悪さして…わしも歳だから、やられ放題だよ。それでもご主人が帰ってくるまではなぁ…」

「ええっ?」coldsweats02

屋根にこんな大穴が開いて部屋の中に木も生えてきてるのに家の人が帰ってくるんだろうか?
もし、そうでもこの有様を見たら、たぶん入りもしないで帰ってしまうと思うけど…

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「そうとも!だからストーブもテレビもちゃーんと置いていってる。ここの子の大事なオモチャもな。だから家族が帰ってくる日までわしは、ここから消えるわけにはいかないよ」

Dscf9177 「…その日からどのくらい経つんですか?」

「もう40年近くなるかなぁ…」

「えぇっ40年sign03coldsweats02

それって私が生きていた頃どころか、私を生んだママさえ生まれていたかどうかってほど昔じゃない…

Dscf9175「帰って…くるんですか…?」

「そうさな!出発の日、わらしっ子は泣いて嫌がったが、父親の『すぐ帰ってこられるから!』の言葉についていったのさ。わしもそう思っている」

「でも…40年って…」coldsweats02

「何が?」

「いえ…別に…」coldsweats01

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Dscf9201こういうところに来るのはカメラを持ってる人くらいなんだろうけど…
もう、ここに住んでいた人は帰ってこないと思う。その子も今じゃすっかり大人なんだろうし、この家のことも覚えていないのかも…。
でも、お家に時間は関係ないんだろうな…少なくともこのお家は。

Dscf9196たぶん、お家は捨てられちゃったんだろう。
始めはそういうつもりじゃなかったんだろうけど、事情があって引っ越したんだと思う。
私の家の隣に越してきたカズくん一家がそうだったみたいに…

私もカズ君に忘れられるのかな…このお家みたいに。
そう考えるとウルウルしてきた…体のない私。幽霊のわたし…

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「おやおや?どうしたのかな?何があったか知らないが…」

「いいえ!なんでもないです。私のお家のこと思い出して」

Dscf9200 私のいた家もあの嵐の夜、屋根に大きな穴が開いて陽の光が入ってきた。
自分が、死んじゃって幽霊になったと気がついてから、明るいところに出ると蒸発しちゃうと思ったから太陽が怖かったなぁ…それで気がついたら何年も経ってた。
屋根が壊れなかったら、まだずっと家にいたのかもしれないね。

どうしてるかなぁ…私の家。「行っておいで」と送り出してくれたけど心配になってきた。
あれからどれくらい経ったんだろう…

「まあ、あせっても仕方ないさ。のんびりやんなさい。風もいつかは言うことをきくものさ」

「はい!そうですね」

陽が昇ってきたようで、部屋の中にも光が射しこみはじめてきた。

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Dscf9187 「あれ…あれは…」

押入れの中にひときわ眩い光が射しこんで、きれいな女の人の顔が浮かんできた。

「ああ…あれは『白雪姫』だよ」

「白雪姫って…あれはお話のひとじゃ…」

「ワシにはよく分からないが家の者は、そう言っていたな」

白雪姫ってホントにいた人だったの?
でもホントに美しい人…お話のことじゃなくてホントにいたかもしれない。

「その白雪姫がいるからワシもひとりじゃないって思えたのさ。いつも慰めてくれているよ…」

ゴーッ…

前の道を大きなトラックが走り抜けて行った。
朝がようやく動き始めたようだね…私もそろそろ行こう。
風は…穏やかな朝だけど、風はまだ気むずかしいらしい。

Dscf9208 「一晩お世話になりました。私、もう行くことにします」

「そうかい…ひさしぶりに楽しい夜だったよ」

「ちょっと…ここで着替えていっていいですか?」

「別にかまわないよ。なんなら目をつぶっていようか?」

「かまわないです…でも見たことは秘密にしてください」

「はい、わかりましたよ…」

Dscf9194

「ほお…こいつはたまげたな…」

「私の特技なんです。短い時間しか持たないんですけど…ホントにナイショですよ」wink

「もちろん!約束だからね…あんたもどこかのお姫様みたいだな」

「いいえーっ言いすぎですよ。coldsweats01それじゃさよなら。お元気で…」

「はい、さようなら。元気でね」

家の前のササをかき分けて表に出た。
足にササが絡まって進み辛い。こういう時は、体を持つというのも面倒なことだと思う。

Dscf9172

家のすぐ前に横たわる道の脇に立ってこっちに向かってくる車を待った。
たしか…向こうにいく車に乗せてもらえば海の方へ行けるんだ。
前にこうして道端で走ってくる車をジーッと見つめていたら乗せてくれたことがあったから、またそうしてみよう…あ…来た来た…

Dscf1617プシーッ…
大きなトラックが止まって、ずっと上の方にある車の窓から男の人の顔が覗いた。

「どうしたの?ヒッチハイクかい?」

「あの…海まで行きますか?」

「海?…まあ海沿いには行くよ」

「お願いします!」happy01

Dscf1660_2 乗り込んで両手で大きなドアを バンッsign03 と閉めるとトラックは、ゆっくり動き始めた。
このところ、仮の体も使っていなかったのでちょっとくたびれる。
軽くため息をついて外を見ると窓のところの鏡にさっきの家が写ってどんどん小さくなっていくのが見えた。

「旅行してる人?」

「え…はい!ずっと、ひとり旅してます」

「ふーん…それにしちゃ身軽だね」

「はい!風に乗れちゃうくらいですから…」

「ええっ?面白いこと言うね。ハハハ…」

Dscf1659

男の人は、大きなハンドルを握りながら笑ってた。
そりゃあ、そうだよね。

もうすぐだ、海…海。

Youtube 「ひとりじゃないの」天地真理

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2008年12月27日 (土)

廃墟の歩き方Ⅱ『ウォーホルの家』

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「えーっsign02やっぱりぃsign03

車が、急に減速したと思ったらUターン。
今、通り過ぎたばかりの脇道へと入っていった…。

Dscf9092 そうだ…そうだったんだよ。 そう思って然り!sad
札幌一泊で楽しませてもらったんだから、こういうのも「有り」か…
そういう話は、してなかったから今回は、ないものだと安心してたのに…

行きは高速に乗ったのに、帰りは違う道。
出発した時間も早かったからどこかへ寄るもんだと思ってたら、なんと『廃墟』かい。好きだなぁ…sweat02
今日知り合ったばかりの相手に、こんなところに連れてこられたら完璧に犯罪の前兆だよ…

入り込んだ道は舗装になっているけど、背の高い雑草が多い尽くさんばかりに倒れこんで、車のボディをパラパラと叩いていく…
私の不安をよそに気分上々の運転手。
少し奥に入ったところの脇にプレハブのような小屋が建った広い場所を見つけて停まる。
その小屋は、場所に不似合いなバスの待合室かと思ったら、中に地蔵のようなものが見えた。shock

Dscf9093

「ちょっと行ってくるから、待ってる? 15分…30分くらいかなぁ」

ち…ちょっと待ってよ…sweat01
ホラー映画とかの設定だと、こういう場所にひとり残されると、必ず恐ろしい目に遭うんだ。いきなり最初の犠牲者とか…
そんな場所ではないと分かっていても頭に妄想は、湧き上がってくる…

行くsign03一緒に行くよsign01

「ホント?じゃあ、行こう!」

なにやら嬉しそうに笑った。

Dscf9086 そそくさとトランクルームから、旅行中積みっぱなしだったバッグを降ろして用意を始めた。三脚だのカメラバッグだの手袋だの…
用意周到だ… これは、絶対確信犯。

車で、今上がってきた道を歩いて降りていくと、雑草に埋め尽くされた二階建ての家が見えてきた。
庭が、この雑草の山だと人がいなくなってずいぶん経つだろう。
Dscf9006 雑草の繁殖力はすごい。
舗装面を割ってニョキニョキ伸びている。
私どころか前で家を見上げる彼の背丈さえもすでに越えていた。
もし、この藪の向こうに誰かがジッと潜んでいてもたぶん分からない。

こんなとこ、幽霊屋敷に見えてもイキな郊外レストランなんかには絶対見えない。
いったいこういうところの何に惹かれるんだろう。
部屋で『廃墟』の写真集を見つけてパラパラながめたりしたけど、
その魅力と言うか、傾倒するものがあるかどうかは、私には全然わからない。

Dscf9075

それにしても大きな家だな。
うちの近所でこれほど大きい家の主だと、それなりの会社の部長クラス以上だろう。
こんな郊外だと、土地の予算が安く済む分、家にお金をかけられるのか…

Dscf9126 「ここから入ろう」

コイツは雑草を踏み分けて入っていった。
まいったなぁ…それでもジーンズだっただけましか。
それならそうと始めから言ってくれればいいのに…
もっとも始めから知っていたら、準備以前に文句を言うが…
それが分かってるから、行き当たりばったりみたいなマネもするんだろうな。

「そこで待つのー?」

「いやsign01行くってsign03angry

草とか、そのへんのものに触らないように踏み分け道へ入っていくと
彼はもう玄関口にいて中の写真を撮っていた。

「開いてたの?」

「うん!開いてた!」

映画の中で一見誰も住んでいないような容易に入れる家は、曲者なんだ。
絶対何かの罠があって、そこにノコノコ入っていく若者は、人の皮を被ったサイコな男の手によって、たちどころに犠牲者になる。shock
それは無いにしても、コイツの部屋で読んだ廃墟のなんたらいうタイトルの本にも書いてあった─

「廃墟と言えども許可なく立ち入ることは不法侵入にあたることがある」

だからといって、いまさら後戻りもできない。
クモの巣とかがないか確かめながらついていった。

Dscf9043

「うわーっ広いっ!」

玄関と言うより、ひとつの部屋だね。
50人分の靴くらい悠々並びそうだ…
ここだけでも私の部屋の半分以上の広さがあるよ。

Dscf9041 「ほら!この光と闇のコントラスト。良い感じと思わない?」

手前の階段が上の階から差し込む光で輝いている。
奥の居間らしいところは薄暗くて、天井から板というか布切れみたいなものがたくさん垂れ下がっていた。これは、夜見たら明らかに幽霊に見える。

いうなれば“失意の中”から見いだした希望というのかなぁ…
あれ、なに共感してんだろー私…coldsweats01

Dscf9034

ガサガサガサーッ

Dscf9052_2うわっ!うわうわうわーっ!coldsweats02

「何かいる!何かーっ!もう嫌だーっ!」happy02

後の部屋からスゴイ音がした!
彼も驚いたようだが、意外と冷静に部屋の様子を伺う。

「ちょっとーッやめなよー。もう行こう!」sad

Dscf9051 「シーッ…」

部屋の中は、ダンボールやら襖の戸やら何かの置物が雑然と積まれていて中に入れる感じではない。

「たぶん、犬か猫だよ」

犬や猫が玄関の戸を開けて入るわけないじゃん…
それに、猫ならまだしも犬だったらヤバイよ!

「追い詰めたりしなけりゃ大丈夫」

「えーっなんでわかるのさ?」angry

「冬に入ったところで、大っきいタヌキと鉢合わせになった時はさすがにビビッたことがあるなぁ…野生のタヌキ見たの始めてだったし…」

「もし噛まれたら狂犬病とかエキノコックスになるかもしれないよ」coldsweats01

「いや!エキノコックスは噛まれてうつるわけじゃないと思うな。狂犬病だって今の日本にはないらしいよ」

それにしたって噛まれりゃ痛いじゃないさ…。
私の重大な問題は、コイツにはさしたる問題ではないらしく乾いたシャッター音を響かせながら2階へ上がっていった。

Dscf9050

「ちょっとー!黙って行かないでよ!」wobbly

さっきの部屋から
またガサッという音がした─

Dscf9071_2  「おーっ!こいつはすごいな…来てごらん」

「なに?」catface

窓の上の壁にビッシリ何かが並んでる。
タバコの箱─?
部屋は引っ越したあとみたいにゴミひとつなく、きれいに片付いていて
そこの壁だけが異彩を放っていた。

「アンディ・ウオーホルって知ってる?」

「いや…」gawk

「マリリン・モンローとかエルビス・プレスリーの色使いが大胆なのとか、スープの缶やコーラのビンをたくさん並べたポスターを描いた人だよ。描いたって言うかシルクスクリーンっていう版画の一種なんだよ。それと感じが似てるなぁ…ウォーホルって人間的であるより人工的で感情のないような造形をしていたんだよ。始めはそうではなかったようだけど、コマーシャリズム的な社会情勢の中で広告の仕事をしていて、画家の個性の入らないような表現になっていったんだよ

「…よくわかんない」coldsweats01

「ユニクロのプリントTで缶の絵の持ってたっしょ。あれ!あの絵を描いた人」

「あ…あぁ!あれね!思い出した!このタバコもそうなの?」happy01

「いや!これは違うけどさ。整然と並べてるイメージがこんな感じだなって…」

Dscf9067

なんだ良くわかんない話…
しかし、大きい家だけあって2階も広いなぁ。
こんな立派な家、朽ちるままにして…
ここに着くまでの間、コンビニどころかちょっとした店すら全然なかったから、不便なところではあるんだろう。

Dscf9038 「ここにいた人は、どこいっちゃったの?」

「さぁ…この辺りは畑ばかりだから農業かな。たぶん後継者の問題とかで離農したとか…」

「でもタバコの箱を並べてるような人は、いたってことでしょ」

「うん。でも今の世の中、農業も大変だから継いでくれるとは限らないし、親も継がせる気にならないこともあるそうだよ」

「どして?」catface

「あれ!原油価格高騰だよ。トウモロコシからバイオ燃料を作るとかで穀物相場がすごく上がったんだ。親戚の酪農家で家畜の飼料価格の上昇で大変らしい。飼料とか畑の肥料もほとんど輸入らしいから」

「ふーん。でも、この家が空き家になったのって今年や去年じゃないんじゃない?」

「それはなにか事情があったんだろうね…景気に関係なく、無くなる企業や閉める店ってあるから」

Dscf9073

窓から見える風景は、ほとんどが藪ばかり。
太陽は、変わらず輝いていて、緑もまぶしいのにさ…

Dscf9074元は、キレイに整備されて庭に色とりどりの草花も植えられていたんだろうね。
「永遠」なんてないんだと思うけど、こんな終末的な景色はいたたまれなくなってきた…。

「大丈夫?」

「うん…なんだか鬱になってきた…」

「そろそろ降りよう」

コイツは、好き好んでこういうところに来るけど、鬱な気分にならないんだろうか。
私には見えない何かが見えているんだろうと思うけど…
どこからか見つけてくる廃墟の本やPCの「お気に入り」にも廃墟なんとか見たいなタイトルみたいなサイトがたくさんあるところを見るとコイツだけの趣味じゃないんだと思うけど。

Dscf9077 あれ…いないsign01置いてかれたsign03wobbly

あわてて下へ降りると階段前の部屋で壁を撮っていた。
和室─畳の部屋だ。それも広い!客間っていうのかな。

「思ったほどここは古くないのかもしれないね。ほら!」

指差す先の壁にポスターがあった。
L'Arc~en~Cielの…雑誌の綴じ込み付録のような。

Mixi_dscf9045

Mixi_dscf9044 「10年も経っていないみたい」

「うん…」

「何があったんだろうね」

「さあ…」

知らない時代の遺物ならいざ知らず、リアルに知っていたものに出くわすのは、なんだかショックだ。

「なんだか見てたら寂しくなってくるね…」

「そうだね」

「寂しいの好きなの?」

「そういう意味じゃないけど…感情って楽しいこととか、嬉しいことばっかりじゃなくてさ、悲しいこととか寂しいことも求めるんだよ。人としての心を失わないためにさ。テレビや映画がコメディばかりじゃないみたいに…心の痛みっていうのは意外と経験していないのかもしれないから敢えてそれと向かい合うと、そこに美的なものすら感じるんだと思うんだよ。闇があるから光がわかるみたいにさ。ネガティヴなものがあるからこそのポジティヴっていうか、そんな気持ちだよ」

ふーん なかなか言うじゃないか…think

「あと、居間の方見たら、もう行こう」

「うん」

Dscf9056

天井板が力なく垂れ下がった居間。

ここで家族団らんもあったんだろうね。
何人家族かもわからないけど、家族がいなくなってから家は悲しさのあまり自分を傷つけたような、守るべきものがいなくなった自暴自棄からヤケクソになったようなそんな気がする。

「勝手口が開いてたから、さっきの猫か何かはそこからはいったみたいだよ」

Dscf9057

「あれ?あれって…ピアノ?」

Dscf9065 向こうの部屋の壁際に大きな家具が見えた。
そこは部屋ではなく、隣の床の間に続く縁側のようなところ。
外の立木が風に煽られて当たったのか、誰かがワザと割ったのかガラスが粉々に飛び散ってる。

やっぱりピアノだ。
小さいころ親にねだっても夢は叶わなかったものが、当然のようにここにあって埃にまみれている。
そっと蓋を開けてみると鍵盤も惨めに薄汚れている。

Dscf9061 カシューン…
後から 乾いたシャッターの音が鳴り続けている

ポーン…
いつか 忘れてきた夢の音 
その音に乾いた音は鳴り止んだ
夢が現実に勝った気がした…

ヒューマニズムがコマーシャリズムに対して1本取ってやったような…
それほど大げさじゃないけど

なんだかね…

Dscf9062

Dscf9072_2夢は生きるための心の糧
喜びはそのためのビタミン

悲しみや寂しさは─ほんのささいなミネラル
ささいだけれど無くていいものではない

そういうものなのかもしれないね…

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2008年10月 3日 (金)

眠れるリストランテ

この場を借りてお知らせ:
約2年間何とか頑張って、ご愛顧いただいてきました「ルイン・ドロップ」ですが、このたびマイノーパが著しく不調に陥り、なんでかと調べると『Cドライブ』の空き容量が1%以下という前代未聞のメタボリックに犯されていました。gawk

数か月間、使わないプログラムを捨て続けてごまかしを続けるも、これではデフラグもできないため、大手術を敢行してみました。
でもしかし、使っていてもPCの知識の疎さで難航。3日間投げ気味…。sweat01
機嫌を損ねるノーパをウクレレでなだめつつ、なんとか完了。
やれやれ…難しいものですね。基本めんどくさがりーな自分が悪いのか…coldsweats01

まぁ そんな毎日です…

Art_top

街を外れて北へ向かい走る。 もちろん車で…
やはり乗り物は便利ですね。 夕べ「とほ宿」で知り合った人も言ってた。

「乗り物は人間の偉大な発明だと思うよ」

Dscf3827 それは言えてる。 それだけが偉大だとは言い切れないけど…
こんなボロボロの車でも おおよそ自力では無理なところへも行ける。
とくに この広い北海道、車でも無いと通勤も困る時勢です。

ある意味「車がないと不便」というのは間違いかもしれない。
開拓期の蝦夷地の交通手段は、自分で歩くか馬を使うかしかない。
後に鉄路網も広がっていったそうだけれど、線路路盤は自動車道より施工・維持が楽だったのだと何かで読んだことがある。
それほどに人馬の道はひどかったらしい。
戦後のモータリゼーションの普及は、車道整備にも拍車をかけてどんどん広がる。
それが結果として鉄路の存続に影響して線路は少しづつ消えていった。

Dscf3825

Dscf3832 自家用車の保有率も上がっていき、一家に2台3台もざらというようになって、廃止した鉄路線の代替として走っていた路線バスにも影響をきたして、バス路線すら廃止の風潮もある昨今です。
いまや車、そして運転免許証がなければ北海道の暮らしは成り立たないというのが正直なところかもしれません。

どこまでも続く舗装された快適な道。
でもそれは、地域財政の困窮する現在、維持管理が負担になっているようだ。
Dscf3836 郊外を走ると誰も歩かない歩道のヒビの間からニョキニョキと雑草が茂るのを見ることすら珍しくなくない。
地方交付税に頼りきった暮らしは、その仕送りが減らされていくごとに影を落としていく。
かつて町のキャッチフレーズみたいな感じで「道の舗装率 日本一の町」なんてのも聞いたことがあったけど、今は失笑ものでしかないらしいのか聞かれなくなりました。

「ガソリン高い!」と言っても乗らないわけにいかない。今さらね…
車はドンドンかっ飛んでいく。
1台分でも前に出ないとならないというかのように…

Dscf3856

Sky 心の通わない密室がすれ違う
プライバシーが前に割り込んでくる
個人の自由が不必要に後ろに寄ってくる

道端に夢がそよいでいても
空に希望が浮かんでいても
死角にときめきが潜んでいても

それにまったく気がつかないみたいに
道をなぞって行く。
まぁいいや 彼らとは行き先も辿る先も違うのだから…

Dscf3834

Dscf3837 左右に続いていた田園風景はやがて雑多になって、すでに人里を離れたようだ。
もう国立公園に入っているんだろう。
このあたりは北海道東部にある国立公園で、1934年12 月4日に大雪山国立公園、日光国立公園、中部山岳国立公園、阿蘇国立公園(現・阿蘇くじゅう国立公園)とともに指定された、北海道で最も歴史のある国立公園だそうです。
とは言え、後の指定であることで、それ以前からあったような民家は廃屋となっても木立の奥にその姿を残しています。
徐々に緑は深くなり、樹海の様相をかもし出してきたころ…

「あっ?あぁっ?」

Dscf3857 通り過ぎた道で視界に何かよぎった…
対向車や後続車を気にしながら木立に塗りつぶされそうな道をUターン。
変わった形の大きな建物。
急がない道中でも うっかり見落とすほど雑木でカモフラージュした姿がそこに。

「店? レストラン…?」

看板の痕跡があるのでドライブインだったようです。
国立公園内にいいのかなぁ…と思ったけど、もともと私有地なのか、何らかの条件を満たせば営業できる取り決めでもあるかな?というとこでしょう。詳しいことわからないけど…。

Dscf3839

Dscf3841 見渡す限り緑に囲まれた中で鮮やかなブルーとレッドが目を引く。
形も宇宙ステーションのようで珍しい。
時代は未来志向のPOPなデザインが良しとなってた頃みたいです。

小さい頃、読んでた本では21世紀の生活の場は、もはや宇宙であり
宇宙時代の夢あふれる可能性がきらびやかな夢絵巻で語られていました。
いざ、21世紀になってみたけど…うーん どうなのかなぁ…
偉い人とかお金のある人しか行ってないようですね。
海水から無尽蔵に作られるクリーンな水素エネルギー とか
スペースコロニーの小学校の無重力運動会 なんて
いつになることやら…
とりあえず、自動車社会が延々続いているようです。

Dscf3845

自家用車が普及して 道が整備されると呼応するように「ドライブイン」が増えていきました。
国道や道道だけではなく、流通などを担って交通量の多いところは、どこにでもっていうくらいに。峠道の入口前後には、それらが集落のように点在する風景もよく見られましたが、いつしかそんな商売にも陰りが出てきたようです。

道も川のように何かの拍子に流れが変わっていくようです。
流れが大きくなれば 勢いは増していき、淀みを作ることもない。
流れ自体が変わってしまったり
流れることすら少なくなったり…

高速道路 観光地の衰退 価値観・嗜好の変化 原油価格高騰
いろいろあるね いろいろ…

Dscf3842 ここもそんな風に流れを相手にしていたんだろうけど
流れは ひたすら前に進むことしか見えなくなったようです。
緑の大海原に居を構えて、「道の駅」以前の道のオアシスとして、旅人あるいは仕事の移動中の人たちに憩いと安らぎと暖かい食事でもてなしていたことでしょう。
土地の時間は画一化されすぎたのかもしれないよ。
急ぐことは何かを犠牲にしている。

歩くこと 自転車 オートバイ 車 電車 飛行機
何かを見落として 何かを見失っていく

北海道観光のことが、こう呼ばれていたそうです。

自然一流

食事二流

サービス三流

Dscf3860 確かに一流と比べればそうなのかもしれない。
でも「観光」と「旅」は違うと思う。
そうでなければ、「ユースホステル」や「とほ宿」が成り立つわけがない。
売りが無いから「アットホーム」な雰囲気を売りにしてるみたいな言われ方もしているけど、この一流の自然を道外に知らしめたのは、「旅人」たちだ。
彼らは損得ではなくて、思うままを人に伝えたに過ぎない。

この大地にせわしない旅は似つかわしくない。
人は立ち止まり 行き詰ることで何かを発見してきたんだから。
生き急ぐ必要なんて無いよ。
自分のペースがいい…

Dscf3855

眠れるリストランテ
誰かの思い出の中で
プレートのミートパスタがパチパチと音を立ててる…。

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2008年9月 3日 (水)

廃墟淑女

Dscf8445

昔の人で ツィッギーとイーディは同じ人だと勘違いしていた。
ふたりともモデルだったからね。

ふたりの大きな違いは
ツィッギーは自分を探し イーディは自分を開放したってところ
そんな印象を持っている

Dscf8448

Dscf8536 雑然として節度をなくした木々が生い茂る林の中に何かが見えた。
回りは整備された土地なのに ここだけがモラルを欠いたように空気感がことなっている。
きれいに整備された舗装道から一歩入ると、もう膝上の雑草が絡み付いてつま先が見えない。

マムシでも踏んじゃったらどうしよう…音速で逃げるしかないよね。

Dscf8531

Dscf8455 程なく廃車が目に入り 庭が雑木になったか雑木林に家があるのかわからないところに家が現れてきた。
平屋で木造モルタルの淡いピンクの壁。
道から家へ続いていた道は、笹に塗りつぶされて人がいたことも感じられないほどです。
窓はあちこち破損していてるけど 人がやったのか朽ち枝の仕業かは、既に分からない。
人が消えると家は、これほどまでに変わるんだと実感する。

家は人と共に生きている。
この家自体は今でも同じ形の借家が見られるくらいだから特に珍しいほどではないけれどここにはまだ人が住んでいた。

Dscf8493

Lady 人というのは間違いだ。正確には人形。その姿にツィッギーかイーデイの印象の見とれる彼女は、この家のプラスチック製のベッドの中で静かに眠り続けていた。
床も落ちて 廃れが極みに入り始めたところだけど彼女にとって安らぎの家。

しばし、外の空気を吸ってもらった。
長い年月眠っていたとはいえ、一糸乱れぬ凛とした姿はモダンながらも気品に満ちている。
このあたりは一帯でも田園風景の広がるところで、かつては稲作も広く営まれていたけれど今、その面影は道端に時折見える水門しかない。

Dscf8506水田はやがて畑に転用されていったいったけれど、冠水させなければならない田と、冠水してはならない畑。同じような実りの園でも本質は異なっている。畑に転用するためには暗渠排水などの整備が必要になります。
時代は米余りから減反政策に転じて収穫のできない田んぼは、どんどん畑に変わっていきました。

でも、中には違う道へ行く家も─
この家がそうであったように養魚業が各所で営まれていきました。
養魚の盛んなところは意外と湧水も豊富で、廃墟となって数十年が経過したような家でも裏の水槽脇のバルブからは清水がコンコンと湧き続けています。
『廃墟』といえば「衰退」とか「滅び」とか「死」とかマイナスな印象が付きまとうのに生命の象徴のように命の源である『水』が弛まなく躍動し続けているのは『廃』は人の世だけのことなんだと思います。

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Dscf8496 うっそうとした木々は、雑然としながらも生命力にあふれている。
あたかもこの家で眠る彼女が『いばら姫』であるかのように…

眠りに着く前、ここはどんなところだったのだろうか?
彼女の口から枯れススキに埋もれた庭の在りし姿は聞かれなかったけれど、たくさんの人が訪れて釣り糸を垂れて漁の成果を楽しんでいたことでしょう。

Dscf8469 『廃』は人の世界だけのことです。
鳥や虫や獣たちには耳障りな喧騒の過ぎ去ったオアシスなのかもしれません。人が忌み嫌うところで小鳥がさえずり、リスが木々を渡り、蝶は野に還った庭でこぼれ種から生じた花を渡り飛ぶ。
そんなところに忌まわしい、汚らわしい伝説を作るのは、そのパラダイスに近づかんとする人を戒めるある意味優しさの面もあるのかもしれません。

この家の淑女には、またしばらく眠りについていただきました。
彼女がこのパラダイスを守る女神であるかもしれないからです。

だから、これ以上、無用に人の目には晒さないでおきましょう。

Dscf8516

ツィッギーは『未来』を見つめ イーディは『今』を認めた
ツィッギーは輝きを探し イーディは輝きを留めた

ふたりの探したものは同じ
『廃墟淑女』は、その二人どちらでもある

ツィッギー(Twiggy)
イーディ・セジヴィック(Edie Sedgwisk)  (出典:フリー百科事典ウィキペディア)

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2008年8月29日 (金)

初恋のひと

そよかぜみたいにしのぶ あの人はもう
私の事など みんな忘れたかしら…

Dscf8197

自分のルーツはどこだろう…
北海道に生まれたけれど数代前のご先祖様は北海道の人じゃない

Dscf8189 最果ての地での旗揚げ
開拓使に入ったりして一念発起の旅。
今風に言うならフロンティアスピリッツ?
この地に夢を馳せてか、またはやむなくという事情もあったかもしれない。
いまでこそ飛行機で数時間、さらに車で数時間。
それにしたって、その日のうちに到着できる旅。
でも蝦夷地が未曾有の資源の宝庫だった頃には、そうそうできた旅ではない。この地に渡ったご先祖様のほとんどは、故郷に戻ることのかなわない片道切符の旅になっただろう。

Dscf8175

Dscf8190 時折、自分の北海道以前のルーツをたどって家系図を完成させた人が新聞に載っていたりする。個人の出来事だけど、それほど難しい作業ということなんだろう。
時が重なるごとに難しくなっていく過去の検索作業。
なにもそこまで調べようとは思わないけれど、やはり自分の生まれる前の過去は気になる。

Dscf8184 経験したことなら記憶の中には残っているんだ。
ただ、それを証明する物は自分のことでも意外に失われていて、1冊のアルバムだけが時の断片を知らせる。
ほとんど塗り替えて ほとんど作り変えられた。
幸いかな、ひとり立ちするまでは家にいたし農業という家業の都合、故郷は今でもそこにある。
そうではない、例えば引越しの多かった家の事情や離農などで故郷を離れた場合は、記憶を紐解くときに何を想うのか…

Dscf8193

家は記憶する
壁が黒ずむごとに 風が窓ガラスをカタカタ鳴らすごとに
主が「家族」の冠である『家』をおいてその地を去ったあとも再び迎え入れるかのように「思い出」を内包して立ち続けるのか
自らの終の日まで…

Dscf8185

Dscf8169 在りし日の庭の風景は緑が大げさになり家よりも低かった木々はうっそうと自己主張する中、家は相変わらず存在し続けた。
変わったのは、この地におよそ不似合いな舗装道路だけ─

「どこへ 行っちゃったの?」

「いつ 帰ってくるの?」

Dscf8166 家はもちろん言わないし 吹く風も何も教えてはくれない

そんな家に自分が招かれうるかは分からないけれど、あえて訪れてみる。
家は意外と容易く記憶の断片を語りだした。
それは自分の記憶とは異なるものだけど、他人の記憶に浸っているような気分になる。
ちょうど人の心に入り込んだような─そんな感じ
こういう感覚は歴史的建造物からでも得られないと思う。
自分からあまりにもかけ離れてるからかな…

Dscf8168 見上げると壁に一際鮮やかな背景の往年のアイドルの写真が…
雑誌から丁寧に切り抜いて、別な台紙に貼り付けてあり手が込んでいる。
止めてあったステープラーの歯は既に錆びついて虫みたいになってた。

なんていう人かな?

「あー…たしか小川知子だよ」

画像を見せた人が知っていて、へーっ…ていうか良く知らない。そっち方面が疎いので…
詳しい芸能活動やディスコグラフィーは他所の方が詳しいので触れませんが、ここはその時代を残したまま30年以上の時を超えてきたんだと思うと
状況を残したまま地の上に在るタイムカプセルのようです。無造作に伸びていった木立が陽をさえぎって昔の色もさほど褪せさせることなく。
ここは時代の差はあるとはいえ、当時の若者の部屋の様相。
夢を馳せた部屋 憧れが目くるめく六畳間。
アイドル 車 音楽─  夢は部屋の形いっぱいに広がるんだ。

Dscf8186

故郷に帰ることのない引越しは、したことがないからわからないけど、
思い出すことはあるのだろうか?
この家のこと この部屋のこと おぼろげな日々のこと…

家は想うだろうか こんなことを 帰ってこない家族のことを

そよかぜみたいにしのぶ あの人はもう

私の事など みんな忘れたかしら…

(詩/有馬美恵子 歌/小川知子 『初恋のひと』より)

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2008年8月 3日 (日)

蟹の並ぶ廃屋

Dscf6510

その家は、なぜか一目置いていた。
特に理由も無いけれど雰囲気というか異質な空気というか、そういったものを感じる…
景色の色数が制限される冬場ならともかく、緑の過剰投資が盛んな夏場だとそこに大きな家があるとは思えないほど緑に埋め尽くされている。
遠巻きに見るその光景は、さながら緑の炎のようです。

Dscf6467

トタン葺きの屋根なので旧家というには少し違う趣ですが、家そのものの作りは縁側や雨戸を持つ内地の様相を模したスタイル。
畑の中にポツンと佇み、家人が植えたシャクナゲやツツジも季節には花を広げ、家の栄華の時代を回顧させるようです。

屋敷の外れには湧水槽があり、そこからあふれた水が水場を作り出しそこからミズバショウが大きな花を遠慮なく広げ、オタマジャクシにとってさながら天国。

Dscf6506

現在この家の敷地は土木会社の廃材置場に使われている様子ですが、時折訪れて何かを積み上げていき、反面こことは無関係な人が家を眺めていったりと、不思議と人の出入りが多いところです。
「古民家再生」というのが一時期ブームだったこともあり、その影響で物件に興味があったのでしょう。
不節操に伸びていく防風林が午後ともなると大きな影を屋敷に下ろし、家は不気味な様相をかもし出している。

Dscf6505_2 始めてこの家を見てから10年ほど経つでしょうか…その間、不思議な出来事も。
家の入口上部にある裸電球の外灯が空家なのに付いたまま数日たっていた事がありました。
しばらく無視していましたが、管理しているところが消し忘れているのであろうと思い、出入りするトラックに社名があったのを思い出し、教えておこうと電話してみました。

ところが、相手は…

「そんなことはありません」

「いや、現実に今も点いたままなんですよ」

「いえ、ともかくありがとうございます」

「…?」

Dscf6503なんとも後味悪いじゃないですか?
こうなると悪い癖で、この家を調べてみることにしました。

その結果は後として、台風並みの防風が過ぎ去ったある日、うっそうとした木立の隙間がいつもと違う感じに…
「雨戸が落ちている…」
これは事実確認のチャンスかな─
白樺の木立がはびこる間を縫って軒先へ到達。雨上がりのため薮蚊も多い。縁側の床の崩壊で連なった雨戸が落ちていました。

Dscf6469 入ってみたところ、思ったとおり建具などの廃材が山と詰め込んであり、営みがあった家とは到底思えない様子。
若干、暮らしの跡も見え隠れしますが封印が長かったのか埃が厚く積もっています。
煤で黒ずんだ梁や天井。1階は3部屋程度ですが間取りは大きい。同じ建坪なら今でも豪華な造りでしょう。でもいつごろまで人は住んでいたのかな?

Dscf6473 階段を見つけて上がってみる。撮る写真ほとんどにオーブと見まごう程の埃が写りこみます。マスクでもしておけばよかったなぁ…
Dscf6500当の2階も外灯の成れの果てが屍を晒すかのように横たわる。
階段を上がったところは広いスペースをとってあり、回りを部屋が囲むというような状況。かざりっけのない裸ベニアが壁を渋い色で覆っていた。

手前の部屋は、寝室だろうか。窓は高く外の様子は伺いにくい。家の面した道が木立の隙間からかすかに見えた。壁は何度か張り替えたようで同じ材質でも色合いが異なり、つぎはぎの感じもある。

Sanren

Dscf6479隣の小部屋。ここは化粧ベニヤが数箇所使ってあった。
古い飲料水のステッカーやステレオの広告が貼ってある。憧れのオーディオといったところかな?新聞は昭和45年。1970年代です。
その並びの部屋を覗いてみると─

「おぉっ!」 昭和のアイドルがお出迎え。

Dscf6491 西城秀樹・山口百恵・三浦友和・桜田淳子
桜田淳子にいたっては、陽にあたらなかったのか往年の美貌を称えたままですね。何となく合成っぽい写真でしたけど。
こういうものを見ると当時の西城秀樹氏は、シャツや上着に恵まれなかったことが偲ばれます。郷ひろみや野口五郎が見られないことから主に秀樹ファンと思われます。

Dscf6492 なにやらいわくありげな家ですが、調べたところでは、およそ30年ほど前に離農。市街地で暮らしているようで因縁めいたものはありませんでした。
じゃあ、あの外灯は?とも思いましたが、引き込みを無断失敬していたのかもしれません。

Dscf6494

1階へ降りて玄関周りを確認。
玄関も間口が大きい。本家筋だったのかな…

「おや?」

足元に奇妙な鉄板。一斗缶の蓋のようですが、裏面に蟹缶のラベルが連続。これは面白いね。缶詰用のものを再利用したんだ。
古いブリキの車の中に見えるボディの裏側が鯖缶らしかったものを見たことがありましたが、リサイクルは昔からあったのですね。

Dscf6496

今は単に捨てるものが多くなっただけ─という気もします。

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