2009年8月 9日 (日)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』②

Dscf0329

「へーっここ遊園地かなにか?」happy01

virgo「いえ…ラブホです…」

「えっ?ランボー?」catface

virgo「ラブホですよ」sweat01

「らぶ…。あっあぁ~っsweat01ラブホテルね。なんだ…変なとこーっtyphooncoldsweats01

Dscf0265 変なとこって…sweat02
しかし、廃墟嫌いと言いつつ、ケロッとしてるなぁ。
自分で来たいって言った手前、仕方ないだろうけど。

「良く見たらスペースシャトルの形だ。キレイな時だったら来ても良かったねぇ…」happy01

virgo「…」

「こういうところ、良く来るのぉ?」happy01

virgo「いや!ラブホは行かないですsweat02

「はぁ?廃墟のことだよ」coldsweats02

Dscf0305 う…墓穴掘った。sweat02なんか調子狂うなぁ。down
なんていうか、いかにも理解のなさそうって感じの人と来ると、私もこんなところで何やってるんだろ…って気がしてくる。
師匠だったら、私が言ったことに的確にリアクションしてくれるけど、趣味が違うからなんだろうけど。
師匠は聞き上手だよ。やっぱり…
あ~っ神経が疲れてくる…down

Dscf0290virgo「営業していた頃は、まだ上水道が来てなくて地下水汲み上げだったそうです。それが近くの道路工事の影響で水が上がらなくなったと聞きましたよ」

「それでこんな有様に…中、見れれる?」smile

なんだか美玖さんのほうが乗り気だなぁ…
彼氏と廃墟へは行ったことがあるらしいから慣れてるんだろけどね。
好き嫌いは感受性の差なんだろう。
シャトルルームの中でも割と中がきれい目なところを選ぶ。
と、言っても、どこもかしこも木片や誰かが放り投げた室内電話や消火器とかの備品も散乱している。
いつから放ってあるのか知らないけれど消火器は、破裂することもあるらしいからなるべく近づかないようにしてる。

virgo「気をつけてくださいよ。頭の上とか…」

Imga0237

Imga0236「わーっ汚ったないsign03でも広いんだなぁ…。こっちは、お風呂だsign03腐ってるーっsign03sadsweat01

virgo「…」

こう、わかってくれそうな人だったら「ここがいい!」とか「ここはキレイだね」とかも言えるけど今日の場合は難しいなぁ…。私が私らしくなくなる。

Dscf0249

「どのくらいやってるの?」delicious

virgo「えっ?何がですか?」

「こういうところに来るのをさ」wink

virgo「そう…5年くらいになるかなぁ…始めは同じような趣味の人を知らなかったから、ずーっとひとりで…」

「ふーん…でも今は、理解ある彼氏がいるからいいよね」happy01

virgo「へっ?誰sign02…まさか師匠の話sign02

「うん」wink

virgo「ち…ちょっとぉsign03sweat01なに言ってるんですかsign02勘弁してくださいよsign01sweat01

「だってぇ、こんな怪しいところに一緒に来れる人ったらそうじゃないのぉ?」smile

virgoimpactないないsign03ないですsign03かんぐり過ぎですってsign01sweat01

「もう外へ行こ。なんだか空気がスゴク重たい感じがするよ…ここ」bearing

ふーっ。sweat01いきなり何を突っ込んでくるのさ…あ~っ早く帰りたいsweat01

Dscf0272

Dscf0229 シャトルを出て、管理室と通常ルームのつながる棟へ。
真っ暗なボイラー室を通り抜けるとき、美玖さんが背中にピッタリ張り付いてきた。
反対側の客室の棟はいくつか部屋が並んでいるけど端から2部屋は内装作製中に工事中断して、柱とかが剥き出しのまま。
たぶんシャトル棟だけで用が足りたので全てを完成させずに営業していたんだろう。
一番手前の部屋もボイラー室から直接繋がっているので客室ではなく、乾燥室に転用していたようでタオルや浴衣が散乱して、天井には物干しがたくさん。
のこり3部屋が客室として使われていた。もっともひとつはガレージのシャッターが閉まったまま壊れているので『開かずの間』と化している。

Dscf0283 「ずいぶん人が来てるんじゃない?あちこち壊されてるけど…」catface

virgo「たぶん、肝…」 マズッsweat01

「なに?」gawk

virgo「いや…sweat01 危ない危ない…sweat02

Dscf0308

「小さいころさぁ…小1くらいの時かなぁ!捨て猫を拾ってさ、真っ黒いけど目がビー玉みたいにキラキラの子猫。近所の子とこんな狭い階段のある空家の2階で飼ってたことあるよ。その頃、私んち社宅だったし、他の子の家もダメだったから…」despair

Dscf0315 virgo「そうですか…」

「カワイかったんだぁ。すぐ死んじゃったけどね…っていうか殺されたんだけど」despair

virgo「えぇっ?」

「みんなの秘密基地にしてたけど、ひとり男子がさぁ、じぶんの兄ちゃんに教えちゃったのさ。後で白状させたけど…。その子達、行ったみたいで“黒猫は悪魔の使いだ!”って寄ってたかって蹴り殺しちゃったらしい…見つけたときはもう、ボロボロで冷たくなってた。あんなやつら呪われてしまえばいいのに!」pout

virgo「…sweat01

「それからこんなとこ来なくなったよ…」gawk

そういうことあったのか…
ないとしても普通は、廃墟好きにならないだろうけど…

Imga0249

「もういいや…帰ろうsign01think

virgo「なにかに…なりました?」

「うーん…よくわかんないsign01私には、さっぱりさぁ…」happy01

その横顔からは、廃墟が好きだとか嫌いだとか、そういうことは読み取れない。
意外とスッキリしたような表情ではあるけど…
ただ、ここに来てみた─それだけなのかもしれない。

Dscf0268

「このシャトルがホントに飛んでいったら私たちの街の上だよね」happy01

Dscf0345 朽ちかけながらも整然と並ぶシャトルは確かに街のほうを向いている。
夜なら、空と地上の星に挟まれる…ここは天と地の境目がわからなくなる景色なのかも…
でもシャトルは、静かに…ただ静かに空を見上げるだけ
鳴り物入りで打ち上げるスペースシャトルとは違うから…

「たまに…アツシも誘ってあげて」bleah

virgo「いいんですか?sweat01

「うん!たまにならね。アキさんの彼氏と3人なら構わないよ」delicious

だから…sweat02違うって…sweat01

Dscf0306

Dscf0301 eyesweat01「あーっビックリした…sweat01人が来るとは思わなかったよーっsweat01sweat01

watch「そうですなんですか?人間はいろんなとこへ来るあるますね…」

「そう…“あるます”だよ…heart

Youtube/JUDY&MARY『小さな頃から』

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2009年8月 5日 (水)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』①

Coffee

virgo『幽霊?』

『う…疑うの?アキさん』pout

virgo『いや…そういうわけじゃなくて…』

『ホントにあの時見たのさ!annoyあの炭鉱で…』angry

Dscf9574

美玖さんに相談があると言われ週末、街で会うことになった。
久々の青空の下は気温もグングン上がり、通りは歩行者天国。夏のイベントでごった返している。どうも人の多いところは私の性に合わない…sweat02
待ち合わせた美玖さんは、この前、写真の師匠である神さんと行った山奥の炭鉱跡で偶然出会った。
彼氏に連れられてそこに来た美玖さんは『廃墟趣味』ではないらしく、あの草深い森の中では当然のごとく不満そうで…。
途中、ちょっとしたことから機嫌を損ねて遺構と樹木でうっそうとした森の奥を突っ走って行方不明になってしまった。しばらくして無事、見つかったけれど…

後日、その美玖さんが師匠を通じて私に連絡してきた─
まさかとは、思ったけど…

『名刺を見つけたの。アツシの部屋で。神っていう人の…それで連絡してみたんだ…』think

Nagisamiku なんの気なしに会ってみて、幽霊の話とは驚いた。sweat01
悪いけれど私は幽霊を信じる方じゃない。というかまったく信じてなどいない。
信じてたら廃墟など絶対行かないよ。
しかも、あの時に見たって…あの時は、まっ昼間じゃないのさ。

『すぐ近くにいたんだよ!はじめは、なんだろ?って感じだったけど、振り向いて“大丈夫ですよ”とか話してきてさ…』coldsweats02

virgo『えぇっ…?sweat01…で、どんな感じでした?』

『うーん…白っぽくて少しユラユラしてて…影っていうか…そう、若い女の人の影に見えた!』gawk

virgo『女?』

『そう!若くて…ワンピって感じ』catface

virgo『…sweat01 

古い炭鉱跡に昼間っからワンピースの女の霊?それは誰も信じないでしょ…sweat01まいったなぁ…

Dscf9533

『信じてないっしょ?』gawk

virgo『いや…そういうわけでは…』sweat01

『ホントは、私も今になったら本当のことだったか怪しくてさ…。幽霊じゃなかったら宇宙人かなぁ…』despair

Dscf9516virgosweat02その…あの、彼氏の人には話したんですか?そのこと…』

あの森の中で私と師匠、美玖さんとその彼氏、4人が右往左往していたのは、ついこの間のこと…
その日以来、雨の日が続いて思うように探索はしていない。
彼女ともそのときぶりだけど、神経質そうだったあの子が私に会いたいと連絡してくるとは思わなかった。

『そうなのさ!』sad

わっ!sweat01なんだ急に!

『あの日以来、ああいうとこ行かなくなったんだよね。アツシ…ひとりでも行かなくなったみたい。前は、ちゃっかり計画してて当日発表みたいなー』despair

virgo『それは、まあ…ああいうことのあった後ですからね…』

『映画とか…ショッピングとか…連れて行ってくれるんだ。郊外へ出かけたって「また?」と思ったけど全然寄らなくなった』think

virgo『それはそれで、良かった…んじゃないですか?』

『…』 despair

Dscf9521

美玖さん…黙ってしまった…。
返す言葉に失敗したかな?
師匠に今日、美玖さんと会うんだと話したら…

shadow『気をつけてくださいよ。あの子、神経質そうだから…』

virgo『大丈夫です!師匠より女の扱いには長けてますから』

shadowそ・れ・が!イカンのですよ。話すときは、しっかり噛み砕いてからにしたほうが…』

virgo『買いかぶらないで下さい。これでも私、ご飯は、しっかり30回噛むんですよ!』

shadow『会話の話ですよ。それに、それを言うなら“見くびらない”です』

やっぱり師匠にも来てもらえば良かった!sweat01
用事で札幌へ行くって言ってたけど確信犯だなぁ…
なんだか、緊張してきた…。sweat02
お腹空いたなぁ…緊張するとお腹空いて来るんだよ…
あーっこの暑いのに熱いグラタン食べてる子がいる。変なヤツだなぁ…

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『ねぇ!ちょっとアキさん!聞いてるの?』coldsweats01

virgo『あ…はい!聞いてます!』sweat01

『で…ものは相談なんだけどさ!どこか知ってる廃墟に連れてってsign03happy02

virgo『えっ?えっ?impactえぇぇっっsign02bomb

思わず大声が出て、回りの視線が一斉にこっちへ…sweat02
美玖さんもグラタン女もキョトンとした顔で私を見つめてる…
うわぁーっ恥ずかしい…sweat01
美玖さんが急に思いもしないことを言い出したからじゃないかーっsign03sweat01sweat01

『私、廃墟なんか嫌いだよ!でもさ…ああいうところでアツシは幸せそうな顔を見せてくれたのさ。今でも笑ってくれるけど…違うんだよね。なんだか自分にウソ付かせてるみたいなのさ…』despair

virgo『はあ…』sweat02

『一緒に行ってても“こんなとこ嫌だ”って感じで見てたから、アツシの感じるものをわからなかったんだなぁって…。そういうのを理解したい気持ちもあるんだけどアツシ行こうとしなくなっちゃったし。ああいうことのあった後だから私から言えないし…』think

この前、グチってばかりいた子とは思えない。
今時、こんな理解力のある子、いないじゃないか。
私もこういう理解ある彼氏欲しいなぁ…廃墟趣味に理解のある…sweat01

Dscf9572 virgo『愛してるんですね…』

『へへっ…sweat01 まあね…』smile

virgo『で…いつ行きます?』

『明日でも、どう?時間ある?』coldsweats01

virgo『明日sign02

『アツシ、明日まで仕事で出張だからさ。近いとことかないの?』bleah

virgo『いや…あることはありますけどね』sweat02

弱ったなぁ…師匠もいないし…
近場か…近いとこ…ないことはないけど…sweat02

Dscf0266

virgo『こんにちはーっ』

おやぁ?またあんたかい!物好きだねぇ…こんなとこばっか来てたら嫁の貰い手なくなるべさ』

virgo『だいじょうブイです!すいません今日も見てきていいですか?』

ああ!怪我だけは、しんようにね。あんなとこだしさ…。また写真かい?』

virgo『いえ!今日は見るだけで…。あっちのバリケード、大きくなってましたけど、また誰か来てたんですか?』

Dscf0267 師匠と一緒に来たことのあるこの廃墟は、ずいぶん前に閉鎖されたラブホテル跡。
高台の突端にあるので上水道の充実していなかったころに近隣の道路拡張工事の影響で地下水脈が変わり、地下水を汲み上げられなくなったのが閉鎖の原因とも聞いている。
この廃墟に隣接している裏の道は一見、ここの道のように見えるけど、まったく無関係で、奥にある家の私道だ。心霊スポットの噂もある場所だから夏になると肝試しの連中が毎夜のように来るらしい。
事情を知らない人が奥の家をホテルの廃屋と思って勝手に覗きに行くことがあったんだそうだ。
そういうこともあるので、ブログに場所のことは載せられないし、時々来る情報照会のメールも丁重に断わるようにしている。

『この前の連休あたりからね。ボチボチ出てきてるよ…annoy

virgo『あまりひどかったら通報した方がいいんじゃないですか?』

『いんや、そこまで迷惑こうむってるもんでもないし…ウチのもんでもないからさ』

Dscf0328 心霊の噂もあるここは、夏場になると肝試しのハッテン場になっているらしい。
噂の信憑性は、近所で聞いて回っても「そんなこと初めて聞いたよ」と言ってたくらいだから、やっぱり怪しいんだろう。
それでも冷やかしの連中は良く来るらしく、中はずいぶんと荒らされてる。それとは別にこっそり不法投棄していく人も相変わらずいるみたい。
他にも銅線の窃盗目的で来る人もいるらしく、あちこちの電線が切断された跡がある。
天井裏にまで入った痕跡もあったし…

Dscf0262

『ずいぶんかかったね。面倒なの?』gawk

virgo『いえ!世間話ですよ…。ホントにいいんですか?』

『…うんsign03think

今まで、いろんな廃墟を見てきたけど、こんなに気が重いのは初めてだ…
とりあえず、近場と言えばここしか知らないし「心霊の噂」だけは黙っておこう…

(つづく)

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2009年7月26日 (日)

みっつめの朝

Dscf0481

始めの朝は 生れたてきた日、最初の朝
次の朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝は…

「今日、泊ってくの?峠は大雪らしいよ」

「えぇっ?!」coldsweats02

Dscf0415 GWの最終日、これから200㎞以上の距離を家まで戻らなければならないというときに友人から驚くことを聞いた。この季節、大雪といっても北海道では、驚くほどのことではない。
自分が通る用事がなければ…
でも、数日前は夏日に近い日もあったことだから、そんなことあるはずないと思っていた。

行きの峠道は緑も芽吹き始め、春の小花もあちこちで見えていた。サクラはまだ峠を越えてはいなかったけど。
だから、とっくに夏タイヤ。ほとんどの人がそうだったと思う。
天気予報で峠が雪といってもチラつくくらいだったし。

「明日、仕事あるから、とりあえず行ってみる。どの程度の雪か解らないし…」

Dscf0416 とりあえず友人と別れて帰途につく。
峠のある町まで、普通に春の夜道。
真冬の大雪と春先の大雪は感覚的にも違いもあるから、降っても数センチかなぁ…でも峠に入ると路面凍結…?

最高点標高1,023mの峠は、急勾配と急カーブの連続で、樹海と高い岩山に囲まれている。それでも重要産業道路であることから末端両町の合意で村道として開通した道は昼夜を問わず通行車が多い。
夏場は霧に悩まされ、冬は、その交通量から圧雪・アイスバーンになりやすく重大交通事Dscf0477 故も多発。近年は、高速道の開通部分が延長されて険しい部分は回避できるようになって、交通量が激減した。
それでも道東への流通を担った道には違いなく、今でも流通のトラックは覆道と長いトンネルの連続する道をグングン登っていく。

峠の町まで近づくと、話の通り路肩に季節外れの雪が目立ち始めてきた。それでも路面は乾いている。

「もしかして行けそう?」

Dscf0474 やがて、進むほどに積雪量はどんどん増えて、峠手前の市街地は、お祭りでもあるのかというほどトラックや乗用車でごった返していた。
峠は荒天のため一時封鎖されており、越えるのは不可能。
少し戻ったところからもうひとつの峠に迂回する道も積雪が及んでいるため冬タイヤかタイヤチェーン装備の車両でなければ無理らしい。
海沿いから遠回りする道もあったけれど、そっちへ回る気にはならない。
「明日、峠が開くまで待つしかないなぁ…どうせ待つなら札幌で待てば良かった…」
そう思うほどに峠の町の夜は早く、すでに全ての店は閉まっている。
その頃は、まだコンビニや道の駅ができる前で、物産館駐車場からあふれた車は、国道の両側に路上駐車。
歩道に乗り上げたり、私有地に入り込んだり、エンジンかけっぱなしで地域住民とトラブルになっている様子あった。

Dscf0414

「この辺じゃ待てないなぁ…」

喧騒の市街地を離れ、暗い道を引き返す。
路面に溜まるシャーベット状の雪の上、時折タイヤが空転しているような気がした。
夜というのはこんなに暗いものなんだと思い返すほど暗い道だった。

街からほどほど外れたところにポッカリとドライブインらしきところが見えてくる。
少しでも峠近くで待機!と言わんばかりに集まった車両は、ここにおらず、大型トラックが数台だけ…

Dscf0421

「とりあえず、ここにしよう…」think

Dscf0425 春の重たい雪が積もるパーキングに車を滑り込ませて、外灯近くのなるべく明るいところに駐車。
エンジンを切ると5月だというのにミルミル車内の温度が冷えてくるのが分かった…タンクの残量を考えるとエンジンをかけっぱなしというわけには、いかないし…。
とりあえず荷物からパーカーやらシャツを引っぱり出して着ぶくれに着込んでみる。気が付くとウインドーは内側から曇りだしていた。

「なんだか情けなくなってきたな…」sweat02

少し、窓を開けると遠くからチョロチョロと水が滴る音がする。

「?」

明かりの中ぼんやりと浮ぶキャンプ場の洗い場みたいなところのひとつが蛇口を開けたままで、下のバケツに水を溢れさせ続けている。たぶん凍結防止のためかな? まだこの辺りはそんなに冷え込むんだろうか…?

Dscf0424 この辺りのドライブインは、「ミツバチ族」とか「ブンブン族」と呼ばれてた道内2輪旅行者が利用する素泊まり宿が多い。
ドライブイン兼なので食事も可能。脇の大きなプレハブ小屋が宿で、洗い場みたいなところも泊り客用のものらしい。
5月では、まだ気の早い旅人はいないらしく宿泊棟に明かりは点っておらず、オートバイも見当たらない。

にわかにドライブイン正面から人が出てきた。
やおら空を仰いでいたその人がこっちを見たかと思ったら、そのままこっちに向かって歩いてくるじゃないか。

Dscf0423 「うわ~ッヤだなぁ…私有地だから出てけ!って言われそうだな…」despair

そばまで来たその人は、こっちが車の中にいるのを覗き込んで、

「どしたの?こんなところで…」

「いえ…峠が通行止めなんで…」despair

「あ~っやっぱり通行止めなったかい!こんな時にこんだけ降ることなんか滅多にないんだけどね」

「はあ…」 早く行っちゃってくれないかな…catface

「ここで夜明かししたらシバレる(凍る)よ。まだ霜も降りるし」

「えぇ…でも、行けるところもないですし…」

「裏、開けてあげるから寝てきな!布団はあるから!」

「いや…でも…」coldsweats01

「お金は、いいから泊ってきな!こんなとこいたら凍死するわ!」

Dscf0442

半ば不安に苛まれながらも強制的に案内される。
鍵を盗りに行ったご主人は、奥のプレハブの中へ案内してくれた。
決して明るいとは言えない照明を点けると両側にドアがいくつか並んでいる。
そのひとつに入ると、どこも相部屋らしく布団が数組並んでいた。
ご主人はポータブルストーブに火を入れながら

「夏休み頃だとライダーでいっぱいなんだけどね。まだちょっと早いんだ」

「なるほど…」coldsweats01

「好きなとこで寝ていいよ。寝る前に火だけは消しといてね」

「はい…ありがとうございます」coldsweats01

「ご飯、食べたの?」

「いえ!大丈夫です!」coldsweats01

「そっかい。じゃあゆっくり休んでや」

Dscf0430 話もそこそこにご主人は引き上げて行った。いつもあるのかな?こういうこと…

ゆっくりと温まる部屋の中。
古い雑誌や文庫本がたくさん積まれている他には、ポータブルテレビがひとつ。
宿というより工事現場の仮宿舎みたい。
でも車内泊が思わず布団でノビノビ眠れることになった。しかもタダで。
布団は冷たかったけれど心地よい眠りに付くには充分だった。

Dscf0457 

「すいませーん…すいませーん…?」gawk

翌朝、ドライブインへお礼だけでも言っておこうと寄ったが、いくら呼べども返事はない。

「出かけてるのかな?」gawk

Dscf0433_2 前日とは打って変わって早朝から温かい春の空。
陽射で融けた雪の雨だれのような音で目が覚めたほど。
駐車場も道もほとんど乾いてきている。
相変らずご主人のいる様子が無いので今度来たときに礼をしようと出発することにした…
建物の壁に「素泊まり1500円」とある。
峠は路肩に雪が積もっていたけれど路面は、すっかり乾いてコントラストが際立っている。
結局、この日、仕事は休んだ。

それから程なく国道は新路線の完成により、このドライブイン前を走る車は激減した。
そのうち…と思っていた自分でさえ、再び訪れたのは何年後になったのだろうか。

長雨がようやくあがった朝 ようやく訪れる。時間は経ちすぎていた。
たった一夜の思い出だけど、この変わりように寂しい。
あの後、ここで何があったんだろうか。
屋根板の剥がれ落ちた屋内でとっくにあがった雨は、まだ降り続いていた。

新しい道は、かくも残酷な結果をもたらすのだろうか…。
いくら「廃墟好き」と言ったって「廃墟」になって欲しくないものもあるよね…。あるんだよ。

はじめの朝は 生まれた日、最初の朝
つぎの朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝─ それは 大事な何かが一緒に来なかった朝

Dscf0447 朝は、いつもやってくる。一日をリセットするみたいに。
ある意味、過去への訣別として。
爽やかな朝を繰り返して、時は積み重なっていく。
友達は親の都合で引っ越して 子どもは遠くに巣立ち 親は加速して年老いていく…
歯が抜けていくように不安になって、何かを悟ったようにぼんやりした答が波のように打ち寄せる。
時の重さに気がついて 朝が来ないように祈ったとしても、それは私的な我儘(わがまま)にすぎない。
人の心は、まだまだ繊細です。他の生き物達に比べると。
皇帝も独裁者も神々の名の下にある人も…終わりがあるのは自然の中の約束事。
そんな静かで無関心な朝の訪れは、時として残酷なものかもしれません。

でも朝には悪意も差別も中傷もない…朝ってそういうものでしょう? そうだよね。
無意味に迎えた朝はあっても 無意味に明けた朝などないのだから。

Dscf0976

あの 朝日の後で また会いましょう。

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2008年10月26日 (日)

カタオモイ…

Dscf6914

心のふれあいは温かい そうあるべきです 本来は。
温泉もまた然り  だから心に浸み込むのです。

どちらも五感を通して、心地よくしみわたる…

そして温泉へ行くことは愛情に似ている。
相思相愛の状況に…
ただし、そうではなくなった「片思いの湯」のお話です。

Dscf6915 「温泉」 漠然と入るけれど、地の底で「お湯」が滾々と存在していることが不思議に思う。
火山やマグマの影響で地下水が温められているということは知っているけれど、そこまでもぐって見てきたわけじゃない。
小さい頃、家族で泊った温泉宿の駐車場にお湯の湧き出している穴を見つけて、寒い日なのに地面からお湯が沸きあがってくるのが不思議でたまらなかった。

不思議なものは、いつしか普通 そして当たり前に。
当たり前にあるものは、いつしかその価値を見失う。
水も 空気も 愛情さえも…。

夜空見上げ 立ち上る湯気に 
浮世のしがらみを忘れて
理想も屁理屈も絡め取らせて一緒に飛ばそう
湯は絶え間ないように懇々と沸き続ける
愛のように まさに愛があるべきように

でも 誰のためって訳じゃない そんな大地の温もり

Dscf6918 日本人 おそらく誰しもが温泉好き。
大きなホテルには 大きな宮殿を思わせるような大浴場
小さな温泉宿は 思考を凝らした自然と一帯の情緒

ブームは「湯」を「温もり」を愛して止まない人々を
小さな温泉宿、いわゆる「秘湯」と呼ばれるところにさえも足を向けさせる。

このところ 目新しい温泉も目に付くようになった。
「手湯」 「足湯」 そして「源泉かけながし」という言葉も聞かれるようになった。
すべての温泉が本物じゃなかったこともあったから…
その湯もいろいろあって 冷まさないと入れないほど高温の所や
加温しなければ適温に満たないところもある。
それが本物かどうかは別として加温を必要とする温泉も意外と多いことに気が付く。

Dscf6928

Dscf6939 原油価格高騰
その煽りで閉館を余儀されなかった湯があちこちに存在する。
そんな時代的犠牲が温泉の現状を炙り出したようです。
入浴には温度の満たない湯や温泉とは呼べない冷泉まで
ボイラーで加温して温泉として成り立てた。
後の世が分かっていたなら「まちづくり」は決して足枷にはならなかっただろう。
ブームとは言っても維持費の高騰に見合うほどの収益増も実らずに図らずも
温泉もどきは、窮地に陥り
温泉であっても細々と続いた秘湯宿でさえ、少しづつ姿を消していく。

Dscf6950

Dscf6924 地の中にあるものが
また 地の中にあるものに翻弄される。
なんだか妙ですね。
でも地の底の問題じゃなくて
地上にいるものの問題なんです。

Dscf6932

Dscf6937 どんな秘湯も専門誌に載るなどして情報を聞きつけた人は訪れる。
クマが出そうな人里離れた山の中の天然温泉でさえもシーズンには絶え間なく人が訪れるみたい。
情報に山の深さは重要じゃないんだなぁ…

湯は滾々と沸き続け
疲れを癒し 冷えた心を温める
湯気は優しくその場所を指し示していた。

Dscf6911

Dscf6916 閉められた湯場
やり場のない温もり
立ち上る湯気は龍の如く「癒すべきもの」を求めて城を遡っていった。
そうせざろうえなかったかのように…

行き場のない「癒し」が、やがて宿の「毒」となり 静かに建物を蝕み始める。
かなわぬ愛が自らを傷つけるように…

湯浴の乙女は寡黙な龍の怒りで湯場が廃れゆく様を物悲しく見届けねばならない。
それが 由々しき勤めに生きてきた彼女の 悲しき定めでもあったから…。

Dscf6946

この温泉は解体され更地になりました。
冷泉とはいかないまでも加温の必要があったため原油価格高騰のあおりで閉鎖を余儀なくされたわけです。
現在、国からの補助を受けて再開発の計画が持ち上がるも国や町の財政状況を考えると再開発は負担であるとか、もっと資金投入すべきことがあるとかいう住民感情も無視できません。
町では住民説明会などを得て町の資源活用と活性化を説得しています。
計画では数年後に生まれ変わった温泉がここに現れることでしょう。
そうなっても湯を愛する人たちが「行きずりの愛」で終わらないようになって欲しいものです。

Dscf1929  ここから消えてしまった湯浴の乙女。 
目に浮かんだ雫は湯気だったのか
それともそれは…

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2008年7月29日 (火)

ONE(ラブホ牧場の朝)

Dscf0408

青空の下に広がる果てしない田園風景 風に波打つ青々とした草原
思い思いに空と大地のめぐみを食む家畜たちの群れ
鮮やかな色の畜舎

ビビッドな色ながら寛大に癒しをもたらす北海道の夏景色。
健康を景色に例えるとこんな景色もふさわしいと言うと言い過ぎだろうか。
道外の人に言わせると「こういうところに住むと人間ものんびりするんじゃないですか?」というところらしい。
それくらい北海道は広いらしい。道外では同じ景色がずっと続くような場所は少ないらしいから…。

Dscf0131

Dscf0188 でも、道民は意外とあくせくしている。行先が遠すぎるからアクセルを踏んでる。モータリゼーション化で一般家庭の自動車保有率が上がる。
その影響で公共の鉄路や陸路が減っていく。
線路は錆びて、バス停は朽ちかけて緑に埋もれていく。
なおさら車を持たねばならない。ガソリンを入れるために長い距離を走らねばらないという矛盾。都市基盤の分散や集中。内勤業務でも車がないと通えない。
だから「愛」にもガソリンが必要。
ガソリンで愛を語り ガソリンで愛を深め ガソリンで愛を確かめ合う
今言うと贅沢に聞えるね。
人目を忍んで走れ!二人だけの世界に 水入らずの砦は万全のセキュリティと幸福のひと時を約束する。決められた時間の中で…

Dscf0208

この牧場は、生産も飼育も出荷もしない。
利用者が「愛」を育てるための牧場というのが適当です。
今のように大手や系列チェーン展開のラブホではなく、個人経営によるもので大掛かりなギミックは無いようです。

Dscf0261

一帯は国道からさほど離れておらず、同一ホテルが点在する地域。一昔前までは…
ここ同様、廃業や商売替えで姿を消していったようです。
この手は街外れや郊外にあるのが普通の感がありましたが、今は国道隣接や街中や住宅街にも普通に存在しています。

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Dscf0346_2 幾千の夜 数多の朝
長すぎる昼 ひたすら短い夜
止まらない時間

いろんな秘密と思い出を詰めた牧場。
やがて時が来て牧場長も去りました。

語られない思い出
記録されない夢
色あせた愛
忘れかけた言葉

たしかにあった時間
たしかに横にいた人
たしかに覚えてること

それは 「もうひとつ」のことじゃなくて
「ひとつ」だったってこと…

自然の光には縁がなかったここに最高の光が差し込む
光がこんなにきれいに見えるのは この闇があったから
愛おしく感じることは それが もう戻らないから
こんな光景に宗教感を感じるのは
信仰も建物も時が深まると廃れていくモノだからなのか─
美しいものを愛でる心と卑しいとされる心はあまりにも近すぎるから誤解されやすく混同しやすい。

慣れるということは純粋じゃなくなること…純粋を恥じるかい?夢を笑うのかい?

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廃墟ミューズは静かに眠る
「いばら姫」のごとく 緑に埋め尽くされたこの牧場にひとり

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  zutto kokoni iruyo.

※アルバム完成 右欄外からどーぞ 

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2008年3月 2日 (日)

夜は僕らをひどく悲しくする

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Dscf4513 小さい頃 大きな空 特にとびっきりの青空の下が大好きで 家の中に閉じこもっているなんて夜、寝るとき以外はできなかったよ

夜は怖いよね 習った覚えも 教えたつもりも無いのに『怖い』ということを覚えていく
それはいわゆる【自衛本能】というものなんだろうね

ひとは 創造力でいろんな見たことのないものを見えるようにしたから『怖い』ということも大きくしてしまったんだ

それを克服できたら 一躍ヒーローなのかな

そうさ だから夜は未知が多いけど 魅力的でもあるんだ

じゃぁ ここみたいに夜に青空はひどく奇妙に感じるよ

いや ボタンひとつで青空を闇夜に変えられるから ここでは誰もが神に近くなれるのさ

 

  パチン     パチン

 

Dscf4520 うん 確かにそうだね でもなんだか 『青空』箱に閉じ込められているみたい
雲が凍り付いているみたいに動かないから…

この空は外の闇を閉じ込めているのさ こちらが外で 外が箱の中
そう考えると すごく自然だ

外が中… なんだかよく分からない…

この世の始まりは全て闇から始まって光が現われたんだそうだよ
始めは闇に刺す一閃の光 それは闇に包まれていて
そこから闇と光は常に包みあうようになったんだ
はみ出したポケットみたいに裏返って…

Dscf4524 戦っているのではないの?

相手を包みあうのさ そうでなければ 夜はひどく悲しいよ

でも闇は ひとりだととても不安だよ

それが夜の魔法なのさ 人恋しくさせるための…
人は胎内の海と暗闇から生まれてくるから闇は愛情なんだね

『歴史は夜作られる』ていうのかな?

うん そんなところさ

Dscf4511 そうなると『青空』はとても可愛そうになるね

『青空』はひとを散らばらせて 夜がまとめるから 出会いの仕掛けなんだよ

そうなのかな…

青空と 暗闇と どっちが好き?

 

 

んー 今は暗闇かな…

 

  パチン

 

Dscf4525  

Dscf4517 トゥルルルルル…  ガチャッ

はい?

  あと10分でお時間になりますが 延長なさいますか?

はい

 

 

ちょっと『青空』が干渉してきたみたいだ

ハハハ…

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2008年1月16日 (水)

戦士の休息 ②

澄み渡ったというよりも塗りこめたような冬の青空の下で学び舎は静かに余生を送っています。収蔵された郷土資料も同じ宿命でここに来ました。2名の軍人もここで静かに休息しています。忘れてはいけない記憶も閉じ込めてしまっては無しも同然。彼らがここを出て再び時代の証言者になる日はくるのでしょうか?

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Dscf2498 ここが閉校になったとき、他にいくつかの学校が共に閉校となり新設校へ統合になりました。
町内に15あった学び舎(中学校は除く。中学校併置校は含む)は、現在4つ。市街地にもとよりある学校は、宅地造成にともなって生徒数は増加。学校もそうですが低学年児童用の学童保育所(放課が早いので一時預かりの目的)は定員オーバーで飽和状態は改善されていないようです。
他の新設校は郡部からのスクールバス通と近隣校区内のみで全校生徒300人以下かそれにも及ばない格差がついています。
適正配置の名の下に閉校が繰り返されてきましたが、弊害もやや出てきているようです。
少子化で児童減少のため存続の危ない学校もあれば、近郊の分譲宅地化で児童数の集中する学校もあります。

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Dscf2489 ここが郷土飼料備蓄庫になったのは閉校からさほど経っていないようです。学校も資料館も郷土資料も教育委員会管轄ですから自然な成り行きなのです。児童の使っていた机は奥の1室にまとめられてはいるものの、さほど壊されもせず現存。
体育館の屋根は錆ですっかり変色はしていますが、まだ雨漏りもなく比較的いい状態で、施設として再利用するなら大げさな手直しがなくても使えるようです。近隣の他校がそのように作りかえられているので実際には難しいのでしょうけど。
木造校舎としては定評もあるのですが…

屋根が錆びつきながらも体育館の中は、かつての威厳を保ったまま集会の日に備、隅の卒業生寄贈のピアノも校歌の伴奏を記憶しているのでしょう。

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Dscf2496 校内の掲示物も閉校時の様子が見えて昭和63年3月のあの日以来、時は動くのを止めてしまいました。
動かない校舎の中、時から捨てられた動かないもの達が集められ、行先もなく沈黙の時間割がずっと続いていきます。

空気の停止した感じは、かび臭いということではなく、閉じ込められていた空気(状態)がこわばって固まってしまったようなものです。

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Dscf2446 ねこんがいた学校も市街地に統合になった過去がありますが実感がなくて、ましてや卒業式とともに閉校式も兼ねていたので、学校がなくなるんだという実感はなかったと記憶します。
見えていたものが見えなくなってから(解体)手遅れの実感がでました。
錆びた屋根は桜との対比でみすぼらしくなってしまったのかもしれませんが、土地の功労者の一人としてねぎらいの気持は持ってあげたいですね。

旅で訪れた学び舎は、すべて母校です。記念碑が墓標になってしまわないように祈ります。『永久』が文字だけになってしまわないように…
『いつか』が『いまさら』に変わらないうちに何かをとどめていきたいです。

Epitaph

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「♪…」 体育館からピアノの音色が聞こえる

    空気が一瞬にして溶きほぐれた感じがした

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                   確かに感じた

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2007年12月17日 (月)

鋼の鳥 ⑤

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Dscf8992 北海道観光に関して次のような言葉があります。
『自然は一流 料理は二流 サービス三流』 それはどういうことなのでしょうか?
かつて、北海道は過酷な自然環境と海を隔てた土地柄から身近な異国のイメージもありました。
徒歩・ヒッチハイク・自転車・オートバイ… 気ままな一人旅の人々がリアルな北海道の魅力を道外へ伝えてくれました。 北海道を愛してくれました。

時代的にもおいそれと国外へ行けるものではありませんでしたから近場の娯楽、近郊のリゾート、近所のテーマパークが登場しだしそこそこに繁盛していったようです。
それを可能にしたのが公的資金とバブル融資でしたが、それらを当てにしなくとも充分やってこれた施設が蝋燭の灯りのように静かに消えていきました。

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それは、あらかじめ決められた終の時がきたのか、人の心が変っていったのかは、どちらとも言えません。

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ここ数十年は、一時のブームは去ったとはいえ、根強い温泉ブームが続いています。
それは、健康志向や癒しを求める心が背景にあるのでしょうが、小さな・寂れた温泉宿が意外と人気があります。
それは、現世から隔絶された空間に自分を置いてみるという点では、『廃墟ブーム』と似たものがあるのかもしれません。明らかに異なるのは『温泉』という実があり、行先は廃墟などではないということです。

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旅館は観光の看板と名目で経営されていても地域とのつながりが、色濃いものです。
地域の会合・宴会・結婚式・仕出し等の面で関係深くなっているものなのですが、核家族化や町内会の不参加。それ以前に町内会すら形成されない地域。戦後60年は人の心をそんなに変えてしまったのかとの嘆きが聞こえてきそうです。

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人間は火の元に集う生き物です。火を囲み、自然の驚異から身を守ってきました。
特に日本人は火の元に集う週間が多く、囲炉裏や鍋を囲み湯に集うのは、単に生きる術だけではなく共に暖を得ることで心を通わせる習慣が根強いのかもしれません。
寒い季節に鍋が恋しくなるのも、ひとつには心の寂しさなのかもしれないですね。

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豊かになると暮らしもレベルアップしていきますが、何か大事なものを切り捨ててしまったような気もします。

この旅館にも集いの場は浴室のほかに、屋内ゲートボール場(元宴会場?)、いくつかの大部屋と宴会場があります。

ゲートボール場といってもどれほどの利用者がいたかと考えると微妙ですが、ゲートボールが盛んになった時期を考えればしごく自然な考えだったでしょう。
見て回った中ではゲートボールがプレイされていた痕跡は伺えませんでした。

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奥のほうにある大広間へ行くとそれまでの薄暗いイメージと打って変り、室内は曇りの人は言え明るい感じです。
ここまで来ると雑木で見えなかった湖もやや見えてきます。
湖畔の広間で賑やかな宴会が催されたことも多々あったことでしょう。
背景画のあるステージも完備されて、そこに立つと荒れきってしまったこの場でも数列並んだ膳とその両側で笑う人々の顔が浮かんでくるようです。

Dscf8852 今年の北海道は年明けから雪の少ない幕開け。
夏になっても雨は少なく、一時的な断水もあり、ダムの貯水量も記録的ではないかというほど激減していたように思います。
『幻の橋』と呼ばれる糠平湖の旧士幌線タウシュベツ橋梁も今年は、湖に沈まず年間通して見ることができたのに少々複雑な心境です。『こんなことは珍しい…』そんな話を聞きました。

世の中のことなど意に介せずかのように、ここの湖は豊富な水をたたえています。
もう宴会場の歓喜も、大浴場の調子っぱずれな鼻歌も聞こえないのに…

時の止まった旅館の上空を相変わらず鋼の翼が威嚇し続けていた…

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2007年12月15日 (土)

鋼の鳥 ④

みなさま こんにちは(^-^*)/ 
廃旅館の奥に進むにしたがって正面外観からは想像のできないラビリンスの広がりにかなり興奮でっす。 ズイズイ進んでいくといつの間にか最初のところに出てたりで、ウオッ!!(゚ロ゚屮)屮 ということも…。

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温泉ホテルと言うくらいですから当然浴室に行かなければなりません。
なみなみとお湯が入っていたらいいなーなんて考えながら入ってみました。

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脱衣所。まず男湯の方から入ってみましたが何となく湿気で床が怪しい雰囲気があるので慎重に(-_-;)。 定番色のコインロッカー。でもずいぶん故障中ではないですか。マジックで思いっきり直書きしてるし…
ここだけ見ると寂れた温泉宿のイメージがあるけど、廃墟ではありませんね。
ドアを開けて浴室を拝見。

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Σ(゚д゚;) ヌオォ!? 
何? 混浴ですか? 大きな浴室内は中央に楕円形の浴槽がひとつ。その回りにコーナーを使っていくつか別な浴槽が散らばっている造りです。

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実のところは女湯側は角の小さな浴槽だけで、間は風情に欠けるブルーの衝立で仕切られています。その比率は、9:1という圧倒的大差。

「温泉いって来ようぜぃ! ●●まで…」(o^∇^o)ノ

「えーっ?あそこツマンナイ…」(*´ο`*)=3

そんなことも言われかねませんね。これでは…

元々は混浴であったのでしょうが、時代の流れとして分けることにしたようです。
しかし、この衝立は、脱衣所が1段高いというか半階高くなっているので、脱衣所を出たところから向こう側が見えてしまう恐れがありました。
 窓の外は緑に覆われています。綺麗に整理されていれば湖が眼前に広がり、シーズンには白鳥の飛び交う様も見ることができたのでしょう。今となると深い藪のほかは何も見えませんでした。

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よく室内は、他の自然崩壊っぽいところと比べてあからさまに破壊行為の跡が色濃く残っています。洗面器や瓦礫が散乱しているので足元を気にしながら歩いていると…

うぉ!w(*゚o゚*)w

彫像の頭部がゴロンと置いてあります。これはちょっとビビリました。
 これも壊されてしまったのでしょう。もともとの胴体を捜してみるとそれらしきところが女湯の方の浴槽の縁にそれらしき痕跡がみられました。

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魚(?)に跨る胸から下の部分が確認できましたが、ずいぶん惨い仕打ちですね。
ここには、心霊スポットとしての側面もあるらしいのですが、「俺ァ幽霊なんか怖かねいゼィ!」と挑みこんだが、何も出てこないので有り余った若気の至りで湯守の乙女にこんなことをしてしまったのでしょう。

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錆び

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Dscf8964浴室入口の上方に火山の絵があります。コードが下がっているからランプが点いて、沸々と煮えたぎるマグマを演出していたのかな?

この辺の湖の近くには活火山はないから他所の山ですね。ロビーの上に噴火の写真が飾ってあったので有珠山だと思います。

1977年8月7日9:12 1944年以来の再噴火は、翌年にわたり洞爺湖温泉街に大打撃をあたえました。
2000年3月31日の噴火も記憶に新しいです。1977年の噴火写真が洞爺湖の某ホテルから寄贈された形になっているので、ここと何らかの関係が深かったようです。ちなみにその旅館は現役です。`s(・'・;)

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でも、ロマン風呂との関連はあまりないようです。北海道=豊かな自然=自然の驚異=火山=温泉 という図式になるのかな?

Dscf8961 お風呂場に入浴料の表示があるのも変ですね。缶詰の値段が缶の中にあったみたいです。それに記載された家族風呂です。

贅沢にそして大胆にタイルをあしらった内風呂。
400円だそうです。普通の自宅の風呂場みたいですが、今でも家族風呂ってあるのかなぁ

蛇口をひねってみましたが何も出てきませんでした。

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乾ききった浴室内。
かつて、ここもふんだんなお湯が浴槽を満たして、厳寒の冬に氷結した湖を眼前に極楽気分を味わえたことでしょう。

枯渇したのは温泉ではなく人の流れだったようです。
それでも、前支配人から引き継がれた旅館は、息の長い経営だったと言えるでしょう。

バイブラ・寝湯・サウナ・打たせ湯などの充実した温泉もいいんですけどね。

(つづく)

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2007年12月13日 (木)

鋼の鳥 ③

なんでもこのホテルは隣の市で時計店経営者によって、ここに作られたそうだ。
どうりで最初に見た正面入口が、鳩時計っぽいわけです。 でもそれはちょっと考えすぎ…?

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 その時計店と沼の所有者の間にどのような経緯があったかは、私の計るところではないが、何かの訳で最も大きい近くのウトナイ湖を差し置いて、この沼が選ばれた。
 ホテルがこの地に誕生したのが昭和36年5月(1961)。しかし、その7年後の43年(1968年)には既に営業不振に陥り、翌年には地主に売却してしまったそうだ。
 地主は営業を引き継いで、その後20年以上の平成4年まで続け、その年3月に廃業している。
 すると平成5年の水質調査の書類があるのは、ちょっと妙だぞ…

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水質調査書があったことは、転売や賃貸の目的があったのかもしれない。
それにしてもこの施設の傷みの激しさは、どういうことなのか。荒らしが入っていたとはいえどもガラスがわれているわけでも無く、破壊といってもバーが積雪で倒壊したとか、何かを運び出したかのように廊下の突き当たりの壁が丸ごと無くなっているといったところのように自然崩落したと見えるところや何かを運び出した跡に見えるものも多い。

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ホーム・バーが屋根ごと崩落している。
たぶん一番の見所だったのかもしれないこの場所にアットホームな面影は今は見えない。 そもそもアットホームな雰囲気とは何だろうか。民宿の電話広告に『アットホームな…』というコピーをよく見るが、 売りとしては曖昧なもののような気がする。

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このホテルの中で、このバーはロッジの雰囲気もあって一番モダン。
現役のときに一度来て見たかった。ジュークボックスは故障中のまま時を越えている。

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崩落を免れた手前部分は、右が厨房とロビーの方へ向かう。
左側はジンギスカンルームということになっているが、座布団以外に往時を偲ばせるものは無い。両方の部屋の間にある衝立は、厨房があからさまに見えるのを隠すためにあった?

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壁面に並ぶ薪は、壁面飾りとして作られ、実用はない。山小屋の雰囲気を狙ったものだが、畳とはミスマッチな気がする。Dscf8950

閉鎖後に正面に揚げられた看板。現在は割れた窓を塞ぐため、目立たない建物の裏手にある。でもどこからどこまでが裏手なのか、はっきりしないほど内部は入り組んでいる。

(つづく)

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2007年12月12日 (水)

鋼の鳥 ②

このホテルの周辺には小さな湖や沼が点在します。
約3000年前頃から始まった勇払低湿原の陸化の過程で海岸砂州や砂丘の発達により、海岸線が閉鎖されて誕生した後背湿地の海跡湖だそうです。
最も大きいウトナイ湖は、渡り鳥の重要な飛来地となっており、1991年ラムサール条約により日本で4番目の『水鳥の生息地として国際的に重要な湿原に関する条約』の登録地になりました。

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Dscf8799 ホテルのある湖は古来、『チライウチト(イトウの群生する沼)』と呼ばれていました。
現在もイトウがいるのかは不明ですが、調査によるとナマズやゲンゴロウブナなど9種の魚類が確認されています。中には63㎝級のソウギョ(1mを越えることもある)が捕獲確認されています。

この沼は、実際には私有地です。現在の正式な名前では所有の林業会社の名前が付けられていますが、一般的にはこの物件の名前から『●●湖』と呼ばれています。
ウトナイ湖がラムサール条約登録とはいえ、付近は10分~15分に1度は、旅客機が上空を通るようなところです。

Dscf8908 付近の航空機騒音年間集計値表によるとこの沼は、『※WECPNL指数:71(平成17年度の値・平成6年度では76)』。
地域類型基準(専ら住居の用に供される地域か否かの判定による)では、WECPNL指数75以下とされるので基準には適合しているようです。
それにしても、やかましい事には変わりありません。
※WECPPNL=加重等価平均感覚騒音レベルのこと。航空機から受ける1日の騒音の総量を基準として、同じ騒音でもより「うるさい」と感じられる夜間・早朝について重み付けを行い、人が受ける騒音の感覚に合うように考えられた航空機騒音の評価単位であり、一般に「うるささ指数」と解釈されます。

特に、ここの沼上空は千歳空港への着陸進入経路であるため、まだ車輪は出していませんが、航空機は低空で通りぬけていきます。
沼には、白鳥も飛来するようですが、湖面が結氷するとここからウトナイ湖へ移動するようです。

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Dscf8873 総面積22ヘクタール、最大水深2m(調査書による。地区史では水深9mの記述もあります。)の沼のほとりに造られた温泉ホテルは、旅館というより温泉施設の様相が大きく、宿泊は主に団体向けであったそうです。
近郊からも比較的行きやすいところだったため、外湯は比較的繁盛していたようですが、新たな掘削により他所の温泉が増えていくと人が離れていったのかもしれません。

ここ20年の間に誕生した温泉施設は、かなりの数に上ります。観光資源としての背景もあるのですが、温泉の基準を満たさない冷鉱泉の部類を追い炊きしてまで強引に営業した施設も多く、現在では維持費がかさむことから地区行政のお荷物になり、公売に出されたり、閉鎖されたりという安易な物件もありました。
 
バブルの背景や地方譲与税交付金・ふるさと創生資金など恩恵はありましたが一村一品運動や地域活性化の盛んな時代において、地方の浪費とは言い切れないものがあります。

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それらの施設乱立が、このホテルの経営に影を落としたのかもしれません。
耳にしたところでは、経営難から営業引継ぎを条件に施設を売り渡しましたが、営業再開の様子が見えないところからもめ事になったようです。しかし、実際に営業再開することなく静かに朽ちていくことになりました。備品・調度品が多いのは、その原因を物語っているようです。

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複雑に入り組んだ館内。増築を重ねた結果の構造ですが、この形になるまでは繁盛し続けていたことでしょう。
 複雑な増築は、新旧にこだわらずあちこちで見かけることはできます。ここも現役だった当時から迷宮的で趣のある気がします。ウロウロしていいのかは別としてね。

(つづく)

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2007年12月10日 (月)

鋼の鳥 ①

普段と環境の違うところへ行くと妙に落ち着かないことがあります。
街の喧騒の中で暮らしているとキャンプ場の静かな夜がかえって気になってしまいます。
ヤン富田という実験的な音楽家(海外ではスティールパン奏者としても知られる)のアルバムで一定の間隔の無音状態を音楽として聞くという試みがありましたが、全くの「無」を意識してしまうことはあるようですね。

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Dscf8790 それとは逆に静かな環境で生活していると些細な音が気になってしまいます。夜寝ていると冷蔵庫のモーター音さえ気になったりします。その反面、夏の暑い夜、窓を開けていると外から聞こえるカエルや虫の音は気にならなかったりするので環境の急激な変化が人によってストレスになりうるということです。

少し晴れ間が覗くも雨粒交じりの初秋。『ルイン・ドロップ』を始めて、早くもこの場所にくることになるとは夢にも思いませんでした。
 よもやメジャーな物件…はて?廃墟でメジャーとは変ですね。廃墟は廃墟です。赤瀬川源平氏風に言うならば現代遺跡。

そこを垣間見てきました。

しかし、終始気になっていたのが飛行機の爆音。大きな空港が近く、ほぼ真上を着陸態勢で入ってくる旅客機のエンジン音は、この辺りで暮らす人には、もう気にならないものになってしまったのでしょうが、ねこんにとっては結構ストレスでした。
もう、前世では爆撃機に追いつめられていたかと思うほどオドオド…
事前に知ってはいたことですからまぁしかたないでしょう。熊に会うよりは、ずっとましですから…

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湖に面するホテル。しかし、雑木がだらしなく伸び放題で建物を囲い込んでいるため湖は見えません。かつてはそぐ側に見えていたのでしょう。その正面に立って2階建ての間口…さらに上に小さな窓が見えますから3階建てでしょうか。思ったよりも小さな間口に正直ビックリ。『観光ホテル』という名には似つかわしくないその様子に先行きが少し不安になってきました…

『ゴーッ』 また1機滑走路を目指す機影が真上を通り過ぎていきます。

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Dscf8796Dscf8802 真っ暗…まではいかないが暗いロビー。窓に板が打ち付けられていることもありますが、決して明るい部屋ではなかったようです。ロビーの雰囲気は、ホテルというより旅館の面持ちです。小さな間口から想像できなかった奥まで続く長い廊下を見て、期待が膨らんできました。床はあちこち抜け落ちているようで波打っています。
『ずいぶん長いこと放置されていたんだろうな…』 そう思いましたが意外な文書を発見。

『温泉の水質試験結果書』
同ホテルが検査依頼して採水検査した年が平成5年。同年閉鎖されたとしても建物がいくら古いとはいえ、14年程度でこれほど朽ちていくものでしょうか?

Dscf8797 以前、別件で閉鎖されてから数年程度の温泉旅館の内部が温水バルブが閉じられておらず、温泉の湿気が管内全体にまわり、火事現場のような状況になったところを見たことがありますが、それと同じことがあったのでは?と想像しました。
 建物が古いとはいえ、このレベルは秘湯の湯治場ではごく普通の光景なので建物の古さが旅館の衰退の原因ではないのでしょう。帳簿では外湯のお客さんは多かったようです。

波打つ床を確かめながら進んだ先に階段がありました。階上には客室、当時宿的な雰囲気ですが温泉好きには、この雰囲気もかえって風情があります。後付けの配管パイプがあちこちに見えているのは、ややいただけませんがそれは目をつぶりましょう。

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各部屋を回っていると布団部屋風のところ…ここに梯子っぽい小さな階段がありました。
外から見えた小さな窓の部屋のようです。屋根裏の倉庫かな?

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Dscf8837 『えーっ!』 何やら凄いことに。部屋の壁には一面に新聞や雑誌が貼り付けられています。
 北海道、特に戦後開拓期には、掘っ立て小屋同然の家が多く、極寒の中ただでさえ薄い壁に断熱防寒の目的で新聞紙を幾重にも貼りこんでいくということが良くあり、そのような家も見かけることがありましたが、ここは少し事情が違うようにも見えます。

丁寧に、しかもしわや曲がりを気にした作業は、ロバート・ラウシェンバーグのコラージュアートを見るようです。防寒目的と言うよりも壁紙的に張りこまれたのかもしれません。

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中にVAN創始者の故・石津謙介氏出演の広告が目に止まりました。
晩年の入院中でも病院着は拒み、肌触りの良いブランドのシャツを身に着けていたそうです。知ったときは既に老人の顔でしたが、若い頃を見たのは初めてです。

こういったものを無造作に貼り潰さず時代を語るPOPな壁面に、この部屋の主はただ者ではないな…と思いました。
(つづく)

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2007年10月21日 (日)

窓を飛び出して ③

ここに住み始めて長くなりました。
 晴れの日、曇りの日、風の日、… 相棒は雨の日以外の昼間は一生懸命ガラクタにしか見えないものを集めて働いています。 私は、そんな相棒の仕事を眺めているだけですが、彼は、そんな私を見て笑ったり、集めたものが何か私に教えてくれたりします。

「人は色々な物が欲しくなって手に入れて使うけど、壊れたり邪魔になったら捨ててしまうんだよな…。 最後のひと働きができるものでもさ。俺がぁ、その最後のひと働きをさせるんだよ。このホテルもそうだ…いじめられるために立っているんじゃぁ無い…」

Cat052  この家はいじめられているのか…。
あちこちが壊れたり、穴が開いたり、黒くなったり…
私も他の猫や犬や人に追い掛け回されたり、何かをぶつけられたりして、逃げ回ったことがありましたが、この家は逃げることができなかったんだね。一生懸命働いたのに、捨てられて寂しいんだね…
 それを思うとこの家がとてもかわいそうです。
今は、私と相棒が「かぞく」と思っていてくれるのでしょうか…

 その日も相棒は、朝早くから家の中や回りに落ちているものを集めて大きな箱に積み込んでいました。(数日前にすっかり片付いたところにもいつのまにかまた、増えている)
 ひと通り、仕事を終えると私を抱いて部屋へ戻り、いつもどおり私のミルクとご飯を用意すると『じゃぁ行って来るよ』とわたしの頭を愛おしく撫でて出かけていきました。
 足音が聞こえなくなってややして、窓際に「ぴょん」と飛び乗ると窓の外を見ました。ものすごい勢いで走り回る奇妙な生き物の脇を相棒が箱(リヤカーと教えられた)を引っ張りながら歩いて行きます。できるだけ長く見送ろうと割れたガラスの間から「ひょい」と顔を出していましたが、やがて大きい建物の影に隠れました。

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 陽が真っ赤になって落ちていきます。この家の大きな影が相変わらず走り回る生き物の上に大きな影を落としています。いつものこの位の時間には相棒は帰ってきているのですが今日は、遠くまで行ったのかまだ帰ってきません。
 下へ降りてしばらく待ってみましたが、いつも相棒の入ってくる塀の隙間をジッと見つめていても彼は戻ってきそうもありません。
 そうしているうちの陽がとっぷりと暮れてしまいました。暗くなると相棒は目が悪くなるので今日は帰ってこられなくなったのかもしれません。
 私は部屋に戻ると、いつも相棒の横たわるベッドで眠りに付きました。

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『ウォーっ 怖ぇーぞ!』 『何ぃー?何んかいたぁー?!』

私は飛び上がって驚きました。声はすぐそこです。『アラシ?』 まだ、相棒は戻っていないようで、私はあわてて壁とベッドの隙間に飛び込んで小さくなりました。

『おぉーっ?誰かここに住んでるみたいだぞ!』 部屋にアラシが入ってきました。

『なんか臭ぇなー!ゴミだらけじゃん。』 部屋の中が灯りで照らされます。

『汚ったない! 早く出よう!』 アラシが何かを蹴飛ばしてガラガラと激しい音が部屋に響きました

『そういうなよ。 凄っごい部屋があるんだよ。そっち行こ!』 扉を乱暴に『バタン!』と閉じるとアラシの叫び声は遠ざかって行きました。相棒のいないときにこんなことになるなんて…私は小さくなったまま、隙間で震えていました。

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Dscf9099 もう、どのくらいたったのでしょうか…
何度か昼と夜を繰り返したようですが、相棒は帰ってきません。
迎えに行こうにも相棒が私のためにいつも少し開いておいてくれる扉は「アラシ」に閉められてしまい、私には開けられません…
もうお腹もすっかり空いて、喉もカラカラです…

次の日、強い風と雨が降りました。窓から吹き込む雨を舐めて少し元気になりました。
相棒は何処へ行ってしまったのでしょうか?窓から外を見ると空が怒り狂っています。

 私はすっかり疲れてしまいました。お腹はもう空いていません。ただ、凄く疲れてしまって起きることができません。相棒が帰ってきても飛んで迎えに行くことが今の私にはできそうもありません。それだけが心残りですが、今はもう少し眠ろうと思います。

目が覚めると良いことがある…いつもそう…そのはずですから…

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Cat056 なにやら暖かい感じがして、目が覚めました…
窓の外が明るく輝いて、でも不思議とまぶしくない心地の良い暖かさです。

一眠りしたので体もすっかり元気になったようです。窓の外が気になって窓際に飛び乗ります。窓の外は、いつもの生き物が走り回る風景ではなく、遠くまで広がる草原でした。
無性にあそこへ行ってみたい。あそこでなにかが私を待っている…そんな気がして私は、窓の外へ飛び出してみることにしました。振り返ると薄暗い部屋。私と相棒の楽しい日々が詰まった部屋です。ここにいても相棒にはもう合えないのかも知れません。

ネズミを捕るときみたいに体に力を溜めると一気に窓の外へ飛び出しました。
まるで鳥になったみたいに体が軽くスイーっと飛んで行きます。一瞬、後を振り返るとあの思い出の大きな家がどんどん小さくなっていきます。

『ありがとう…』 

向こう側の丘にトンと降りて、もう一度振り返ると家は消えていました。
走り回る生き物もアラシももう会うことはないのでしょう。

『帰られなくてごめんな…』 待ち焦がれた声に振り向くと相棒がいました。
見違えるようにすっきりした姿の相棒が…

私は答える代わりに差し出した彼の手に愛おしく頬ずりしました。

(おわり)

Photo これは、かなりできすぎた話なのかもしれません。
落書き、破壊、放火(?)にさらされて執拗に荒らされたビジネスホテルは、『心霊スポット』の名を記せられて元の姿も分からぬほどになってしまいました。
 この物件の歴史と真実と虚実は調べることが可能なのでしょうが、私は、あるひと部屋が気になりました。荒らされて、汚されまくり憎念と失意の巣窟のような建物の中で大量の生活感のあるゴミの袋の山と比較的きれいに保たれている室内。苦悶の表情の無い猫の亡骸。それらを観察して、このネガティヴな空間に小さなドラマを感じました。
 ですから、このお話は100%脚色によるもので、真実とは異なるのかもしれません。たぶん、そうなのでしょう。

 都市の比較的郊外とはいえ、近代化に包み込まれた空間の中にこの廃ホテルがいまだ存在し続けるのは、地権者の所在が不明という単純なことだけではないのかもしれません。私にはここが世の中の罪のようなものを一身に受け入れている想念の墓場にもみえてきます。 噂や真実は、この前で、もはや必要は無いことと私は考えます。

 火災の跡は、ホテル営業中のものか廃墟後のものかは、はっきりしません。ただ、ある階が猛烈な炎に包まれたことは事実です。よって、鉄骨およびコンクリートの強度は非常に脆くなっています。事実、取材中壁の裏で崩落音があり、壁の一部がビスケットのように簡単に割ることができました。無事に戻ってこられたのはあるいは幸いだったのかもしれません。あなた自身ここに行くことがあったなら『心霊話』の根拠にだけは、なりませんように…

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2007年10月19日 (金)

窓を飛び出して ②

ここは、奇妙な家。 どこまで行っても同じ部屋ばかりです。でも、どんどん上まで上がってガラスの割れた窓から外を覗くと今まで行ったことのない遠くが見えて、心地よく潮の香りもしてきます。

とりあえず行くあてもない私ですから、犬や縄張りにうるさい奴らのいないここは気に入りました。『相棒』が私に色々食べ物をくれるのが、一番の魅力でしたが…

Cat018

Dscf9091 『相棒』は、よく私を相手に話をしました。
「しごと」 「かぞく」 「ゆめ」 「わかれ」…その意味は良くわからないのですが話しながらも嬉しそうだったり、悲しそうだったり、人間は話すと気持が大きく変わるようです。

 『相棒』はこの家の中や回りに転がった古いものをたくさん集めていました。私が食べるものを探しているときに見た袋の山にも同じものがたくさんあったのを思い出します。食べられそうも無いので無視しましたけど…
 彼は集めたものを袋にまとめたり、ひもで結わえたりすると大きな箱に積み込んで『行ってくるよ』と言ってその箱を引っ張って何処かへ運んで行きました。そんな時、私は相棒が少し開けておいてくれるドアから出て、家の中を探検したり、居心地のいい場所で日向ぼっこをしたり、部屋で眠っていました。すると『相棒』は食べ物を抱えて帰ってきます。

目が覚めるといい事が起こる、そんな毎日が楽しみです。

 私もたまには、スズメを捕まえて『相棒』のところへ持っていきましたが、彼は笑っているだけで食べることはありません。どうやら口に合わなかったのでしょう。

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Dscf9114  相棒がいうところでは、この大きい家は、人間が遠くまで出かけたときに休んだり、眠ったりするところらしいです。縄張りを離れた所に来ると私も不安なので、こういうところがあるのは便利です。
 でも、相棒以外の人間が来ることは無かったので人間はみんな自分の縄張りへ帰ってしまったようです。 相棒もいつか帰ってしまうのでしょうか… それを考えると少し淋しくなります。

 夜になると窓から見える景色は色とりどりの光が遠くまで広がって見えました。はるか下には足の速いネズミのようなものが細い線の上を行ったり来たりして唸ってる。
 相棒は夜は目が見えないようで、暗くなるとすぐ眠ってしまいます。時折、何かを呟いているようですが私には難し過ぎてわかりません。泣いている様に見えることもあります。
 そんな時、私が首筋のあたりに寄り添っていると安心して静かに眠れるようです。思えば、それが相棒に私ができる唯一のことだったのかもしれません。

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Dscf9132  ある日の夜のこと、窓の外に見えていた月がどこかへ隠れてしまったころに大きな物音がしました。
家の中に何かが入ってきたようです。
 しばらく、音が近づいてくるのに聞き耳を立てていましたが、相棒が突然目を覚まして『アラシだ!』と言うと飛び起きて、手馴れたようにドアの前に次々と物を積み上げていきました。
 外からは、何か恐ろしい獣の奇声や笑い声が聞こえて、何かが壊れる音がひっきりなしに聞こえて私は思わず小さくなっていました。

 相棒はドアの前でやっていた仕事を終えると『大丈夫だからな…』と言って私を懐に入れるとベッドの角で私を抱えるように座ってジッとしていました。この部屋のドアが叩かれたときには、さすがに私も震えましたが、相棒は黙って私の頭を撫でています。 やがて音が遠ざかる頃には私は相棒の懐の温もりで眠ってしまいました。その夜は、母の夢をみました─

 次の日に部屋の外を見ると昨日までと打って変わって物が散らばったり、壁に穴があいていたりしました。そんな光景を見ても相棒はさほど驚かず、「いつものことだよ」とでも言うようにまた、缶やビンを集めだしました。

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 その後も『アラシ』というものは何度かありました。でもドアの外を通る恐ろしい獣の姿を見たことは、ただの一度もありません。

(つづく)

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2007年10月17日 (水)

窓を飛び出して ①

Cat017

私は猫です。名前は分かりません。
ただ、彼には『相棒』とよばれていたので、それが自分の名前なのでしょう。
母親の顔、生まれた場所、そのどちらも覚えていないのですが、物心付いた頃に数匹の仲間(兄弟なのか?)がいました。いつしかその仲間もどこかへ行ってしまい、孤独になりました。
かすかに記憶に残るのは、母らしき猫に首の辺りを咥えられて何処かの家に入って行ったことと、私に手を差し出してきた大きな黒い影。それだけです。

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Dscf9145  相棒は私とは違う生き物で、私よりもいろいろなことができました。
でも彼は私に対して、体等のものであるかのように接してくるので悪い気もしませんでした。何よりもそのときの私は、毎日水ばかりの食事でほとほと疲れ果てていましたから彼は救いの神だったのです。

Dscf9088  その日、強い雨が降り始めて私は雨を凌げるところを探していました。空腹で足取りもおぼつかないのでとりあえず静かな場所で休みたいと壁の隙間をくぐって1軒の大きな家を見つけて飛び込むと、大きな椅子の上でとりあえずホッとしました。食べるものを探していたので、ついいつもより遠くへ来てしまい、不安と空腹の体は疲れきってすぐに眠りについてしまいました。

いい香りに気が付いてふっと目が覚めると少し離れた椅子に彼が座って食事をしていました。
大きい体で長い手を器用に使って、彼は四角い箱から自分の口の中に何かをかき込んでいます。
それが何ともいい香りで、私は彼の気配を感じ取れなかったことも恥じることなく、彼を凝視します。

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Dscf9084 『おぅ!猫! 目が覚めたか?』 と彼が話しかけてきましたが、匂いに気が入っていて私は喉を『グゥ』と鳴らすだけでした。
『お前も腹が空いているのか? 口には合わんだろうが、半分やろう』
そう言うと彼は手に持っていた箱を自分の足元において、建物の奥へ消えて行った。それを見届けて私はそろそろとその箱へ近づいて香りを確かめると一心不乱に食を満たすことに集中。このとき、さっきの彼が近づいてきても全く気がつかなかったことでしょう。
 箱の中身がすっかり空になると体が温まったようで安全な場所を探すと、また深い眠りに堕ちました。  

 翌朝、騒がしくも聞きなれた大きな虫の音で目が覚めて、外へ出ると夕べの雨水溜まりで喉を潤して日向ぼっこをしていました。ここには、縄張りを誇示する連中もいないようで気が休まります。
『ガシャン!』という音に驚いて身構えると夕べの彼が奥から出てきました。両手に赤やら青やらの細長い物をいっぱいに詰めた袋をいくつも持っています。

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Dscf9090  彼は回りを見回して私を見つけると、
『猫! まだいたか! よっぽど腹が減っていたんだな…』
そう言うと、ネズミ色の体の彼は壁の隙間から出て、何処かへ行ってしまいました。
『ここで、一体何をしているんだろう…?』私は彼に興味を持って、この家を探検してみることにしました。

Dscf9119  上からは色々なものがぶら下がっていたり、奇妙なものが沢山散らばっていて私の好奇心を充分満たしてきます。山道のようなところを上へ上へと向かって行くとさっきの彼のいたらしいところが感じられました。
 その場所を突き止めることは容易にできましたが、大きな鉄の扉に阻まれて向こうを伺うことができません。それで、他の扉の開いた部屋を見たり、日当たりのいい場所で体を温めたりしているうちに1日経っってしまったようです。

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 陽が傾きかけた頃に彼が戻ってきました。隣のドアから様子を伺うと

 『こんなところにいたのか…もう、行っちまったと思ったよ』

 その日は、再び彼からのおすそ分けをもらい、ご満悦。
いつしか、彼と相棒同士の暮らしになるにはそう時間はかかりませんでした。

(つづく)

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2007年9月28日 (金)

幽霊ホテルと呼ばれて… ⑤

そもそも、幽霊は寂しいところに出るのか?
幽霊が出るから寂しくなったのか…

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Dscf5149  建物は、人を含めた回りを記憶する。それは、こどもの日の柱の傷や落書き、悪戯の障子の穴のように具体的なものもありますが、静かに…それは乾いた土に雨が染み込むがごとく行われていくようです。
 何かのきっかけが、その記憶回路に触れたときに現出するのが、あるいは『幽霊』と呼ばれるものかもしれません。
 そうでなければ呪いの一念があるにしても軽率過ぎるほど世の中は幽霊だらけということになりませんか? 霊を愚弄する気はありませんが噂を真実とするならば、呪われて然るべき者は既に呪われていなければなりません。

Dscf5164  このホテルは、業績不振のためやむなく閉鎖されました。幽霊が出るため皆逃げ出したのではありません。時代を作り、時代を見届けることなく沈黙したのです。
 ここでは結婚式披露宴も行われ、幸せを誓い合ったふたりと祝福する大勢の笑顔があふれた場所でもあります。
 思い出のホテルが今では幽霊ホテルだなんて笑い話にもなりません…

  幽霊とかUFOとかUMAとか超能力とか世の中は不可思議なもので溢れています。
人間の想像力は、ずーっと先に行ってしまってそれらのものは、銀幕の中などにあたかも現実のように現われては消えていく…でも、その確信には未だ触れていないだけに心くすぐるのかもしれないですね。
 『心霊』を探る旅は、ある意味現代の民話を探る旅でもあるのでしょうか。
さすれば我々の廃墟物件を訪ねる旅は、記憶の再生の旅と言えるのでしょうか?

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Dscf5213 その答えは摑んだようで、まだ摑みきれていない。
 何か宝探しのような感もあります。
 自分の記憶の底にある、無くした引き出しの鍵を探している気がするのかもしれません。
 そんな『デジャヴ』というような感覚が癖になったのかな。

 まだ、物心付いたか付いていないかの頃にここへは来ているらしいので、このホテルに関しては、『デジャヴ』は当てはまらないでしょうが…

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 ここでの少ない記憶は、自分の頭ほどの大きさで栗の形の堅焼き煎餅を一生懸命食べていたことです。

乾ききった浴室を見ていたら、記憶の引き出しが、ひとつ開いた─ 

 

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2007年9月27日 (木)

幽霊ホテルと呼ばれて… ④

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Dscf5182  閉館されて10年以上経ちますから、現在のような管理がされていない頃は、心霊スポットとして昼夜問わず、頻繁に人が出入りしていたようです。
 まだ、ねこんが「そんな物騒なところ一生いかないぞ!」と思っていた頃は、あちこちのドアはまだ開けっ放しでした。現在は、基本的に厳重に何度目かの板張りがされています。
 上の階は外から見るとガラスが割られて、レースの白いカーテンが通り抜ける風にはためいています。あるいはそれが幽霊に見えないこともない…
 お風呂場の備品がロビーに散乱しているのは、そういった「不可思議空間」を作るための演出なのだろうか?

Dscf5148  心霊スポットである所以は、先に(①)語ったように周辺で起こったことが起因するのか、他に何か言われもあったのか、ここに関しては元のはっきりしない噂がありました。
 「館内で血まみれで白目の女に追われた」とか「階段や廊下でスッと動く影を見た」という話は聞きましたがいずれも何度目かの又聞きで真意の程はわかりません。

Dscf5140  それを確かめようと思ったわけではないですが、既に夜も深まってきました。階段オンリーで似たような館内客室を歩き回るのも厳しくなってきたので、とりあえず最上階まで行き、降りてくることにします。
最上階近くなっても階段を這い回る黒いホースは、ずっと続いています。階段が終わってみるとそこはもう屋上。謎のホースは、この近くにある集水槽に繋げられています。
 この水槽の水を抜くために繋げられたようです。うっすら異臭もあるので中はどうなっているかと覗いてみると出口を見失った鳩の死骸らしきものが10羽前後。猫と同じく鳩もやたらと廃墟に入りますが出口を見失ってしまうようです。

 ここからは、別の階段で屋上に抜けられます。町や民家の灯りが遠くに見えて、まさに地上の星のごとくの光景が闇の中、広がっていました。でも、夜は孤立した感がやはり強いです。

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温泉でありながらどこかドライな印象がするのは、風化や破壊が進んでいるだけではないようです。旅の折、旅館に到着して部屋に荷を降ろしたときのホッとする感じが廃墟となってしまっても残っている気がします。部屋が「和」でありながらビジネスホテルのような無機質な「箱」という印象が拭えない、なにかが物足りないのでしょう。
それは、立地条件や箱の大きさでは無いと思いますが…

(つづく)

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2007年9月26日 (水)

幽霊ホテルと呼ばれて… ③

 さて、地元のグチみたいな話はこの辺にしましょう。実際に内部の状況ですが、次のことは覚えておいてください。

①監視カメラの位置が分かる画像は、公開しません。
②内部に入った方法と経緯は公開しません。(通常は無理です)
③記録したつもりで自分が記録されます。運が良いわけではありません。
④警告板はハッタリではありません。
⑤ここは廃墟ではありません。荒らされただけです。

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Dscf5168  ホテルは倒産したわけでは無く、業績の悪化から廃業になったものです。然るに当時の現状のまま町に寄付という形になっています。荒らされてしまった経緯には、所有権を公に誇示しなかった町側にも幾らかの責任もあると思いますが、経年のわりには荒らされたところは少ないと思うべきでしょう。もちろん大半のガラスは外部から投石によって割られてしまっていますが…

 厨房は食材こそ残っていませんがフライパンや食器などがそのまま残っていて、ついさっきまで調理中だったような気さえします。若干、割られた食器や倒された業務用冷蔵庫はありますが、整理して閉鎖したわけではないようです。

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Dscf5128  喫茶兼バーが一箇所。大浴場はともかく夜の楽しみが、かくも寂しい状況では確かに客も遠のく気持は否めません。近くの温泉街の各名門は、館内にゲームセンター・ナイトスポット・ラーメン店・寿司店などを供え、夕食後のお腹と心の隙間を満たしてくれるのですが、ここでは、どうしてもロビーで飲んでいる感もぬぐえず、かなり郊外なので外は漆黒の闇。かすかに遠くの街の灯りが見える程度です。
 それをいうなら一般の小さい宿はどうかというと利用する側の気持というのがあって、少し寂れかけた宿にはそれなりの風情があって、そういう雰囲気に浸りたいときや大きい温泉ホテルならちょっとしたテーマパーク的気分を味わいたいものです。
 その客の心理を生かしきれなかったのか、はたまた建設会社の経営でノウハウで大手に太刀打ちできなかったというところでしょう。
Dscf5179 客室が全て和室というのも若干問題としてはらんでいたように思います。 

 それでも料理に関しては、研究していたようで単に広告やメニュー用とは思えないほどの料理の写真が残っています。その努力で各種団体、機関が会合に利用することもあったようです。それも頻繁にあったわけではありませんが…

Dscf5209Dscf5141   当然のごとく、エレベーターは現在動きません。客室へは階段を使うことになりますが、建坪が小さいながらも階段があちこちにあり、業務用でもふたつ。客用でもふたつ。上がる途中で、防火シャッターが硬く、動かなくなっているところもあり、階段をあちらへこちらへと動くことになり、迷いかけてきます。階段の途中、下は何処まで続いているのか太いホースが延々と最上階目指して伸びています。
 「何に使っているんだろう…」その答えは後として、客室の方を見ていきます。

Dscf5138Dscf5144 元は部屋の中の備品だったものがあちこちに散乱。賊がフロントあたりを物色して見つけた鍵で部屋の貴重品入れの金庫を開け回っていたようです。お客がいないところの金庫に物が入っているとも思えませんが…
 後は部屋電話やスリッパや壊された照明器具、そして古めかしい小さな鏡台があちこちに散らばっています。

 廊下は一見、洋風に見えるのに部屋は全て畳敷きの和室。上の階の一等室すら和風です(ふた間あるだけ)。確かにまた来たいとは思えないでしょうか。
 それでもお風呂はユニットバス。あちこちの窓が投石で破損している事もあり、鳩が侵入したらしく、羽も散乱しています。

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Dscf5157  もうひとつ気になるのが各階の備品庫と思われるところには、ポータブル灯油ストーブが部屋数分供えてあったことです。ということは集中暖房ではなかった?
窓の下には寒気用のヒーターはあるのですが…
 湯治宿でもあるまいし、これはちょっと辛かったでしょう。

(つづく)

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2007年9月23日 (日)

幽霊ホテルと呼ばれて… ②

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Dscf0747  このホテルは、幹線道から見ると、そこそこ大きく見えます。
正面から見て間口が大きいのですが川に向かっての奥行きがあまりありません。
河川敷で道を挟んで反対側は高台というか、大きな崖上になっているので奥行きを出せなかったようです。
 故に全ての客室を始め、浴室、宴会場、食堂は川側に面していて、雄大なロケーションと秋鮭の遡上を部屋にいながらにして、堪能できたわけです。特に浴室は奥行きに乏しい土地ながらも川に向かって張り出した形で作られ、大平原の湯にふさわしい景観を作っていました。

Dscf0746  しかしながら、その光景以外に売りといったものに乏しく、ホテルにありがちなバーも中途半端で、ホテルの回りは闇ばかりの孤立した地域であるため、近場の温泉街の方に客足が流れていってしまったようです。
 なにも、環境に恵まれていなかったのはここだけではなく、努力と工夫で自らの『売り』を作っていったホテルや観光地は、たくさんあります。では、ここは努力を怠っていたのかとなると少し事情が違い、かつて団体の北海道観光がもてはやされていた頃は、ツァー会社との提携で、パック旅行の宿泊地には組み込まれ、紅葉とアキアジという組み合わせも成立していました。経営には申し分ない集客はあったわけです。

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Dscf5128  ただ、近年北海道観光(団体旅行)に関して、こんな寸評もありました。
『自然は一流 サービス二流 料理は三流』 こんな話をそうだと素直に受け取れないものでしょうが、実際こんな評価が聞かれるようです。
悪いものを出していたわけではなく、素材が良くなかったわけでもなく、ただ安定の裏でニーズがどんどん変化していった事に気づくのが遅れてしまったのではないでしょうか。
 冬季のスキーツアーにしても集客が激減して経営自体が危ういのも何か対策に出遅れてしまった感があります。
 ジャガバターがいくら美味しくても、絞りたての牛乳が美味しくても、ワイルドにジンギスカンを振舞っていても、それだけではダメになってしまったということなのでしょうか。

Dscf5133  そして、幹線道の整備や高速道路の敷設。それによって旅行期間が短縮されて目的地一直線になり、宿泊の拠点とされたところまで素通り。中間の昼食地点も素通り。隣接する商店もコンビにも煽りをうけて閉店して、大手温泉街のお膝元で栄えた街は、まるでゴーストタウンのようになったところもあります。せわしない(いそがしい)日々の暮らしの中、旅もまたせわしなくなってしまったのか…。

 とある、東京を活動拠点にしていたアート作家が道東の大手温泉街からわりと近い、ある町で自分の作品群を網羅した私設美術館を開いています。
 毎年、氏のところに行って話をしますが、こんなことを氏は言っていました。

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Dscf5129 『いつまでも、同じ木彫りを並べていたんではダメだと思うよ…』
その言葉には、深く大きい意味があるように思います。
北海道観光も徐々にではありますが、変化はしてきています。個人向けのツァー、オプションなど。あるいは世界遺産、北海道遺産、ラムサール条約関連地、WRC観戦関連等…。観光の材料はそろえど人の急流は緩やかにならず、淀むことも無くただ急激に引いて行きます。経済効果数億円などという話の元、事業が展開してある意味成功を収めても、経済効果の結果はあまり聞かれない。
 その影で時の変化にもまれてバラバラになって堕ちていったところは、時代の篩にかけられた、仕方の無い犠牲者だったのか…?

 少なくともそれらのことは、幽霊の仕業などではないようです。
脅威は内から出たのか、外から来たのか…

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(つづく)
 

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2007年9月22日 (土)

幽霊ホテルと呼ばれて… ①

Gosthotel
 そのホテルの窓から外は、いかにも北海道らしく地平線まで田園風景が広がっている。
そのロケーションとホテルの間には、大きな川が横たわり、西から東へ流れる流れの途中に堰堤があり川面の高さに段差をつけている。
 この一帯は、かつて稲作の盛んなところで、田に川の水を誘引するために築かれたものです。現在、稲作はほとんどなくなり、当時の面影を知るのは、畑の端に見える水門やこの堰堤だけです。

Dscf0735  この川にアキアジ(秋鮭)が遡上し、堰堤を必至に飛び越えていく光景が見られるということで、まだ娯楽の少ない時代には近郊の人達でごったがえし、川の中も外も大変混雑していたようです。地元の建築会社により建設・経営された当ホテルは、近隣の大きな温泉街からは離れながらも堰堤効果で集客力には恵まれました。

Dscf0737  大きな川では何かしら事件・事故があるものですが、この川も同様、過去に堰堤付近で女性の水死体があがったことがあったそうです。それが事の始まりなのか夜間、男性がひとりでこの辺りを車で通ると幽霊を乗せるという話が伝わり、心霊書で紹介されたこともありました。
 決定的なのは、当時一世を風靡した『恐怖の心霊写真集』の続巻において、アキアジの遡上の風景の上に青白い顔の女性が死装束のような白い着物の姿で重なっているという驚愕の写真です。

Dscf0734  噂はありましたがホテル自体がその影響があったわけではなく(噂は出たとしても)、一般人の生活向上による娯楽の変化や交通事情の変化で、あらゆる観光地が何かしらの影響を受けました。当ホテルも集客力の落ち込みで廃業を余儀なくされて、残った建物は町に寄付という形にして、現状のまま託されました。
 町も『道の駅構想』や近隣の自然公園の『サブコア施設』としての思惑もあり、受託しましたが、町自体の第3セクター事業の売り上げ落ち込みや全道的な地方譲与税給付金の落ち込みで、ホテルの再建には消極的になり消防訓練に使用したほかは、特に具体的な利用はありませんでした。実際通行人にとっては、廃ホテルとしてしか写らなかったことでしょう。

Ch

 堰堤・水死体・幽霊の出る道・心霊写真…それらの出来事と荒んだホテルを繋げるのは、ごく自然な話なのかもしれません。
 やがて、「どうしても幽霊と戦わないと生きている意味を見出せない」人たちがここを戦場にしてしまいました。彼らにはここが町の管理下にあるのは知らなかったのでしょう。
 町側もバリケードの強化、警告板、夜間照明、防犯装置、定期巡回などの対策を講じましたが、いたちごっこの様相です。

Dscf0749  その間、町はホテルの再利用を外部へアプローチしますが、既に荒廃した有様と度を越えた老朽化で視察の団体から良い返事を得ることはできなかったようです。取り壊すにしても解体見積もりで2千万の出費は、現在の町財政事情では、出せないものらしいのです。
 期を誤ったのか、悪戯の度が過ぎたのか、ホテルは再利用の道も無いまま、無残な姿で、この場所に残っています。

 投石で割られたガラスや薄汚れた壁をさらしているホテルの近くでは町営のパークゴルフ場がおおいに繁盛して、ホテルの前は利用者の車でいっぱいという光景は、とても皮肉に見えます。

 友人とホテル脇の幹線を通ると「ここ、幽霊が出るんだよね」と言った話を良く聞きました。それ以上のことは誰も知らないようですが、噂は本当なのでしょうか?

(つづく)

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2007年8月 8日 (水)

夢破れて山●荘 千秋楽

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Fushin こうして長きに渡り紹介してきました『山●荘』。
事実と虚実。夢と挫折。光と影…いろいろなことが錯綜しているこの地でした。
霊的なものは、所詮『信じる・信じない』にしか行き着かないと思います。
事実もこの地に暮らす人たちにとってすでに曖昧な記憶となっているようです。
でも確かにここに「山●荘」は存在していました。

 地域の厄介者・心霊スポット・廃墟の聖地・サバイバルゲームゾーン・廃棄物捨て場、そして不審者情報多発地域…
 これらの肩書きはすべて廃墟化後に付けられたものです。
 静かに終の日を待ち続ける館に心があるならば、何を思うでしょう。

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「祝福に包まれた誕生の日」 「人々の喜びに満ちた笑顔」 「駐車場いっぱいの車に取り囲まれた日々」 「事故」 「衰退」 「再出発」 「閉店後のテーブルに静かに座るオーナー」 「そしてみんないなくなった」 「珍客の来訪」 「荒っぽい連中」 「大きな傷」 「終の予感」「共に暮らした子ども達」

Note

そう、ここには子どもの暮らしがありました。従業員の子と思われる二人姉妹がいたようです。今でもここでのことは覚えているのかな…

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『夢のテーマパーク』と『殺人ドライブイン』
その両極端な名の中から見えるのは、潮のようにうねり、激しく引いていった人の心。

 学習ノートの『花の観察』に使われた花々は山●荘の庭に咲き乱れていた花なのでしょう。
この『山●荘』をバックに少女が目を丸くして花を覗き込んでいる光景が浮かびます。
大きな100点花マルは、この子が目をキラキラさせた光に満ちた日々を想像させます。

夢の跡 ここには確かに夢があったんです。

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2007年8月 7日 (火)

夢破れて山●荘 ⑥

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さて、2階に登ってみようと試みます。上まで『コ』の字形に据えられた階段ですが、裏手崩壊の影響をまともに受けているため、目の間にするとかなり怯みます。
 最初の踊り場までの横板は全て無くなっています。下に落ちている様でもなく、側板は原形のまま残っていることから崩壊とは別に侵入防止のため意図的に外されていたのかもしれません。その上の踊り場の床もずれて傾いています。

Dscf5601このシーンを始めて見たのであればたぶん、登るのはあきらめていたでしょうが、我が師匠から『バランス感覚を鍛えて高みを目指せ!』とのお言葉もありました。
 壁際から行くと次の段が遠くなるので敢えて向かって左の側板から…
 板厚およそ60㎜。よろけたらアウト。装備の緩み等チェックをしてゆっくり登りだす。

 こんなに傾いているのが嘘のように揺れもきしみもありません。これはスムーズに行ける…と、思ったら上の1段は『虫食い』。なんとか床の無い踊り場を抜けると次の段は大きく傾いています。ここは手すりもあり、意外と頑丈なので2階まで到達できました。

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Dscf5590  上は、客室になっていて外観や1階から想像できなかったほど全体が斜めになっています。ちょうど正面から見た三角部分の奥辺りです。置人不明の花束が供えられていた場所もこの辺らしい。この辺りの床からちょうど宴会場の上部に当たる奥へは雨漏りにより床板の腐食が進み、明らかに抜けそうです。梁の位置を確認できないためこの奥は断念します。この奥がおそらく客室らしいのですが。
 正面の三画部分の部屋は特等室のようで広さと窓から見える田園風景が素晴らしい。現役時もこの風景が見られたことでしょう。これはいい季節に来ました。夜中に来るにはもったいない。
 隣の部屋は客室ではなく遊戯室のようです。中央の掘りごたつ状の部分にあるのは自動麻雀卓の成れの果て。外はテラスに通じて浴場の屋根が見えます。意外に屋根板が飛んでいました。続く客室は畳部屋です。ここからも田んぼが一望できます。山を背にして緩やかに低くなる地形で視界が遠くまで広がります。

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Dscf5596 

 ここの経営が思わしくなくなった原因は前を走る道が接合する国道の整備により交通の多くが流れたこと、利用者のニーズに付帯施設が合わなくなってきたこと、地元シェアの伸び悩みがありました。取材では実際行ったことは無いという方もいたので…
 こういったところが衰退に向かう原因は第3セクターにしても一般施設にしても地元シェアやリピーターが付かなければほとんどだめになります。さもなければニーズとリニューアルのいたちごっこなのでしょうが。

 現役時は知りえませんが『山●荘』後の『香●館』はがんばったのではないでしょうか。
ただ施設が巨大であるが故、経営縮小にも限界があり、呼び物であるべき温泉も維持費の莫大なお荷物となってしまった…

『夢のテーマパーク』はこの地に生まれてからおよそ20年で『夢の跡』になりました。
それでも皮肉なことは没してなお訪れる人の耐えないことです。少なくとも客ではない人達の…

(次回、完結)
 

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2007年8月 6日 (月)

夢破れて山●荘 ⑤

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 それではDVDでは紹介されなかった危険地帯へ入ってみましょう。
ここに撮影時深入りしなかったのは、物理的に危険があったからでしょう。
さすがのストーリーテラーも物理的恐怖は苦手と見えますが…

 それにしても床の没落が多い建物です。おそらく鉱泉の漏水が床下に入り込んでいたのでしょう。浴場付近が最もひどくてロビーへ向かう回廊の途中まで及んでいます。
 両側の部屋はさほど影響していないので基礎の枠組みの形に浸水していったのでしょう。

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Dscf5585  しかし、ここでまた奇妙な感があるのは、建物の基礎に感じたことです 
 山沿いのこの地でしかも回りは水田地帯。
地中に浸透する雨水の排水が決して良いと言える地域ではないのではと思いました。簡単に水が抜けてしまう地盤であれば稲作には向かない。ましてや暗渠排水など入ってはいないでしょう。(対して水はけが良すぎる地盤はザルと呼ばれ、稲作は向かない)
 当然地中に含まれる水の量が多くなりがちで、地盤は緩みやすい。
 その地盤に対し、この『山●荘』は基礎に違和感があります。これだけの建物なのに基礎が低く、布基礎(主に一般住宅に取られる工法。難しいので興味のある方は調べてみてください。)らしい。奥の大広間に外から入るのに簡単にひとまたぎというのは、明らかに基礎も低く、床下換気も悪く、厚さも建物に合わない気がしました。それは地盤に対して有効な基礎工法ではなかったように感じます。地盤の強度などにより工法は変わりますが、ある部分から建物全体が大きく傾いているのは、基礎の沈み込みと思われ、ここには適切な工法ではなかったのでは? しかし、70年代初頭の建築常識と現在は必ずしも一致はできません。少なくともいまだに立っていられるのですから

 別棟の半焼していた棟は別としてもロビー奥の崩壊は単に積雪による倒壊ではなく、基礎の沈み込みによって剥がれるように倒壊したのではないでしょうか。築年数がそれなりとはいえ、壊れ方は尋常ではありません。 近年になって欠陥住宅ということが聞かれるようになりましたが手抜き工事とは別に技術の伴わない工事があります。例えば、2階建ての住宅しか建てたことの無い業者は技術的に3階建ては可能(1階増やすだけという考えから)ですが強度計算からすると各階の柱や基礎の構造は変わって然るべきなのです。そのようにここが最適な方法による建築だったとは言い切れません。ここより古い建物が壊れず立っている現実からすると。

 いずれにしても既に時効でしょう。(そこまで追求するほどプロでもないし…)

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 大広間に至っては、大地震の跡のような状況です。ここまでは漏水の影響は無いのでフロントの崩壊時に柱の根太(ねた)がひっぱられた結果ではないかと思われます。奥のステージ部分は無傷ですし…
 壊れ方の割にいまだにこの形を保っていられるのは構造的に無理のかかった部分が剥がれたというのが妥当ではないでしょうか。いずれにしても雨風が容赦なく吹き込む形になってしまった以上、崩壊が早まるのは間違いありませんが…

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 さて、噂の階段より上ですね。どうやって登ろうか思いましたが…

(つづく)

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2007年8月 5日 (日)

夢破れて山●荘 ④

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 近頃、レンタル屋さんで1本のDVDを見かけました。
稲川淳二氏出演の『真相 恐怖の現場 5』。この中で『殺人ドライブイン』という名で紹介されているのがこの物件です。殺人があったところという意味ではなく、数人の死がここであったとされることからつけられたようです。

 内容は正面(三角屋根の下)を見て、「建物の建て方がおかしい、墓地の作り方のようだ」「入口に十字架が見える」と評価。
 建物背面の回廊から物置、従業員住宅部分を数箇所調査。「全ての部屋に何かいる」
 疑惑の浴室。「ここが一番きている」

 浴場で怪談話をひとつ紹介した後、動向の女性タレントを浴場に残して稲川氏は脱衣所の外付近からモニターで観察しながら心霊現象をリサーチしていくという内容です。(2階と宴会場は別の危険があるため取材していないようです)

 真相と評価は特に触れませんが、この「ルイドロ」を脇に鑑賞していただきますと面白さが倍になるかもしれませんね。
 小物の場所がほとんど一致しているので、同時期に取材していると思われます。
今回は、登場するシーンと同じPHをアップしているので暗がりで見えずらかったものがよく見られると思います。

TOPの画像は、死んだ子の靴ではないかとされたもの。従業員の子どもで二人姉妹がいたことを確認しています。小学生だったので、この靴は昔のものかもしれません。

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雑草と苔に覆われた部屋。箱庭のようです。小上がりになっているので入浴者の休憩室だったのでは?
ここに裸の男の霊(自殺した初代オーナーとされるが未確認)がいたとされています。

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 子どもがいた部屋。左側は大きな棚を据えてあり、備品・帳簿類などがあることから物置のようです。

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 最初に浴場を仰ぎ見た脱衣所(男)。床が完全に没しているため、女湯側より入ります。ここに至る回廊もかなり床がゆがんでいるため、誰かが戸板や壁板を剥がして壁代わりに敷いてあるので歩くことはできました。水場が近く、床下も送湯パイプが走っているため、漏水で腐食したのでしょう。凹んだ床を板がどんどん続いていくのは不思議な光景です。

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 ネット上でもかなりの頻度で出てくるこの物件。
悪意に満ちた霊の巣窟  鬼の住処 自殺の発展場 崩れかかった栄華の跡 サバイバルゲームゾーン 倒産物件 土地の厄介もの 不審者多発地帯 不法投棄 そして夢のテーマパーク…

 様々な罵詈雑言の仮面を付けられながらも、かろうじて佇む『山●荘』。
誰かのアルバムの中では、ここでの楽しかった思い出が生きていることでしょう。
 本当はそれだけで良かったのでしょうが…     
(つづく)

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2007年8月 4日 (土)

夢破れて山●荘 ③

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Dscf5562  建物・浴槽・柱など八角形の構成によって作られた浴室。ここが建てられたときは風水学を知っていたのかは定かではありません。
 八角形は、風水学で言う陰と陽、すなわち宇宙観をあらわします。陽を円形とするならば陰は四角。八角形はその中間にあるとされています。
 八卦では八方位を東、北東、北、北西、南東、南、南西、西で吉凶を説明しますが、八角形はその8つの方向に広がる形だといえます。つまり八角形は宇宙の形なのです。

Dscf5557  古来、風呂とトイレは不浄とされ、住居とは別に設けられていましたが現在は、全て同じ屋根の下にあります。家の中心線に水場やトイレを作らなければならない場合、家相的には特別な配慮(鬼門札など)が必要だそうです。
 もし、八角形の住宅を作った場合、家は鬼門に対し柔軟に対処できるそうです。実用的かどうかは別として…

Dscf5558 八角形は風水では運を安定し、かつ、上げることができるとされて風水鏡など八角形を形どったものを身近に置くと良いそうです。
 この温泉には、『日中薬膳研究所』という側面があり、風水のルールを浴場に持ち込むのは当然であったことでしょう。

 でも、この運気の高い浴室で不幸な事故があったそうです。入浴客が持病の発作を起こしたとか子どもが溺れたとか話は錯綜しますが何らかの事故はあったのは間違いないようです。その後も人の生き死にに関する事件が続いたそうですが、その信憑性よりも現地に残る痕跡から推察していきたいと思います。

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Dscf5621  この薬膳研究所としての側面は、冷鉱泉であるため、維持に費用がかさむことから付加価値として導入されたのかもしれません。しかし、世間で取りざたされるほどこの『山●荘』は半壊しているとはいえ、悪意に満ちた、あるいは彷徨える霊たちが寄り集まる禁断の建造物なのでしょうか。

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Kaiyaku  埋められた浴槽は、謎のひとつに数えられています。維持費の関係で閉鎖して植え込みにされたというお話です。災いとは縁遠い場所であったはずなのに廃墟化したことが噂を助長させてしまったのかもしれません。

 経営の悪化が限界に来たとき、経営者は身の回りを簡単に整理すると、ここを捨ててどこかへ行ってしまったようです。
 今や生きている者の気配は全く無いこの旅館にまだ人のいる気配がありました。

Syokan

 郵便配達の悲しい性。幽霊屋敷と名高い旅館の厨房には今も郵便物が届いています。

(つづく)

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2007年8月 3日 (金)

夢破れて山●荘 ②

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 この一帯は稲作が中心で回りは、ほとんどが水田です。『ルイン・ドロップ』エリアにはほとんど見られない風景です。
 まだ、植え付けからさほど経っていないようで車を走らせていると水田がキラキラ光って海沿いを走っているような錯覚がします。
 夜はカエルがたくさん鳴く中、空と地にふたつの月が見えたりしていい感じなんでしょうね。

Dscf5528  『山●荘』がオープンした当時のことは、資料として見つかりませんでしたが町で最初の本格的温泉リゾートで最初の数年間は町内外から多くの人が訪れました。
 施設にも釣り堀、ボート、クレー射撃場を備えて『夢のレジャーランド』が形成されていきます。その頃は駐車場も足りないほどで、かといって周囲は山と水田のため路上駐車もかなり連なったそうです。何よりも建物の外観がおとぎの国風であることから誘われるように人が集まりました。
 泉質は「含酸塩化土類食塩泉」 リウマチ・神経痛に効能が深いそうです。

 当時の宿泊関連を図書館で調べてみると初期の記述は出ませんでしたが、1981年の宿泊は1泊2食 4,500円 12室50名の規模でした。(北海道じてん1981年版/山と旅社)
 同じガイドブックの1984年版では、1泊2食 5,800円 13室80名と規模と料金がアップします。

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 ここで奇妙な記述が出てきます。『源泉温度10℃ 浴用加熱』 これは…?冷鉱泉?

Dscf5530  施設内背面に大きなボイラー室が存在します。これは浴用ボイラーであったようですが、最初から源泉温度が低いのであれば湯治場として栄えなかったと思います。さらに開業後数年でオイルショックを経験しているので、維持費のかかる経営はできなかったはずです。

 そこで考えられるのオイルショック後の『温泉の枯渇』『代替の鉱泉』です。「ぬるかった」という話もあったので慣れないうえ、季節によって変動する温度管理がうまくいかなかったようです。
 この頃、北海道内の各町においても町の活性化としてあちこちで温泉目当ての試験ボーリングが行われ、温度の低い鉱泉であっても財政の豊かな時代にあり、加熱利用の温泉施設が作られ初めました。現在のように「源泉かけながし」が重宝がられる時代には考えられないことかもしれません。
 ともかく、裕福な時代、豊かなところは大きなものを。そうではないところも、それなりに安易な泡球を作り出していきました。いくつかは成功して、いくつかは大きすぎたり細かすぎたりして消えてしまいました。かりそめの異国、偏った理想…

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 「山●荘」も経営内容の方向を見直す時がきたようです。

(つづく)

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2007年8月 2日 (木)

夢破れて山●荘 ①

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仕事の帰り、久しぶりにレンタルビデオ屋さんに寄ってみた。
季節がら、ホラーや怪談物が企画コーナーとして並んでいます。
こういうものには種類があってフィクション・実話再現・ドキュメントなど…人気シリーズもあって、つかの間の異世界が目の前に再現されます。
 気になるものが1本●川●二氏の新刊DVDが目に付きました。
全国の最恐心霊スポットを自ら現地に赴き紹介するというシリーズ。
場所は、●●町。

『あれ?ここは、この前行ってきたよ』 現地を具体的に紹介しているようです。
何やら、ここは非公式に最恐心霊スポットの指定をうけているようですね。

KouhouKusatsu 『ルイン・ドロップ』アクセス1万記念夏企画で今回は、建設当時、観光の目玉の無い町に決定打として誕生することになる『山●荘』を紹介します。
 またの名を『●名館』。一帯の温泉を称して『二●温泉』と呼ばれます。
 地域の期待を受けながらその地域の厄介者とされてしまった背景には何があったのでしょうか?

 心霊解釈は本家に任せるとして、ここでは『ルイドロ』的におこなった調査、そして後日の資料収集に基づいて検証してみます。何分、現地調査も話の片寄りがあるため100%の真実ではないのかもしれません。

 1971年3月20日発行の町開拓史によると炭鉱の近いこの地区は、夕張炭鉱への登り口でもあり、炭山への野菜の供給源として農業が栄えました。
 明治38年(1898)この近くにも炭鉱が開坑されて、馬車軌道が整備されます。温泉は早くから発見され、数件の宿が開かれました。怪我に絶妙の効能があるとのことから湯治場として栄えます。しかし、当初は10名程の宿泊しか受けられない規模の地味な経営であったようです。それでも効果の評判から当時客は絶えなかったそうです。
 炭鉱の近くにあった温泉はその後、経営者が変わったり、施設の改修を経て地域にそして工夫に愛されました。

 時代は昭和になり43年(1968)、二●温泉観光㈱が設立。源泉が幹線道路から離れていることからパイプ輸送によりこの鉱泉を現地区に通して巨大な温泉施設が誕生することになります。町史にも『夢のテーマパーク』の記述が残っています。
 ただし、その編纂時点では、まだ建築途中であったため、まだその全容は町民の知るところではありませんでした。

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最恐伝説の真意はどうなのでしょうか? 

なぜ、急速に寂れていったのか?

それは、温泉にヒントがあったようです。

(つづく)
 

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2007年6月17日 (日)

緑に抱かれたユリの花 ③

Dscf5686  考えてみると鳥のさえずりとカーテンの隙間から差し込む光で目覚めるラブホというのは今ではとんとお目にかかりませんね。どうしても『秘め事』の場であることには変わりませんが、都市部ならまだしも郊外型でも窓は完璧な密閉式です。
 清掃が完璧なだけで目張りの宿には変わりないのではありませんか。換気が完全でも人の色々な思いが行き場を失って溜まりこんでいるようなそんな雰囲気があります。それゆえに有るもの・無いものを本能的に感じ取ってしまうのかもしれません。

Dscf5675  また、そういうものを不本意に場に残してしまうのが人なのかもしれません。
 今や、枯れた姿をさらす廃ホテルは人の気配は無くとも痕跡をはらんだ現代遺跡のようです。

うっ血した何かをぶつけて穴を空けられた壁。
居るはずもない戦う相手を求めて割られたガラス。
無意味でおせっかいな部屋の模様替え。
ここには不必要な届け物など…。

 宿は無防備にそれらを受け続けつつ、大自然に同化すべく今、最後の変容を始めたようです。

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 建物は人がいて管理されている間は、ある種の力を持っているようですが人が去るとその力も消えるのか急激に衰えていくように見えます。まるで存在意義を見失ったかのように…孤独に打ちひしがれたように…。そして、朽ちゆくものの美しさを放ちながら…

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 初夏の風に揺れる葉のささやきが緑色の鎮魂歌として廊下を通り抜けていく…
それに応えるかのように閉まることのなくなったドアが揺れ、照明器具は安堵のため息をつく…遠くを走る車の通過音もいつしか潮騒にも感じられていく。
あと幾昼夜か繰り返し、いずれ静かな眠りにつくことでしょう。

Yuri

残るのは最後まで立ち去ることなく見守りつづけた緑と風だけ…

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2007年6月16日 (土)

緑に抱かれたユリの花 ② 

Gakubuci  

Dscf5681  まだ、午前中だったため、小鳥のさえずりと共に遠くのカッコウの声が心地よく響いています。ちょっとセミには控えめにしていただきたいところです。
陽は既に頭上に来ていましたが木立に囲まれた敷地内は、清清しい風も吹いています。
 閉められてから30年近い月日を経過したこのホテル内は閉ざされた期間も長かったため、カビ臭さも残っています。開け放たれた箇所もあり、さほど気になりませんが…

Dscf5679 利用客の落ち込みで、ホテルの今後を検討していたようですが結果的に閉鎖して再就職の道を選択したようです。採用見合わせ書など、再就職模索の痕跡がありました。
 これ以上、家族のその後のことは他人の計るところではないでしょう。

 残されたホテルは記憶の缶詰として封印されていましたが、いつしか都市伝説といくつかの事実によって、いわゆる心霊スポットと化していきました。寂れていく建物の宿命なのでしょう。
 戸口は破られ、ガラスは割り放題。タバコの吸殻、ビールの空缶、不法投棄、破壊など…肝試しの名の下に辱められていくホテル。それすらただ謙虚に寛容に受け入れた功労者は、緑の癒しに囲まれて自然に戻っていくようです。
 人の時間的感覚を別にすれば人工の建造物が自然に帰るのは意外に容易いことなのかもしれません。

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Dscf5672  2階の客室のほとんどの窓は目張りされているため、室内はとても暗い。外から染み込んでくる光も緑の照り返しで、中が緑色に染まり幻想的に見えます。

 それぞれの部屋の作りは、ほぼ同じですが洋室と和室があり、ベッドを据えているか床が畳しきかといった差しか見受けられないシンプルなものです。一部ベッドを壁に組み込んでいる部屋もありますが基本的に部屋とバス・トイレの造りで、備品はベッドのほかは洗面台と暖房機程度。

 いくら数十年前の物件とは言え、当時もラブホテルのデザインは内装・外装共に激化し、『丘の上のお城は何だろう?遊園地かな?行って見たいな』と子供心に思うような見た目の派手なラブホも乱立。現在は派手すぎるのも敬遠されるようでシティホテル調もしくはセレブっぽい造りが主流なようです。
 そんな時代にもまれながら『ゆりの花』はその開花期を終えていったのでした。

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 ゆりの花言葉 『変わらない愛らしさ』 まさに変わることをしなかったようです…
(つづく)

★昨日の問題の答え
 『音のしない世界を音で表現するには?』→時計(柱時計)の音だそうです。知ってた?

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2007年6月15日 (金)

緑に抱かれたユリの花 ①

Yuritop まだ、本格的な夏は先とはいえ、暑い日が続く北海道です。
 緑に覆われたこの辺りは新道が整備されて一時の喧騒から開放されたため、命の短いセミ達には天国です。この日も会話が聞きとりずらいくらいセミが命の喜びをたたえあっています。

 しかし、セミの声を聞くとただでさえ暑いのに尚更暑さが増してきます。
 余談ですが、「音のしない世界を音だけで表現する」にはどうするかご存知ですか?
 答えは明日にしますので考えてみてください。

 今回は、酪農王国十勝を離れて緑鮮やかなホテル跡にきました。
 桜の季節がついこの間だったような気がしていたのにいつのまにか葉がこんなに増えていい季節です。
 とかく、手入れの行き届いた庭では雑草は邪魔者ですがこういった『廃』の風景においては充分彩りになります。もちろん、「過ぎたるは及ばざるの如し」ですが。

Dscf5642  こちらのホテルは昭和40年代の造りとされてカレンダーなどから昭和53年ころに閉められたとされています。実際には物証からそれよりも2年は管理者の出入りがあったようです。巷ではラブホテルということになっていますが一般宿泊も可能だったようです。ただ、郊外のカーホテルとなるとどうしてもラブホテルという印象が先立ち、日常的にお客は男と女のカップルということになります。

Dscf5683  ホテルの名は「ユリの花」の意。ただそれだけではなく、管理人の奥方の愛称を名前に使っていた印象もあります。
 創業時は地域でも先駆ということもあり、素泊まりで安価な宿泊所ということも手伝って利用者も多かったようです。
 現役時、高台に建つこのホテルは雑多な木々も今ほどうっそうとした雰囲気ではなく、それなりに整理され、市街地近郊でも自然の空気を感じられる絶好のロケーションであったことでしょう。
 今も聞こえるセミの音のほかに小鳥のさえずり、遠くから聞こえるカッコウの呼び声。それら自然の賛歌は当時も聞かれたことでしょう。

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Dscf5645  一家は当ホテル在住で家族構成は3人。全員従業員として受付と客室清掃に従事していたのか保健所の登録人数も3人です。奥方は美術に理解のある方だったようで、画友会などからのお礼状も見かけられました。
 そのためかホテル内装にも適度に自然木があしらわれて、現在のようにムードを誇張ぎみで窓は現役時から窓を鎧戸で目張りのラブホよりも山荘的開放感があったようです。

Dscf5644_1   ただ、客室に全室、最高の日当たりを想定したため(郊外で2階でもあるためプライバシーはカーテンで充分)管理人宅の居住空間はちょっと可愛そうなくらいです。
 客室前は広いスペースを取りながら管理人宅はこじんまりとして洗濯物を干すのもままならない感がありました。

Dscf5652  昭和50年代、比較的安定した暮らしを維持できた家業に陰りが出始めました。花の盛りが過ぎたようです。
 1日の利用者が休息・宿泊を含めて2~3組にまで落ち込みます。幹線道の充実、同業の登場、お客さんの嗜好変化など…料金の値下げで集客の回復を試みますが、他所同様に宿泊施設というだけでなく付加価値をつける大胆なリニューアルを加えなければならない時期に来ていました。

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 同じころ、我が子の一生を左右する進学が控えていました。

(つづく)

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2007年6月 3日 (日)

もうひとつのシャトルステーション 廃ラブホテル『Y館』

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全国の廃ラブホテルファンの皆様こんにちは
日頃のアクセス・ご閲覧にお答えしまして、不完全取材ですが好物件をご紹介します。

『Y館』
鮮やかなピンク色に彩られたこの物件、トップ画像で『ルイドロ』常連の方は「廃ソサエティ(?)な勘」にピンとくるでしょう。総ピンクの奥に見覚えのある形状のものが…

Dscf3487 「廃墟ラブホ“C”」 紹介済み物件の人気ルームであるシャトルと同形の部屋が見えます。
 ホテルの誕生時は、どちらもほぼ同じ。しかし、現役の頃、形状的に特異な“C”に人気が集中したため、便乗して導入したらしく後付の感があります。
Dscf3506  当時、このタイプのユニットハウスが流通してたのかこの『Y』と既出の『C』。そして現存はしていませんがカーショップの事務所に使われていた例もありました。
 『Y』に関しては尾翼なども『C』とまったく同じで同一業者の売込みがあったと想像されます。ただ、シャトルがメインの『C』と違いピンクとスカイブルーのツートンカラーで塀に囲まれていない開放的なホテル本体とミスマッチな感もぬぐえません。

Dscf3501  このあたりには元々ラブホは少なく前者2件がこの辺りでは最初になります。現在までに点々増えていき、人気も当然移り客層が流れ、利用者を維持するためには適度にリニューアルも必要になります。個性を出さなければ飽きられるのがこの手の業種。『Y』の場合は噂による情報ですがリニューアル失敗とは事情が異なったようです。
Dscf3482  それというのもラブホ経営までは良かったのが手を広げようと飲食店を建築。それも認可を出す前に見切り発車だったことと周囲が農地であったこともあり実際には飲食店の認可が得られなかったため営業できず、ホテル経営も同業者乱立のため斜陽になり閉業になったとのことです。シャトルは設置されたものの内装は着工することなく、使われないまま擦れていったようです。何もないためシャトルの基本構造がよく分かりますが大部分が芯まで赤錆が回り、自然崩壊も時間の問題。 また、うっかり足を踏み入れると確実に底が抜けるほどの錆具合。遠巻きに見える茶色のボディは丸々赤錆色なのでした。いまでも銀翼の健在な『C』と違い塗装も成されなかったのでしょう。

Dscf3497  現在近所は宅地となり一般住居や事業所が建ち並び、ホテルから見える位置には小学校もあります。後年の入居者が多いので近所の方からは経営者の情報は得られず、農家の方から噂としての情報でした。

 ●屋ぺーばりに細部(電気メーター)までこだわるピンクと派手さを抑えるスカイブルーのカラーで曲線を微妙に使ったオーソドックスな作りの外観。派手な印象よりさわやかな印象のラブホ『Y』。現在ホテル本体は全ての窓と出入り口を非常に神経質な封印で閉ざして静かに眠りについています。

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2007年4月17日 (火)

廃墟ラブホテルノート/最後のページ

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 ラブホは、ある種の如何わしいところとされる反面、その人なりの正体が惜しげもなく暴露される場でもあります。ラブホテルのこれでもかというようなムードの演出は、誰しもが持ちあわせながらも晒すことのはばかられる、脆くて悲しい性の砦なのですね。
 その砦は屈強なだけではなく、そこに入る者の『ペルソナ』にならなければならないのか…

Dscf0576  やがて夜がやってくる。今は、灯りもともらないここであったそれぞれのドラマ。それはプロローグもエピローグもわからない途中の一話です。悲しみ・喜び・慈しみ・溺愛・一夜の愛・秘められた過去・希望・幸福・行きずり…それら多くの1シーンは、宵の中静かにクランクインし、朝焼けの中幕を下ろしていった。せめて演者たちがいつしか、ここの幹線を通り、今も残る『●すか』のサインポールをふと思い出して見上げたときに、かすかに笑みがこぼれるのであればこの廃墟と化した、ホテル『●すか』の存在意義は充分に果たせたのだと思います。

 しかし、方や地域の汚点であるかのように忌み嫌われていることも事実。下手なところに建てようものなら地域の猛反対運動にさらされる事も当然、覚悟がいります。
 良いとか悪いとかではなく、『秘め事』には適切な場所が欠かせない。でも、それを望む人が声を上げるわけでもないでしょう。プライバシーの砦もまた、眩さの反面、脆く悲しい…

Dscf0568  「悲しみの実をかじるたびに子どもは、悲しみを口に出せない大人になっていく…」
中島みゆきの歌でそんな趣旨のものがありますが、人は生きる過程で自分自身以外の力を借りて自分の脆さが漏れないように固く鎧を着込まなければならない。その鎧をつかの間、おろすことの出来る場所として『●すか』はあった。そう思いたい…この砦跡に関して。

 最後に再びノートの1ページ。一番ドラマチックなページを。この作者の思い出の場所として廃墟ラブホテル『●すか』は朽ちながらも存在していればそれで良いでしょう。

Yakusoku

約束は果たせたのでしょうか。たぶん…

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2007年4月16日 (月)

廃墟ラブホテルノート/6ページ

Side

 時は1月1日午後。 図書館よりも静かな部屋の中で、来るはずのないお客様の番をしている「ねこん」です。正午過ぎとはいえ、真冬のこの時です。もう陽が下がり始めている気がします。この辺りも立木に囲まれているために薄暗くなってきました。このまま『●すかノート』に没頭しているわけにもいかず、数ページを撮影して他を調査します。

Kyoka  ちょっと上の方を見上げると…額に入った『営業許可証』…?それも飲食店の営業許可証。ここでは料理を出していた?

 そういえば、最初に入ったとき(開かないドアのところ)に横手側に台所につながる学食の窓口みたいな開口部がありました。そこから裏口を通り、客室のオーダーを運んでいたのかもしれません。管理人個人用としてはずいぶん整った台所と思っていたのは実は、厨房!?
 食卓が2脚の小さなものであったのに炊飯器は2升以上炊けるサイズだったのは料理の注文を受けるための設備と思われます。メニューのようなものも見当たらないし、『●すかノート』にも何か食べたという記述がなく『許可証』を見るまで家族の住んでいた所としていたのは間違いだったようです。
 従業員構成としてフロント兼部屋係とシェフの2名。真っ赤なパジャマはこの厨房を仕切るシェフのものだったのではないでしょうか。郊外で当時コンビにもなかったこの辺りでは有効な営業手段だったのでしょう。

 この営業許可が平成6年4月。有効期限が平成9年5月。この間が『●すか』の最後の期間です。すると正式な廃墟化の始まりは約10~12年前と特定できます。
 それから現在までの間に雑木林に囲まれ、通じるのは一本道のこの場所で客室の取り壊しまでしておきながら幹線道からフロントまでの道が雑木と倒木に覆われるまで放置されたのは、実際は『放棄』だったのでしょう。
 それなら、客室も残しておけばいいのに…『吊りベッド』現物、見てみたかった。

Rowhide_1

 なーんか変…人のこと言えませんが…

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2007年4月15日 (日)

廃墟ラブホテルノート/5ページ

Dscf0583

 元日だというのに廃墟内。でもこういう浮世離れも嫌いではないです。もう、すっかりお正月とは無縁の境地に入り込んでいます。フロント(制御室)に一人座り、ノートをパラパラと読んでいると今、ここにお客さんの車が入ってくるような気もしてきます。

 潜入(進入)だとこんなノンビリというわけには行かないでしょうがアポ取りで入ると廃屋の雰囲気に浸っているときにおじいさんが『どうだい?いい写真撮れたっかい?』と、やってきてガイドをしてくれたり、野良飼いの犬が終始そばでグルグルまわってたりしますが…今回は時期も時期なので遠くに時折、車の通過音を聞きながら『時間の止まった場所』でひとり時間を超越した人間になったような気分がしてきます。

Dscf2853_1  さて、ノートの内容は、彼は寝ちゃって…』『泊る場所を探してここにきました!』『旅行中です』『身の上話』『ガキはこんな所にくるな!(自分を棚上)など…
 今は亡き、部屋自体に触れたことはないのかとページをめくると

Dscf2860_1 『あった!』 ギリシャ神殿風?彫刻が施されている柱とかがあったのでしょうか。『サモトラケのニケ』とか『ラオコーン』の彫像が部屋の中に「ででーん!」とあると怖い。(ハンガー替わりにされるか…) 瓦礫の山の中にギリシャ風の柱は確認できなかったので、たぶん壁紙が下半分が大理石の柵で上が青空とかそんな装飾で雰囲気がギリシャ風とされた所以ではないかと思われます。

Dscf2862  更に5号室の『吊りベッド』の実体も見えてきました。
 実際は全然期待はずれだったようです。特定の部屋だけのベッドを吊り下げるのは構造的に無理でしょう。想像するに天蓋付きのカーテンを吊り下げたベッドではなかったかと思います。それが『吊り』と付くと吊ったベッドと誰でも思ってしまいます。語句的な説明不足が誤解を招いたのでは?それとも吊ってあったものを暴れん坊が落としてしまったのか…

 それにしても『彼が寝てしまった』というのが多いですね。(そんなに疲れるんですか?) なのでノートを記入するのは、ほとんどが女性です。日付もほとんどが1984年頃。漫画文字とかちょっとしたイラストにも時代を感じます。
 管理棟のカレンダーは1996年で、このノートはその頃から遡り開業初期、各部屋に置かれていたようです。盛んに思い出ノートの記入が行われた頃からほぼ12年後には閉鎖、その後、取り壊しを中途半端にして廃墟化しました。現在までのトータルは築23年です。

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 トムは全てを見ていたのかな…?

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2007年4月14日 (土)

廃墟ラブホテルノート/4ページ

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Dscf0580  1階に下りてきました。
奥のほうが明るいので行って見ると管理人用の通常玄関が開放状態でした。開かないドアで苦労したのは何だったのか…
 外に出てみると正面にガレージがあります。客室とは反対側になるので宿泊客用ではなく、管理人用と思われます。なぜか『13』の番号。ここは客室は8室なのでお客用ではなく他所から転用したものでしょう。すぐ横の小さな小屋の中は大き目の給水バルブがあります。給湯器などは管理棟内にありましたがボイラーではなく、8部屋をカバーするには小さすぎるので各部屋ごとに給湯器を設備していたと思われます。

Dscf0579  こちらから建物を見ると普通の民家のようです。外観は、近年のホテルのような雰囲気作りはしていないですね。正面から左の客室へ向かう道の側にまず料金表。そして受付口があり、ここでチェックインしてから入室の形になっていました。コンピューター営業とありますが流行言葉のようで、どこがコンピューター?な感じです。
 それにしましても『吊りベッド』とは何ぞや?興味はつきませんが時すでにおそし…。現役なら行くのか?という問題ですが…

 家屋内に戻ります。12畳くらいの広めの居間(?)。まだ、多くの物が残されていて雑然としています。なぜか両目開眼のダルマが放置されています。とくに選挙には欠かせない(当選・落選にかかわらず)もので、その役目は1度きりなのに縁起物のため、捨てるに捨てられずに巡りにめぐってここに来たのでしょう。
 正面奥にフロントとおぼしき一角が。ここにもエアシューターがあります。きれいに形が残っていて神棚、営業許可証などがそのまま残っていました。

Dscf0584  看板などのたくさんのスイッチ類や帳簿の綴りが所狭しと並べられていました。横の台の上にも帳簿類が詰まれ…?? !ノートの束がありました。

 表書きは『思い出(…?)』
 潰された客室の姿が見えてこないかと(誰かに読まれる前提で書かれたものだし…)10数年ぶりに人が座ったとおぼしき席についてパラパラとめくってみました…

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2007年4月13日 (金)

廃墟ラブホテルノート/3ページ

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 というわけで、ノブの壊れたドアに行く手をさえぎられてしまいました。ドアはその使命を遂げるかのように頑として動きません。工具など持ち合わせてもおらず、ましてや破壊行為は論外であるため、ここで探査を中断すべきか、しばし思案にくれます。
 ふと横を見ると壁に何やらぽっかりと窓が…まるで学食の配膳口のように枠で仕切られ、キッチンが丸見え。『ここから入れるのでは…?』

Dscf0589  とりあえず、そこから潜入を試みます。開口部の高さは充分とはいえ、床からの高さがあるゆえ、一苦労。炊飯器を蹴飛ばしそうになりながらもなんとかキッチン潜入成功。
 キッチン内は以外に狭く1戸建てよりは狭く、アパートよりは広いといった感じ。その中にシンク・ガス台・食器棚・冷蔵庫・炊飯器・ハイザー(米計量器)・ポット・二人掛けテーブルセットがコンパクトに収まっています。痛みはほとんど無く、ちょっと掃除をすればすぐにでも使えるのでは?というほどに…冷蔵庫、ハイザーともに中身は空っぽ。食器棚にはカップやお皿などがありますが、その数からやはり管理は1~2人といったところです。

Dscf0577  閉ざされたドアの脇にこちら側のドアノブが落ちていまし た。ドアのそばからまた、奥につながり階段があります。キッチンからこのあたりは普通の民家のようです。
 階段の手前にカーテンらしき布を画鋲で止めてあります。階段のあちこちに野獣(おそらく猫)の糞が放置されていました。廃墟後に侵入していたのでしょうか?
Dscf0571 2階へ上がると部屋がふたつ。いや、片方は和室が2間続き。そして洋室が1つです。しかし、1階に比べて荒れています。洋室の中はベッドと他に雑誌の山。発行日から廃墟年度を特定するには発行年がバラバラ…家屋内に張られたカレンダー(1996年)が正しいとすれば廃墟化後に誰かがここに来ていたことになります。住んでいた形跡ではありませんが秘密の場所ではあるようです。雑誌に埋もれてこのホテルの物品購入の領収書の綴りがありました。主にクリーニング関係です。他にダンボールや蛍光灯、中身不明のプラ瓶などがあり、マットレスも数枚重なっていることから物置にされていたと伺えます。

Dscf0574  隣の部屋もほとんど足の踏み場もない状態に物が散乱しています。衣類が特に残っていて物件を立ち退く際に置いていったようです。ダンボールがおかれて、物もそれなりに収まって引越し仕度の途中という雰囲気が残ります。ただし衣類が不自然にちらばっていたり、タンスの引き出を無造作に放置しているところは引越しの途中というより、誰かがタンスを荒らしていた…そんな感も拭えません。もしかすると、『夜逃』の状況があったのかも…

 この残された衣類の上に赤いパジャマやブラウスもあることから、若い女性が入居していたことになります。あるいは、旅館業を生業としてここに一家族が住んでいたのかもしれません。

ただ、それを裏付けるにはまだ生活感の形跡が少なすぎるようにも思いますが…

つづく

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2007年4月12日 (木)

廃墟ラブホテルノート/2ページ

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 それでは、取り壊されて瓦礫の山と化した『ホテル●すか』の唯一残された建物、管理棟』へ向かいます。

Mitorizu1 その前にこの廃墟の見取図を見てください。
 本来幹線道路からホテルへ至る道は現在、ツル系の植物で雑木林化しています。とても道があったとは思えないほどの状況ですが、何とか中程まで行けば開けてきます。
 住居地帯とホテルの間は針葉樹の木立で囲まれ、このホテルと瓦礫の山と化した客室は幹線側からまったく見えません。一見すると住居地帯に5メートルの高さの看板が立っているため、ホテルをつぶしたあとに住居が立ち並んだという印象を受けます。この廃墟が今まで保存された(つぶした部分は別として)のは、ある種この土地条件の成せた業でしょう。
 営業当時の客室割りは8室。『4』と『9』の部屋番号は欠番となっているところは、時代を感じます。
 休息でほぼ1室3,500円。1室だけが500円リーズナブルです。他の部屋は全室一律料金ですが3室の特殊部屋が含まれ、市街地から離れたこのホテルでも人気の部屋はすぐに埋まっていたようですね。

 今回は、客室の瓦礫の山から先に見たので客室側から管理棟へ向かいます。料金表から見るに、中途半端な設備が逆に呼び物となっていたようです。

 しかし、元旦早々なーにやってるんだろーと少なからずや自問自答…でも、心霊系サイトも含めて完全にオリジナル物件のホテルだなーと思うと、かなり興奮状態です。場所も場所だったのですが…

Dscf0566  管理棟と客室を行き来する通用口を見つけました。一時は閉鎖時に戸張していたようですが、今は外れてドアも開けられたままです。通路は…というより一般住宅の廊下のように狭い。途中の小部屋は洗濯室と給湯室。日当たりも悪いせいかかび臭い。長く狭い廊下を進む先にドアが。

『あれっ?』 ドアノブが無い!床にころがっていた。向こう側のノブはシリンダーごと抜け落ちている。ドアを押したり引いたりしてみるが全く動かない…

『困ったぞ…』 絶体絶命(?)のねこんは、この窮地をどう潜り抜けるのか?

以下次回を待て!

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2007年4月11日 (水)

廃墟ラブホテルノート/1ページ

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 主要幹線道を走っていると目に付くここの看板、これだけを見上げていると廃業しているとは気がつかない…看板は無傷建材で自己主張し続ける『▲●■』。
 夜は当然明かりが点っていないので存在がわかりません。一方昼間は、間違って入ろうとする人がいないこともないような…ただし肝心の入り口は雑木が入り乱れて絡み合い、入りかけて『あれっ?』という状況もありそうなほどの雰囲気があります。辺りを足で回るまでは半信半疑の物件でした。

 近くには、一般住宅が数件。犬もいます。この家が近いという条件が一見営業中に見え、一方廃墟にも見えない特殊な条件を作り出しています。
 よりによってこの日は2007年1月1日。『廃墟始め』です。新年早々ですが、ご近所へお伺いに…

『ここのホテルは、こちらの所有になりますか?』
 ご主人、めんどくさそうに…
『あれかい?うちらとは関係ないんだよね…』
『所有の方はどちらの…』
『●●町の●●の人でね…営業は十何年前にやめてるけど、取り壊しも途中で投げ出しでさ…』
『えっ…(壊してる?)●●の方がこういうホテルを営業してたんですか?』
『最終的にはその人だけど、その前にも持ち主は変わってたようだわ…まぁ、うちらは全然関係ないことになっているからね』

Dscf0562  この日は、とりあえず現地探索して後日了解を●●へ照会したところ、所有を認められませんでしたので、現場の安全に配慮した上で公開します。よって、シンボルの看板アップは差し控えます。

 先ほどのお話では、取り壊し中でしかも、中断のまま越年経過しているらしいく一般住宅群の奥にあるため近くに行くまで全容は見えません。事前に住宅地図で確認したところでは確かに建物はあり、手前の家は管理者宅と予想していましたが実情は複雑でした。

Dscf0563  とりあえずホテルへ向かうと…話どおりに取り壊し中。というより、壊しておいて放置状態のまるで産業廃棄物置場の様相。ベッド、照明器具、クズカゴなどの備品や給湯管、サッシ窓など…全てごみと化して一緒くたに積み上げられていました。
これでは、期待はずれというものですね。

先のお伺いした家のご主人は、こう言っていました。
『管理小屋以外はもう壊してるよ…』
そう、管理棟は当時のまま残っていました。

以降、次回へ…

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