廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』②
「へーっここ遊園地かなにか?」![]()
「いえ…ラブホです…」
「えっ?ランボー?」![]()
「ラブホですよ」![]()
「らぶ…。あっあぁ~っ
ラブホテルね。なんだ…変なとこーっ
」![]()
変なとこって…![]()
しかし、廃墟嫌いと言いつつ、ケロッとしてるなぁ。
自分で来たいって言った手前、仕方ないだろうけど。
「良く見たらスペースシャトルの形だ。キレイな時だったら来ても良かったねぇ…」![]()
「…」
「こういうところ、良く来るのぉ?」![]()
「いや!ラブホは行かないです
」
「はぁ?廃墟のことだよ」![]()
う…墓穴掘った。
なんか調子狂うなぁ。![]()
なんていうか、いかにも理解のなさそうって感じの人と来ると、私もこんなところで何やってるんだろ…って気がしてくる。
師匠だったら、私が言ったことに的確にリアクションしてくれるけど、趣味が違うからなんだろうけど。
師匠は聞き上手だよ。やっぱり…
あ~っ神経が疲れてくる…![]()

「営業していた頃は、まだ上水道が来てなくて地下水汲み上げだったそうです。それが近くの道路工事の影響で水が上がらなくなったと聞きましたよ」
「それでこんな有様に…中、見れれる?」![]()
なんだか美玖さんのほうが乗り気だなぁ…
彼氏と廃墟へは行ったことがあるらしいから慣れてるんだろけどね。
好き嫌いは感受性の差なんだろう。
シャトルルームの中でも割と中がきれい目なところを選ぶ。
と、言っても、どこもかしこも木片や誰かが放り投げた室内電話や消火器とかの備品も散乱している。
いつから放ってあるのか知らないけれど消火器は、破裂することもあるらしいからなるべく近づかないようにしてる。
「気をつけてくださいよ。頭の上とか…」
「わーっ汚ったない
でも広いんだなぁ…。こっちは、お風呂だ
腐ってるーっ
」![]()
![]()
「…」
こう、わかってくれそうな人だったら「ここがいい!」とか「ここはキレイだね」とかも言えるけど今日の場合は難しいなぁ…。私が私らしくなくなる。
「どのくらいやってるの?」![]()
「えっ?何がですか?」
「こういうところに来るのをさ」![]()
「そう…5年くらいになるかなぁ…始めは同じような趣味の人を知らなかったから、ずーっとひとりで…」
「ふーん…でも今は、理解ある彼氏がいるからいいよね」![]()
「へっ?誰
…まさか師匠の話
」
「うん」![]()
「ち…ちょっとぉ![]()
なに言ってるんですか
勘弁してくださいよ![]()
」
「だってぇ、こんな怪しいところに一緒に来れる人ったらそうじゃないのぉ?」![]()
「
ないない
ないです
かんぐり過ぎですって![]()
」
「もう外へ行こ。なんだか空気がスゴク重たい感じがするよ…ここ」![]()
ふーっ。
いきなり何を突っ込んでくるのさ…あ~っ早く帰りたい![]()
シャトルを出て、管理室と通常ルームのつながる棟へ。
真っ暗なボイラー室を通り抜けるとき、美玖さんが背中にピッタリ張り付いてきた。
反対側の客室の棟はいくつか部屋が並んでいるけど端から2部屋は内装作製中に工事中断して、柱とかが剥き出しのまま。
たぶんシャトル棟だけで用が足りたので全てを完成させずに営業していたんだろう。
一番手前の部屋もボイラー室から直接繋がっているので客室ではなく、乾燥室に転用していたようでタオルや浴衣が散乱して、天井には物干しがたくさん。
のこり3部屋が客室として使われていた。もっともひとつはガレージのシャッターが閉まったまま壊れているので『開かずの間』と化している。
「たぶん、肝…」 マズッ![]()
「なに?」![]()
「いや…
」 危ない危ない…![]()
「小さいころさぁ…小1くらいの時かなぁ!捨て猫を拾ってさ、真っ黒いけど目がビー玉みたいにキラキラの子猫。近所の子とこんな狭い階段のある空家の2階で飼ってたことあるよ。その頃、私んち社宅だったし、他の子の家もダメだったから…」![]()
「カワイかったんだぁ。すぐ死んじゃったけどね…っていうか殺されたんだけど」![]()
「えぇっ?」
「みんなの秘密基地にしてたけど、ひとり男子がさぁ、じぶんの兄ちゃんに教えちゃったのさ。後で白状させたけど…。その子達、行ったみたいで“黒猫は悪魔の使いだ!”って寄ってたかって蹴り殺しちゃったらしい…見つけたときはもう、ボロボロで冷たくなってた。あんなやつら呪われてしまえばいいのに!」![]()
「…
」
「それからこんなとこ来なくなったよ…」![]()
そういうことあったのか…
ないとしても普通は、廃墟好きにならないだろうけど…
「もういいや…帰ろう
」![]()
「なにかに…なりました?」
「うーん…よくわかんない
私には、さっぱりさぁ…」![]()
その横顔からは、廃墟が好きだとか嫌いだとか、そういうことは読み取れない。
意外とスッキリしたような表情ではあるけど…
ただ、ここに来てみた─それだけなのかもしれない。
「このシャトルがホントに飛んでいったら私たちの街の上だよね」![]()
朽ちかけながらも整然と並ぶシャトルは確かに街のほうを向いている。
夜なら、空と地上の星に挟まれる…ここは天と地の境目がわからなくなる景色なのかも…
でもシャトルは、静かに…ただ静かに空を見上げるだけ
鳴り物入りで打ち上げるスペースシャトルとは違うから…
「たまに…アツシも誘ってあげて」![]()
「いいんですか?
」
「うん!たまにならね。アキさんの彼氏と3人なら構わないよ」![]()
だから…
違うって…![]()
「そうですなんですか?人間はいろんなとこへ来るあるますね…」
「そう…“あるます”だよ…
」



































































































































































































































































































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