2008年10月26日 (日)

カタオモイ…

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心のふれあいは温かい そうあるべきです 本来は。
温泉もまた然り  だから心に浸み込むのです。

どちらも五感を通して、心地よくしみわたる…

そして温泉へ行くことは愛情に似ている。
相思相愛の状況に…
ただし、そうではなくなった「片思いの湯」のお話です。

Dscf6915 「温泉」 漠然と入るけれど、地の底で「お湯」が滾々と存在していることが不思議に思う。
火山やマグマの影響で地下水が温められているということは知っているけれど、そこまでもぐって見てきたわけじゃない。
小さい頃、家族で泊った温泉宿の駐車場にお湯の湧き出している穴を見つけて、寒い日なのに地面からお湯が沸きあがってくるのが不思議でたまらなかった。

不思議なものは、いつしか普通 そして当たり前に。
当たり前にあるものは、いつしかその価値を見失う。
水も 空気も 愛情さえも…。

夜空見上げ 立ち上る湯気に 
浮世のしがらみを忘れて
理想も屁理屈も絡め取らせて一緒に飛ばそう
湯は絶え間ないように懇々と沸き続ける
愛のように まさに愛があるべきように

でも 誰のためって訳じゃない そんな大地の温もり

Dscf6918 日本人 おそらく誰しもが温泉好き。
大きなホテルには 大きな宮殿を思わせるような大浴場
小さな温泉宿は 思考を凝らした自然と一帯の情緒

ブームは「湯」を「温もり」を愛して止まない人々を
小さな温泉宿、いわゆる「秘湯」と呼ばれるところにさえも足を向けさせる。

このところ 目新しい温泉も目に付くようになった。
「手湯」 「足湯」 そして「源泉かけながし」という言葉も聞かれるようになった。
すべての温泉が本物じゃなかったこともあったから…
その湯もいろいろあって 冷まさないと入れないほど高温の所や
加温しなければ適温に満たないところもある。
それが本物かどうかは別として加温を必要とする温泉も意外と多いことに気が付く。

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Dscf6939 原油価格高騰
その煽りで閉館を余儀されなかった湯があちこちに存在する。
そんな時代的犠牲が温泉の現状を炙り出したようです。
入浴には温度の満たない湯や温泉とは呼べない冷泉まで
ボイラーで加温して温泉として成り立てた。
後の世が分かっていたなら「まちづくり」は決して足枷にはならなかっただろう。
ブームとは言っても維持費の高騰に見合うほどの収益増も実らずに図らずも
温泉もどきは、窮地に陥り
温泉であっても細々と続いた秘湯宿でさえ、少しづつ姿を消していく。

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Dscf6924 地の中にあるものが
また 地の中にあるものに翻弄される。
なんだか妙ですね。
でも地の底の問題じゃなくて
地上にいるものの問題なんです。

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Dscf6937 どんな秘湯も専門誌に載るなどして情報を聞きつけた人は訪れる。
クマが出そうな人里離れた山の中の天然温泉でさえもシーズンには絶え間なく人が訪れるみたい。
情報に山の深さは重要じゃないんだなぁ…

湯は滾々と沸き続け
疲れを癒し 冷えた心を温める
湯気は優しくその場所を指し示していた。

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Dscf6916 閉められた湯場
やり場のない温もり
立ち上る湯気は龍の如く「癒すべきもの」を求めて城を遡っていった。
そうせざろうえなかったかのように…

行き場のない「癒し」が、やがて宿の「毒」となり 静かに建物を蝕み始める。
かなわぬ愛が自らを傷つけるように…

湯浴の乙女は寡黙な龍の怒りで湯場が廃れゆく様を物悲しく見届けねばならない。
それが 由々しき勤めに生きてきた彼女の 悲しき定めでもあったから…。

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この温泉は解体され更地になりました。
冷泉とはいかないまでも加温の必要があったため原油価格高騰のあおりで閉鎖を余儀なくされたわけです。
現在、国からの補助を受けて再開発の計画が持ち上がるも国や町の財政状況を考えると再開発は負担であるとか、もっと資金投入すべきことがあるとかいう住民感情も無視できません。
町では住民説明会などを得て町の資源活用と活性化を説得しています。
計画では数年後に生まれ変わった温泉がここに現れることでしょう。
そうなっても湯を愛する人たちが「行きずりの愛」で終わらないようになって欲しいものです。

Dscf1929  ここから消えてしまった湯浴の乙女。 
目に浮かんだ雫は湯気だったのか
それともそれは…

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2007年9月12日 (水)

蕗の葉脈

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Dscf5414  かつて、道内の峠のなかでも難所とされていたこの一帯も時代を超えてすっかり様変わりしました。そこそこの車で1時間程度で通過できるのですから便利になったものです。
 現在工事中の高規格道路の開通によっては、ここもまた忘れられていくのかもしれません。

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 峠を降りきったところに2本足では、道内最大のクマが反対車線をかっ飛ばしていく車に目を光らせています。ここはドライブイン兼物産館ですが、開業当時よりも少し寂しくなってきたように感じます。北海道旅行の人気の低迷、大口団体旅行よりも個人のオプショナルな旅が増えて、旅行会社とのタイアップも減少して閉鎖になったドライブインも少なくありません。
 数十年前までは、通常一般道(道々や町道)で小さなドライブインとは名ばかりの食堂が充分、商売になりました。メニューを見ると味の選択肢が無い「ラーメン」があって、シェフにオーダーしてみると、味噌とも醤油とも塩ともつかない味のものだったりします。不味いわけでもないので食べていると丼の底に他所の屋号が現われたりしました。
 こんな店のような小さなところは巨大ドライブインの出現や旅行のスピード化で次々、淘汰されていきます。

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Dscf5421  一見プレハブ、よく見るとやっぱりプレハブのものやガレージにしか見えないもの。国鉄払い下げの客車や貨車を改造したもの。そして、バス。
 今回の物件もそうしたバスを改造したドライブインです。帳簿類は残っておらず、屋号は不明。正面の路線表示部に何か書かれていますがよく読めません。
 峠を降りてきたばかりのお客をターゲットにしていたようですが、向かいに多くの駐車台数をカバーできる大型ドライブインができたために廃業したようです。駐車場だったとおぼしきところは、蕗やら雑草がはびこって車両乗り入れの引き込み線も分かりづらくなっています。

 かなり旧型の丸みのある車体。バスとして現役時は、車掌が乗客に切符を切るというような光景が見られた頃のものなのでしょう。
 以前、紹介した『バッタ塚ドライブイン』のように内部を完全改造し、客室も供えていたものと違って、バスは完全厨房だったようです。初めは厨房備品の投棄場所のように感じましたが、ここに据えてあったようです。立ち食い蕎麦の車内持込みたいな持ち帰り専門だったのではないでしょうか。

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Dscf5423  簡易ドライブイン、そして大型化、道の駅創設、路線の変換。短い歴史の中、多様な変化が続いています。昔通ったあの道はどうなっているのでしょうか…

 車体の後に虫に食い荒らされて奇妙なほど葉脈だけになった蕗の葉の一群がありました。ここは、食い意地のはった虫達には充分現役のドライブインなのでしょう。

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2007年6月 7日 (木)

純よぉ~っ!いつ帰ってくるんだよぉう!

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 ファンの方なら、まずピンとくるこの家。『この家は、あの家に似ているな…』と思ったなら間違いありません。廃屋とするには語弊がありますが、『廃』から生じた家です。
日本で最も愛されている『廃』ではないでしょうか?

Photo_16  ここは富良野市六郷。『拾ってきた家─やがて町─』です。
でもこんな家はドラマには出てこなかったな…と思いますがそれもそのはず、ドラマ『北の国から ─遺言─』の終了後、新たに作られた家です。
 訪れる人たちは無意識に鼻歌(例の曲)が出てくるようです。

 本編では羅臼で牧場の借金を返すために奮闘していた純が色々あって富良野に戻ることになり、向こうで付き合っていた女性“結”が富良野にやってきて純と暮らすことになるという筋書きでしたが(すごい大ざっぱなあらすじ…)、その後を想定して作られたのがこの『純と結の家』です。

Photo_18 それにしても作りがまた一段と大胆になりましたね。廃物利用がコンセプトとしてもバス1台が家を貫通しているのは、かなり大胆です。ねこんが『北の国から』にはまっていたのはこの「拾ってきた家」の存在が大きくて、『黒板五郎の流儀』なる本(家のコンセプトや細部のスケッチと作り方、生活の仕方のノウハウ)を入手したりもしていました。

Photo_19   ドラマの人気も手伝ってということもありますが、大胆の一言につきる家々に、訪れる人は口々に『こんな家に住みたいねー』とつぶやいています。
 うーんその気持わかります。みんな本当は新建材に飽きたのでしょうか?それとも曲がった窓に新鮮さを感じたのか? ドラマの一部に自分が入りたいのか…?

 でも、こういう家をいざ作ってみて普通に登記できるのか…
バス部分は居住空間に入るのでしょうか?(基礎がないので固定資産とみなされないユニットハウスやトレーラーハウスは固定資産税の対象にならないのだそうです)

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 そういうことを考えるのはヤボというものですね

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2007年6月 2日 (土)

かむいが遺伝

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『トーチカはどっちか?』
などと海岸線をわき見八割運転(危ない…)。途中、道をエゾシカの群れと遭遇。うっそうとした林の中へ飛ぶように踊りこんでいく白い尻尾を見送りながら走るうちに林が切れてきました。
 その林の際に銀色に輝く雄姿を発見。といいますか春の暖かい一日でも木々の緑は少なく、松林の幹の色に溶け込んで銀色の車体は、むしろ目立たない感じです。

Dscf4783  バスというのは結構利用価値があるのか郊外を走っていると農家の庭先や畑の隅で休憩所・物置・薬品庫(農薬)・子ども部屋などに。街中でも2台つなげて地域集会所・ドライブイン。他には老人クラブのゲートボールや学校スケート少年団の休憩所・スナック・ライダーハウス(簡易宿泊所)など多彩です。

 座席(客席)を取り外すのはかなり面倒と思われますが、無くなってみるとかなりフラットになりますね。でも、もともと『廃』を利用したために愛着はさほどないのかそのまま朽ち錆付いていくものも少なくないようです。
Dscf4785  この『かむい』は、林の際で畑のそばにあるので近隣農家の休憩所として使われていたのかもしれませんが内部には農業関係の遺物は一切なく、カーテンもあることから宿泊用か部屋として使われたものでしょう。
 現在はこの場所で回りを木立に囲まれ、いったいどこから運び込んだの?という状況です。

 『かむい』の名と天窓のある作りから通常の路線バスではなく観光用なのでしょう。蝦夷地の神の称号を戴くわりにぞんざいな宿命ですが中に数個、比較的新しい発泡酒の缶が置かれていたので密かにまだ利用している人がいるのかもしれません。

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2007年5月 7日 (月)

芸術的バス亭

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 ここは、バス亭です。とてもそうは見えませんが、近郊の学校が少子化から街の学校などに統合になり、それに伴って児童の送迎のためにスクールバスが運行されます。夏場ならいざ知らず、冬場は雪もあり親心としてはバス待ちの小屋があちこちで建てられました。
 新築したり、物置などの再利用、廃車を代用、そしてこの地域のように風除けの壁のみといったところもあります。

Dscf4282_1  ここの農家では、もうバスに乗る子も卒業してしまったようですが、残ったバス亭は壊されることも無くアートとして再利用されています。ガーデニングブームを発端にしたガーデンエクステリアのバリエーションで町の『景観美化条例』と『花溢れる町構想』による町民意識の賜物でしょう。

 しかし、このアートは朽ちた板塀とフクロウの斬新なタッチがマッチしていて、こういうのはぜひ、真似してみたいな~と思いますね。
 フクロウには『博学の象徴』的な部分があり、教養の守り神のイメージもあります。
 日々の過酷な農作業の合間にもこのようなアートな活動に余念の無いこのお宅は、まさに教養深いの一言につきます。

 やがて花々の咲き乱れる季節には色とりどりのプランターも置かれ、ともすれば平坦な田園風景にアクセントを加えることでしょう。

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2007年4月27日 (金)

たわわの幸福

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 天井から吊り下がった裸電球ひとつ
それすら目立たないほどに重なった名刺・葉書そのほか、ここを訪れた人々の思いを託した一葉の紙切れ。中にはキャンプ用品のコッフェルまで見えます。

 言い方を替えると個人情報の集製材で建てられたようなここは旧国鉄広尾線『幸福駅』の駅舎。その名は誰もが知るところですが現場でこの光景を見るとすさまじく圧巻的です。ともかく幸福は『貼る』ことで得られるようです。

Dscf0387  昔のテレビドラマなどの影響で廃線前から訪れる人が多く、ピークはとうに超えたとはいえ、入場者の出身地も全国津々浦々。外国人の名刺もかなり見えます。特にお隣の国の名刺はゴージャス!(物価の高い日本に来るくらいだから裕福なのでしょう)ほとんどブロマイドのようなスタジオ撮影写真が片面に刷られています。
 近くに台なんかないのにどうやって天井に貼っているんでしょうね。台でもかしてくれるのかな?
 隣の『愛国』駅も観光スポットですが雰囲気ではやはりこちらの方が絶品です。
 『廃墟』とは明らかに趣は異なりますが『廃校』と同じく『廃』の冠は取れないまでもその後の変貌に驚かされることもあり、ポジティブな『廃』といえるかもしれません。

Dscf0382  更に駅の名前と独特の雰囲気のためか、『廃線』・『廃駅』の寂しい雰囲気よりのんびりした感がここにあります。
 駅傍の道は、元『メルヒィエン街道』と呼ばれ、現在鎖国状態の『G王国』へ至ります。今だ黒船も現われず平坦な田園風景の中に古城を晒しています。

『大きな夢よりも小さな幸福を願う心の方が強い』ということでしょうか。
日本一切符の売れる『廃駅』でした。

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2007年3月27日 (火)

ラ・セーヌ

Snuck

 郊外を走っていると時々見かける『廃バス』。物置や休憩所に使われているものがほとんどです。看板が分かりにくいですがこちらは『Snackセーヌ』
 現役時、車両として生きていれば、洒落た穴場だったのかもしれません。高台とか展望台で開店すれば、グラスの琥珀色ごしに遠くの夜景を臨むのもおつなものでしょう。
 それだと、どこで開店しているか分からないからダメか…ミステリー列車みたいで良いと思いますが。じゃ、玄関口まで迎えにきて頂いて…というのも屋台くさくて『セーヌ』のイメージではないですね。
 なおかつ、運行中だと悪酔いしそうです。なるべく前のほうのボックス席で外を凝視しながら飲まなければなりません。カラオケの歌本をじっくり見るのもご法度です。酔った勢いでマスター(運転手)にちょっかいを出したり、ゴチしたりすることは自殺行為です。
 良い酒の飲み方ができたとしても入店時に整理券をとり忘れるとチャームを始発からの分で払わなければならず、痛い出費になるので気をつけねばならない。また、業務連絡は全て末尾に『オーライ』をつけるのもお約束です。

 だんだん話が脱輪していくのでこのあたりでバスストップです。
色々いいましたが、よりによってこちらは幼稚園バス。しかも幼稚園自体は現役なのでスナックとはえらい飛躍です。
Photo_3 『ママー、園バスにパパが乗ってるよー』
『じゃあお出迎えしましょうかね……』
『マスター!ボトル入れるから、もっかい回ってー!』

…脱輪どころかパンクしそうです。

 店内はどうなのだろうとドアを押してみましたが既に錆付いて開ける事ができませんでした。側面に回って少し開いた窓からデジカメ越しに中の様子を伺うと…

 閉店時、常連のお客様がボトルと一緒に備品まで引き取ったのか、なーんにも残っていませんでした。ここは廃農場の一角、閉店の原因は人里離れ過ぎたから…?

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