2008年9月24日 (水)

廃墟画廊

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ホント言うと Uターンするのが すごく苦手。

できないわけじゃないけど 前に道が続いているのに引き返すのがもったいない…と思う。

だから行けるところまで行ってみて
適当な脇道から本道に戻ろうと考えるんですよ。

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でも 

いけども脇道が見つからなくて、とんでもないところに行き着くこともある。

『地図では国道へ戻る脇道があるんだよね…』

ナビなんて持ってないし 持ってる地図は8年位前の…
 「これ以上、行ってもダメだ~ ってところまで行って
やむなく引き返した。

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だけど

戻るんじゃなく 引き返す自分ってのが許せなくて
途中見つけた脇道さらに紛れ込んだ。
ずーっと山の間を縫う舗装道だったからダイジョウブ ということで…

ところが徐々に舗装と砂利が交互して
そのうち工事を途中で放棄したみたいなところへ出て
きれいな舗装とは えらく様子が変わってきた。
路面は雨に洗われて凸凹
土のうまで路面に散乱してる。

Dscf3142「ここどこだろ?スタックしてもJAF呼べないよ…

…と半分泣きの入ったところで遠くの林に赤い屋根が…。
近くまで行ってみると林に埋もれてて 見るからに廃墟っぽい。
でも人里のいたるところへ出たってことで一安心。
『国道まで●㎞』の表示も見つけた。

 

とりあえず

あの赤い屋根を 今日最初の訪問ということで…
近づいてみると学校のようです。
手前に地区会館(地域公民館)があってますます学校跡っぽいな。
そこまでは笹ヤブが少し続くので 装備を最小限にして いざ!

Dscf3109校舎らしきものは少し山側へ高くなっているので
手前のここは どうやらグラウンドというところでしょう。
向こう側に『お墓』のようなものがある。
行ってみると平成7年建立の馬頭観音らしい
しかし 既成の墓石に篆刻したものみたいだし
形はあきらかに『お墓』

その碑を横目に校舎を目指す。
今年は何度か「ササダニ」に食いつかれたので
正直 笹ヤブは苦手だよ~

近くまで行くとやはり学校
それも わりと近代的な体育館のようです。
回りに校舎は見当たらないので 体育館以外は解体らしいです。

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バタバタバタ…

Dscf3126 入ると同時にハトが数羽飛んでった。建物の向こう側から…
そう その先は建物が角から崩落して青空が覗いている。
う~ん、こういうところを見つけるのはハトの方が断然早い。

中は農具の倉庫に使われていたらしく工具や機械が数点置かれている。
でも落葉松の木や笹に囲まれているくらいだから今は使われていないんだろう…
学校の面影としては 生徒用のイスがいくつか投げ出されていた。
記憶は刻まれてやしないかと壁を食い入るようにたどる。
当時の傷らしきものは見えるけど落書きの文字とかは確認できなかった。

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Dscf3118 でもそこに

1枚の絵があるんだ。
朽ち始めた合板に描かれた卒業記念らしい絵が…
シカとウサギ 故郷の山々
こんな風に朽ち果てる定めなら 作者達にとって描くことが空しい
今や 朽ちかけた画廊はこの1枚絵だけを掲げ、終の日まで営業し続ける。

Dscf3138 だがしかし

もう1枚絵があったんだ。
天井から大きく崩れ落ちてぽっかりと開いた壁の向こう
広がる空と緑の絵が…
夏の空 青みがかった雲が流れて
濃いブルーの空が穴のように見える。

なんとなく思った。
バチカン宮殿・システィーナ礼拝堂の天井壁画で
ミケランジェロ「最後の審判」ってのを思い出した。
あの背景も 青空っぽかったね。
神の鉄槌は 天変地異を伴うんじゃなくて
意外とこんな青空の下に振り下ろされるのかもしれないよ。

Dscf3135閉校記念品として保存されるべきだった校旗が寂しく取り残されてた。
真っ赤な 血のような赤 命の色

そして 暖かい色

ミケランジェロ/『最後の審判』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 

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2008年6月 2日 (月)

「ぱだん ぱだん」の学校

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小学校は楽しいよ。

そんなことはないと言われても、本来そうあってしかるべきです。

幼稚園や保育所では、まだ早い─ 中学校以上は大人になり過ぎる

自分の考え方、すなわち自我と言うのがほぼ完成して、情報にも翻弄されすぎなくて、

多感で創造力もあるし、大人芸(画力・文章力)でも持たせれば最高の画家であり、前代未聞の詩人にもなれるでしょう。

大事なこと 大切なこと 大好きなこと カッコイイこと… そしてその反対のこと…いろんなことが光のように心に差し込んでくる。

蒔いた種が発芽するみたいな些細な事でも感動できる、ただ心が真っ直ぐな頃。

そう、こころのあり様に真っ直ぐになれるからです。

学校はひとつの社会です。

でも、そこが現代社会の縮図であってはいけない。

算数が苦手でどうにもならなかったけど、いじめられたこともあったけれど、小学校は楽しかった。どこが?と聞かれても答えようもなく楽しかった。

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Numa この町の外れにある湖の近くにそれぞれは離れていますが、背に山を抱いたふたつの廃校がありました。

 ナギサが目的の学校と勘違いして訪れた始めの学校は、地域特有の山々に囲まれた狭長な地形で、近くの市街地から数キロ走り、緩やかな坂を越えると右手に見えてくる学び舎です。一見「ここは学校?」と見まごうほどでした。

Dscf4830  大正2年頃から開拓の鍬が入れられ、戦後の緊急開拓期には18戸が入植してきましたが通学区である学校は遠く子ども達の通学、特に冬期間は困難で年間60~80日の欠席も余儀なくされる子もいたほどの環境であったそうです。

 後に学校設立期成会が結成され、国庫補助により昭和28年落成された戦後誕生の学校です。もとより戸数の少ない地区であるため、児童数も少なく2学級。(当然、複合学級と思われます)

Dscf4828  歴史も浅いことから輩出した卒業生の数も少なかったことでしょう。町史で見られる在りし日の学び舎は、見まごうことない学校の姿ですが、農機具庫等に再利用された姿は、すっかり変わり果ててしまったようです。

Dscf4844残された子ども達の図画が、主の元へ返されることなく散らばる物悲しい光景。でも、それがあるからこそ、ここが子どもの場所であったことを語ります。

ここにいたふたりは共に人生を全うして懐かしき日を取り戻し、永遠に終わることのないカクレンボをしています。そんな絵をここで見てみました。

もうしなくなって久しいのですが、メンバーがいれば今でもやってみたいですね。かくれんぼ…

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 次にナギサが向った学校は現在、幹線道も整備されて開けた印象も受けますが、最寄の市街地から15㎞。隣町との町界までもわずか5㎞という町の端に位置する学び舎です。 主要交通機関がバスのみという地域で、それすらも赤字路線として常に存続が危ぶまれていて、前出の学校と共に僻地級3級校の指定でした。

Dscf7991 閉校後は、一時期郷土資料館として使われていたようで作り置きの棚や展示品分類票がありますが、現在は全て搬出されて今は未利用の状態です。

 卒業記念の協同絵画や誰かの図画、物置に積まれた机や椅子。そういった遺物が解凍されることのない記憶を闇に封じ込めているかのようでした。

Futa  往年は、学校樹もふんだんに植えられていたようですが、数本の松が残るのみ。

校門も幹線整備の盛土のため、半分ほど埋まっています。

それでも町史に書かれた生徒たちが植樹した桜の木は学校の裏に残り、春には満開の花を咲かすことでしょう。もっとも再訪した頃は、この地まで桜前線は、まだ来ていませんでしたけど…

Dscf4740  これらの学校の歴史が閉じられた背景は、少子化ではなく基幹産業である林業の衰退や就農人口の減少などであり、昭和下半期の統廃合の多い時代にあって閉校記念碑や記念誌の類が残されるのは稀だったようです。

 かつては、校庭に立っていたと思われるモニュメントが敷石替わりに体育館の中で半ば捨てられるように寂しく横たわっていました…。

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 現在、両校とも農機具庫などで個人あるいは地域常会の管理にあります。

「ぱだん ぱだん」及びカテゴリ「ナギサ・フライト」の内容は廃墟を舞台とした創作であり、現地で実際に霊が存在するという根拠は全くありません。

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でも、ナギサのモデルになった子は、存在します。

いいえ… してました とするべきですね。

その子もずーっと小学3年生。

きっと風になってどこかを飛んでるんだろうな…。

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2008年6月 1日 (日)

ぱだん ぱだん ④

Room_on_2

最後に教室で席に着いたのは何年ぶりだろうか…
あの、夏休みが近いある日いつもどおりに帰りの会の後、いつもどおりに帰って、いつもどおり海へ遊びに行った。
まさか、全てが最後の日になるなんて思いもしないで。

あの日がなかったら私も今は中学生になっていたはずだったけど…
机の上を見ていたらなんだか目が潤んできた。

「ナギサさん?どうしたのですか?」

「いえ!なんでもないです…」

「話してください そのために来たのでしょう?」

それを言われて涙がガマンできなくなった。止められなかった。
たぶん、まともに話せないくらいに泣いて 泣いて 泣いた…

Dscf4746 言葉も出ないまま、ずっと考えてた。
あの日、波に飲み込まれて苦しくてもがいたこと

ずっと心の中で「助けて!助けて!助けて!」と叫び続けて波の中を転がり続けてやっと静かになったとき、そっと目を開けて見上げると水の向こうから差し込む光がとてもきれいだったこと

自分がどうなったか分からなくて、家に帰ってもパパやママが私に気が付いてくれなくなったこと

そして気が付いた。私がどうなったかということ…そして私ひとりが家に残されて毎日泣き続けた

そんなある日、隣に越してきたカズ君と仲良くなって、ずっと行きたかった海にふたりで行ったこと

カズ君は、また引っ越すことになって言ってくれたこと「いつかきっと来るよ」

そのカズ君もまさか私が幽霊なんて心にも思っていないだろうし、会えたとして私はどうしたらいいんだろう…
そんないろんな事のいったい何から話したらいいのか…

Dscf4729 「…そうですか ずいぶん辛い思いをしてきたのですね 可愛そうに…」

「え…?」 先生は、まるで聞いていたみたいなことを言うからドキッとして涙が一気に止まった。

「私…話してました?」

「いいえ ナギサさんの心の声がわたしに語りかけてきました。わたしには聞えるのですよ」

それを聞いたら、逆に恥ずかしくなってきた…

「でも、わたしには不思議なんですね…ナギサさんが普通にカズ君と話したり触れたり出来たことが…」

Dscf5180 考えたら確かに不思議だよね。
確かにカズ君は私が幽霊なんて分からなかったんだろう。

「先生?たまに私のことが見える人がいるみたいなんです。変な目で見られて、なんだかそれがイヤなんです…」

「たぶん見えないことが普通なのですよ。見える人たちには、何だかユラユラした霧か何かのようにしか見えないでしょう。わたしたちは体を失って心だけのような存在なのですから」

「じゃあ…どうしてカズ君だけが…?」

「たぶん…なにかきっかけがあったのでしょうけど 私にもはっきりとした答えはわかりませんね 残念ながら…」

そっか…先生にもわからないのか…

「たぶん、ナギサさんかカズ君のどちらか…もしかしたらふたり共に特別な何かがあるのかもしれないですね」

「…私もそんな気がします」

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「ナギサさんは、そのカズ君のことが好きなのですか?」

「えっ?!」 急に言われて カーっと顔が熱くなる…。

「せ…先生!」

「いや!ちょっと聞いてみたかったんですよ ハハハ…」

「そんなこと急に聞かれたらドキドキするじゃないですかー!」

「ドキドキ…? いや!ごめんごめん! …ところで、せっかく先生と生徒がいるのですから授業でもしてみませんか? わたしも先生といってもずいぶん授業などしていないものですから…」

「はい!」

Nagisa_book_2

それから先生と国語の勉強。
あんまり久しぶりで 嬉しくてずっとニンマリしていた。
先生も嬉しいらしくて、ずっとニコニコしてた。

「よくできました 普段からしっかり本を読んでいらしたようですね」

「ありがとうございます!」

「今日はこれまでにしましょう。続きは次ということで」

窓から差し込む光が長くなっていて、いつのまにか陽が傾いていたみたいだ。

「先生 ありがとうございました」

「いいえ!今日は私もとても勉強になりました。わたしこそありがとうございます。また、いつでも来てください」

Last

「先生? 先生は、なぜこの学校にいるのですか?」

「わたしは、自分で希望して小さな学校ばかりに来ていたんですよ。わたしが小学生の頃に通っていた学校もそうでしたから…同級生が3人くらいのね。そこも、卒業式を迎えることなく街の学校と一緒になりましたが、その頃の楽しい思い出が先生になったときも忘れられなかったのです。特にここは一番思い出が詰まっている学び舎です。だからここを去らねばならなかったときは子どもの頃のように泣きましたね」

「この学校も先生が去ったとき悲しかったんですよ 私に話してくれました」

Blanko 向こうで黄色いブランコがキィと鳴った。

「あのブランコも『私のことはどうなったのさ!』って言ってます!」

走っていってせっかちなブランコに飛び乗った。

先生は私のことをポカンと見ていた。
先生にはブランコの声は聞えてなかったのかな?

Sunset

「お世話になりました先生」

「これからどこへ行くのですか?」

「決めてないんです。ただ色々見て来たいなーって…お家にもいつか戻らなきゃならないし」

「そうですか 気をつけて旅してくださいね」

「あっ!そうだ!」 
「はいっ!」ポケットからハッカ飴を出して先生にあげた。

Hakka 「おや!これは懐かしいものですね…」
先生はなにやら不思議そうにハッカを夕日に透かしてる。

「どうしたんですか?」

「いや…秘密は意外と、これにあるのかなーってね…」

へぇっ?なんだろ…

「じゃあ先生さようなら! また来ます!」

「はい!さようなら それと…」

「なんですか?」

「学校にお菓子は持ってこないように」
先生は笑いながら言った

「はーい!ごめんなさい!」

グランドをすり抜けてきた大きな風の背に飛び乗って空へ舞い上がる
あっという間に学校は小さくなっていった。
先生ありがとう 聞きたかったことはまだあったけれど、それは私がもう少し考えることなのだと思います。おかげで心はずっと軽くなりました。

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その姿を見送りながら先生は思っていた─

ナギサさん
あなたは、ドキドキできる幽霊なのですね。
私ももう一度そんな思いをしてみたいですよ。心臓のないこの体ですけれど

でも、わたしたち幽霊は想いがあるから生き続けていられるのです。
思い出の中でただ留まり続ける私のようなものは別としても…

想いが叶うとき…それはわたしたち幽霊が『己』という最後の存在を終えて、この星の一部に戻るときなのです。それが涅槃というものなのかもしれません。
そういう方をずいぶん見てきましたが…ナギサさん、あなたにそのことは言えませんでした…

今のあなたにそれを言うのは酷だと思いました。それにあなたには、その輪禍に囚われない何かがあるような…そんな気もしたからなのです。
その源が何であるのか? わたしにはわかりません。
それは、あなた自身がこれから見つけることなのだとわたしは思いますよ…ときめきの幽霊さん。

この学び舎がここでふんばり続ける限り、わたしも存在し続けます。
また、ナギサさんと会えること、あなたのような子ども達に会えることをこころ待ちにしながら…

Nagisa_flight_sunset

「そっかぁ私、恋してたんだね…。さぁーっどこへ行こうかな…そう、風まかせだね。約束の日まで…」

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2008年5月30日 (金)

ぱだん ぱだん ③

Nagisa_down

その学校にいる先生に会ってみたいと思ったのは、聞いてみたいことがあった。
それは、いつか会いに来てくれる引っ越したカズ君とのこと…。

そのことで、いつも考えていたことがふたつある。
ひとつは、私がホントは「幽霊」だと言えなかったこと。
もうひとつは、カズ君がきた時、私はどうしたらいいのかということ…

先生、それも私と同じ存在の先生なら良い答えを教えてくれるだろうと思う…
1年生の頃、話ベタな私は友達ができなくて、担任の先生がそんな私を気にしてくれて話を聞いて、一緒に悩んでくれた。そしてだんだん話せるようになってクラスの他のこと変わらず遊べるようになれたことがあった。
だから先生は、いつも素敵なアイディアを持っている人…そんな風に思ってる。

でも、正直それを聞くことが怖い気もした。
大事なことだからいつまでも逃げていられないけどね。だから…。

ふたつ目の山の縁を巡る風に乗って大きく回り込んだとき、学校が見えた。

「あそこだ!」

私が通っていた学校と違って、ほとんど木でできた1階だけの校舎だけど横の幅は同じくらい長い。いきなり中に入って、さっきの学校と違ったりってのもなんだから、少し慎重にいこう。
道の近くに降りて学校を見渡す。この校舎は背中に大きな山を抱えて勇ましく見える。

Front

グランドは、しばらく使われていないようで草だらけ。
学校も今は学校として使っていないみたいだ。
学校が学校でなくなる事ってどういうことだろうか…

子どもがいなくなったのか
人がいなくなったのか
古くなりすぎて使えなくなったのか…私にはわからない。

Dscf7986

学校ではなくなったここに、ひとりでいる先生ってどんな人だろう。
黄色いブランコが私を誘って静かに揺れてた。

「久しぶりの子どもじゃない ちょっと乗っていきなさいよ─」

「─ごめんなさい 後でね」

Haill_nagisa 学校に近づくと、横の大きな教室の壁がなくなっていて中が丸見え。
何かの大きな機械が置いてあって、下には青いビニールを敷いてある。わらもたくさん散らばってる。たぶん体育館のようだけれど、床はなくなっている。そう、誰かが物置にしてるみたいだよ。

学校の奥に通じる入口は、板で塞がれてた。小さい隙間を探せば私は入っていけるけど、あきらめて正面に回ろう。

昔見たテレビのアニメで見たように幽霊は、壁を通り抜けられると思っていたけど、今の自分になってからそれが出来ないと知った。ほんの少しでも光が漏れるような隙間がないと…

せっかく来たんだから普通の小学生らしく戸を開けて入ろうと息巻いて正面のドアに手をかけたけど…重い…ちょっと無理。
仕方なくドアの隙間を滑り込んだ。

「わぁーっ」

Art1

Dscf4730中には子どもの描いた絵が飾ってある。

学校の絵と、みんなでスキーをしているところ。
スキーの絵がとっても楽しそうで、しばらくニンマリして見上げてた。
私の通っていた学校にも卒業した生徒の絵がこうして飾ってあったっけ…
自分の学校じゃないのに懐かしい感じがする。

Dscf5172それ以外は、葉っぱとかが散らばって下駄箱もないガラーンとした玄関。
誰も来なくなって可愛そうだね…。そうだ!忘れてた。

「こんにちはー」 返事はなかった。 
あれ、おかしいな…

「こんにちはー」 シーン… 

廊下の方を覗き込むように声をかけたけれど何も聞えない。

Nagisa_in

「いないのかなぁ…」 薄暗くて静かな廊下。横の教室から光が差し込む。
教室の中はガラーンとして時がすっかり乾いてしまったみたいだ。
机ひとつなく薄暗く広い教室の中で、光の束がすごく威張り散らしている感じがした。少し前までは、私もあの光が怖かったんだなぁ。
ずっと暗い部屋にいたから、あの光に当たると霧みたいに消えてしまう気がしてた…

「テレビかなんかの見過ぎだよ。吸血鬼じゃあるまいし」

風の乗り方を教わったサーファーのサトシさんにそんなこと言われたっけ…

Bell ジリリリリリリリリリリリ…

「わぁっ!」

思い出にふけっているところに急なベルの音で飛び上がった!

リリリ…リン!

つまづくように鳴り止んで、一瞬散らばってた空気がまた固まり静かな部屋になった。

「あぁ…驚いた。胸がドキドキする…」

「やあ、こんにちは…」

その声に振り返ると背広姿の男の人が立っていた。

Tsensei

「あ…すいません!勝手に入って!」

「いいのですよ。学校は子どもの場所ですよ。私はモトミヤといいます。君は?」

「はい!ナギサです。猫を連れた人に聞いてきました!」

「あぁ!あの人に会ったのですか!とても面白い方でしたよ」

あぁ!やっぱりここで間違いなかったんだ!

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「あの…あの…先生!私が来たのは、先生に聞いてみたいことがあって…あの…」

Dscf8001 いざ、話をしようとしたらなんだか舌が回らなくなっちゃった…

「おやおや、あわてんぼうさんですね。とりあえず席について落ち着きなさい」

先生が手を差し伸ばした先には、さっきまでなかった机と椅子があった。

Pastel

(つづく)

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2008年5月25日 (日)

ぱだん ぱだん ②

Dscf8084

「その先生も私たちと同じなんですか?」

「あぁお化けだよ。なんでも昔、赴任してた学校らしくてさ。そこには、もう1年くらい居るらしいよ」

そっかーそういうところなら私も気兼ねしないでいけるね。
でも、このおじさんの『お化け』とか言うのちょっとやだな…

Dscf8443 「まだ、そこにいますか?」

「まだ今朝のことだからね。出かけてなきゃいるだろうよ」

「私…これからその先生に会ってきます!」

「そうかい。相棒!俺らもそろそろ行くか!温泉行って来ようや」

「ニヤ?」 相棒さんは、温泉は乗り気ではないらしい…たぶん。

「じゃあ!ありがとうございました!」

「うん!会ったら先生によろしくいっといてや」

「はい!」

湖を駆け抜ける風を捕まえて空へ跳び出した。広いところの風はやっぱり捉えやすい。一気に湖が遠くなる。手を振ると、それに応えていたおじさんと相棒さんがグングン小さくなっていく。

Padan2top

「なぁ相棒、俺…ちゃんと方向言ったよな。あの子あわてて行ったけど、間違ってるみたいだ…」

Dscf8138とはいったものの学校はどの辺だろう。道の両側を見落とさないようにさかのぼっていく。上からだと学校なのか牛舎なのか迷ってしまう。
牛がいなさそうなところが学校だよね。

建物の周りに木もあって分かりずらい。低いところまで少し降りてみよう。

「あ!ここ?! ここ!!」

木立を過ぎたところにそれが現われたので、あわてて風の背から転げ落ちちゃった…

Padan_down

Dscf8125「あ…ハハ…何やってんだろ私…」

たぶんここかなぁ… 様子を見てみよう。

「こんにちはー こんにちはー! 誰かいますかぁー?」

Dscf4820 返事は無い。ここは違うのかなぁ…学校っぽくない気もするし…
あれ? 壁に校歌が貼られている。やっぱり学校だよ!

「こんにちはー!!」

「誰だよ!うるさいなぁまったく! 見つかるだろ!」

「え?!」 誰かに凄い勢いで怒られた。

「ごめんなさい」 

Dscf4825  向こう側にあるドアの影から男の子が出てきた。私より年下みたい…

「ボク?何年生なの?」

「1年!お前は?」

な…なに?この態度…

「私は3年生だけど…」

「歳は?」

うっわぁ~なんかヤだな。少しムッとするよ。

「私、9歳だよ!」

「なんだ!本物か」

「なに?本物ってー!」

「俺、86歳だも」

Dscf4829 「あーっ!カッちゃん見っけぇー!」

私の後ろからもうひとり女の子が出てきた。

「ダメだよ!今の無し!こいつが急に出てきたから悪いんだよ!」

「でも『待った』ってしてないよ!」

えーっ何なのこの子たち…?

Dscf4834

「お姉ちゃん誰なの?」

「わたし…ナギサ。ここに先生がいるって聞いたから来たんだけど」

「ここは俺たちだけだよ!先生なんていねぇよ!」

「そうだよ!ここはカッちゃんとアタシだけしかいないんだよ」

なんだか分かんなくなってきたな…

Cat 「ニャ~ン」

「あっ相棒さん!」

「あ!猫!かわいい~っ!」

「化け猫だ!」

それを聞いて相棒さんが男の子をにらんだ。

「お姉ちゃん、どこから来たの?」

「私、あっちの湖でこの猫と一緒にいた人にこっちの学校に先生がいるって聞いてきたの…」

「湖からなら反対の道の方だろ?山の向こうにも学校があったよ!」

「あ…そうだ、聞いてたんだ。私あわてて…」

「ニャー」

そっかぁ教えに来てくれたんだね。

「ありがとう!」頭をなでてあげると相棒さんは喉をゴロゴロ。

「なんだよ!人騒がせだなぁ!」

「ごめんなさい…」

Dscf4833

「でも、良かったね!猫が教えに来てくれて…ねぇ!ちょっとでいいからカクレンボしようよ! 私、トシコ!」

Dscf4826 「うん!いいよ!」

「良かったぁ!カッちゃん、今度オニだよ!」

「なんだよ!今の無しだってば!」

「じゃあ私もやめるよ!」

「なんだよ、わかったよ…」

それから相棒さんを抱いて、みんなでカクレンボ。

Dscf8135 「ナギサお姉ちゃん!こっち!カッちゃん学校の中ばっかり探すから」

トシコちゃんと一緒に少し校舎から離れた小屋に入り身をひそめていた。

「ねぇ?あの男の子、さっき自分のこと86歳って言ってたけど…」

「そうだよ!アタシは90。カッちゃんより長生きだったから」

Dscf8105 「えぇーっ?」 どう見ても1年生くらいじゃない…

「お姉ちゃん もしかして、ずっと3年生やってるんだ!」

「そんなこと、どうやってできるの?」

「簡単だよ!アタシとカッちゃんはずっといっしょに遊んでいたいから1年生の頃に戻ったの!もっと上にもなれるけど90より上になっても変だしね。お姉ちゃんはいくつになりたい?」

「私、自分が大人になったところとか分からないし…」

Dscf8108 「できるんだよ!ただ、考えればいいの。昔の記憶よりは小さいけど来るはずだった未来の記憶も心の中に眠っているからね」

あれ?なんだかこの子の言うこと、やっぱり大人びてるみたいだね。
ホントにそんなことが出来るのかな…。
ちょっと大人になった自分を考えてみた…

Dscf8102_2 「ほらぁ!見つけた!」

「あーっ!なんでぇ?」

「そんだけしゃべってたら誰でも分かるさ!」

それからまた、3人と1匹で鬼ごっことかして遊んだ。
こんなに夢中で遊んだのはいつからだっただろう。ホントに楽しい!

「相棒さん、ありがとう おじさんによろしくね」

「ニャーン」
そういうと相棒さんは、ピョンと空に跳ね上がって私より何倍も早いスピードで湖の方へ消えていった。さすが猫だなぁ…

Nwide

「どうもありがとう すごく楽しかった!」

「また来てね お姉ちゃん!」

Dscf4839 この女の子が90歳と知っちゃたら、何だか『お姉ちゃん』と呼ばれるのが変な感じになった…でも言われなきゃホントに1年生だよ。

「ケッ来なくていいよ!」

「なにさカッちゃん!いじけてさー!」

「いじけてねェよ!」

Dscf8100 「うん!ありがとうカッちゃん!」

カッちゃんは、ちょっと照れくさそうな顔。

「その学校に行くなら戻るより、この山を越えていったほうが近いよ。裏にもうひとつ山があるから、その向こうのすぐ下にあるよ」

「ありがとう!元気でね」

Dscf7043「いっつも元気だって!」

「あっそうだ!これあげる」

ポケットからハッカ飴を出してふたりにあげた。

「わぁーハッカ飴だ!懐かしいねーカッちゃん!」

「うん!」

Padan2end

私もひとつ口に放り込むと山に向かう風を見つけて飛び乗って空へ。
この向こうに目指す学校がある!

振り返ると、大きく手を振る二人の姿が見えた。

雰囲気じゃないから聞けなかったけど…
あの子たちって夫婦なのかもしれないね。

(つづく)

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2008年2月15日 (金)

「水中メガネ」の舞台について

Holgaglas 『「廃墟系」でこんなのやるのか?』というようなものを7回にわたり連載しました。
最後まで付き合ってくださいましてありがとうございます。

似たようなストーリー仕立ては以前にも試みていましたが、本格的に取り組んでみたいと昔聞いた曲のイメージを『ルイドロ』風に膨らませてみました。

RINK  You Tube 『水中メガネ』 歌/草野ムラマサ(スピッツ)

ストーリーのベースはこの歌詞の内容をかたどっていましたが、細かいエピソードは、ねこんの実体験と思っていただいて差し支えありません。
ひみつ基地の空家も裸で泳いだ川も場所は違いますが実際に今でも現存します。(川に関しては水量が激減。空家は現在人が住むようになっています)

お話の中でK君とNさんが訪れた廃校ですが、そこに関して少し触れておきましょう。

Dscf5916

閉鎖された温泉の噂を確かめに現地へいきました。
この辺りは昭和の始め頃から金鉱採掘に始まり、後には水銀・カオリン・ゼオライトなどが産出される鉱山に変わっていきました。広域に大々的な試験掘りもされましたが。安価な輸入品や代替品などに押され、昭和45年から採掘はしていないそうです。
もとより岩盤が浅く耕作に向かない土地の多い場所ですが、地熱で高温になった岩盤が地下水に触れやすい地中環境がこの特異な地質を造ったと聞いています。

Dscf5971 耕作に向かないとはいえ、酪農業も多く、鉱山関係者の家族の増加からこの地域(セタ・アン:アイヌ語で『狼のいるところ』とされる)に大正11年に創立したこの学校はわずか58年間という校史に似つかわしくない645名の卒業生を送り出しました。
鉱山の最盛期には運動会も地域こぞっての大きな催しだったそうです。
町で2番目に大きな学校であったとの話もそんな背景からも察することができます。

Dscf5927 生徒数の増加は鉱山によるところが多かったのでその衰退と共に児童数も激減。
昭和56年をもって閉校とされました。
閉校後の二次利用は、体育館が屋内ゲートボール場として改修されたほかは、閉校時からさほど変わってはいないようです。
鉱山の工夫の減少のほかに地域の離農もまた多かったことから、GB場もさほど使われることもなくなりました。

Dscf5972 現在グランドは、防風林からのこぼれ種が芽をふいたのか植林したように木が生長してグランドの存在すら消そうとしています。
校舎も所々が傷み始め、閉校から30年近く経ったことを感じます。

まだ、合理主義に彩られない建築的遊び心が玄関口や内部に見ることができました。
温泉調査の折に偶然見つけて立ち寄ったのがその年の最高気温を出した7月のある日。
玄関口から体育館まで真っ直ぐ通った長い廊下。明るいグリーンに彩られた教室。気温観察記録とその功労表彰状…
卒業制作の『鉛の兵隊』の絵。それを見たときにこの、『水中メガネ』の大筋がイメージできたと思います。

ここがその舞台だと…

残念なのは、第1話の体育館のシーン。この学校、GB場化しているため、人工芝が張られステージがあったと思われる面が壁ごと無く、シートが壁代わりに張られている状態であまりにも雰囲気が無いので、他校の現存する体育館を使いました。

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Dscf4933 このお話、ベースになる歌と同じく断片的で尻切れなまま終わる予定でしたが、閲覧常連のアツシ様のコメントにより3話以降を書き直して中編化しました。
要望にそえられる〆になったでしょうか?

青春の始まりは、スイッチを切り替えるように急に意識が切り替わったと自分ごとでは記憶しています。
まだ、恋の自覚など全くない頃です。性差など関係なく遊んでいられたのが、ある日いきなり相手を意識してしまう「ぎこちなさ」。
昨日まで当たり前のことだったことが、できなくなる辛さ。
どちらにも向かえない「歯がゆさ」。

それらがギシギシと身に迫っていた時間は、ある意味自分が別のものになっていく恐怖とか嫌悪のような感覚がありました。それを考えなくなるようになった頃、本音とたてまえを覚え、親の期待にそえているような作文を書き出した頃から大人の道を歩んでいたようです。
思えば「恋」を全力で考えていた時間は既に完成された状態で、その前の始まりの頃はサナギに変体し、身動きできずもがいていたのかもしれません。

いまだかつて「昔は良かった」などと思ったことのない性分ですが、細い心の琴線で必死に何かを奏でようとしていたあの頃だけは懐かしく、愛おしく思います。

Balet

現在、この学校自体は未利用ですが、隣接する元教員住宅を改修して人が住んでいます。
また、酪農家も隣接しているので、無作法な訪問はご法度です。

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2008年1月15日 (火)

戦士の休息 ①

男は誰も皆 無口な兵士  
笑って死ねる人生 それさえあればいい

戦後60年 相変わらず世は「受験戦争」とか「企業戦士」とか「経営戦略」など暮らしから戦いの遺構は消えない。想いとはかけ離れたレベルで時代は変わっていく。
「時代は変わったんだ」 「生き残るための努力」 キリギリスになった覚えも無いのに強いられるなにか。後ろめたさもないのに迫り来る脅威。
いったい何を見るのか? 見せられるのか…
かつて戦乱の時代、戦場に駆り出された人々は「1銭5厘の命」と揶揄されたことがある。
召集令状1枚(1銭5厘)でいくらでも連れてこれるということだが当時、予科練に来る者達は面と向かってそれを叩き込まれたそうだ。

「いやぁー今日は6万負けてきたよ」 レジ越しに聞きもしないのに笑って戦果の報告をするおじさん。彼も戦士だろうか…

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親父眉ながら端正な顔のラインと筋の通った鼻。いつか流行ったヘンナブラウン系のルージュをさして明らかに女形。目はすっかり狼狽していますが、どこかのおかみさん人形に比べれば血の通った人のようです。でも、かなり脂が浮いているようでテカリが尋常ではありません。

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Dscf2504 彼らが戦士の休息所として来た所は、旧北海道芽室町立明正小学校。
名前の由来は明治の『明』、大正の『正』。ふたつの時代にわたる学校という意味だそうです。
明治45年創立。昭和63年に最後の児童22名を新設校に委ねて77年の決して長いとは言えない校史は幕を下ろしました。それまで送り出した児童数は1308名と郡部にしては破格の人数。広大な平野の下、当時は一帯の戸数がいかに多かったかを物語ります。

Dscf2513 正面入口は意外と小さく、前にポスト(使用不可)があるので何処かの駅舎のようにも見えます。集合煙突の位置が教室間ではなく、真ん中にズーンと立っているのが変わっているかなぁ…錆びかけた緑のトタン屋根の木造校舎。冬の青空とのコントラストが美しい。

現在の姿は、閉校後、他の廃校などに分散収納していた郷土資料をここに集約。近くにある郷土資料博物館の備品庫として町に管理されています。
そんなわけで校内は農具や馬具、開拓時代の生活用品などが分類整理されています。
観覧は事前に町に申請すれば可能なので、お休みの日だったようですが担当の方に中を見せていただきました。Dscf2476

他にも誰かくるのかな? 聞いたところ…
「1年に1度あるか無いかですね。この前は警察が来ました。」
えーっ警察?
「収蔵品に砲弾があって、爆発の危険もあるので処分になったんですよ」
そういえば、ここを見に来る手続きを教えてくれた役場の人も「新聞のことかい?」と言っていたのはそのことなんだ。
「元の出所は分からなかったんですけど、個人で所有していた方も回りまわって譲り受けたものらしかったです。『●●記念』と掘り込みがあったんで数発持っていて配ったんですね」
へーっ何だか怖い。

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「あそこの児童の協同制作の絵がありますよね。あの、真ん中の2年生のところ。先生がおじいさんに殴打されているらしいですが何かあったんでしょうか?」
「僕は街の学校卒なんで分からないです。確かにそうですよね、殴られてる…」
この件は、閉校記念誌か学校文集で調べてみることにしよう。
よほどインパクトのある出来事だったんだろう。修学旅行の思い出と同レベルなんだからよほどの出来事だったのかも。

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「博物館の方とは定期的に展示品の入れ替えしているんですか?」
「そうするべきなんですけどね。収蔵品の年代でダブったりしているものも多いし、閉館してまでの入れ替えは今のところあまりできないんですよ」
ということですが、ここ自体がひとつの郷土資料館であるかのように綺麗に陳列してあるので、このまま通常公開しても…と思いましたが、町の予算としてはそれはできないところらしいです。

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春になれば今も咲き誇る校庭の桜は見事なものです。体育館の屋根板が錆び付いた色で桜の美観が損なわれるから壊してしまえ!という一意見も広報誌の投書にはありました。
まぁ、人の美観はそれぞれですからとやかく言えたものではないんですけどね。そういうことをあっさり言ってしまうのはちと寂しい…

(つづく)

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2007年11月13日 (火)

洞窟学園 ⑤

Hakai 最上階へ上がる前、それ以前に外からの様子で奇妙なところがあります。
最上階の他に建物の全長の三分の一ほどの階(屋上続き)があり、そこの壁が壊されている様子…
ボイラーか何かをクレーン搬出した際の跡と思っていました。

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近年に大掛かりな建物の調査が行われていたようです。

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Dscf7246_2 Dscf7232  某建設設計事務所が関与したとされている鉄筋不足などの耐震強度偽装問題、いわゆる手抜き工事の事件が表面化し、全国の同建築設計事務所が設計施工した物件が調査され、問題のあるホテル・マンションなどでも同様の問題が露見。営業停止や住み慣れた所を離れなければならないなどのニュースが連日報道されました。
 更に無関係の物件でも鉄筋の数、基礎体に木材などの端材が混入、シャブコン(またはシャバコン)と呼ばれる水増ししたコンクリートの使用他基本構造に適合しない建築物が調査の結果判明。

 私たちが、その調査過程を目にする機会はあまりありませんが、この学校のようにこういった形で調査はなされていたのでしょう。ただ、ここは未利用ということでその程度が破壊的だったようです。
 全国的に構造調査が行われた旨のニュースは伝わりますが、どこがどの程度調べられたのか、調べた後はどうするのか(鉄筋を壁裏レーダーなどを使わず目視レベルで確認すれば当然壁に穴は空くし)ということは伝わらないものです。
 調査結果問題無しとされてもこのままで良しとは、決してならないでしょう。

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 いくつも大穴を開けられたままの屋上、そこから当然雨が侵入。調査はともかくこのまま放置では建物の崩壊が加速していくのでは? 現に雨水は1階にまで渡っています…。

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Dscf7267 事件は何となく沈静化…何となく風化。
調査は必要なことだったのでしょうが、いわれのない残酷な仕打ちをしてしまったような印象です。
各階に大量に滴り落ちるのは、雨水なんかではなく学び舎の悲痛の涙のようでした…。

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2007年11月11日 (日)

洞窟学園 ④

滴り落ちる涼しげな水音とは裏腹のジトッとした空気の中、教室は水没しているというよりも融解が進んでいるかのようです。
ヌルヌルの床も次の瞬間には、溶けたチーズのように踏み出した足を沈み込ませてしまうのではないかと思うほど物の状態が変わってしまっているような…そんな現場の印象です。

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Dscf7233  しばらく人など入り込んではいなかっただろうと思っていましたが所々に落書きや破壊などの跡も見られます。街中のため、そんな輩も当然いたのでしょう。それにしても穴だらけの壁が後付けらしく質素な造りです。
 前身が被服校だった名残が廊下にありました。数体のマネキンがひっそり片隅に立てられています。
 被服科とパソコン科がどのように分けられていたのかはわかりませんが、校名自体はコンプ系なので被服科は夜学だったのかもしれません。

Dscf7205  上に行くほど傷みが激しい校舎は、時々軋むような音も響きます。
 学校が閉鎖された経緯は何だったのでしょう。調べてみた限りでは、地元名門私立校の被服科夜間別科のような形で運営されたものにコンピュータ系を含め拡大したことになっていますが、設立期や閉鎖時期に関しての資料は今のところ見つかっていません。それでも資格取得専修学校としては、ネット上で今でも名前を見ることができました。

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Dscf7219  最上階、4階には、講堂があります。卓球台もあって何となく学校らしい感じのところです。学校朝礼その他に使われていたのでしょう。奥には和室もあって被服科の付帯の授業に使われていたのか、資料などもありました。あるいは、被服のほかに作法なども授業にもりこまれていたのかもしれません。

Dscf7225  ねこんはこの学校より後の世代ですが、当時でもコンピューター系の専修学校は、札幌あたりでもさほど無く(古くから始めているところもありました)、後に経理系が情報処理としてコンピュータを導入してから飛躍的に専門科が増えていったように思います。
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Dscf7214  現在は、情報処理に留まらず、美術・音楽・建築他あらゆる分野に必要不可欠になり、大学の卒論以前に研究にも、そして入学の願書受付からインターネットは無くてはならないものになりました。
 そもそも、ねこんの家にもパソがあるくらいですからよほどの時代なのですね。

 結果的に時代はそうなったとしても、この地のこの学校に於いては時代に即しなかったのか、技術を取得しても就職先でそれを発揮できるところは、少なくとも地元では皆無と思わざろう得ないでしょう。

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 この物件、放置されてから学校樹や雑草も伸び放題。校舎も徐々に寂れていったため、いつしか心霊のまことしやかな話も聞かれました。マーキングしている心霊サイトもあるようです。周りは市街中心部に近いところですが商店よりも住宅の多く、夜は静かであるため不気味さがあることは確かに否めません。

 校舎裏にあるのは、かなり時代のある名門幼稚園。園児達は、日当たりをさえぎる無機質な壁に何を思うのか…

次回は、『学び舎の屈辱』とされる真実について… (つづく)

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2007年11月10日 (土)

洞窟学園 ③

 小学校などと違って、専修学校は異質な感じがします。なぜだろうと考えてみると専門教科が突出するため、学校という器の個性に欠けるからなのでしょうか?
 自分が出た専修学校に通っている当時は思いませんでしたが、『母校』というより『出身校』の印象があります。2年制のため学校に対して愛情が沸いていなかったのかもしれません。

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 各階、東から、小さな準備室兼倉庫があり、小教室がひとつ、通常教室がふたつならび、両側に階段、西の壁際にトイレ…というのが基本構造です。

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Dscf7209  3階へ上がると湿気は更に増して、カビ臭というよりも湿地帯のような匂いがしてきます。
4階建てですが壁の裏側では、よほどの侵食・崩壊が進んでいるらしくて教室の中も雨漏りというレベルではなく、浸水の感じです。まるで陽の当たる洞窟という表現がぴったりかもしれません。でも洞窟にこれほどの蒸し暑さは無いでしょう。ジットリ汗ばんできます。

 外からは伺うことのできない別世界。外からは想像できない状況と言うべきですが…

 床の状況が読めないので、下手に教室の中には入れません。木造、畳の民家であれば、床の歪みで柱や根太の位置を読むことができますが、鉄骨モルタル建築だと意外な腐食が壁の裏で進んでいるのかもしれません。
 上の階から滴り落ちる漏水は、滴るというより降り注いでいるようで思わず天井は無いのかと見上げてしまいます。

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 こんな状態になったのは、自然な風化や崩壊ではありません。
恐らく、あるひとつの事件が係わっているのかもしれませんが、経緯はともかく結果がこの悲惨な状況を作ってしまいました。

(つづく)

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