2010年11月28日 (日)

廃墟のみち

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廃墟ファンの皆様こんばんは  または、こんにちは ねこんです。

今年の夏の全国的な暑さはなんだったんだろーっというくらいに普通に冬を迎えつつあるこのころ。。。いかがお過ごしですか?

今年はずいぶんいろいろなところへ行きました。
言ったといっても北海道内、それも日帰り圏内をウロウロしてただけですけどね。
怠惰なことに廃墟に関して図書館に通って研究ということもロクにしないで、廃墟でWowWowしてただけな気がします。
身の回りにハード面、ソフト面などの詳しい人に恵まれているので助かっています。

『廃墟』とひとくちに言ってもカテゴリーが深くて、廃施設・鉱山系・廃線・廃道・廃校・廃屋・廃村・廃棄物・廃寺院などなど…それぞれに熟知した専門の方がいるもので、機動力と調査能力は尊敬を超えて、ただただ驚きです。

ねこんは、調べるの嫌いじゃないんですけど、玄人さんにはかなうわけないし、カメラの腕もカメラまかせなもので、どっちかというとゆるい行動です。
それでも自分の目で見てきた廃墟に何か+αして、この廃墟の過去じゃなく、今と未来を書いてみようという風に思ってる。

今年は、動いている方が多くなって、チョチ、ルイドロとルイドラの更新がいいかげんになってきてましたが素材的に充実できました。
長い冬に備えての食材備蓄みたいに。。。

Syoro

先日は、炭山跡を3つ回ってきました。
1日で3つは、ねこんとしては体力的にハードだった。
中身が濃いだけに充実もひとしお

秋に入ってから特に動き回っていたからなのか、ここ数日めったにひかない風邪でダウン。仕事を休むまでにはならなかったけれど今日は、家でのんびり。雪も降ってきましたしね。

今年、一番嬉しかったのは、『“ルインドロップ”を見て自分でも撮るようになりました』というお話を聞いたことです。それが一番嬉しかった。

もう、じきに凍てつく冬が来ます。
冬は家でぬくぬくしてるばかりじゃなく、そんな冬じゃないと会えない廃墟へ行きます。

別に『廃墟』じゃなくてもいいのです。
自分のお気に入りの風景をカメラという魔法の小箱でつかまえて、それを自分なりの調理をする。。。そういうやり方が、ねこんらしいと思う。

貴方も自分の景色をつかまえてください。

Syakukabu

廃墟がそこにある限り、今も未来もあるのです。
存在し続けるかぎり、何かを訴えてくるのだと思います。
それが何かというと、

自分という個のものに至るまでに延々と続いてきた『人』の道なのです。

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2010年8月29日 (日)

バラスト

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果てしなく続く道を走ってる。

「果てしない」は言いすぎだ。見通す先が見えないからといっても果てがないなんてありえない。

しかし、こう景色の変化が乏しいと、それほど走ってもいないのにこのままずーっと続いていくようなんだ。それで「果てしない」感じがする。

「果てしない」とか「永遠」とかいうものは実はつまらないものなのかもしれない。
いまだ「永久」を超越できないのにその空しさをを知り、嘆くのも妙なものだ。

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カーラジオの声も、ほとんどノイズに変ってきたので消してやった。
それにしても今年は春から暑い。
最高気温はともかく路面の温度がどのくらいまで上がったのか気になるんだよ。

こんな日は水分補給はマメにしようと峠前のコンビニで500mlのPETを2本購入したのに既に残り1本で、中身も3分の1。

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Dscf7923 道は、市街地を離れるとズーッと山間をなぞり、人里は畑らしきところは見えるものの、景色から人家の類は、ほとんど見えなくなった。
すれ違う車も少なく、人の足跡を示すのは、山間を併走する鉄路と、今走っている舗装路面くらいしかない。
それでも時折、線路か道路の保安作業の一団に出会うので、不安になるほど奥地ではないようだ。

落ち着きのない線路は、道の上を横切ったり、下をくぐったり、山を突き抜けたりしているうちに遠のいていった。
山も道から離れていったので、ようやく人里へと達するのかと思う。しかし景色は、ただ原野が続いていく。
それも単に原野ではなく、拓かれた土地が人の世話を受けたのも久しく、元の原野に成り果ててしまったかのようです。
時折、老朽化で倒壊した家や乗降客などいなさそうなバス停、赤土色の農耕具が目に入ることがあった。
ここは、すでに人が見捨ててしまった土地なのか…

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この集落の開拓は古く、明治41(1908)年にさかのぼる。ちょうど青森─函館間の連絡線が運航開始した年だそうだ。
近くの川で砂金も採取された記録もあるが、期間・採取地域が限定されてそれほど盛んに採取されていなかったらしい。

Dscf7916 やがて、大戦・戦後になり戦後引揚者の入植が激増。
しかし、舗装化がすすんだ現在では想像もつかないが、この辺り極度に交通の便が悪く、それが一帯を孤立化させる一大要因でした。

水道(簡易)や電気がようやく引かれたのも昭和40年に入ってからという。
ずっと道を併走してきた鉄路が敷設されるまでは、交通機関からも遠く、数箇所駅逓が設けられて流通を担う。

でも半孤立化の集落は農業生産品を出荷する術がないので、生産するのは自家用の栽培がほとんどで、現金収入の要は林業が主の半農半労暮らしぶりであったらしい。
ようやくここに石勝線が開通したものの、すでに離農者が続出していたことから、当初計画されていた駅は信号所になり、それが異常に信号所の多い地帯になった要因であるそうだ。

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いまや原野に姿を変えた農耕地は、既に開拓の記憶も失ってしまったように山と変らない顔をしている。
ここは、すでに非居住地帯になってしまったようだった…
しかし、この先の山間には大きな2棟のタワー型ホテルのある一大リゾート地帯がある。
そこまで行くと店やペンションもあり、そこまで到達すると緑色の砂漠を通り抜けてオアシスにたどり着いた気分にすらなるだろう。
すぐ近くには高速道のICも完成している。

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空のブルーと大地のグリーンの原色に目が犯され過ぎたころ、路肩に違和感のある中間色が目に入った。
この場所には不似合いなパーキング。…というより砂利を無造作に敷き詰めた場所。
砂利を敷いただけで圧鎮していないようで、重機のわだちや敷きムラが激しい。
工事用重機の待機場所の感じで、普通乗用車ではあまり入りたくない場所だった。
そんな場所に敢えて入ったのは、その脇に小さな木造住宅が半分砂利に埋もれるように立っていたから…
良い感じの廃屋を見つけたというより、やっと家の形をしたものがあるところまで走ってきたという気分。
大半の家屋は既に雪の重みで潰れて原野に埋もれてしまったのだろうか?

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非居住地帯というのは結構見かけるが、大抵は住居が残っていて離農して街へ移った住人が夏場のみ自家用農作のため一時居住している。
しかし、この辺りはそれすらも通り越してしまったかのように思えた。
その家が埋もれているように見えたのは車道と同じ高さに積み上げられたバラスト(砂利)のためであったらしい。
近くに寄ってみるとギリギリの線で埋もれずに済んでいたようです。しかも屋根近くに窓も見えるので2階建てのようだ。
老壁は黒ずんで木目も深く際立っていた。
このように壁が炭のごとく黒ずんでいるのは、耐水・防水のために塗ったクレオソートで染められ、陽射しで焼けたからなのだろう。
鉱物油の香りは消し飛んでいる。

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Dscf7896 波打った床の方々から熊笹が顔を覗かせ、奥の壁は既に崩壊して家の中で一番明るい部屋と化していた。
外観と違って中は荒れ放題。まるで竜巻に襲われたかのようだ。それに匹敵するほどに冬は気象の荒れるところなのかもしれない。
木造とはいってもそれなりに石油ストーブや家財道具の感じからすると数十年前まで暮らしが営まれていたかもしれない。

こういった離農で過疎の進むところで生まれ育ち、学校で「故郷の未来」なんてテーマで絵を描くと、必ず山よりもそびえ立つ高層ビルと縦横無尽に走る高速道、そしてレジャーを楽しむ家族が描かれることが多い。
その全ての要素を手に入れたこの土地は、それでも理想の未来だろうか…
肝心の人が去ってしまって。

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それでも、これが北海道らしい裏風景。

誰もが試されて 誰も負け犬などではない。
ほんの少しタイミングがずれれば、何処とて同じだったと思う。

だからそこはただ、そうなるべくしてそういう景色であるのだろう

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ただひとつ
人里が自然に無償で受け入れられる景色の中で
どうしても不似合いなのがバラストなのです

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2010年4月30日 (金)

色萌えて朽ちてまた…

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記憶には窓からの景色があった。

まだ木立は閑散としながら色を食みだす春
見飽きた山々の形を変えるほどに緑が山肌を食い荒らす夏
どこへ向かうのか赤く死に急ぐ秋
全ての勇み火を吹き消して和をもたらす冬

幾度も見て 何度も見飽きて その都度思い出す。
記憶が色褪せないように 景色も彩ることを止めようとはしない。

それが自然というもので 私もそのほんの一片の彩りです。

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光ありて色 光ありて闇
花淡く 行く色なれど 散りて尊ぶ

景色に「濁り」というものはあまり感じない。
「淀む」ことはあっても濁らない。
濁るのはいつも人の目であって心です。
あのときは 色に染まりすぎたのか 求めすぎたか…

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わけはさておき
混ざり合い 溶け合って 淀み 濁っても
時はそれらを沈めていく。
主のいない家の中で音もたてずに積もる埃のように

あれほどに行く先も怪しいことが
時に濾過されて不純物は取り除かれて光輝いてくる。
それほどに悲しかったことも 悔しかったことも 情けなかったことも
アルバムに閉ざされた写真のように鮮やかに蘇ってくる。

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「あの頃は良かったねーっ」 「あの頃は大変だったよねーっ」と笑う。
でも その「あの頃」には濁りが視野を狭くしていたのか
とても笑えることではないものです。

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それも これも 体あってのこと。
屋台骨が崩れてしまえば 内包していたもの共々時の彼方

死に急ぐことなかれ 
行き急ぐこと幸多かれ

そおいうものだと思いますよ
取り返しのつくことだって 色々あるさ…

そう!「色」。
色とりどりの色。色が萌える

やさしく そして残酷に

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2009年10月 1日 (木)

ルイン・ドライバー

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「ルイン・ドロップ」をご覧の各位様

Webもよくわからないまま早、3年の月日を迎えようとしています。
この間、積み上げたのは300以上の記事数と3000枚を越える画像アップロードでした。
特にこの1年の間は、ブログ容量との戦いで、いつ限界がくるかの不安も抱えていましたが「そろそろどうにかしないと。。。ということで「ルイドロ」のサブブログを設定することにしました。

そもそも最後に設定してからもしばらく経っているので、要領を忘れてたりです。。。

ともかく新ブログ立ち上げということですが、中身的には「ルイドロ」の続きです。
レイアウトなど改善の余地もありますが、それはおいおいに。
「ルイドロ」ももう少しチョコチョコいじってはいこうと思います。

そのようなわけで
「ルイン・ドライバー」ならびに「ルイン・ドロップ」を今後ともご愛顧のほどよろしくお願いします。

「プチ・ドロップ」もよろしくね。

「ルイン・ドライバー」ならびに「プチ・ドロップ」は、左のルイドログループバナーよりお入りください

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2009年8月 9日 (日)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』②

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「へーっここ遊園地かなにか?」

「いえ…ラブホです…」

「えっ?ランボー?」

「ラブホですよ」

「らぶ…。あっあぁ~っラブホテルね。なんだ…変なとこーっ

Dscf0265 変なとこって…
しかし、廃墟嫌いと言いつつ、ケロッとしてるなぁ。
自分で来たいって言った手前、仕方ないだろうけど。

「良く見たらスペースシャトルの形だ。キレイな時だったら来ても良かったねぇ…」

「…」

「こういうところ、良く来るのぉ?」

「いや!ラブホは行かないです

「はぁ?廃墟のことだよ」

Dscf0305 う…墓穴掘った。なんか調子狂うなぁ。
なんていうか、いかにも理解のなさそうって感じの人と来ると、私もこんなところで何やってるんだろ…って気がしてくる。
師匠だったら、私が言ったことに的確にリアクションしてくれるけど、趣味が違うからなんだろうけど。
師匠は聞き上手だよ。やっぱり…
あ~っ神経が疲れてくる…

Dscf0290「営業していた頃は、まだ上水道が来てなくて地下水汲み上げだったそうです。それが近くの道路工事の影響で水が上がらなくなったと聞きましたよ」

「それでこんな有様に…中、見れれる?」

なんだか美玖さんのほうが乗り気だなぁ…
彼氏と廃墟へは行ったことがあるらしいから慣れてるんだろけどね。
好き嫌いは感受性の差なんだろう。
シャトルルームの中でも割と中がきれい目なところを選ぶ。
と、言っても、どこもかしこも木片や誰かが放り投げた室内電話や消火器とかの備品も散乱している。
いつから放ってあるのか知らないけれど消火器は、破裂することもあるらしいからなるべく近づかないようにしてる。

「気をつけてくださいよ。頭の上とか…」

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Imga0236「わーっ汚ったないでも広いんだなぁ…。こっちは、お風呂だ腐ってるーっ

「…」

こう、わかってくれそうな人だったら「ここがいい!」とか「ここはキレイだね」とかも言えるけど今日の場合は難しいなぁ…。私が私らしくなくなる。

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「どのくらいやってるの?」

「えっ?何がですか?」

「こういうところに来るのをさ」

「そう…5年くらいになるかなぁ…始めは同じような趣味の人を知らなかったから、ずーっとひとりで…」

「ふーん…でも今は、理解ある彼氏がいるからいいよね」

「へっ?誰…まさか師匠の話

「うん」

「ち…ちょっとぉなに言ってるんですか勘弁してくださいよ

「だってぇ、こんな怪しいところに一緒に来れる人ったらそうじゃないのぉ?」

ないないないですかんぐり過ぎですって

「もう外へ行こ。なんだか空気がスゴク重たい感じがするよ…ここ」

ふーっ。いきなり何を突っ込んでくるのさ…あ~っ早く帰りたい

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Dscf0229 シャトルを出て、管理室と通常ルームのつながる棟へ。
真っ暗なボイラー室を通り抜けるとき、美玖さんが背中にピッタリ張り付いてきた。
反対側の客室の棟はいくつか部屋が並んでいるけど端から2部屋は内装作製中に工事中断して、柱とかが剥き出しのまま。
たぶんシャトル棟だけで用が足りたので全てを完成させずに営業していたんだろう。
一番手前の部屋もボイラー室から直接繋がっているので客室ではなく、乾燥室に転用していたようでタオルや浴衣が散乱して、天井には物干しがたくさん。
のこり3部屋が客室として使われていた。もっともひとつはガレージのシャッターが閉まったまま壊れているので『開かずの間』と化している。

Dscf0283 「ずいぶん人が来てるんじゃない?あちこち壊されてるけど…」

「たぶん、肝…」 マズッ

「なに?」

「いや… 危ない危ない…

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「小さいころさぁ…小1くらいの時かなぁ!捨て猫を拾ってさ、真っ黒いけど目がビー玉みたいにキラキラの子猫。近所の子とこんな狭い階段のある空家の2階で飼ってたことあるよ。その頃、私んち社宅だったし、他の子の家もダメだったから…」

Dscf0315 「そうですか…」

「カワイかったんだぁ。すぐ死んじゃったけどね…っていうか殺されたんだけど」

「えぇっ?」

「みんなの秘密基地にしてたけど、ひとり男子がさぁ、じぶんの兄ちゃんに教えちゃったのさ。後で白状させたけど…。その子達、行ったみたいで“黒猫は悪魔の使いだ!”って寄ってたかって蹴り殺しちゃったらしい…見つけたときはもう、ボロボロで冷たくなってた。あんなやつら呪われてしまえばいいのに!」

「…

「それからこんなとこ来なくなったよ…」

そういうことあったのか…
ないとしても普通は、廃墟好きにならないだろうけど…

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「もういいや…帰ろう

「なにかに…なりました?」

「うーん…よくわかんない私には、さっぱりさぁ…」

その横顔からは、廃墟が好きだとか嫌いだとか、そういうことは読み取れない。
意外とスッキリしたような表情ではあるけど…
ただ、ここに来てみた─それだけなのかもしれない。

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「このシャトルがホントに飛んでいったら私たちの街の上だよね」

Dscf0345 朽ちかけながらも整然と並ぶシャトルは確かに街のほうを向いている。
夜なら、空と地上の星に挟まれる…ここは天と地の境目がわからなくなる景色なのかも…
でもシャトルは、静かに…ただ静かに空を見上げるだけ
鳴り物入りで打ち上げるスペースシャトルとは違うから…

「たまに…アツシも誘ってあげて」

「いいんですか?

「うん!たまにならね。アキさんの彼氏と3人なら構わないよ」

だから…違うって…

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Dscf0301 「あーっビックリした…人が来るとは思わなかったよーっ

「そうですなんですか?人間はいろんなとこへ来るあるますね…」

「そう…“あるます”だよ…

Youtube/JUDY&MARY『小さな頃から』

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2009年8月 5日 (水)

廃墟の歩き方Ⅳ 『ちいさな頃から』①

Coffee

『幽霊?』

『う…疑うの?アキさん』

『いや…そういうわけじゃなくて…』

『ホントにあの時見たのさ!あの炭鉱で…』

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美玖さんに相談があると言われ週末、街で会うことになった。
久々の青空の下は気温もグングン上がり、通りは歩行者天国。夏のイベントでごった返している。どうも人の多いところは私の性に合わない…
待ち合わせた美玖さんは、この前、写真の師匠である神さんと行った山奥の炭鉱跡で偶然出会った。
彼氏に連れられてそこに来た美玖さんは『廃墟趣味』ではないらしく、あの草深い森の中では当然のごとく不満そうで…。
途中、ちょっとしたことから機嫌を損ねて遺構と樹木でうっそうとした森の奥を突っ走って行方不明になってしまった。しばらくして無事、見つかったけれど…

後日、その美玖さんが師匠を通じて私に連絡してきた─
まさかとは、思ったけど…

『名刺を見つけたの。アツシの部屋で。神っていう人の…それで連絡してみたんだ…』

Nagisamiku なんの気なしに会ってみて、幽霊の話とは驚いた。
悪いけれど私は幽霊を信じる方じゃない。というかまったく信じてなどいない。
信じてたら廃墟など絶対行かないよ。
しかも、あの時に見たって…あの時は、まっ昼間じゃないのさ。

『すぐ近くにいたんだよ!はじめは、なんだろ?って感じだったけど、振り向いて“大丈夫ですよ”とか話してきてさ…』

『えぇっ…?…で、どんな感じでした?』

『うーん…白っぽくて少しユラユラしてて…影っていうか…そう、若い女の人の影に見えた!』

『女?』

『そう!若くて…ワンピって感じ』

『… 

古い炭鉱跡に昼間っからワンピースの女の霊?それは誰も信じないでしょ…まいったなぁ…

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『信じてないっしょ?』

『いや…そういうわけでは…』

『ホントは、私も今になったら本当のことだったか怪しくてさ…。幽霊じゃなかったら宇宙人かなぁ…』

Dscf9516その…あの、彼氏の人には話したんですか?そのこと…』

あの森の中で私と師匠、美玖さんとその彼氏、4人が右往左往していたのは、ついこの間のこと…
その日以来、雨の日が続いて思うように探索はしていない。
彼女ともそのときぶりだけど、神経質そうだったあの子が私に会いたいと連絡してくるとは思わなかった。

『そうなのさ!』

わっ!なんだ急に!

『あの日以来、ああいうとこ行かなくなったんだよね。アツシ…ひとりでも行かなくなったみたい。前は、ちゃっかり計画してて当日発表みたいなー』

『それは、まあ…ああいうことのあった後ですからね…』

『映画とか…ショッピングとか…連れて行ってくれるんだ。郊外へ出かけたって「また?」と思ったけど全然寄らなくなった』

『それはそれで、良かった…んじゃないですか?』

『…』 

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美玖さん…黙ってしまった…。
返す言葉に失敗したかな?
師匠に今日、美玖さんと会うんだと話したら…

『気をつけてくださいよ。あの子、神経質そうだから…』

『大丈夫です!師匠より女の扱いには長けてますから』

そ・れ・が!イカンのですよ。話すときは、しっかり噛み砕いてからにしたほうが…』

『買いかぶらないで下さい。これでも私、ご飯は、しっかり30回噛むんですよ!』

『会話の話ですよ。それに、それを言うなら“見くびらない”です』

やっぱり師匠にも来てもらえば良かった!
用事で札幌へ行くって言ってたけど確信犯だなぁ…
なんだか、緊張してきた…。
お腹空いたなぁ…緊張するとお腹空いて来るんだよ…
あーっこの暑いのに熱いグラタン食べてる子がいる。変なヤツだなぁ…

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『ねぇ!ちょっとアキさん!聞いてるの?』

『あ…はい!聞いてます!』

『で…ものは相談なんだけどさ!どこか知ってる廃墟に連れてって

『えっ?えっ?えぇぇっっ

思わず大声が出て、回りの視線が一斉にこっちへ…
美玖さんもグラタン女もキョトンとした顔で私を見つめてる…
うわぁーっ恥ずかしい…
美玖さんが急に思いもしないことを言い出したからじゃないかーっ

『私、廃墟なんか嫌いだよ!でもさ…ああいうところでアツシは幸せそうな顔を見せてくれたのさ。今でも笑ってくれるけど…違うんだよね。なんだか自分にウソ付かせてるみたいなのさ…』

『はあ…』

『一緒に行ってても“こんなとこ嫌だ”って感じで見てたから、アツシの感じるものをわからなかったんだなぁって…。そういうのを理解したい気持ちもあるんだけどアツシ行こうとしなくなっちゃったし。ああいうことのあった後だから私から言えないし…』

この前、グチってばかりいた子とは思えない。
今時、こんな理解力のある子、いないじゃないか。
私もこういう理解ある彼氏欲しいなぁ…廃墟趣味に理解のある…

Dscf9572 『愛してるんですね…』

『へへっ… まあね…』

『で…いつ行きます?』

『明日でも、どう?時間ある?』

『明日

『アツシ、明日まで仕事で出張だからさ。近いとことかないの?』

『いや…あることはありますけどね』

弱ったなぁ…師匠もいないし…
近場か…近いとこ…ないことはないけど…

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『こんにちはーっ』

おやぁ?またあんたかい!物好きだねぇ…こんなとこばっか来てたら嫁の貰い手なくなるべさ』

『だいじょうブイです!すいません今日も見てきていいですか?』

ああ!怪我だけは、しんようにね。あんなとこだしさ…。また写真かい?』

『いえ!今日は見るだけで…。あっちのバリケード、大きくなってましたけど、また誰か来てたんですか?』

Dscf0267 師匠と一緒に来たことのあるこの廃墟は、ずいぶん前に閉鎖されたラブホテル跡。
高台の突端にあるので上水道の充実していなかったころに近隣の道路拡張工事の影響で地下水脈が変わり、地下水を汲み上げられなくなったのが閉鎖の原因とも聞いている。
この廃墟に隣接している裏の道は一見、ここの道のように見えるけど、まったく無関係で、奥にある家の私道だ。心霊スポットの噂もある場所だから夏になると肝試しの連中が毎夜のように来るらしい。
事情を知らない人が奥の家をホテルの廃屋と思って勝手に覗きに行くことがあったんだそうだ。
そういうこともあるので、ブログに場所のことは載せられないし、時々来る情報照会のメールも丁重に断わるようにしている。

『この前の連休あたりからね。ボチボチ出てきてるよ…

『あまりひどかったら通報した方がいいんじゃないですか?』

『いんや、そこまで迷惑こうむってるもんでもないし…ウチのもんでもないからさ』

Dscf0328 心霊の噂もあるここは、夏場になると肝試しのハッテン場になっているらしい。
噂の信憑性は、近所で聞いて回っても「そんなこと初めて聞いたよ」と言ってたくらいだから、やっぱり怪しいんだろう。
それでも冷やかしの連中は良く来るらしく、中はずいぶんと荒らされてる。それとは別にこっそり不法投棄していく人も相変わらずいるみたい。
他にも銅線の窃盗目的で来る人もいるらしく、あちこちの電線が切断された跡がある。
天井裏にまで入った痕跡もあったし…

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『ずいぶんかかったね。面倒なの?』

『いえ!世間話ですよ…。ホントにいいんですか?』

『…うん

今まで、いろんな廃墟を見てきたけど、こんなに気が重いのは初めてだ…
とりあえず、近場と言えばここしか知らないし「心霊の噂」だけは黙っておこう…

(つづく)

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2009年7月26日 (日)

みっつめの朝

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始めの朝は 生れたてきた日、最初の朝
次の朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝は…

「今日、泊ってくの?峠は大雪らしいよ」

「えぇっ?!」

Dscf0415 GWの最終日、これから200㎞以上の距離を家まで戻らなければならないというときに友人から驚くことを聞いた。この季節、大雪といっても北海道では、驚くほどのことではない。
自分が通る用事がなければ…
でも、数日前は夏日に近い日もあったことだから、そんなことあるはずないと思っていた。

行きの峠道は緑も芽吹き始め、春の小花もあちこちで見えていた。サクラはまだ峠を越えてはいなかったけど。
だから、とっくに夏タイヤ。ほとんどの人がそうだったと思う。
天気予報で峠が雪といってもチラつくくらいだったし。

「明日、仕事あるから、とりあえず行ってみる。どの程度の雪か解らないし…」

Dscf0416 とりあえず友人と別れて帰途につく。
峠のある町まで、普通に春の夜道。
真冬の大雪と春先の大雪は感覚的にも違いもあるから、降っても数センチかなぁ…でも峠に入ると路面凍結…?

最高点標高1,023mの峠は、急勾配と急カーブの連続で、樹海と高い岩山に囲まれている。それでも重要産業道路であることから末端両町の合意で村道として開通した道は昼夜を問わず通行車が多い。
夏場は霧に悩まされ、冬は、その交通量から圧雪・アイスバーンになりやすく重大交通事Dscf0477 故も多発。近年は、高速道の開通部分が延長されて険しい部分は回避できるようになって、交通量が激減した。
それでも道東への流通を担った道には違いなく、今でも流通のトラックは覆道と長いトンネルの連続する道をグングン登っていく。

峠の町まで近づくと、話の通り路肩に季節外れの雪が目立ち始めてきた。それでも路面は乾いている。

「もしかして行けそう?」

Dscf0474 やがて、進むほどに積雪量はどんどん増えて、峠手前の市街地は、お祭りでもあるのかというほどトラックや乗用車でごった返していた。
峠は荒天のため一時封鎖されており、越えるのは不可能。
少し戻ったところからもうひとつの峠に迂回する道も積雪が及んでいるため冬タイヤかタイヤチェーン装備の車両でなければ無理らしい。
海沿いから遠回りする道もあったけれど、そっちへ回る気にはならない。
「明日、峠が開くまで待つしかないなぁ…どうせ待つなら札幌で待てば良かった…」
そう思うほどに峠の町の夜は早く、すでに全ての店は閉まっている。
その頃は、まだコンビニや道の駅ができる前で、物産館駐車場からあふれた車は、国道の両側に路上駐車。
歩道に乗り上げたり、私有地に入り込んだり、エンジンかけっぱなしで地域住民とトラブルになっている様子あった。

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「この辺じゃ待てないなぁ…」

喧騒の市街地を離れ、暗い道を引き返す。
路面に溜まるシャーベット状の雪の上、時折タイヤが空転しているような気がした。
夜というのはこんなに暗いものなんだと思い返すほど暗い道だった。

街からほどほど外れたところにポッカリとドライブインらしきところが見えてくる。
少しでも峠近くで待機!と言わんばかりに集まった車両は、ここにおらず、大型トラックが数台だけ…

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「とりあえず、ここにしよう…」

Dscf0425 春の重たい雪が積もるパーキングに車を滑り込ませて、外灯近くのなるべく明るいところに駐車。
エンジンを切ると5月だというのにミルミル車内の温度が冷えてくるのが分かった…タンクの残量を考えるとエンジンをかけっぱなしというわけには、いかないし…。
とりあえず荷物からパーカーやらシャツを引っぱり出して着ぶくれに着込んでみる。気が付くとウインドーは内側から曇りだしていた。

「なんだか情けなくなってきたな…」

少し、窓を開けると遠くからチョロチョロと水が滴る音がする。

「?」

明かりの中ぼんやりと浮ぶキャンプ場の洗い場みたいなところのひとつが蛇口を開けたままで、下のバケツに水を溢れさせ続けている。たぶん凍結防止のためかな? まだこの辺りはそんなに冷え込むんだろうか…?

Dscf0424 この辺りのドライブインは、「ミツバチ族」とか「ブンブン族」と呼ばれてた道内2輪旅行者が利用する素泊まり宿が多い。
ドライブイン兼なので食事も可能。脇の大きなプレハブ小屋が宿で、洗い場みたいなところも泊り客用のものらしい。
5月では、まだ気の早い旅人はいないらしく宿泊棟に明かりは点っておらず、オートバイも見当たらない。

にわかにドライブイン正面から人が出てきた。
やおら空を仰いでいたその人がこっちを見たかと思ったら、そのままこっちに向かって歩いてくるじゃないか。

Dscf0423 「うわ~ッヤだなぁ…私有地だから出てけ!って言われそうだな…」

そばまで来たその人は、こっちが車の中にいるのを覗き込んで、

「どしたの?こんなところで…」

「いえ…峠が通行止めなんで…」

「あ~っやっぱり通行止めなったかい!こんな時にこんだけ降ることなんか滅多にないんだけどね」

「はあ…」 早く行っちゃってくれないかな…

「ここで夜明かししたらシバレる(凍る)よ。まだ霜も降りるし」

「えぇ…でも、行けるところもないですし…」

「裏、開けてあげるから寝てきな!布団はあるから!」

「いや…でも…」

「お金は、いいから泊ってきな!こんなとこいたら凍死するわ!」

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半ば不安に苛まれながらも強制的に案内される。
鍵を盗りに行ったご主人は、奥のプレハブの中へ案内してくれた。
決して明るいとは言えない照明を点けると両側にドアがいくつか並んでいる。
そのひとつに入ると、どこも相部屋らしく布団が数組並んでいた。
ご主人はポータブルストーブに火を入れながら

「夏休み頃だとライダーでいっぱいなんだけどね。まだちょっと早いんだ」

「なるほど…」

「好きなとこで寝ていいよ。寝る前に火だけは消しといてね」

「はい…ありがとうございます」

「ご飯、食べたの?」

「いえ!大丈夫です!」

「そっかい。じゃあゆっくり休んでや」

Dscf0430 話もそこそこにご主人は引き上げて行った。いつもあるのかな?こういうこと…

ゆっくりと温まる部屋の中。
古い雑誌や文庫本がたくさん積まれている他には、ポータブルテレビがひとつ。
宿というより工事現場の仮宿舎みたい。
でも車内泊が思わず布団でノビノビ眠れることになった。しかもタダで。
布団は冷たかったけれど心地よい眠りに付くには充分だった。

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「すいませーん…すいませーん…?」

翌朝、ドライブインへお礼だけでも言っておこうと寄ったが、いくら呼べども返事はない。

「出かけてるのかな?」

Dscf0433_2 前日とは打って変わって早朝から温かい春の空。
陽射で融けた雪の雨だれのような音で目が覚めたほど。
駐車場も道もほとんど乾いてきている。
相変らずご主人のいる様子が無いので今度来たときに礼をしようと出発することにした…
建物の壁に「素泊まり1500円」とある。
峠は路肩に雪が積もっていたけれど路面は、すっかり乾いてコントラストが際立っている。
結局、この日、仕事は休んだ。

それから程なく国道は新路線の完成により、このドライブイン前を走る車は激減した。
そのうち…と思っていた自分でさえ、再び訪れたのは何年後になったのだろうか。

長雨がようやくあがった朝 ようやく訪れる。時間は経ちすぎていた。
たった一夜の思い出だけど、この変わりように寂しい。
あの後、ここで何があったんだろうか。
屋根板の剥がれ落ちた屋内でとっくにあがった雨は、まだ降り続いていた。

新しい道は、かくも残酷な結果をもたらすのだろうか…。
いくら「廃墟好き」と言ったって「廃墟」になって欲しくないものもあるよね…。あるんだよ。

はじめの朝は 生まれた日、最初の朝
つぎの朝は ときめきと気だるさにひたすら続く日々の朝
みっつめの朝─ それは 大事な何かが一緒に来なかった朝

Dscf0447 朝は、いつもやってくる。一日をリセットするみたいに。
ある意味、過去への訣別として。
爽やかな朝を繰り返して、時は積み重なっていく。
友達は親の都合で引っ越して 子どもは遠くに巣立ち 親は加速して年老いていく…
歯が抜けていくように不安になって、何かを悟ったようにぼんやりした答が波のように打ち寄せる。
時の重さに気がついて 朝が来ないように祈ったとしても、それは私的な我儘(わがまま)にすぎない。
人の心は、まだまだ繊細です。他の生き物達に比べると。
皇帝も独裁者も神々の名の下にある人も…終わりがあるのは自然の中の約束事。
そんな静かで無関心な朝の訪れは、時として残酷なものかもしれません。

でも朝には悪意も差別も中傷もない…朝ってそういうものでしょう? そうだよね。
無意味に迎えた朝はあっても 無意味に明けた朝などないのだから。

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あの 朝日の後で また会いましょう。

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2009年5月24日 (日)

細身の乙女 ロロ・ジョグラン

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南半球にあるインドネシア共和国のジョグジャカルタ近郊にユネスコ世界遺産に登録されている世界遺産、ボロブドール寺院群とプランバナン寺院群。共に1991年に文化遺産として登録されました。
ボロブドールは仏教遺跡として プランバナンはヒンドゥー教の遺跡として
ともに世界最大のものです。

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プランバナン寺院群の付近は、あちこちに遠巻きに見るとタケノコ(アスパラの頭にも見える)のような形の塔が点在していて、住宅も石積みのものが多いため遺跡とそうでないものの境界が『大きさ』のような気にさえなります。

寺院群のうち中心的存在であるプラバナン寺院は古マタラム王国のバリトゥン王(在位898年~910年)による建立と言われる。
古マタラムの王宮もこのあたりにあったと考えられているが、伝染病が流行り10世紀ごろ遷都した。
のちの1549年の地震で遺跡が大破した。しばらく忘れ去られていたが、1937年から遺産の修復作業が行われている。
プランバナン寺院群はヒンドゥー教の遺跡としてはインドネシア最大級で、仏教遺跡のボロブドゥール寺院遺跡群と共にジャワの建築の最高傑作の一つとされる。
   (ウィキペディアより)

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ガイド(現地人案内員)の人の話でも修復作業はまだ続いているらしい。
周囲にはまだ、瓦礫の山が転がっていて、地震で大破したというものをよくここまで直したものです。
外壁のレリーフ部分ならいざ知らず、かなり高度でピースの重いパズルなんだ。

『このあたりに住む皆さんが家を作りたいため、静かにたくさん持ち帰りました』へんな日本語…)

そっかー…それで近くの家も遺跡っぽいのか…
遺跡で作った新築住宅っていうのかな…

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プランバナン寺院は現地では『チャンディ・プランバナン』と呼び、またの名を『ロロ・ジョグラン(細身の乙女)』と言うそうです。
確かに細い。遠くからでも目に付くその大きさも現地で周囲を回るとそれほどでもない。
他に高い建物がないということもあるけど、よほど地盤がしっかりしていないとすぐ倒れてしまうんだろうね。

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Fh000096 寺院内はさほど広くはなくご神体と呼べる像があって壁は中で火を焚いたのかと思うほど煤が付いたようで黒っぽい。

それぞれに祀ってある神様が違い、ビシュヌやブラフマー、ガネーシャなどの像があります。それと共に神様の乗り物である動物(牛)が安置されていた。

『どうぞ牛の背に座ってください。きっと幸せがありますよ』

Fh000100みんな座っていくようで牛の背はきれいだ。
でも、背に座ってご利益というのもなんだか変な話。。。

インドネシアの主たる宗教はイスラム教で、仏教・回教そしてヒンドゥー教は少数派になります。隣のバリ島はヒンドゥー教(厳密には一宗教ではない)が主たる島だからインドネシア全体は、実にさまざまな信心があることになります。
だから、プランバナンやボロブドールは、地元の人にとって単なる客寄せの見世物に過ぎないのかもしれない。
だから、地元の人々もホリデーのお出かけ感覚で普通にここを訪れるようです。
『東京』とか『横浜』と大きく刺繍したキャップを被った子がたくさんいたなぁ。。。流行ってるらしいけど。それをいったら日本人も意味も知らない言葉を書いたTシャツを着たりするしね。

ところで牛に乗ったご利益というのは『多産』なんだって。。。

Fh000102 これほどに大きな寺院を誇った権力も時代の流れに消えて行き、国の宗教も考え方もすっかり変わってしまったのかもしれません。
道は、ノーヘルメットの二人乗りオートバイが常に過密状態で走っているし、信号機があってもほとんど守っていない。(ほかの車とかが来ていないとブンブン入っていく)
どこにいてもオートバイのエンジン音が聞こえるから、ガムランとかジェゴクのような郷土芸能楽曲の屋外録音は難しいらしい。

こういうインドネシアの社会を見ていると、昭和の高度経済成長期の日本を見ているような気がしました。

ホテルに戻ってテレビを付けるとインドネシア語のラッパーがマイクを持って凄みを利かせていた。こういうのは世界共通なんだな。。。

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プランバナン寺院群は、2006年5月27日に起きたジャワ島中部地震で被災。大きな被害を受けたそうです。その後、修復作業が行われていますが、いまだ作業完了していないらしい。
その以前に行った時の画像なので現在の様子とは異なるかもしれません。

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うーん 思った以上に気味の悪い絵になったなぁ。。。
インドネシアでは犬より猫の方が各が上だそうです。

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2009年3月 9日 (月)

忘れられた大きなもの

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はじめて来た海 この海
向こう側のことは知らない いつもこちら側にいるから
向こう側のことを想うよりも その ただただ大きい海をじっと見ていた。
大きいからココロを呑まれたのじゃなくて
同等の塩分濃度を持つという体内の海が
意識とは別に呼応していたような気がする。

Dscf1648 いまでも変わらないこと
浜辺に行くと、必ず拾いものをする。

ちんまりと可愛い 大木の一部だった枝
ギザギザにトンガってたのに 砂に洗われて優しくなったガラスの欠片
骨みたいに真っ白に変色した貝殻
クチャクチャにいじけた塊になった海藻

みーんな海を旅してきたんだよ。
長い短いはあるんだろうけど…

Dscf1647 海に向かって両側が山に挟まれている風な景色のこの浜は、視界をさえぎるものなど、ほとんどないから前も後も景色が大きい。
前は海 後は湖。
その湖は、湖と言うより湿原の一部である沼です。

海と沼の間が数メートルの微妙な砂山で途切れていて、かろうじてお互いのプライドを保っている。
その均整の保たれているところを道(橋)が通っている。
大雨で沼側が急激に増水してくると、線路や道路の保安上その砂山を切って、放流することもあるそうです。

海側の中ほどに海産物加工所やドライブイン等が砦みたいに固まった界隈があって蛸や干し物を軒に並べているのが道からも見えた。
道の反対側には、ここもまた食事処兼業の貸しボート屋がある。
海に連れて行ってもらえたのは3~5年に1度くらいだったから子どもには、さして面白くないような場所だけど動物園以上に楽しかったよ。

Dscf1669 海に足を入れたり海水の塩っ辛さを確かめたのも
ポケットいっぱいに貝殻やビーチグラスを詰め込んだのも
ボートに乗って漕いでみたのも
カニとか帆立とかがたくさん乗ったラーメンを初めて食べたのも
隠れようも無いような空の下で焼肉なんてのも
み-
んな、ここが初めて
子どもの頃の話だけどね…

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Dscf1672 大人になって 自分でハンドルを握るようになり、再び訪れてみたくなった…。
多くの古いものや 新しいもの達が、現れては消えていく世の中で砦は、かろうじて呼吸をしていた。
わずかな数の暖簾しか下がらず、多くの店は乾ききって自ら最後の変貌を開始している。

何か、思い出の骨片でもないかと浜を歩いてみた。
時代はガラスビンからペットボトルへの変化して久しく、もう波に洗われたビーチグラスを見つけるのも難しい。そのかわり、波乗りの上手いペットボトルが小山になっている。

『そういえば、道の向こう側でボートに乗ったことがあったよ…』

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Dscf1997 道の向こう側の小屋みたいな店は、今も変わらずそこにあって、今でもお客さんを待っているようだけど、主が商売をやめてからもすでに長い年月が経って、かつてはあったそこへ降りる道もなくなっている。
車が絶え間なく行きかう道をどうにか渡って近くへ─。
『貸しボート』といってもボートなど何処にも見えない。海へ出たのか沼へ出たのかわからない漁船が緑にまみれている。
船の名から、このあたりで使われていたものには間違いないようだ。

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Dscf1998 おかしなもので、ボートに乗った記憶は、あるのだけれども店の記憶は全くない。
それほどに自分で操れる船に乗ったのが印象的だったんだろうか?
最も近所の子とオールを1本づつ受け持っても上手く漕げなくてグルグル回ってたけど…
それでも余裕のVサインで笑っている写真がアルバムにあるよ。

貸しボート屋さんだと思っていたら、中の厨房や小上がりのある様子から食事も出していたようです。
もっとも建物が小さいから広い場所ではないけれど、窓から湖(沼)を望む食堂。
ボートはどこまで行けたのかなぁ…どっちにしても非力で無理だったろうけどさ。

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この辺りは古い土地の人々の言葉で『カラス』を指すという。
『カラス』というと縁起が悪そうだけど、黒光りする上等な着物を羽織るその姿から昔の人は、神として見ていた。
その神が船で来た人をこの浜へ導いたという。

また、神(自然)からの施しだけで生きてきた狩猟民族の彼らは、神々の手違いでしばらく苦しんだことがあった。
神々は、あわててこの浜に大きな鯨を届けたという。
その時、人々が嬉しさのあまり舞い踊った踊りが現在も郷土芸能として伝わっている。

Dscf2015

相変わらず上の道では、ゴムで弾き飛ばしたみたいに車がかっ飛んで行く。
どこへ行くんだろうね。
どこへ…

Holga_tape 道が良くなって 車も良くなって
見たいテレビ番組も予約録画しておけばOK
ご飯も家へ戻る頃には、おいしく炊き上がっている。
お風呂もボタンひとつで良い湯加減。
朝ごはんの洗い物も自動で完了してくれる。
洗濯乾燥も手間要らず。
ついでに『たたみ』もしてくれないかなぁ…

でも、みんな時間がない。時間が足りない。
あの頃と今の時間の進み方が同じとは思えない。
ここより、ずーっと最先端で新しい娯楽施設がこの地上から完全に姿を消してもここが残り続けるのは単に後始末の問題じゃなくて、
時間の温度差というか、時の包容力というか、そういうことがあるのだと思うよ。

想い出は廃れてしまったの?

いいや… 海も 空も 湖も昔のままだったよ。
変わったのは、その間に少し挟まっているものだけ。

Dscf1996

Dscf2029pola 変わらないものは、とても大きくて
そして、ただただ大きいばかりで
向こう側のことどころか、こちら側のことさえも
意に介しないかのように不変です…

神々は、人を導いた土地から不在になったのか…

神は、決してその御業に無関心などではなくて
見捨てようとしているのは、人の方です。

このボートハウスは『北海道廃墟椿』内の「ボートハウスの宝石」で詳しく触れられています。
合わせて御覧ください。


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2009年3月 8日 (日)

『夏草の線路』 リプライズ

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『ルイン・ドロップ』を御覧いただいてありがとうございます。
時期的に年度替りの繁忙期ということもあって頓挫中。。。

といっても何もしていなかったわけでもなく
近頃始めたサブ・ブログ『プチ・ドロップ』のほうは、そこそこ更新してました。

だから、本家がおろそかになるんだな。。。

Cuppola 1年ほど前に『ルイドロ』上で公開したストーリー『夏草の線路』を再編して、その連載が終了してところ。
再編なので、大まかな筋はそのままだけど、思い入れというのもあったので返って煮詰めてしまったようです。

北海道帯広市から上士幌町十勝三股を結んだ旧国鉄士幌線
その山岳地帯を縫うように走ったアーチ橋群、そのなかでも『幻の橋』の名で知られる北海道遺産『タウシュベツ川橋梁』と最寄の温泉街糠平が舞台。

『プチ・ドロップ』を公開してるのが、この旧路線跡のある上士幌町で運営されているブログ・ポータル・サイト『かみしほろん』です。
昨年12月にグランドオープンしたポータル・サイトですがよろしくお願いします。

『プチドロ』上では、『ルイドロ』でも公開していない橋梁・廃駅なども取り扱っております。
できましたらサイト・トップから上士幌町長のブログ『竹中町長のまちかどウォッチング』『田舎暮らしランキング』プチッしてくれると嬉しいです。
すみませんね。面倒なこと頼んで。。。

そういえば、忙しさに翻弄されてたら『ルイドロ3年目』を忘れてました
さあ、ボチボチ動き出しますよ。
いつもごひいきいただいてありがとうございます。
今後ともよろしく

コメントちょうだい…寂しいわ~っ

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