2009年7月17日 (金)

いちごいちえ ③

Dscf8087

ザーン… ザーン… 海の見える山の上まで来た。ここまでも潮騒が聞こえる。
下の道を忙しく走る車の音もなんだか波の音のような気がして心地いい。
海はやっぱりいいなぁーッ
港に大きな岩が見えた。船よりもとても大きくてまるで山みたいな…。
実は大きな海亀がジッとしているだけだったりしてね…

Dscf8079

『ここにいるところがワシどものいる山でした』

『いいところですねーっ海が見渡せられて…ここは、なんて山ですか?』

『下に住みいる人物は“かんのんやま”というわな』

かんのんやま… 観音山…? 観音様がいるんですか?』

『どこさかは知らんしな…でゃが、わちきもそのひとつらしきことです』

『…? あなたの体はどこなんですか?』

『あの木な下におります』

Dscf8082

遠くまで海を見通せる山の中に細い道がずーっと続く。
その両側にはたくさんのお地蔵様が並んでて優しく微笑んでいる。その目は何を見ているのだろう。
昔(生きていたころ)、人は死んだら神様の元(天国)へいけると思っていた。
でも、幽霊のこの身になって、いまだに神様にあったことがない。
ホントは私にとって行かなければならないところがあって、そこにはたぶんいるんだろうけどね…。
それは、私がさまよっているから…迷っているから…迷ってるのかなぁ…

Dscf8086 『こいつが、吾ですねぇ…』

『えっこれって神様(仏様)じゃないですかあなたは、神様だったんですか?』

『いやさ、ここまで人共が持ち上げて、こな形したです。何かに見せたいだろね。ワシらば当たり前の石ですねい』

『ほかの…お地蔵様もそうなんですか?』

『きとね…そうだしょね』

Dscf8084 木の根元に並ぶお地蔵様の端で、柵に寄りかかる一際小さなお地蔵様が、この人(石)だという。
確かにお地蔵様の形はしているけど石には違いない。
私のいた家の近くにも小さな神社のような家があって、その中にお地蔵様が入っていた。
一度、覗いてみると、その顔はとても怖かったけど…。覗いたので怒っていると思ったものだから学校帰りにそこを通らず遠回りするようになったっけ…

『いいですね…お友達がたくさんいて。人もたくさん会いにくるだろうし…』

『いんにゃ!人々と同じもので。小さくなると、それずれ、あちらの考えること分からんようなりす。元よりし、動かぬからに…』

『じゃあ…ここに並ぶほかの人(石)とは…?』

『話もたなです。話したは、ここに訪れはった傷をした小さの人だけ』

『傷? 小さい人?』

『女な人だに。顔に大きの…小さのたくさん傷ついてさ、背をこう…曲げなさったな人』

『…おばあさん… その人と話をしたの?』

『話せなんだす。こちさ話、聞こえなで。そん人な、いつも“なまんだぶ…”ゆうだけでた。なんことだろかな』

Dscf8081

その、おばあさんは、お地蔵様の姿をした石の人をお参りに来ていたんだということは想像できる。
“なまんだぶ”…お経だろうけど何て説明したらいいのかなぁ…

きっと、あなたの姿が神様だから願い事されていたんですよ』

『ふむ、そら思いた。何か願いばされてんね、何かしねばならん思いした。でも聞いたは“なまんだぶ”いっこです。そっていつか来なくなりやった…』

来なくなった… 来れなくなったんだ。そんなおばあさんに高い山の上はね…

『でやから、下へよって探しいたりてたり、人の言うことを聞くことやってしとりました。人の日は短けけどもみんなさん滅茶知っとります。石ん日は長けども、見て聞いとらだけやす。人は面白て飽きまへん』

『そうかもしれないですね…』

Dscf8066

『おで、おまさんは、人なだすか?』

えーっ 急に何を聞きだすんだよ…。難しいこと聞くなぁ…

もちろん人ですよ…。体は…ホントの体とは離れてしまったけど…今は心だけで生きてます』

Dscf8046 『人んてのは、みな、あゆこと出来ようなるんですか?』

『あゆこと?って…』

『辛抱ない石を細くするやとか…』

『えぇっ あれは…わざとじゃないって言うか…わざとか…。その…すいません。あれ、仕方なかったんです』

『なんらOKです。石らは小さなるだけんで何も変わらす。あの、空さ飛んで来くるのは良かすな。遠くんの人も見て来れる』

『気持ちいですよー風に乗るのは。思い通りの方へ行ってくれないから風任せだけど…』

Dscf7978 そういいつつ、この海に来るまでずいぶん苦労したことが頭をよぎり、自分ながらおかしなことを言っている気もした。

『連れてたもらねんばできんかな?うぬもそうして沢山人ん話ば聞いて、見てきたす…』

『うーん…じゃぁ…風の乗り方、教えましょうか?コツさえ覚えれば簡単ですよ。数日も練習すれば』

Dscf8078 『じゃがま、うぬら石は、よう転がりしも手前で動きらすんのは、上等でなさするしな…。よか、簡単手前手法があるますわ』

そういうと石の人は、人の姿を崩して小さな塊に変わっていく…

『その手の方一本、上げ立ててもらえぬかない』

『???』

言われて手を上げると石の人は、ヒュルヒュルと左手首にまとわりついてきた…。

Dscf0441 『えっ?なに?』

気味が悪くなって、思わず払いのけようとしたところで、その形が固まりだして…
どうなるのかとジッと見ていると、形がハッキリしてきた─

『時計?─』

『そすな。人は、みな、こげんなものをしとるましたから』

『これって…時間合ってるんですか?』

『いちおクオーツ(水晶)だすらら、石んは得意なこってす。ほな、行きまっせら?』

時計─ 時計だーっ変な言葉で話す時計─。
妙な時計…じゃなくて石と知り合ったなぁ…

『何しすたか?』

『いや…なんでもないです。 じゃあ…行きましょうか』

『よろしく頼もす…』

Hands1

やさしい潮風が山のてっぺんにある森に吹き込んできた。
海に浮かんでいる小船みたいにちょっと妙な気分と何だか説明しずらい気持ちも心の中でプカプカ浮かんでいた。
いいや!とりあえず旅の道連れ、ということで…
風に飛び乗って小路を突き抜けて空高く上がっていく。

今の正直な気持ち…
私の時計─ なんだか嬉しい─ 

Youtube 『いちごいちえ』 やなわらばー

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2009年6月23日 (火)

いちごいちえ ②

Rockfallnega私に向かって崖のてっぺんからゆっくりと回りながら落ちてくる岩を見ながら思った…

「また、厄介なことに巻き込まれるんだな…」

Nagisabom 人の目に触れないように風任せの旅をしていても、行く先々で何かしら事件が起こる。
厄介なことは、人の世界だけではないようだ…
いろんなものと出会って いろんなことになって…その度に何とか切り抜けてこれたけど、いつまでも幸運が続くとは思えないなぁ
あの岩を私めがけて落としてきたあの人の考えていることが何かはわからない。
でもなにかしらたくらんでいるのは間違いんだろう。

Rockshot

逃げようが無いことになって、かえって開き直った。
借り物の体を開放してこみ上げていたイライラを岩に全部ぶつける。

        バーン…

パラパラと小石になった岩が夕立みたいに撒き散らされる音が波の音をかき消す…
どうにもならないことになって私は、ホントに開き直ってしまったようだ…
一番避けたかったこと 一番見られたくないところ 
そして、たぶん相手が確かめようとしたこと
あの大きな岩の下敷きになっても、私がこれ以上死ぬようなことはないけど。
なぜなら私は幽霊だし…
問題なのは、私が人の皮を被った幽霊であることで、それを他の幽霊に見られてしまったということ…
粉々に ホントに粉のように飛び散った岩の土煙があたりに漂って、そこにいた敵は見えなくなっていた。

Brind

『さて、どうしよう…でも、戦わないといけないんだな…』

人に化けるのが問題じゃない。
人に化けようとする幽霊がどんな考えを持つかということ。
時間に限りがあるといっても人と霊の世界を行き来することが容易くできるとしたら、それは場合によって良くない結果になるらしい。
私がその力を教えてくれた人が、そんなことを言っていた。
それに簡単に人と霊の間を行き来することは『神様』の意思に逆らうことになりはしないだろうか?
そう思うことがあって誰彼教えることのできる力ではないと思った。

薄らいできた土煙の向こうの「あいつ」の気配は、まだ確かにそこにある。
あいつが何を考えているか、私にはわからない。
人であっても霊であってもそれは同じ。心の中まで読むことはできないから…

Nagisaangry

『あーっ大丈夫だねったね。良かたなや』

相手が敵となったら、本格的にその妙な言葉使いがイラッとする。

『さあ!もう急ぐ必要はなくなったよ!何が望みなの?』

『そうなの?じゃあ教えて欲しかことがあるだよ』

そらきた。人に化ける方法を聞こうと言うんだな… 

Dscf8063 『なに

『人の言葉の作り方、知りたです。どうも難しいよしな』

『はぁっ』 何を言ってるのこいつ…

『ずっと人の声、聞いてきたけな、男とか女とか、小さのとか大きの、様々で色々でわからないのよ。だからオラ話すことも…めっさワヤじゃから教えて欲しいもし』

なに?言葉を教えて欲しいって? なんだか思いもしない言葉が返ってきて構えていた私は少しうろたえてしまった…

『そのために私に向かって岩を落としたんですか?』

『いや…あれらは、しごく辛抱なかったんらわ。奴ら、もう辛抱できなす。それ、そこの見て後ろごらんね』

Dscf8050

なに?うしろ…? あーっ…
道いっぱいに岩が崩れて小山になっている。
「こいつ」のことが気になっていて目に入っていなかった。
ずっと歩いてきた道は、見上げるほどの山肌に鉄の網が張り巡らされていたけれど、ここはみかんのネットみたいにボロボロにちぎれて岩があふれ出したみたいになっている。

Dscf8046 『本日は、もう落ちれんど、次の来週ふたつ落ちるつもりするす。この奴らは生まれつきの辛抱ないらしいですのな』

『どうしてそんなことがわかるんですか?』

『わらもそいつらと同じ岩ころでから。当たり前、出場所はちゃうけどねん』

『岩?あなた、石なんですか?』

『はいです…』

『でも人の姿してるし…』

Aitsu 『こうしていねとな、貴方みたいな方と会っても話しないの多い。今カッコもホントものでなく、あしは、岩ころだから元よりオスでもメスでもねいよね』

変な話かた…なんだか混乱してきた…
この人は私みたいな幽霊じゃなくて、なんだ。石の心なのか…石がしゃべるか?
まてよ、わたしに色々教えてくれたのもおしゃべりな石炭だったっけ。

Dscf8053 『で…何を知りたいんですか』

『そね。“なまんだぶ”まず、というのを分るたいなす』

『なまんだぶ?えーっそれはちょっと…なんでまたお経なんかを?』

『“オキョウ”てか?アタのとこ来るンは、皆しゃべる。でも知らんだら』

 

うっわ~っますます調子の狂う話し方だな…色んな言葉がゴッチャゴチャしてるみたいだぁ。

『ウラん居るとこぁ、この向こうあっちのほうのどっしり山なだ。行っててみますか?』

この自分が石だという人のことに興味が出てきた。
少なくとも─私の持つ力を知りたいのではないようだ。

『はい。行ってみたいです』

『だいぶ歩くますからけども…』

Fallup 海から新鮮な潮風がシュンと吹き上がるのを感じる。 うん─

『大丈夫。手をつないでください』

『うっは

そいつの腕を引っぱって風に飛び乗ったとき、ずいぶん驚いたようだ。
新しい風はとても乗り心地がいい。
風は弱々しくも高くそびえる岩肌を一気に登りつめていく…

気持ちいいーっ

(つづく)

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2009年6月 7日 (日)

いちごいちえ ①

Rousoku

『ほら!あれだよ!ローソク岩』

『あれ…?ローソクっていうよりお米の粒みたいですね…』

『うーん…そう言われりゃそうか。でも、あれだよローソクの炎の形にも見えるっしょ!』

波打ち際にどっしり座った大きな石。
こんな大きなのは見たことがない。
ちょっと押したら倒れてしまいそう…。

Road ようやく海に来たーっ。
すぐにでもここから飛び出して行きたいくらいだよォ
いつ以来だろう。ずいぶん長いこと来ていなかった気がする…
トラックのおじさんに乗せてもらって、ずーっと話をしながらここまで来たけれど
海が見えだしてから、あんまり嬉しくて何を言われても半分、上の空だった…
ここまで来る間中、おじさんの家族やおじさんが子どもの頃の話を聞いた。
人(生きている)の話をこんなに聞くのもずーっとなかったなぁ。
まさか、おじさん隣に座る私の正体が「幽霊」だなんて思わないだろうね。

『伝説じゃさーっ…お腹のすいた神様がこの辺でクジラをつまみあげてヨモギの串で焼いてたんだとさ。その串の折れたのが、あの岩だってよ』

『えっそんな大きな神様がいたんですか

『ハハハ…伝説だってで…どの辺りまで行くの?おっちゃん、このまま隣町まで行くんだけどさ』

『そうですねー。どこか止めやすいところでいいです。早く海のそばまで行きたいんで…』

『じゃあー街の入口あたりで止めるよ』

Dscf1604

おじさんは、このあたりの町へ荷物を配達するのが仕事なんだそうだ。
海のほうから潮の香りの風がどんどん吹き込んでくる。
風に乗ってこようと頑張っていたら、気まぐれな風に流されてどこに行ってたかわからない。

Dscf7994 私の爪は、まだピンク色。
これが緑色になってきたら仮の体(命の元を集めて合成した体)から出る時間。
出ないと時間切れになって、この海辺に転がる岩の塊みたいに小さく固まって出られなくなる。
爪が緑色になってくるのがその始まり…それまで4時間ほどだろうか。
少しの時間しか持たないこの体…おじさんは知るよしもない。
目の前で時間切れの私がはじければ別だろうけど…

「あっちの方に古い道があって、親子岩とか眺めのいいところがあったんだけどさ、岩盤が不安定でガケ崩れが良くあったもんだから通行止めになっちゃったさ。この新しい道からだと一番いい景色が見られなくなっちゃったんだなぁ」

「そんなに危ないんですか?」

「まぁねえ…通行止めで仕事にならなかったこともあったよ。道が良くなってから仕事は楽になったけどね…あっこの辺で止めるよ」

プシーッ

空気が抜けるような音がして、大きなトラックは「ウワン ワン」と体に似合わない小さな泣き声を出して止まった。

「すいません!ありがとうございました!」

「泊るとこあるの?知り合いの旅館なら顔が効くよ」

「いいえーっ当てはあるんです」
と、言ってもあるわけじゃない。たぶんどこかの空家にお願いして泊めてもらおうと思う…

Dscf8074 「そっかい!なら気をつけてね。あーっ良かったら、おっちゃんとメル友になってくんないかなァ」

「メルトモ?」

「えっ携帯持ってないの?」

メルトモ? ケータイ? なんだそれ?

「ケータイ…? たぶんないです…」

「へーっ珍しいね。まぁいいや!毎日ここ走ってるから、また会えたらいいね。いつもは退屈な道だけど楽しかったよ」

「はい!私も!」

Truckdown

大きなタイヤがゆっくり動き出して、おじさんの大きなトラックが道に戻っていく。

パーン…

Greennail手を振っているとラッパみたいな大きな音がして、ビックリして手を引っ込めた。
「あ…」目に入った爪はいつの間にか薄っすら緑色…
もう時間か…ギリギリで間に合った。
いつもうっかりしそうなので、人のフリをするのが正直まだ怖い。

とにかく、人目につかないところを探さないと…人がはじけるところなんて見せたらエライ騒ぎになるだろうから。
でも、山と海の間に続く細長い街には隠れられそうなところが意外と見つからない。どうしても目の届くところにチラチラ人が見え隠れする。
どこか、いいところは─ あっ♪

Nagisasea

─視線の奥に海のほうへ向かう柵のある道が目に入った。
ちょっとつかわれていない感じの…あそこへ行ってみよう─

ここが、さっきおじさんの言っていたガケ崩れのあった道らしい。
時間は、あまりないけど慎重に回りの様子を伺いながら道を進む。
海から ザーン ザーン と波が来て、時折飛んでくる飛沫が心地いい。
『生きている』ってこういうなんだなぁ…

Dscf8061 私にまだ自分だけの体があった頃─
学校から帰って、いつも海へ来ていた。
波が行ったり来たりするのをずーっと見ていたり、貝殻やまあるく角の取れたガラスの欠片を拾い集めたり、浜で変な虫がピョンピョン跳ねてるのを見て逃げたり…
楽しかったなぁ…海の向こうのことを考えたりして。
今でも私は海のこっち側にいるけどね…カズくんは、この海の向こうにいるんだろうか?
いるところがわかればすぐにでも飛んで行きたいけれど、私にとって海は、まだ越えちゃいけないものな気がする。
その気持ちがどこから来るのかは、わからない…
 『…おや?』

人がいる! …釣りの人かな?
まいったなぁ…時間もないし、ここまで来たら戻るわけにもいかない。脇道もなさそうなぁ…
でも変な人だなぁ。 人じゃない? もしかして幽霊?(自分も)
かえってマズイよ。秘密を見られるわけに行かないし…

Dscf7989

私が仮の体を使うことを良くない考えの霊に見られたら、きっとその方法を知りたがるだろう。
生きている人たちに何か悪いことをすると考えたらゾッとしてくる。
うーん とりあえず、見えないフリして向こうまで行こう…あっちまで行ければ。

「普通の人 私は普通の人だよーっ わたし幽霊なんか見えないよー 全然わからないよー」

Goo「…こんちはー」

「…」 無視無視っ

「どこ行くんだべ?」

「…」 なんだ?この人

「見えてるんじゃないかしら?」

「…」 うっわぁーっ

「頭にクモつけてるじゃん」

ひーっ どこ どこぉっ  …あ

「ごらんなさい!やっぱなあ!」

う…騙された…

「見えんフリすることないじゃないですか。別にへんなことする気ないのにヨォ…」

「いえ…あのーっ急いでいるので…」

「なんでじゃ?こんな人の来ない道でさ。このまま進んだって海と岩しかないっしょや」

…変な話し方。それをひょうひょうとしゃべるその人(幽霊)は話し相手が来たと喜んでいるのかもしれない。
でも、今の私にはそんな時間は…  あーっ爪の色、濃くなってきた。こんなところで捕まってる場合じゃない!

Dscf8004

「この辺の人じゃないべ。どこから来たのかしらん?ワシが見えるんだば普通の人でねーしょ?」

「か…関係ないじゃないですか私、時間ないんです

あせっているのと、バカにされてるような口調についイライラして怒鳴ってしまう。

「いっやぁ~あずましくないねぇ…少し話相手してくれてもいいじゃない?」

パラ パラパラパラ…

Dscf8030

岩の壁に張り巡らされた網の向こう側で小さな欠片が落ちる音がした。

「危ないよね。あまり大きな声をだしたらばぁ…」

「すいません!失礼します!」

Dscf8062 これ以上相手してるわけにいかない。
その人が付いてこないか心配だったけど私がスタスタ歩き出しても、ズーッとそこに座ったまま…
そのままそこにいて!お願い付いてこないで!

「今は、そっちへ行かないほうがいいだよ。もう本当に踏ん張りが効かんみたいですから」

もぉーっ何言ってるんだコイツぅ!
…とにかく今は無視して行こう。
とりあえず、こっちの都合を終えてからちょっと懲らしめてやろうかな…

「行かんといてややめておいたらば

あーっうるさい!うるさい!

「ホラ見れ上が来たです逃げれー

何?何なの?…

「あ…うわぁ…っ」

Rockfall

思わず見上げたら
こっちに向かって落ちてくる大きな岩が目に入った…

                      (つづく)

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2008年8月25日 (月)

骸の道

Dscf9221

道が変わり続ける
回りの風景とひとつになってどこまでも続く
いつも変わり続ける道を通り抜けるだけだから
いつも変わった事に気がつかない

Dscf9219道は覚えるのか 景色で覚えるのか 
雑草が並木みたいに育った誰も歩かない歩道
センターラインを横切るヒビが緑の血管になり

命の証を向こう側へ渡す

道を忘れない 道を思い出せない
表面温度を上昇させて、血流速度があがっていく
忘れられた道は 静脈瘤のようにクリップで留められて
記憶の本流からも消えていった

グレーの血管を流れる色とりどりのヘモグロビン
大きいものや 小さいものや 新しいのや 古いもの 
少しでも早く 少しでも先に

ここは、とある峠道の途中。
かつては難所とされましたが道の整備もどんどん進み、今では通年を通して快適な道になりました。
始めて通った頃は、まだ整備途上というか砂利道と道路工事の交差待ちが多くて快適とは程遠い状況でした。
いまや、そんな面影も残らないほど整備が進み、トンネルの入口にレリーフをあしらったりして砂埃の立たない舗装路面を景観を楽しみながら通り過ぎることができます。

Dscf9233 そう「通り過ぎる道」。ほとんどの場合、ここは道央・道南へ向かう通過路で、峠が目的で来る人は林道マニアとか周辺の自然を楽しみに来る人たち程度で、札幌へ向かう道すがらというのが正直なところでしょう。
途中はトンネルや覆道を除けば十勝側にドライブインがふたつ。日高側降り口にもひとつ。ほかは除雪ステーションとか砂防ダムの水門とか、道路情報のライブカメラが目に付く程度です。

整備が整ったとはいえ、工事は常に続いていて、維持管理工事・橋などの付け替え、トンネルの修復、豪雨による法面崩落の修復、そして路線修正など…
仕事上、頻繁に通るなら気がつきますが日高側のカーブと覆道の連続する付近は景色も同じように思えてきて一部変更になっても正直気がつきません。
真新しいトンネルを通り過ぎたところで左手に植えられた苗木の向こう側に旧路線が見え隠れする。

「おやーっ?あそこは…」

Dscf9220

十勝支庁と日高支庁を分断する日高山脈は太平洋側から来る地殻プレートの影響とかで隆起した山脈で古い地盤が露出しているところが多いようです。
元々、ほとんどが海の中だった北海道。その影響で、アンモナイトや海竜など海洋生物の化石が出土するところがあり、地域の博物館にはそういった出土品も展示されていました。
こんな、通行中に耳がツーンとしてくる高所でも海の中だったんですよ。

Dscf9236 この山脈を横切るルートの決定も、始めは徒歩によるものだったそうだ。
視界に広がる山々がまだ自然のままの原生林に覆われた時代、ここを走破するのに幾日かかっただろうか?
そんな古い地層からなる山脈をぬい、あるいは貫通して1本の道が敷設。
だだっ広い平野を結ぶ社会の血管は様々な車が行き来する。

Dscf9222 近くにある山の名を持つこの覆道。たぶん何度も通ったんだろうけど低木に前後を囲まれている上、似たような覆道も連続する道だから記憶の中でも存在感がおぼろげです。
降雪や雪崩、岩盤の崩落に対処する目的(?)で設けられたものですが、新トンネルの貫通で役目は終えたようです。
まだ、現役を取れるような状態ですが、既に静かに緑の中に埋もれていく運命になったようですね。

この道を歩いたことはない
というか歩くための道ではない

そんな道を改めて歩くと
道の重さ・偉大さが見えてきた

Dscf9229

現在、高速道路が、この峠のほとんどを難なく通過する路線が開通。
流通などの業者は変わらずこの峠道を利用するが、一般の利用は激減しているように思えた。
Dscf9235峠の店もラジオCMなど流して必死で生き残り策を模索している。

覆道の柱を眺めながら歩くと博物館で見た大きなクジラの骨格を思い出した。道は巨大な骸を晒していく。自然が再び仲間に受け入れる日まで…
それは既に遠い未来の話じゃなくなった。
でも、両側にゲートも付けられて車など通るはずのない道だけど、カーブの向こうから今にも車がかっ飛んでくるような気がした。

Dscf9226

文化の血流は滞ることはない
むしろ高血圧を伴って、ますます速度を上げていく

少し その流れに逆らってみようか
何か忘れてきたものが見つけられるようで…

Nagisa_stand

「…って言うか、ここ入っちゃダメですよーっ」

「えっ?」

※この覆道は現在立ち入り禁止の措置がとられています。
警告を無視した上での事故等に対し、当該局は一切責任を取りません。 

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2008年6月14日 (土)

Some small hope ②

Dscf9292

Dscf9285 「ここは俺の公園だ!さっさと出てけ!!」

大人の姿になれてちょっと気分が浮かれてたら、この人に急に怒鳴られた。
あっけにとられてポカンとしてた。
『立入禁止』のところに入ったのは私が悪いとしても…俺の公園ってどういうこと? 我が物顔で言いたい放題の態度に少しムッとしてくる。おまけに『ババア』まで言われてさ…

Dscf9363 「俺のって…公園はみんなのものなんじゃないですか?」

「なんだ?生意気だぞクソガキ!さっさと帰れ!」

えぇっ?今度は『ガキ』? 人のことなんだと思ってるのさ!
そいつは、始めから話なんかするつもりはないって感じで家(東屋)へ上がっていった。

「ちょっと!なんでなんですか?いきなり『出てけ!』って言われても…」

考えてみると私は人のことに首を突っ込みすぎたのかもしれない。
背格好が大人になったから気も大きくなっていた

「生意気だって言ってんだろ!」

Shot2

Leaf そう言ったとたん、手が私の方に飛んで来るのが見えた…
その途端、ものすごい衝撃を胸に感じて後ろに飛ばされた。
後ろにあった木にぶつかって根元に崩れ落ちる。
まだ、青々とした葉がハラハラと落ちる。さっきまで聞えた小鳥のさえずりもピタッと止また。
森の中は風と違うざわめきが起こり始める。

Nagisa_fall 飛ばされた時、木にぶつかった体は痛くはないけれど、心にすごい痛みが走る。こんなこと初めてだ… 

Leaf_fall_down 「え…あ…?」 何か言おうとするけど驚きでうまく話せない…

「ここは俺の森だ!生きてるヤツだろうが幽霊でもここを犯すのはゆるさん!俺を無視した奴も親も先公もここに入ってくる奴は絶対に許さんからな!なんならブッ殺してやる!!」

なんなの?この人…すごく恨みに満ちてて、みるみる心が黒くなっていくのが分かった。

Dscf9361

Dscf9271 「…どうして…?」

「俺は何年も学校で、見に覚えのないことで人間以下の扱いをされてたんだよ。毎日のように殴られたり、金せびられて…親も学校も目の前で起こらないことは信じちゃくれねぇし…みんな無視して助けてくれなかったから…俺の『死』であいつらを戒めてやろうとしたんだよ!ところがあいつらは、無罪放免さ」

あいつら? 殴られる? 金? 無視? 戒め? どういうことなの…
でも、この人がいじめられていたんだってことは、何となく分かった。
俺の『死』で戒めるって…まさか?

Dscf9316 「自殺…?」

「そうさ!ここで首吊った。ここは、俺って亡霊の出る心霊スポットだよ。 死んでんのにまだ、からかいに来るんだよ!バカ共が『肝試し』とか言ってさ!」

「その人たちに何かしたの?」

「やったさ!脅かしたり、失礼な奴は道を壊して怪我もさせてやった!だからここは立入禁止になったけどな」

「それ…違うよ。間違ってるよ…それじゃ何も変わらない!あなたがいじめられたように、この森があなたにいじめられてるんだよ!」

Evil_black

「なに?! 生意気だぞ!ぶっ殺してやる!!」
その人は、みるみる黒ずみだして悪魔のような顔になった
その恐ろしい視線だけでもチクチク刺さってくる

殺す? 誰を殺す? 私を この幽霊の私を殺せるの?
まさか、と思ったけど…

「やめて!」

憎悪に満ちたものが私に向ってきたとき、思わず叫んだ
同時に私の頭の中で何かが「ギンッ!」と音を立てて…

Evil_gost

「あ─…」

その黒い恐ろしい影は、一瞬でどこかへ消え失せた

私は、何かした?   私が、何かした!   私は、何をした?

Dscf9355

森は、ほんの今まで起こっていた恐ろしい出来事を何も知らぬかの様に静まり返っている。どれだけの時間が経ったのか小鳥のさえずりも戻ってきて、何かが終わったことを感じた。

Dscf9358_2  怖かったよ
ホントに殺されるかと思ったよ

危機は逃れたのだろうけどまだ、怖い
私が今、何をしたのかということが…

森は、何があったのか教えてくれない
私は、聞こうともしない

座り込んだまましばらく泣いてた

Dscf8497

暗くなって、町外れの空家に泊まった

「お客さん どうしたんだい?」

「…」 

お家さんが声をかけてくれたけれど、私は部屋の隅で、座ったまま黙って闇を見つめている。
さっきのやつが闇の中から飛び出してきそうな気もしてたから…

Dscf8307「外のことでも話してくれないかい?」

「…うるさい!」

「おやおや、何だか荒れてるねェ…」

「あ…ごめんなさい…」

私もおんなじだ あの人と同じ…
明日は、元の私に戻ろう
朝が来たらきっと…

たったひとつの小さな希望を持って…

You tube: Some small Hope/Virginia Astley

※この公園の木道は実際に老朽化で通行に危険とのことから、数箇所の通行が禁止されています。
ここは、地域の開拓時代を彷彿とさせる原生林と湿地の残る緑地公園です。
不法投棄、樹木の成長による近隣住居の日照不足などの問題はありますが、市内数箇所に残る緑地帯の中でも秀逸の場所です。
 木道が再整備されていないのは、財政難が起因しているのかもしれませんが、実証は分かりません。

※このお話の内容は創作であり、この緑地公園で同様の事件・事故等の過去はありません。

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2008年6月11日 (水)

Some small hope ①

満たされぬまま広がる あらゆる夢
私たちの前を通り過ぎていく あらゆる生き物
私の孤独な魂は ささいな思いに悩む
けれど真心だけは 純粋でいられる

Nagisa_top

真っ青な空に雲が優雅に踊る 
筋状に広がって一斉に同じところへ流れていく雲
どこへ行くでもなく空の真ん中で孤独に浸る雲
回りを巻き込んでどんどん湧き上がる雲

その中を大抵の人には見えない小さな光の軌跡を残しながら
「ナギサ」と言う名の幽霊が雲の間をぬって飛んでいる

空のものは決して地を這うものを見下しているわけではなく
地に下りることがかなわないがため、憧れの視線を下ろしているのかもしれません。

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Dscf8401 雨上がりの空を飛んで 久しぶりに人のいる街に来た。
緑の広がる中に街を見つけたら行ってみたくなった。

たくさんの家 私のいたところよりたくさんの車が走ってる。
そんなに忙しく、どこへ行くのかな?
大きな橋の上にある塔が空を突き破ろうと背伸びしてがんばっているよ。
橋の上にもたくさんの車が走ってて、みんな あくせくと楽しそうだ。 
顔には出さないけど、生きてることを楽しんでるんだね。

少し人恋しくなっったんだろうか。でも、私みたいな『幽霊』が見える人がいるかと思うと降りてみる勇気は出ないな。
だから高いところや隠れられるところを選んで様子を伺っている。

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Dscf5876 街の真ん中に大きなコンクリートの橋が長く横たわっていた。その上を列車がゆっくりと駅に向って入っていくところが見える。青くてスラッとした体が光ってとてもきれいだ。
大きな三角定規の上に立って人の流れを眺めていた。

─間もなく 釧路発・札幌到着のスーパーおおぞら4号発車の時刻です…

「バンザーイ! ロックシンガーシゲオ! バンザーイ!」

えーっ!なんだ…? ひとりで大声でバンザイしてる人がいる… 

「ち…ちょっと…やめてくれよ! おおげさだなぁ…」

「なに言ってんだよ! RUINSの代表にエールを送って何が悪い! 笑いたいやつは笑わしとけ! バンザーイ!」

あぁ!見送りかぁ… 嬉しそうだなぁ あの人、友達なんだね。
ともだちかぁ…
友達欲しいなぁ…

見ていたら、何だかやるせなくなってきたよ。街を離れることにしょう…。
山の方に向かって走る風を捕まえて飛び乗った。

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Dscf8550 途中、ずーっと屋根の波が続く先にお城のようにそびえる緑の塊が見えた。
「あそこは何だろう?」

ちょっと寄ってみよう…

まるで森の中のみたいに木々や草が茂っていて木でできた道が続いている。誰かいるかもしれないから様子を見に入口の方へ行くと立て札があった。

「木道の老朽化により通行を禁止します 委託管理者」

後ろの漢字が分からないけど、どうやら道が壊れているので、人は入れないみたいだ。
ちょうどいいから少しここで休んでいこう。
聞えるのは鳥のさえずりと、そよ風に踊る葉の音。
時折聞える車の走る音が懐かしい波の音に聞える。
地上に降りてまわりを気にしないで歩けるのは、やっぱり気分がいい。

街中なのに、こんなに静かなのは人が来ないせいだけではないようだ。
途中、子どもの姿を見なかったから、今日は学校のある日なんだね。

Dscf8535 旅に出てから曜日が分からなくなった。
お家にいた頃は、窓から外を覗くとランドセルを背負った子が見えたりして何となく曜日が分かったけど、今の私は毎日が日曜日…でもこの間、先生のところに行ったから久々の登校日だったな。

そういえばその前に寄った学校で男の子と女の子に会ったっけ。
1年生だけど86歳と90歳と聞いてびっくりしたよ。
でもあの子、言ってた…

「アタシとカッちゃんは、ずっといっしょに遊んでいたいから1年生の頃に戻ったの! できるんだよ!ただ、考えればいいの。昔の記憶よりは小さいけど、来るはずだった未来の記憶も心の中に眠っているからね」

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そうだ大人になりたかったな。ホントだったら私も今頃は中学校へ通っていたんだけど取り戻せない時間のことを考えても仕方がないからずーっと考えてなかった。そのときの私は、どんなだっただろう。
…ずっと前に見たママのアルバムで見た写真のことを思い出した。

「ナギサは小さい頃のママに似ているから中学に上がる頃は、こんな子になってるね…」

そうだ、あの写真のママが、私がなれた姿なんだよ。

Lifht

Dscf8538 そう思ったとたん、軽いけど「ズーン」とめまいがして体が光の粒みたいにバラバラに弾けた気がした。
すぐ、何もなかったみたいに元の私に戻る…

「え…何だ今の…」

おや?何か変だ!急に回りがさっきまでと違うような…頭の上にあった木の枝がすぐ近くに見えた。たぶん踏み台の上にいるみたいに回りが少し違って見えた…ってことは…背が伸びている?

「あれ?成功したの?」

掌を見ると、手も指も自分じゃないみたいに大きくなっている。足もそう。

「鏡…どこかに鏡ないかな?」 でも、すぐ思い出した。自分が鏡に写らないことを…

「うーん… くっそー!!」 思わず大声を出してしまった。

 

「うるせぇな!!」

えっ?誰? どこにいるの? あわてて回りを見たけど分からない。

「誰だお前! ここは立入禁止だ!」

Bad

Dscf8527 声のする方を見ると屋根のあるお家見たいな所に誰かが立っている…
中学…高校生かな…? ポケットに手を突っ込んでイラついた顔の男の人…
私が分かるってことは…仲間だよね?

「すいません 知らなかったんです」
そういうこの人はここで何してる?…と思ったけど、ちょうどいいから聞いてみた。

「あのーっ 聞いていいですか? 私、いくつに見えますか?」

Dscf8540 「あぁっ? わかんねぇこと聞くなババア!!」

「バ…ババア…?」

なんなの?この人!

(つづく)

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2007年10月 9日 (火)

切り取られた往来

『歩く前に道はない 歩いた後ろに道はできる』 
こう言ったのは誰だったかな…

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Photo でも、道の無いところは危険。北海道においては毎年、山菜採りで山に入り遭難も毎年のようで後を絶ちません。山菜のベストポイントを秘密にしていたことによる発見の遅れもあり、山菜に夢中になっての深入りや獣道を人の道と見誤るなど慣れた山を過信したことから遭難が分かるとパニックに陥り無駄に体力を浪費して、幹線道から数100mほど入った程度の場所で発見されることも珍しくありません。
 道は、人生のたとえにもあるように外れることは少なかれ、リスクを伴います。

Dscf9931  今回外れたのは、人ではなく道のほうです。正確には「外された」とするべきですね。
この辺りを車で普通に走っていると土地の人でもない限り気がつくことはないでしょう。こちらも一人でトボトボ歩いていたから見つけたのですが…
 普通の舗装路面でラインも残った100数十m。
 現在の道は朝夕、温泉街を行き来する車両がひっきりなしで、信号待ちで大型バスも連なって停車していますが、切替によってルートからはじき出されたこの道に立つと何か不思議な感じがします。数年前の地図には信号機の表記がないので、近年改修したのでしょう。元の道道との接続部分には一時停止のラインが残っているので、温泉街から下がってくる車両が渋滞を起こし気味になっていたことから改修に至ったのでしょうか。

Dscf9933  ここに限った事ではありませんが改修によってはじき出された道は、郊外だとそのまま残されてしまうことは意外に多いようです。
 一昔前、赤瀬川源平氏の参加する路上観察学会により、世に出ると突出したサブカルチャーブームを巻き起こした『超芸術トマソン』を思い出しました。

大型バスがひっきりなしに行きかう道とそこに向かいながら雑草の帯に切断された旧道。
向かう先は同じながらも対照的な二つの道は、時代の波にうまく乗った者と堅実ながらも乗り損ねた者の違いのようで人間臭さを感じてしまいます。

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この道はいつか来た道… あ?そうだっけ?
ほんの数年で風景は様変わりしていきます。気にも止めなかった1本の木が消えただけでも違和感が出るように心の風景も現在との照合に戸惑ってしまいます。

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2007年7月22日 (日)

見られたのはどっちだ!

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Dscf6584  今はめっきり見ることがなくなりましたが、道路わきにこんな感じのものがよくありました。
電話ボックス?違いますよ。これは正式な名前は分かりませんが「交通監視所」といったものです。それらには大きいもの、木造のもの、プレハブのもの、キヨスクみたいなもの、FFのドライブスルーみたいなもの、低い火の見やぐらみたいなもの、そしてこの電話ボックスみたいなものなど様々な形があります。

 これらの物件に共通するのは「中にいる人など見たことが無い」ことです。ねこんの運が悪いのか、本当は「張子の虎」なのか不可思議な物件です。
 こちらの物件は電話ボックスの再利用なのかもしれません。電話ボックスというと思い出すのが、とある競馬場の関係者入場口に警備員が常駐していますが雨風防止のためか普通のガラス張りの電話ボックスを置いて中で胸を張って職務遂行しているのを見ましたが国道沿いのボックスの中で車の流れを監視していても凄く恥ずかしい感じがします。

 でも、この中は見たことが無いから…よし行ってみよう!

調査開始!

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調査完了!

 ここで、ただ一人道を見張っているのも空しそうですね。
それに炎天下だとサウナ状態で職務とはいってもキツそうですね。

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2007年7月21日 (土)

歌う小道

Dscf6582  主要幹線道と近隣市街に折れる道の交点。その一角に捨て置かれた速度40㌔制限の路面表示がありました。たぶん、本道とはもっと自然に接続していたのでしょう。
 道に主従関係があるなら元の接続はちょっと怪しく、そのために事故などの起こる可能性があるので付け直したものです。
正面には果てしなく大きな空の下、緩やかな丘陵が見えて視線を奪われていると国道を走る車と思わずガチンコなのでしょう。

Photo_30   ほんのちょっだけの道は両端をガードや土盛りで塞がれていますがその形はまだ完全です。
こんなものでも発見すると嬉しくなってしまうのは、赤瀬川源平氏の「路上観察学入門」やエッセイを愛読したいたからでしょうね。
 廃墟探索も軽く廃墟観察としてウィット感を出してみたいです。

 この道なら寝転がってもOKです。それどころか卓球までできますね。国道が近いので強力なスマッシュは禁止ですけど。
 この道は時折、歌に包まれているようです。なぜならその先には…

Karaoke

 カラオケ食堂かな?とも思いましたが地域カラオケ連合会の集会場でしょう。一応通信カラオケ搭載のようです。どうやら現役のようです。フリーで歌えるかはわかりません。

Dscf6583  北海道、特に山を生業にする人々にとって生活の場である山は、暮らしに実りをもたらしてくれる母です。その反面、山をなめてかかる者達には非常に厳しい父でもあります。
 山には時折、クマも出没し(こちらからその聖域に入っているともいえます)痛ましい事故も起きています。自分、そしてクマにとっても自分の存在をクマにいち早く知らせることが被害を起こさないための第一条件です。その手段が音であり、登山や山菜取りには「熊鈴」と呼ばれるものが必需品です。
 「カラオケ」が飛躍的に北海道で広がった一因は、熊と出会わないための用心として唄う「熊唄」というものが演歌のメロディの持つ特定のパルスに酷似し、それは熊自体が最も警戒しやすい音で、祖先が厳しい北の大地の中で培った護身術
もあるのです。
 このような背景から北海道におけるカラオケの流行は、単に流行と言う器に収まるものではなく、大自然の懐に生きる我々の血に「カラオケ」が本能的にシンクロした結果であると思います。
 山に生きるものにとって唄は、単なる愛好ではなく生きる
残る手段だったのです。だから十八番の唄はその人にとってクマ除けに効果的な唄ということなのです。

Dscf6581 すいません ネタに詰まって捏造しました。本気にしないでください。(特に道外の方々は)

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2007年4月19日 (木)

廃の発展場

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 ここはT川流域の某所、E町。この道は右側に川、左側に山の登坂を伴うカーブ地帯。
右側の川面には、その昔近郊流域の稲作の用水のためT川の水位を上げる目的で作られた堰堤が見えます。一帯の稲作は少し昔、国の減反政策で徐々に水田が減っていき、現在は皆無の状態。水門や水路だけが当時の面影を残しています。

 道の向こう側にある建物、あれも廃墟です。(ただし、町の管理下にあります。)
 そして、この道も廃道となればここは廃墟の発展場です。

Dscf1577  昔、重版の大ヒットになりました故・中岡利哉氏の著書、『恐怖の心霊写真集』第3弾の最恐の写真の舞台がこの辺りになりました。丁度右側眼下に伸びる堰堤は秋鮭のダイナミックな溯上がみることができる観光スポットとして展望台(こちらも老朽化で閉鎖中)も設けられ、観光の振興に一役買っていましたが、「この道から見下ろした堰堤のシーン全体に白装束の女性の上半身が重っている」そんな写真です。
 真意の程はわかりませんが、この辺りで夜間、男性がひとりで車を走らせていると後部座席にいつの間にか女性が乗っているという話も過去に世間に伝わっていました。

Dscf1572  現在、山を縫うようにひかれたこの道も山を貫通するトンネルに取って代わられ、数百メートルのこの区間の前後は大きな土嚢で封鎖されています。

 北海道の広大なロケーションを実感できるこの場所ですが今は、訪れる人もまばらで堰堤改修に伴う護岸工事関係の車両の頻繁な出入りが見える真冬のある日です。

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