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2009年12月 8日 (火)

Open your mind

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郊外とはいえ、舗装路面もあらゆる方向に縦横無尽に伸びて、こんな人通りの少ないところにさえ縄張りを広げてた。
あたりには、まだ点々と家が並んでて、人の住む気配もあるけれど、どこか乾いた感じが拭えない。
元々このあたりにも、ちょっとした店が数件は並んでいただろうけれど、今は寂しさに耐えられなくて自然と集まった家の集会場のように思える。
そんな萎縮した空気の中、妙にオープンな家がそこに…

Dscf4681 明らかに長いこと人が住んでいる風ではなくて、ただ玄関も窓も開け放たれていた。
開け放たれたというよりも窓も玄関の引き戸も外されているみたい…
しかし、入ってくれと言わんばかりなのです。
これが『廃墟マニア捕獲用の罠』ならいかにもですね。
それ以前に廃屋と思って覗いたら、中で家主がお茶を飲んでいる場と鉢合わせ…というのはいただけません。。。

少し傾き掛けた木造の民家で、屋敷回りは木やら雑草やらが伸び放題。
家に通じる畑に挟まれた道も畑と区別が付かないような踏み固めた土で、轍の間の雑草も車の底を擦るくらい伸びている。
トタンの屋根も元の色が分からないくらい赤錆にまみれているから、どう見ても人の手を離れて熟成が進んだ建築物にしか見えない。

あれを撮りに行こうと思い立ち週末の初冬の朝、行ってみると煙突からモウモウと煙が上がってた。。。

「おかしいなぁ。。。夜も光は漏れていなかったのに。。。」

Dscf4685 どうやらよほど厚いカーテンを引いていたようだ。
それよりも何よりも人様の暮らす家を廃屋と思い込んだ自分も情けない。

冒頭の家は、歩道から覗いてみる限り、人は住んでいないようだった。
年季は入っているけど、大きな歪みは出ていないので、直して住もうと思えば、まだ充分住めそう。

図書館で骨董関連のコーナーとかを見ると、古民家再生に関する本があったりして『こういう住み方もあるんだーっ』と思った。そういう静かなブームがあるらしい。
行きなれた廃屋でそういう人を見かけることもある。
近所にその類の業者もいて、数年前まで草木に埋もれていた家が古いアルバムから切り抜いてきたみたいに再生されたのを見ると、使える材料が制限されている分、スゴイ仕事だと思います。

Dscf4684 廃好きといってもそういうのもキライじゃない。
取り残された家が自らに幕を下ろすかのように徐々に崩れ落ちていくのは、やはり感傷的にならずにはいられない。
感傷的でもあるけれど、何も考えない『無』な状態になってしまう。
普段生きている世界の喧騒とは縁の無い部屋。
しかし、そんな部屋にも団らんや、まどろみや、いつまで経っても終わらない兄弟ゲンカなんかもあったはずで、そういう名残を探してしまう。

ここへ何しに来たのだろう…
何を探しに? 何を求めて?

それは、そう!
たぶんね…そのうち見つかるでしょう。

Dscf4683

あらゆるものが手に入りやすい世の中だけど、手に入りにくいものもある。
『金で買えないものなんて、この世の中あるのかよ!』と誰かが言ってました。

買えないものは無いのかもしれないけれど、そのお金をいくら積んでも取り戻せないものが、それはもう数え切れないくらいにあるのです。

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