遠ざかる空
逃げるみたいに遠ざかる空
見透かしたように流れていく雲
山は白い余暇を前にして1年かけて用意した衣装を競い合う
この景色をどれほど見たことでしょう
その何度かは 旅立っていった“あなた”と見上げたものです
あなたが初めてここに来た日
まだ、見ることを困っていたような眼差し
捉えるものを捉えきれない小さな手
そんなあなたを迎え、思わず声にならない歓喜の声を上げてしまったものです
聞こえたはずもありませんが…
あなたが その足を自在に使うようになり
今日のような空や山を見上げた日
その目に映ったものを言葉にできなくてカリカリしていたこと
近くの川の水が留まることなく流れていくのをただジッと見下ろしていたこと
そんな様子をこの窓から見つめていたものでしたが
その時と同じ景色がここから見て、つい思い出してしまいました。
柱の線がその間を広げ始めて
塊のひとつに過ぎなかった私のところへあなたが来ました。
私があなたのものになった日
それもつかの間、夜の帳(とばり)が下りる頃には、母の元へ
私があなたの夜をいさめるには まだ器が相応ではなかったのでしょうか。
夜の寂しさより、心の平安を愛すようになって
あなたと過ごす時が増えた始めた日
たくさんの写真が壁を覆いました。
あなたは写真をながめていただけかも知れないけれど
私自身が見つめられているような不思議な気分になりました。
あなたの伸ばす手がずっと近づいてきた日
喜び 悲しみ 迷い 嗚咽 静寂 怒り 憂鬱 後悔 妬み…
人には見せないあなたの秘密を共有しました。
それをあなたが望んだのかは計れませんでした。
そして唐突な あまりにも唐突な別れの日
あなた自身も思いもしなかったような…
あの時も空は今のように遠ざかり
雲も何かを見透かしていた…。
今もあなたは、この遠ざかる空に思うことがあるでしょうか
見透かした雲を見上げるのでしょうか
山は今日も忙しく衣装替です。
いつか いつの日か
この身があるうちにひと目あなたに会えるなら
私を懐かしく訪ねてくれることがあったなら
とても嬉しく思います。
何も語らず、単に包み続けた私。
小さな一間ながら、あなたの城であれたことだけが誇りでした。
それが「一間の部屋」としての私の想い出…。
あと何度、この景色を見ていられるだろうか─
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コメント
ルイドラと平行してルイドロも進めるんですか?
それはネタ底なしのねこんちゃんでもゆるくないですよ。
投稿: カナブン | 2009年10月28日 (水) 20時57分
いちお「ルイドロ」が入口なので。。。
「ルイドラ」の直リンクどこにもないんです。
投稿: ねこん | 2009年10月29日 (木) 12時46分