廃墟の歩き方Ⅲ 『ら・ら・ら』④
【前回までのあらすじ】
大好物のクリームコロンより廃墟が大好きなサブカルOLアキ(A型)は、週末に師匠と仰ぐコア廃墟サイト『廃墟楓』を運営する先輩、神氏(
A型)と大きな炭鉱跡へ行きました。
同じ頃、別ルートからもカップルが一組。その彼女の方・美玖(AB型)の方は、ホントは『廃墟』は大の苦手。彼・敦(B型)の方は、廃墟を撮るのが大好き。写真を撮りに行くのを怪しいと疑っていた美玖の『いっしょに行きたい!』発言を趣味の一致と早合点していたようで週末デートも半分廃墟巡りに…。
そんな二組が廃炭鉱の奥深くでニアミスしましたが、些細なことから美玖の廃墟嫌いが爆発…廃墟の森を奥深く駆け出して行ってしまいました。
そんな事件の最中、風の背に乗って空を行く幽霊少女『ナギサ』(血液型なし)。
海へ向かう風に乗れなくて、辺りをウロウロしていました。
そこで目に入ったのが廃墟の樹海をさまよう美玖の姿。
それともうひとつ、近くをうろつくクマ(たぶんO型)の影。
『このままじゃ危ない!』
クマを説得しようとするナギサですが、クマはとっても頑固…。さて、どうしたものでしょうか?
「アツシ…」
そもそも私の疑り深い性格のせいなんだな…
それに嫌なら『行きたくない』と言えばいいのにそれができなくて…
だからって、少しは察してくれてもいいじゃない
普通はこんなところに来たい人なんかいないじゃない…
幽霊とクマくらいしかいなさそうなところだし…。
それにしてもアツシのほかにも同じ趣味の人がいたなんてビックリした。
一緒にいたあの子までそうとは思わなかったよ。
『うるさいなカスミのお前には関係ないだろ
』
『それはそうですけど…どうなるか知ってて見殺しにしたら私、一生後悔しちゃいます』
『一生って、お前1回死んでんだろ』
『あっそうかクマさんナーイス突っ込みィ
へへへ…』
『ドやかましい
いいかげん行かないとバラバラになるほど吹き飛ばしてやるぞ
』
『でも、あの人襲っちゃうと鉄砲を持った人間がたくさん来てクマさんのこと探しますよ』
『なんで人間だけが特別なんだ俺にとっちゃあシカも人間も同じ食い物だ
ノコノコ縄張りに入ってくる奴のほうが悪い
』
『じゃあ…私が替わりに食べられるようにしてあげますから、それでどうですか?』
『…今はインスタントは食いたくねえな』
うーん…このクマ、すっごいムカついてきたぞ…
プップップー
「あっ
合図です
車のところで見つかったようですよ」
「いや…プップップだから車にはいなかったようです…」
そうか…師匠に確認した私が間違えてどうする
「このことで、やっとわかりました。僕は美玖に甘え過ぎてたんだなぁって…」
「解ってはいたんです。美玖がこういうところがキライだってことは…でも、美玖の好きな時間を作れば僕もこういうところへ来る時間を作れるって思ってて…それが結果として美玖に引き目を負わせていたんだなぁ…。僕は単に自分のエゴのために恩着せがましいことをしていただけなんですよ…僕は最低だ」
「はあ…」
「何が自分に一番大事かってわかりました…」
「やっぱり、ここでジッとしていられないもし美玖がピット(穴)にでも落ちていたら
」
「あっ
待ってください
私も行きます
」
「いや僕の問題です。20分待っても何の合図もなかったら警察に連絡してください。お願いします
」
あ…行っちゃう…
「クマさーん?ホントはそんなにお腹空いてないんじゃないですかぁ?」
「しつっこい奴だなキサマ…いいかげんにしないとしまいには怒るぞ
」
「私もいい加減に分かってもらえないと怒りますよクマさんのためにも言ってるのに
」
「分からなかったら何だというんだ …あ
」
「ヒーッ」
あーっ…
あっという間に逃げちゃった…
なにさーっ弱虫
ともかく何とかなったんだからいいや
「なに?」 向こう側の音は…動物の声?
アツシかもしれない
「えぇっ?」 な…何?あれ…
「あれ… もう大丈夫ですよ
」 もしかして見えてる?
「ギャーッ出たーッ
」
あら…行っちゃった…やっぱり見られた
昼真っからこんなに見られて…私、幽霊向いてないのかなぁ
「今の声はミクーッ
どこだー
」
「えっ?見つかった
」
遠くからものすごい悲鳴とともに人間とは思えない勢いで美玖さんが走ってくるのが見えた!
「ミクーッこっちだ
」
「行って
カメラは預かっておきます」
「あっお願いします!ミクーッ
」
うっわーっものすごい勢い…。 あのままふたりがぶつかったらバラバラにはじけ飛んでしまうくらいスゴイ…
「アツシィーッアツシアツシアツシアツシィーッ
」
「ミクミクミクミクーッ」
「怖かったよ怖かったよォーッ離さないでよォーッ
」
「ゴメンこんなとこ連れてきて今すぐここから出よう
」
「おっ
見つかりましたか
良かったぁ」
「いいにゃー。私も彼氏ほしい…
」
「こんな私もフリーですけど?」
「そうなんですか?お互いがんばりましょう
」
「…
」
「あっ…風向きが変わったね…」
ここで足止めされてる場合じゃないや。とりあえず海を目指そう。
木立を吹き抜ける風に乗って再び空へ上がる。
「おや?あれはさっきの…。 彼氏とはぐれてたんだ…いいにゃーっ」
私もこのままカズ君のところまで飛んで行こうか…
でも、どこにいるか知らないんだったなぁ…
とりあえず海行こ…ラララ~ッ
それぞれの恋模様 それぞれの想い
一陣の風が運んでく
行きつ、戻りつ、行き着くべき場所へ
ずっとずっとずっと、一緒にいようね…
※この物語はフィクションです。廃炭鉱は実在しますが、登場する人物そのほかは実在するものではありません。深読みしないように。。。
また、現地の照会はいたしかねます。たぶん
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