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2009年4月12日 (日)

廃墟の歩き方Ⅲ 『ら・ら・ら』④

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【前回までのあらすじ】 
大好物のクリームコロンより廃墟が大好きなサブカルOLアキ(A型)は、週末に師匠と仰ぐコア廃墟サイト『廃墟楓』を運営する先輩、神氏(A型)と大きな炭鉱跡へ行きました。

同じ頃、別ルートからもカップルが一組。その彼女の方・美玖(AB型)の方は、ホントは『廃墟』は大の苦手。彼・敦(B型)の方は、廃墟を撮るのが大好き。写真を撮りに行くのを怪しいと疑っていた美玖の『いっしょに行きたい!』発言を趣味の一致と早合点していたようで週末デートも半分廃墟巡りに…。
そんな二組が廃炭鉱の奥深くでニアミスしましたが、些細なことから美玖の廃墟嫌いが爆発…廃墟の森を奥深く駆け出して行ってしまいました。

そんな事件の最中、風の背に乗って空を行く幽霊少女『ナギサ』(血液型なし)
海へ向かう風に乗れなくて、辺りをウロウロしていました。
そこで目に入ったのが廃墟の樹海をさまよう美玖の姿。
それともうひとつ、近くをうろつくクマ(たぶんO型)の影。
『このままじゃ危ない!』
クマを説得しようとするナギサですが、クマはとっても頑固…。さて、どうしたものでしょうか

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「アツシ…」
そもそも私の疑り深い性格のせいなんだな…
それに嫌なら『行きたくない』と言えばいいのにそれができなくて…
だからって、少しは察してくれてもいいじゃない
普通はこんなところに来たい人なんかいないじゃない…
幽霊とクマくらいしかいなさそうなところだし…。
それにしてもアツシのほかにも同じ趣味の人がいたなんてビックリした。
一緒にいたあの子までそうとは思わなかったよ。

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Dscf1751 『ねえーっクマさーん…やめましょうよ…』

『うるさいなカスミのお前には関係ないだろ

『それはそうですけど…どうなるか知ってて見殺しにしたら私、一生後悔しちゃいます』

『一生って、お前1回死んでんだろ

『あっそうかクマさんナーイス突っ込みィへへへ…』

Dscf6874_2 『ドやかましいいいかげん行かないとバラバラになるほど吹き飛ばしてやるぞ

『でも、あの人襲っちゃうと鉄砲を持った人間がたくさん来てクマさんのこと探しますよ』

『なんで人間だけが特別なんだ俺にとっちゃあシカも人間も同じ食い物だノコノコ縄張りに入ってくる奴のほうが悪い

『じゃあ…私が替わりに食べられるようにしてあげますから、それでどうですか?』

『…今はインスタントは食いたくねえな

うーん…このクマ、すっごいムカついてきたぞ

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                         プップップー

「あっ合図です車のところで見つかったようですよ」

「いや…プップップだから車にはいなかったようです…」

そうか…師匠に確認した私が間違えてどうする

「このことで、やっとわかりました。僕は美玖に甘え過ぎてたんだなぁって…」

Dscf1747  「えっ?」

「解ってはいたんです。美玖がこういうところがキライだってことは…でも、美玖の好きな時間を作れば僕もこういうところへ来る時間を作れるって思ってて…それが結果として美玖に引き目を負わせていたんだなぁ…。僕は単に自分のエゴのために恩着せがましいことをしていただけなんですよ…僕は最低だ

「はあ…」

「何が自分に一番大事かってわかりました…」

Dscf1744 「あなたはやっぱり優しい人ですよ…」

「やっぱり、ここでジッとしていられないもし美玖がピット(穴)にでも落ちていたら

「あっ待ってください私も行きます

「いや僕の問題です。20分待っても何の合図もなかったら警察に連絡してください。お願いします

あ…行っちゃう…

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「クマさーん?ホントはそんなにお腹空いてないんじゃないですかぁ?」

「しつっこい奴だなキサマ…いいかげんにしないとしまいには怒るぞ

「私もいい加減に分かってもらえないと怒りますよクマさんのためにも言ってるのに

「分からなかったら何だというんだ …あ

Nagisa_brake

           「ヒーッ

Dscf1746 あーっ…あっという間に逃げちゃった…
なにさーっ弱虫
ともかく何とかなったんだからいいや

「なに?」 向こう側の音は…動物の声?

アツシかもしれない

「えぇっ?」 な…何?あれ…

「あれ… もう大丈夫ですよ」 もしかして見えてる?

Nagisa_and_miku

「ギャーッ出たーッ

あら…行っちゃった…やっぱり見られた 
昼真っからこんなに見られて…私、幽霊向いてないのかなぁ

Dash

「今の声はミクーッどこだー

「えっ?見つかった

遠くからものすごい悲鳴とともに人間とは思えない勢いで美玖さんが走ってくるのが見えた!

「ミクーッこっちだ

「行ってカメラは預かっておきます」

「あっお願いします!ミクーッ

うっわーっものすごい勢い…。 あのままふたりがぶつかったらバラバラにはじけ飛んでしまうくらいスゴイ…

Dash2

「アツシィーッアツシアツシアツシアツシィーッ

「ミクミクミクミクーッ

「怖かったよ怖かったよォーッ離さないでよォーッ

「ゴメンこんなとこ連れてきて今すぐここから出よう

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「おっ見つかりましたか良かったぁ」

「いいにゃー。私も彼氏ほしい…

「こんな私もフリーですけど?」

「そうなんですか?お互いがんばりましょう

「…

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「あっ…風向きが変わったね…」
ここで足止めされてる場合じゃないや。とりあえず海を目指そう。
木立を吹き抜ける風に乗って再び空へ上がる。

「おや?あれはさっきの…。 彼氏とはぐれてたんだ…いいにゃーっ
私もこのままカズ君のところまで飛んで行こうか…
でも、どこにいるか知らないんだったなぁ…
とりあえず海行こ…ラララ~ッ

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それぞれの恋模様 それぞれの想い
一陣の風が運んでく
行きつ、戻りつ、行き着くべき場所へ
ずっとずっとずっと、一緒にいようね…

Youtube『ら・ら・ら』大黒摩季

※この物語はフィクションです。廃炭鉱は実在しますが、登場する人物そのほかは実在するものではありません。深読みしないように。。。
また、現地の照会はいたしかねます。たぶん

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2009年4月 9日 (木)

廃墟の歩き方Ⅲ 『ら・ら・ら』③

【前回までのあらすじ】 
廃墟がスイーツより大好きなサブカルOLアキ(A型)は、週末に師匠と仰ぐコア廃墟サイトを運営する先輩、神氏(A型)と炭鉱跡へ来ました。
一方、別ルートからは、もう一組のカップル。その
彼女・美玖(AB型)の方は、ホントは『廃墟』が大の苦手。彼・敦(B型)の方は、廃墟を撮るのが大好き。物事を深く考えない性格なのか、週末デートも半分廃墟巡りのようです。
そんな二組が廃炭鉱の奥深くでニアミスしましたが、些細なことから
美玖の廃墟嫌いが爆発…廃墟の森を奥深く駆け出して行ってしまいました…

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「あの…携帯で呼んでみたらどうですか?」

「あっそうか…いや…ダメだ…ここは圏外です」

私のもダメ…この山奥にエリア拡大ってのも妙な話だけど、これじゃ意味無い…

「とにかく、手分けして…」

「闇雲に動くのはやめたほうが良いですよ。近くにいるかも知れないし。とにかく、こっちまで迷い込んだらコトですから少し冷静になりましょう」

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「あれ…ここどこ?」

表に飛び出してガムシャラに走ったけれど、落ち着いてきたら自分が来た方向もどっちかわからなくなった…
相変わらず、遠くにボロボロな建物は見えているけど、どれも同じにで、方角も分からない…

「アツシぃ…」

私、迷った…? どうしよう…

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「あれから…どのくらい経ちます?」

「30分くらいになりますかね」

「美玖がヘタに動いていたらマズイな…」

「そうです!いくらなんでも迷ってたら気が付いてるでしょう!」

「おーい!美玖―っ」

「ミクさーん!」
これは私のせいだなぁ…責任感じるよ…。

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あ~っ完全に迷っちゃった…どうしよう…

「アツシー!アツシーッ!どこーッ!」

困ったなぁ…困ったなぁ…ずいぶん歩いたけど、道がどっちだったかも分からない…
鳥になれたらこんなところからすぐに逃げ出せるのに…
こんなことになるならはじめからハッキリ「行きたくない」って言えば良かった…
でも言えなかったな…アツシの夢中な姿見てたら…
それにしても疲れたよぉ…どこかで少し休もう…

Nagisky

そんな地上の騒ぎなど意に介さないほど青い空。
海を目指して風の背に乗っている女の子がひとり。

「ズンタカター♪ズンタカターッ♪海!うみ!もうすぐだよーっ

ところが思い通りにならないのが風。海の方へ向かう風がなかなか吹いてくれないようです。

風任せの旅もメンドーだなぁ…降りてどこかの車に乗せてもらおうか…
でも、まだ木の海の真上。走っている車どころか、道も見えない。

「木が多すぎるんだ。少し低いところを行こう」

低いところは、山や木の影響があるので風も不安定だけど、今日は穏やかだから大丈夫だよね。
山の中なのに小さな家が点々と見える。
おや?緑の中に誰かいるみたいだなぁ…あんなところで何してるの?

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「ミクーッ!」

「おかしいですね。聞こえないのかな…」

「もしかしたら、車のところへ行ってるかもしれません。もしやということもありますから様子を見てきます」

Dscf1741_2 「そうですね。お願いします…」

「見つけたらクラクションを鳴らしますから」

「いなかったら?」

「いたら『プー』で、いなかったら『プップップ』にしましょう」

「プーとプップップですね」

笑いそうになったけどそういう状況じゃない…

「それと、なるべく音を出すようにしてください。まさかとは思いますが…」

「え?クマでも出るって言うんですか!」

「ここは、シカがたくさんいるって聞いてるんですよ。でもズーッと痕跡も見ないので…。こっちの気配でいなくなったのかもしれませんけど、万が一のこともありますから…」

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ここはどの辺なんだろう…
どっちを向いても同じような風景。気のせいか回りは山ばかり…

「そうだ!ケータイ!」

圏外…!なんてとこだろ…

ガサガサ…

なんだ?今の音!

「アツシ? アツシなの?」

音のした方を見たけどなにもいない…薄暗い林と何かがあったコンクリートの跡が見えるだけ…
こんなところにいるのは、シカかクマくらいだよね…
クマ…! だったらどうしよう!
ジッと林の方を見ていた。風かもしれないけど草が揺れて見える。
なにか…なにかあそこにいる?
クマだったら見つからないようにしないと…気味悪いけど、あそこの廃墟に隠れてよう…

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「おや?動き出した…。 あ…もう一人いる。…人じゃない?クマだ。あのままじゃクマと鉢合わせになるよ」

Dscf6874 「う~んシカの奴らすっかり見かけなくなったな…。待ち伏せしやすいところだったが、そろそろ他のところへ行かないとダメか…」

「あーっどんどん近づいていくそっちに行っちゃダメだって

「ん…?獲物の匂いがするな。まだマヌケな奴が残っているようだ。ヒヒ…」

「あのーっクマさんちょっと待ってください

「んッ?なんだお前は! どこかで見た奴だな…」

「あーっ?いつかのクマさんですね…。生まれ変わったら食べてやるとか言われてたんだ…」

「思い出したぞ!あのときのカスミ女だな!相変わらずカスミのままなのか!」

「カスミって… 私、ナギサですよ。ここで何してるんですか?」

「俺は今、忙しいんだ!獲物がいるんだ

「獲物って…この先にいるのは人間ですよ」

「だからなんだ

「なんだって言われても…」

うーん…ヤバイなぁ…。やっぱりあの人を狙ってるのか…

Nagisaruin2

                                (つづく)

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