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2009年1月25日 (日)

くるり くるり②

『ここにいてください! この家があなたを許すまで…』

Front

『うわぁっ!…』

あ… 夢を見てた。すごく怖いの。 いつから見てなかったかな。夢なんか…
たしか…幽霊になってから眠ったことなんてなかったからその前だ。
自分が自分でなくなる夢。
体がパキパキ音をたてながら恐ろしい怪物に変わっていく夢…
あれ…?なんで眠ってたんだろ…

Dscf6898 そうか…体が急にしびれて動けなくなったんだ。それで、そのまま…
まだ頭がボーっとして考えが固まらない。

ここは…さっきまでいたところじゃないな…
家の中みたいだけどボロボロに崩れてあちこちの穴から外が見えている。
どうしてこんなところに立ってるんだろ…

何があったんだろう…何があったんだっけ…?

Dscf6937

『あれ?』

手が動かない!
手だけじゃない!何かに腕を押さえられて動くことができない!

Cage

『気ィついた?』

『!』

Dscf6916 思い出した!そうだ!こいつが来たんだ!

『おっかないなぁ…そんな顔せんでや。ホンのちょっと頼みがあるだけやし…』

初めて会った時の軽い口調で話しかけてくる。
この人は、ザナドゥのふたりやケイさんとは違う。恐ろしいものをどこかに潜めているんだ。

『なに…なんですか?』

『あっちでも聞きかけとったけど、飛び方を教わりたいんや』

Dscf6900 やっぱり…ここから出ることを考えてるんだ。
マズイ!そんなこと絶対できない!

『私、飛べない!できないです!』

『空から落っこちてきたやろ?見てたで。さっきのケイとの話も全部聞いちょったし。オレもオバハンに閉じ込められて迷惑してるんやで。助けてぇなぁ』

『知ってても無理です!あなたはここから出ちゃいけないんだって…』

あ…言っちゃった!

Dscf6913 『なんでぇ?オレ、なにしたん?』

『あなたは…殺された人で…』

『だからぁ?そんなん関係ないやん!オレが閉じ込められなアカン理由なる?』

あるって…何かあったよ。
頭の中がゴチャゴチャしてる…。
…そうだ!

『人に取り憑けるって…』

『あんたは自分で飛べるんやろ?オレのできることって人にくっ付いて動くだけや。
言わば、行き先を自分で決められないタクシー乗ったみたいなものやねん。
それが、こんなんとこ来たばっかりにオバハンに目ェつけられただけなんよ。
悪いって言えば、無賃乗車みたいなもんやろうけどさ…』

Dscf6920

え…なんか話違う。
それじゃあ、わたしがカズくん(こいつもカズか…)と会ってた時とか、自転車に乗せてもらった時と同じじゃないか…これじゃ責められない…。
べつに責めるわけじゃないけど、なにか信用できないんだ。どこか…

Dscf6912 『ともかく、あの結界があったら出られないんや。だから、ええやろ?』

『ダメです!だからって、わたしをここに縛り付ける理由ないじゃないですか!』

『逃げられたら、なんぼ話したって誤解解けんし、あかんやろ?
みいんなナギサちゃんに色々吹き込んどったけど、オレのことフォローしてくれるのん、おらんしなぁ…』

話を返せない…。それどころか同情しそうだ…

『頼むよホンマ!1回でいい!家へ帰りたいんや!母ちゃんの顔見てきたいんや!』

Dscf6923 『…』

『なぁ?』

『ごめんなさい…わたしにはできないです』

信じてあげたいけど、わたしは素直になりきれない…。なぜか…どうしても…

『そっかぁ…しゃあないなぁ…』

ごめんなさい…わたし、自分で自分の考えが決められなくて…

『じゃあ、お前に憑かせてもらうわ!』

『えぇっ?』

『器(体)がない分、心まで取れるわ!ケイみたいにグッチャな頭やないやろしな!あいつも煙突から出て行くことくらいできたやろうが、閉じこもる気持ちが強くてアカンかったしなあ!』

なに!ケイさんにまでそんなことしてたの?
だから、ケイさんと争っていたんだ!
やっぱり信じちゃいけないんだ!この人!

Bad 『おとなしくせぇや。適当なとこまで行ったら自由にしちゃる…』

『ちょっと!いやだ!やめて…』

こころに─
なにか黒い影が入り込んできた。
粘土細工みたいに頭の中身が、つぶされていく感じが…

こんな!いやだ いやだ いやだ いやだ いやだ イヤダ…

『いやだ!!』

Shot

真っ白だ
もう、どうでもいい気がした。
どうせ、一度死んじゃったんだし。難しいことなんか、これ以上考えたくない…

まだ、わたしはわたしでいるの?
目を開けるとここにいるのは、わたしだけになっている。
体は自由に動けるようになっていたけれど、
もう、こころは支配されているんだろうか…

『な…なんや!何した!動けん…』

『ええっ?』

声が聞こえて見上げると、さっきここに立っていた顔が影になって焼きついていた。

Wall

『出せや!ここから出せや!』

Dscf6906 わたし?何かした?したんだろうか…
たぶん、そうなんだ。他の誰の気配もしないし…
それとも、わたしには解らないなにかが助けてくれたの…

『出せや!早よう!承知せんぞ!』

ピシッ!

家のどこからか乾いた音が走る。

『ここにいてください! この家があなたを許すまで。 わたしには決められません!どうしたらいいのか…』

─あと30年は、このまま立っていられるよ。ほとんど潰れた年寄りだが、生きのいい魂が入ったからな─

Light

これは、家の声! 助けてくれたんですね?

─何もしとらんよ。やったのは娘さんのようだったがな…。まあ話はわかった。もう行きなさい─

『すいません!お願いします』

『待てーっ!戻れ!戻って来いやぁ!』

Entotsu_2もう、何もないよね。
何も起こらないよね。

祈りながら逃げるように家を後に…。
悲痛な叫びをこれ以上聞かないように早く離れよう…

家の前の坂を下りると、さっきケイさんと話した建物が見えた。
すぐ前に大きな道も見える。

─道なりに行くとすぐ左に見えてくるよ─

ケイさんに聞いた通り、すぐに高い煙突が見えてきた。
回りに何もないところに煙突が空を支える柱みたい。

Nagisa_flight煙突の真下にドアみたいなものがあって塞がっていたけれど、隙間があるらしくて空気を吸い込んで、風が中を通り抜けていく音がした。
わずかでも隙間があれば、わたしは入っていける。

もう一度、来た道を振り返ると
空も草木も何事もなかったように静かだった。
ここに落ちてきたのは、偶然だったのだろうか。
それとも何かに導かれてきたのか…
今は考えられない。

でも、わたしがここに来てから多くのことが動いたのは間違いない…

『海へ行こう…』

しばらく樹の海しか見ていなかったから─
海が見たくなった。海に癒されたくなった…
高いところへ上がったら潮の香りを探そう…

End

『行かせて良かったのかい?あの子は…』

『私も鬼では、ないのですよ。…ご存知でしょう?』

『うん、そうだったね…』

Kinenhi_2 風は走る 海めざして
波と見たいに行きつ戻りつ…

やがて全ても回りまわって海に帰る
くるり くるり と
回りまわって新しい命に変わる

それはリサイクルではなくて
サイクルに他ならない

それが本来、自然なこと…なのかもしれないのです。

♪Youtube 『くるりくるり』 ナナムジカ

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2009年1月10日 (土)

くるり くるり①

Dscf3783

青い空と緑に包まれた大地
鳥のさえずりが聞こえて木々はそよ風に揺れている。
どこまでも飛んでいけそうな空だけど、この空には結界というのがあるらしい。
わたしのような幽霊がこの辺りから勝手に出て行けないようにしてるそうだ。
そう聞いた…

Dscf3776 「でも…ホントにあるのかな?」

風が空からまっすぐ吹き降りてくるのが分かる…
途中に風をさえぎる何かあるようには思えない。
風が抜けられるんなら…

ちょっと試してみよう─ 

Dscf3470 後ろから道沿いに風が走ってくる。
すかさずピョンと飛び乗って道を通り抜けていくと、時折何かの建物の跡が目に入った。
あそこは何だったんだろうね…
そんなことを考えているうちに両側に立ち並んでいた木立が切れて、広い場所へ出た。
風が開いて空に向かって反り返っていく。

Dscf3785 「うん…?行けそう」

他の道からも同じようにきた風が重なり合って上に向かって押し上げられ、一気に空へ…

「あっ

Doom 何かにぶつかった。
風は何事もないように空高く走っていったけど、壁に当たったみたいにはじかれて、風の背から転げ落ちた。

「あーっ…」

草の上で仰向け。ひっくりかえったまま空を見上げると、何も知らないのっそりとした雲がモコモコふくらんでる。

「やっぱり、本当か…アハハ…」

なんだかわからないけど、笑いがこみ上げてきた。
今日はいろんなことがあったから…。落ちたショックで緊張の糸が切れたみたい。

「言われたとおり、煙突を探さないとダメか…」

落ちたところは、木立も少なく、開けた場所。
煙突はどこにあるかと後ろを振り返ると

「あーっ

Dscf3792

Dscf3427 さっきまでいた『ザナドゥ』とは違うけど大きい建物がドーンと建っている。
急に目の前に現れたようで驚いた。

「わーっすごい…」

煙突は、まだ見つからないけど、この建物が気になったので様子を伺うことにしよう。
木や草が絡みついて、なんだかジャングルの中の遺跡みたいだなぁ…
本かなにかでこんな感じのを見たことがある気がした。
それにしても痛々しいね。

「あ…あれぇーっ?」

Dscf3426

入れるところを探して横から回ると、建物の真ん中がパックリと大口を開けている。
入口という風じゃない。なにか爆発して吹き飛んだ跡みたいに口を開けた穴は、獲物をジッと待っている大きな生き物のようだ…

「何かあったんだろか…」

Nagisaon

Dscf3457_2 そう思いつつ、その大きく開いた口の中に引き込まれていく。
これがホントに腹ペコの怪物だったら私は犠牲者だよなぁ…。
この青空の下、そんなことはないよねぇ…と軽い考え。
薄暗い闇の中に並ぶ柱が奥行きのある怪物の喉の雰囲気がした。

 

Dscf3441中は、こざっぱりと片付いて、とても恐ろしいものが待ち構えている感じはない。
天井がとても高くて広い。
壁際にいくつか部屋が見える以外ここは、ほとんど大きな部屋がひとつだけ。
柱が何本か、この高い天井をやっと支えているみたいだ。
ここの壁も『ザナドゥ』みたいに落書きがたくさんあって、壊されたみたいに穴が開いている。

かわいそうに…。
どうして動けないものにまでこんな残酷なことをするんだろうか?
ここに何か書けば、願い事が叶うとでもいうかのように隙間なく文字や絵が書きこまれていた。

建物が、こんな目に遭った事をどう思っているのか聞いてみようか…

Dscf3430

Keixit 「ナギサ…」

あれっ!向こうからこっちを呼んできたよ…
ん…?名前を呼んだなんで

「だれ  誰か、わたしを見ている!

見回すと壁の上にある四角い穴から光るもやのようなものが湧き出してくるのが見えた。
ユラユラとわたしの方へ漂い降りてくる。
正体を見極めようと目で追っていくと
それは、この広い部屋の中ほどに降りて、だんだん一塊になっていく…。

Keigost

これは…この人は…さっきわたしの前で消えた─
ケイさんだ

Dscf6595 思わず身構える! わたしを追ってきたんだ!
またあの、恐ろしい姿で何かするつもり?
今のうちに逃げようか?このまま…
でも、まだ煙突は見つかっていない。
見つけたとしてもそのまま行けば、ここのから出る方法を教えることになる。
どうしよう…どうしよう!

「ナギサちゃん…私…」

「いえ…あの…」 どうしよう!どうしよう!どうしよう!

「怖いんだよね…私が。仕方ないか…。
でも…今は、さっきのダメージが残ってるから平常でいられるよ。
少しの間は、話したいことも話せる…」

Dscf3450 何かたくらんでるんだろうか…
いざとなったら、どうにかできるかな…
できないよなぁ…

「聞いた?私のこと…」

「…」 だまってうなずく…

「これだけは、聞いて。
私の問題は小さなことだったかもしれないけど、
自分にとっては生きている意味みたいなものだった。
ダメになった時、それでもなんとか修復しようと思ったけど
やっぱりダメで…

私…死んじゃえば逃げられると思ったんだ。
嫌になったことを…考えなくてよくなると…どうにもならない辛いこと…。
ところが体が無くなっただけで、ずっと悩み続けてる…。
それどころか、その辛さから永遠に逃げられなくなっちゃったんだよ。
まるで地獄!そう私自身が地獄になった…滅びることもできなくて…

その挙句、悩み苦しむ化物になってしまった…
わかってたら、生きてた方がずっとマシだった…今にしてみればね…」

泣いてるの…ケイさん…

「今だから言えるの!少しでも平常な今なら。そのときだけ自分でいられるから。やっぱり思う…。死ぬんじゃなかった。死ぬんじゃなかった!でも、もう遅いの。『命の還るところ』へも行けないのは、私への罰なんだ!」

Nagisakei

何も言えない。言葉が見つからない…
ケイさんの言うことは、本当だと思う。
信じられる…というより事情も知らずに逃げようとしたわたしは情けないと思った。

「ケイさん、ケイさん。もういいよ!わたしもなにも知らなかったから…」

「ゴメンね!ごめんね!」

初めて会ったときは─
ピンと張り詰めてて、冷たい感じもしたのに
今は、とても弱々しい。
時間が経てば元に戻るらしいけど、ケイさん自身が自分を縛り付けて苦しめ続けるのだろうか…

─消したくても消せないのよ─

『ザナドゥ』で聞いたあの言葉は、そういうことだったんだ…
魂は消せない…
わたしにだってそんな力はないよ…

でも、ほんの少しでも何かにならないかと思いつくことを話した…話してた。
わたしのことを…
隣に越してきたカズ君と会ったことや
今まで旅をしてきたこと…
ケイさんが苦しんでいることをせめて一時でも忘れさせてあげられないかと…

気がまぎれたのか
ケイさんは少し元気になってきたようだ。

Dscf3448

「ナギサちゃんには、今がホントの人生かもしれないね」

初めて会ったときの無表情な人と、今のケイさんは別人のようだ。

Dscf3446 「もう行ったほうがいいよ。私も回復して、これ以上自分を抑えられなくなってくるから…。煙突はこの外の道を行くとすぐ見えてくるよ」

「知ってるんですか?出口のこと…」

「うん!私は、こんなんじゃどこへも行けないし」

「ごめんなさい。力になれなくて…」

「いいの!私の運命。仕方ないわ…
いつかは終わると信じてる。
早く会えるといいね、カズ君と。
あなただったら、普通の幽霊じゃなくなると思うよ」

「えーっ?どういうことですか?」

「ハハハ…わかんない!」

笑った。ケイさん…

「さあ!もう、行きなさい!」

Keihakka「はい!あの…これ、あげます」

ポケットから、ハッカ飴を出した。

「ふーん。ハッカかぁ…シブいの持ってるね」

ケイさんは包みをひらいて口に放り込んだ。

「じゃあ、お世話になりました」

「いや、私が迷惑かけたよ。ゴメン!」

Keihand 「いいえ…あれ…ケイさん?手が…!」

「えっ?…これって…」

ケイさんの手が光を湯気みたいに上げて溶けるみたいに散らばっていく─

「そんなどうして?…まさか飴?わたしそんなつもりじゃ!」

「待って!このままにして… わかる。私の願いが叶うんだよ」

「願い?」

「命が還るところにいけるの。これで…」

「…」 

「ナギサちゃんがここへ来たのは偶然じゃなかったんだね。私を許すために来てくれたんだね。きっと…」

Keigoodbye

「ケイさん!」 

Keiheven笑みを浮かべながら ケイさんの姿は、どんどん薄くなっていく
光の粒に変わって空へどんどん上っていく

「これでやっと救われる。また生まれ変われることができる。そのときは、ホントの友だちになりたいね」

「うん!」

「ありが…」

消えた─
最後の光の粒が天井に吸い込まれるように消えていった。
本当に願いは叶えられたんだろうか…

…そうだよ。叶ったんだ。きっと─

Shot

Nagisadown 「うぁっ!」

急に背中から強いしびれが走る─
何が何だかわからないまま、力が抜けてその場に倒れこんだ…

「ああ…」

気が遠くなっていく… 近くで覚えのある声がした。

「オレの夢も叶えてもらおうやないか!」

 

   どうなるんだろ…わたし…

(つづく)

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2009年1月 1日 (木)

2009年 新年のご挨拶

Shinen

新年 あけましておめでとうございます
常日頃、「忘れ形見紀行 ルイン・ドロップ」を御愛顧くださいます皆様方、ならびに気軽にクリックくださいました皆々様方、厚く御礼申し上げます。
重ねて本年もよろしくお願い申し上げます。

準備期間を含めると『ルイン・ドロップ』もこれで3年目に入りました。
『廃墟趣味』なんて声をあらげて名乗れるほどのものではないのかもしれませんが
こういうことを続けていて、なんとなく新参者というレッテルは剥がれてきたのかなぁ…とも思う今日このころです。

当初は、よそ様と同じく、廃墟探訪とそのときの印象を書きつづれてきましたが、ここ1年くらいに廃墟を舞台とした創作という形に移行してきました。

人と違ったことをしたいという、ひねた性格ゆえのことです。
同時に『廃墟というもの』がネガティヴであるとか、サブカルチャー的嗜好というカテゴリーにあることにも疑問がいつも頭にありました。

Sui 『廃墟』は現代遺跡である─

そんな一方的な考えの下、反対側に行ってみよう
廃墟と化したここも、家族の笑顔や働く人の明るい営みがあったに違いない!
と、根拠もさしてない考えで何か表現の仕方を模索してきました。
一方、この世界も識者は大勢いるもので、いくら調べても浅い知識力では到底かないません。

そんな模索が一昨年に連載した『水中メガネ』という創作です。
少なくとも知識量では計れないので楽かな~という逃げでもありますね。

ともかく、この感じでやってみようと…
廃墟の過去ではなく未来を書いてみようと思いました。
また『廃墟』を舞台に「夢」とか「愛」を語ってみたいと大それたことも考えます。
そう考えると『廃墟』というのは、「人から忘れられたもの」という共通点がありながらも性質が違うものがあることに気が付きます。

Pomp 忌み嫌われる場所
ロマンの舞台になる場所
地域の象徴となる建物
町の迷惑者とされる建物
いろいろ見えてきます。

なぜだろう なぜなのだろう 

地域の名士といわれた功労者の家が幽霊屋敷になって
とっくの昔に不採算との名目で廃止された鉄道橋が恋人達のロマンスの場所になる。
矛盾 多くの矛盾があります。
地域活性化の原動力と期待された施設が放漫経営故、負け組の烙印を押され、
時代を大いに支えた町が失速し、生き残りのために立ち上がったときの賞賛は、やがて時代の風で渇ききったとき落伍者の代名詞にされる…

どうしてかな どうしてなのかな 

れっきとした理由はあるんだろう。
でも、なにか忘れていないかな?
期待されて立っていたものの苦悩を…
時代を席巻した征服者が実は、一番孤独な存在であるのかもしれません。

それに明確な答えを出せるほど、博学でも識者でもありませんけど…
これからも自分サイズで、『ルイン・ドロップ』をやっていきたいと思います。
いつまで続くことやらですが。
なにか自分の納得できる答えを探しながら…
それほどに『廃墟』は奥の深いものと感じます。
でも、どこかで言ったことがあります。

『廃墟』がすべてじゃないんだよ─ 

今の「ルイン・ドロップ」の形にしてから
思うところがあって『ナギサ』という幽霊娘の話を書いています。
『廃墟』に自分を語らせるような超越した話には超越した存在が欲しい…と思い、浜の廃屋を撮っていた時に思いました。
どちらかというと、その存在として『肝心なときにできない子』にしておこうという想いがあります。すぐ泣いたり、情に流されたり、常に気持ちが揺れたり、失敗したり…
必要以上の力を発揮したりということは必要ないでしょう。今のところ…
『ルイドロ』の全てをこの子ひとりで1本に束ねさせよう…みたいなことは考えています。
途中から読んだら良くわからなくなってる気もします。
あまり、説明くさいのもなんなので…

Nagisapoppoya

小さいころ、おばあちゃんの家の近くに住んでいて、たまに遊んだ友だち。
歳はいくつか下で、同じ学校へ通ったはずなのに学校では、会ったことのない子。
後に聞いた話では、9歳で逝ったそうです。
その子が『ナギサ』といいました。
数少ない小さな印象が自分の中で『ナギサ』を生かしています。
その程度の私的でノスタルジックな出来事。 
たぶん…

叶った夢よりも 叶わなかった夢
手に入れたものよりも 手に入らなかったもの
告白した恋より できなかった恋
プッツリと切れてしまったから、なおのこと愛おしいのかもしれません。

1番であるものより2番・3番だったもの、あるいはもっと下のことを考えます。
そのほうが自分に近いからでしょう。
記憶の『忘れ形見』は、そういうもの。
『ルイン・ドロップ』もその程度のもので良いと思います。
自分の中では充分一番。自己満と言われれば、それまでか…
それにしては、思いがけない評価を得たり、好感をいただいたりしたことに感謝申し上げます次第です。むしろ頭が上がらないほどです。
昨年は、『廃墟で愛を語る』と公言してやってきましたが、いかがなものでしたでしょうか?
今年は、とくに「これ」というものは挙げませんが、夢や愛や未来を『廃墟』という間接照明で照らしてみたいと思います。

世の中捨てられるものは多いけど
実は捨てたものではありません。
廃墟もそう─

あなたにとって今年1年が最高の年になることをお祈りします。
大丈夫でしょう。生きてるんだからね。
わたしも もちろん生きています。

新年早々おかしな話でしたね。スイマセン…

2009年1月1日 

                     るいん  ねこん

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