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2008年10月 6日 (月)

やすみざか

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坂がキツくて長いので 休み休み登らないとならない
ゆえに ついた名が「休坂」

それが真意かどうかは不明だが ここに暮らす人々にこの名で呼ばれ、通り名になった…

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Dscf3296 釧路の坂には面白い名前がある。ほかにも「学問坂」とか「きんぎょ坂」など文学的でしゃれたネーミングの坂があちこちにある。
歌・詩人の石川啄木が北海道放浪期にこの地で新聞社に勤めていたことなどから文学的背景があるからそんな印象を感じるのだろうか。

この「休坂」
釧路幣舞橋の向こう側にあるロータリーから海側へ走る南大通りの脇にある。
歩行者専用道と言っても現在は舗装されているので、さほどキツさは感じないが、往年の砂利道のころ、それも行商のリヤカーなど引いていれば確かにキツそうだ。

Dscf3297 郊外に出ないと地形に起伏が出ない平野地に暮らしているから、こんな町自体が起伏に富んでいて街路がウネウネしているところが面白い。
こんなところは日本中、どこにもあるのだろうけど、広くて見通しが良くても平坦で碁盤の目のような区画の街に生きてきたから近場のこんな街にロマンを感じてしまう。

ドライブがてら何度も訪れたことはあるけれど、自分の足で釧路の路を歩いたことがあまり無かった。
一度、ゆっくり街を散策してみようと一泊の旅に出た。
「旅」の雰囲気が欲しいので宿もいかにも「旅人用」なところを選択してみよう。
書店で何度か手に取ったことのある雑誌『とほ』。

「とほネットワーク旅人宿の会」監修による全国72件。“ひとりからでも泊まれる「旅人宿」ガイド”。

登録宿の特徴は
①リラックスできる個性的な宿
②宿主が24時間常駐する安心清潔な宿
③ドミトリースタイル(男女別相部屋)なので低料金
④旅が好きで、コミュニケーション好きな個性的な宿主

パラパラとめくると主に旅のライダーが利用するみたいだ。荷物を満載したオートバイの写真が載っている。
確かに個性的な宿が多くて、経験したことのない世界が見えそうだ。

今回は釧路ということで、先の坂の名を持つ『休坂』にお世話になることにしました。
この宿、『酔いどれ宿』の肩書き。「酔いどれ?」
まぁ とにかくメールで予約を入れてみます。
翌日返信があり、宿の手配はOK。

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当日、旅路あちこちを見たり、海でビーチグラスを探したりなんかしながら、ゆっくり向う。
目的があっても近場の旅路を急ぐのは、もったいない気がするから…。

でも百十数キロを7時間かけるのは、どうかと思うよ。

脇道入れるともう少しは走っているか…

Dscf3319 「酔いどれ宿 休坂」は休坂の途中にあり、古い下宿屋さんを改造して営まれている。
『カレーや黒魔術』というカレー屋さんを併設して、隠れた穴場らしい。
そのカレーも目当てにしていたのですが…

元下宿屋の建物という話の通り、古いけど懐かしい感じがする。
階段やら廊下に所狭しと並んだ本や飾りの漁具の類。
床板が 「キィ!」 と鳴いたりしてちょっといい感じの雰囲気。
一流ホテルは、自分には不相応だし、ビジネスホテルも無機質だと思う。
学生時代に過ごした下宿もこんな感じだったから、なんだか落ち着く。
部屋は四畳半ほどに造りの二段別途がふたつ。
お風呂は近場に銭湯があるらしい。
まだ、今日の宿泊客は到着してないみたいだ。

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Dscf3376 『今夜、宿泊の皆さんと共同でシャブシャブにしようって話になっているんですよ。よかったら参加しませんか?』

うーん それも悪くないかなぁ…

「そうですね。参加します。ぜひ!」

まだ陽は高かったので釧路の街を歩くことにする。
この街も帯広と同じで大規模量販店が郊外に移り、中心街の活気が沈みがちに感じた。
車の中からは気が付かなかったけど「空テナント」や「売物件」などの貼り紙が多い。

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「住んでみたい都市意識調査」なるものがあって、№1が「札幌」だそうです。
狸小路もひところより休みの日の人出は減ったようです。
郊外型は、どこでも同じということでしょうか…。

Dscf3282 夜、銭湯へ行ってから「シャブシャブタイム」でその日の宿泊者と席を共にしました。
ほとんどが道外からのライダー。
今朝、東京を出てフェリーで苫小牧着、そのまま釧路まで…。
なんだかすごい強行日程だなぁ…

連泊組もいて のんびり近場を巡ったり、漫画読んでいたりするそうです。
ちょーっと『廃墟』の話なんかもしておよそ興味なさそうな話でも食いついてきてくれるんですよね。
一度知り合ったらもう親友みたいで、しばらく忘れていた感じ。

Dscf3312 思ったのは やっぱり北海道の魅力に詳しいのは彼らだってことだなぁ…
自分が知らないことをずいぶん知ってる。
「旅人」だからありのままの北海道を見ることができるんだろうね。住んで当たり前になった景色にも感動できるって言うか…

こんな宿のマスターだからイカツイ風貌からは想像もつかないほど心が柔軟です。
懐の深さを感じるって言うか…

北海道観光もどんどんメジャーになってきて、諸外国からのツアーもたくさん来て、豪華な日本・北海道のもてなしをしてるけど、しょせん一時の贅沢旅行で終わって、その先のリピーターができないとどうなるのかなぁ…
実情は現場の人じゃないので想像できないですが。

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地球儀をクルクル回してやっと見つかるような小さな島国

その突端の北の大地

そこの点にもならないようなところに自分が住んでいる

そして 回りの多くが行ったことのない街で

通ったことのない路

だから とりあえず今のところは

自分には余りある小さな器を見ていよう

…と思う。

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Dscf3292「休坂」の時間は明け方近くまで続いた。

翌朝の予定が3時間ほど遅れたけれど
チェックアウトのルーズな宿の朝 

早出のライダーと挨拶を交わして出発。

心の疲れが一番重たい。

体の疲れは一時のものだよ。 

心の重荷が軽くなれば まだがんばれそうだし

Dscf3290 そのほうが 充実すると思う。

その疲れを

ふるい落とすのも 掻き落とすのも 燻り落とすのも

その人の自由… いちおーね。

旅は面白い。 それは今からでも遅くないし

遠くでなくてもいい

心を晒して 干せるところならば

だから 「休坂」の真意は「体を止めて心を休める坂」なのだと思うよ。

『体』という字が一本荷を降ろせば『休』となるように…

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コメント

こんにちは。
読んでいて旅に出たくなりましたよー♪
流石に北海道は予算とか時間とか色々難しそうですが…
でも本格的でなくてもいいからぶらりと行きたいですね。
もちろん自分のメイン移動手段である自転車で(笑)

投稿: おおもり | 2008年10月 7日 (火) 11時28分

旅は、なにも大げさじゃなくていいんですよ。
一泊2日でも行った先をいつもと違う見方ができればね。

「旅行」は、行き先を見て歩き
「旅は」は、自分を見つめなおす

そういうものだと思います。

投稿: ねこん | 2008年10月 7日 (火) 14時17分

小旅を感じる素敵な内容です。

いつもは物件が主役で自分は脇役になるの見せ方ですが、物件・旅・自分がバランスよく主役になる見せ方もいいですね。

私も無機質なビジネスホテルより、美人熟女女将がいる旅館を利用したいのですが、シャイな性格のためいつも味気ないビジネスホテルです。

確かにどこかで見たことあるような階段ですな。

投稿: カナブン | 2008年10月 7日 (火) 17時14分

美人熟女女将ってずいぶん肩書きが多いですね。
ぜひともメル友になって大義名分で宿泊していただきたいものです。
Bホテルも気を使わなくていいから楽って言えば楽だけど味気ないんですよ。
『休坂』への気遣いは『薩摩白波』がベストです。

投稿: ねこん | 2008年10月 7日 (火) 21時27分

いつもは廃墟系だったけど、今回は珍しく(?)小旅行でしたね。
それでもおもしろかったよ。
今年の8月釧路へ行き、花時計を撮ったりしてたけど、こんなこともあったの知らなかったでした。
心温まる記事でした。
床がキィと鳴るというのを読んで、稚内の「縁」、阿寒の「ぎんれい」を思い出しました。
誰かが階段を登ると部屋が揺れるんです。
それがまたいい感じです。
次回作にも期待大です。

投稿: 拓道館 | 2008年10月 8日 (水) 21時40分

拓さま おばんでした

捨てたもの 捨てられたもの以上に

捨てられないものもあるし

世の中

まだまだ捨てたもんじゃないんですよ。

そういうものは 決して表に出てこないだけ。

そう思います。

『拓道館』もそれは見抜いていますね。

投稿: ねこん | 2008年10月 8日 (水) 21時47分

おおおお!釧路www いつ来たの??

言ってくれれば末広接待したのにwwww

投稿: nori王 | 2008年10月10日 (金) 15時41分

急に決めちゃったもんですから。
一泊だから余裕あるので編集部へ突撃しようかと思いましたが、
いつものダラダラ旅で時間を使いまくってしまいました。
朝なんか寝過ごして予定狂っちゃったし。。。

投稿: ねこん | 2008年10月11日 (土) 10時25分

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