コンピューターシティー②
山の中で出会ったコンピューターは、聞きもしないことまでずいぶん話すんだ。
こんな山奥で、よほど一人ぼっちだったのか、お風呂の水があふれ出すみたいにずーっと、ゆっくりと話し続けている─
「だから、街ができるのも僕らの完璧な計算があるからこそ創ることができるのさ。人間が自分で計算していたころは無駄やミスが多くて時間もかかるものだけど、それが解消されて、かつ高度な計算によって強く隙の無い生活空間を築くのが可能になったんだよ」
「ふぅーん…でも、山とか海は関係ないよね…」
「そんなことは無いよ。港湾工事だって、海路の計算だってお任せだよ。山の計画的伐採や植林の計画も…高速道路の的確なルートや橋梁だって…」
「えーっと…そうじゃなくて…自然のものは自然のままで出来上がっているんだなっていうか…」
「当たり前だろ!もともとあったんだから。しかし、この世にあるものは全て計算で説明がつくんだよ。」
「計算? うーん…掛け算までしか分からないなぁ…でさ!『この世のもの』っていうけど『あの世のもの』は、どうなんだろ?」
「『あの世』?そんなものは無いよ。非科学的で計算に値しない。」
ずいぶん強情なこと言うなぁ…でも、壊れてるのに良くしゃべるコンピューターだ。
「私って『この世のもの』じゃないってことになるんだけど。それはどうなの?」
「それはどういう意味だろうか?」
「私、『生きていない』身だからさー」
「ありえないね。生命活動を停止した肉体は、それでおしまいだ」
「いや!体は無くなったけど魂は残ってるんだよ」
「思考は脳の中の微弱電流のようなものが回路を巡る信号だ。僕のようにね。思考だけが分離して存在し続けるはずは無い。エネルギー供給さえ行われないのに。それは極めて非現実的だ」
あれーっ全然話が合わないなぁ…。でも私は、こうしてここにいるんじゃないか。分かってもらおうにも見た目も頭も固そうだしなぁ…
「僕は質問に答えてるんだ。入力された質問に対して応える。話してなどいない」
「でもさーっ 私、触ってないよ。それに電気きてないのに話しているのは、おかしいじゃない? 私といっしょだよ!」
「……」
「思わない? それにあっちでも同じようなのを見たけど、あなた捨てられてるみたいだよ。この山に」
「…いや故障だ。プログラム不足なんだ…。そんなことはありえない…僕が君の言葉で悩むはずは無い!」
「…あれっ?どしたの? 怒った?」
コンピューターは、ずっと黙ってしまった。
頭をコンコン叩いてみても何も反応しない。
私が存在しないみたいなことを言われたもんだから、ちょっとムキになっちゃったな…
でもさぁ…
「もう!何も言わなくていいよ。お願いだからあなたがいたところを教えて!」
何も言わない…。
そのかわり─
コンピューターは、1本の光の筋を空に向かってすごいスピードで伸ばした。
「この先が、あなたのいたところなんだね?」
風に乗って光の筋をたどっていくと この光にもひっぱり上げられる力を感じる。
その力に身を任せていくと やがてその中へ引き込まれていった。
「うわーっ!速い!」
信じられないスピードでドンドン進む。
たくさんの光が、目にも留まらないくらい飛び交っていく…
「さすが光通信だ!」(なんでそんなこと知ってるんだろ?)
「さすが今時のは、処理速度が速いなぁ。なんで今までガマンしてたんだろ?」
先のほうで声が聞こえた。
あの声がコンピューターさんの持ち主だろうか。光は声のしたほうへまっすぐ流れて、小さい四角い窓の前に出た。
「ん?なんだこの絵、重いんか?… うわっ!」
光に無理やり押し出されたみたいに四角い窓から薄暗い部屋の中に飛び出した。
部屋には、真新しいコンピューターを前にあわてた様子の男の人がいた。
この人か…あのコンピューターを捨ててきたのは…
どうやら私のことは見えないようだけど…でも、それじゃ話ができないな…
「なんともないか…すっげー光ったな。頼むぜ!ローン始まったばっかりなのに…え…なに?あれ…」
「こんにちはー」
「ギャーッ!」
えっ?なに? 倒れちゃった!
まだ用事あるのにーっ!
困ったなぁ…ちゃんと話しておきたいけどこれじゃ……
とりあえず 手紙でも書いておこうか…えーと、何か紙…カミ…
「…で、不法投棄したのを回収するってんだ。データ抜き忘れて心配になったんだろ?」
「違うって!あそこに幽霊がいて、俺が置いてったのを見てたんだよ。それで部屋に現れて…」
「なんだよバッカバカしい!んなわけねーだろよ!」
「どれ!」
「あのなぁ… まぁいいや!付き合ってやるよ。よりによってそんなとこ捨てて、2回往復したらリサイクル料のほうが安いだろ。ったく…昼飯くらいおごれや…」
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コメント
おひさしぶら。 m(-v-)m
??? 「ぶきみちゃん」 ←シゲチャンランド_ゲストブック記。
___ とは ナン でしょうか?
ドのやうな 形状であり。
何に 用いるものなのかを ....
ご教示 願イます。 (_ _)
今年は、、、 一度も シゲチャンランドに 行けない...
だろう... と 思う。
こんなことは、開館年以来 はじめてです。
まもなく 冬。ですが...
ねこんさんの御家族 みなさまの御健康を 願っております。
∋(◎v◎)
投稿: ∋(◎?◎) | 2008年10月23日 (木) 10時30分
シゲチャンも心配していますよ。
インフォメでご存知の通り、ランドの新ブックが来春発行になりそうです。ラフ校は見せていただきましたが、ボリューム満点の本になりそうです。
「ブキミちゃん」のことですか?
ココさんが発作的に作り上げたぬいぐるみです。
どうにもこうにも気になったというか、気に入ってウチに連れ帰ることになりました。
気になるでしょうから このブログで今夜にでも急遽アップしますよ。(◎´∀`)ノ
連絡先教えてください。プロフィールからメールフォームに入れますので。
投稿: ねこん | 2008年10月23日 (木) 15時46分
>「ブキミちゃん」のことですか?
>ココさんが発作的に作り上げたぬいぐるみです。
>どうにもこうにも気になったというか、気に入ってウチに
>連れ帰ることになりました。
>気になるでしょうから このブログで今夜にでも急遽アップ
>しますよ。
さうですか。 ココさんが発作的に !!
ぅふふふふふ_ へぇぇ~ ぅふふ
それはそれは、良いものを御入手されたようですねぇ。
画像_ アップ 楽しみにしています。 ∋(◎v◎)
投稿: ∋(◎v◎) | 2008年10月23日 (木) 19時42分