コンピューターシティー①
「それーっ」
風の背に乗って、牧草畑の牛たちみたいにのんびり流れる雲を追いかけてた。
わざと雲に突っ込んで向こう側で風を乗り換える。
もう そのくらい風の動きを読めるようになったんだよ─
下は 緑の海。
風に揺られてホントに波が立っているように見える。
行き先は… うーんと…何も考えてないや… 進歩ないなぁ
でも、ここ数日の雨でずーっと「家」の中にいたからね。
青空の下にいるのは気分がいい。
私は「幽霊」だから雨に濡れるわけじゃないけど空が雲だらけだったり、暗い夜は回りがよく見えないからあまり好きじゃない。
夜の街の明かりはキレイだと思うけど。
これって「幽霊」らしくないかなぁ
「幽霊」って暗いときだけ出てきて驚かせたり怖がらせたりするものだと思っていたけど
自分がそうなった私は人に見られるのも怖いし 夜は屋根のあるところにいたい。
ほかの人はどうなんだろ?
私だけが変なんだろうか。
緑の海の中 空き地のようなところで 何かキラッと光って見えた。
下へ向かう風に乗り換えて 回りからしばらく様子を伺う。
何かたくさんおいてあるみたい…
「なんだろ?」
人がいる様子は無いので 降りてみよう。
なんだかいろんなものが散らばっている。
コンクリートの床みたいなところがあるから家はあったようだ。
でも この散らばり方は、爆発でもあったみたいで嫌な雰囲気がした。
空から輝いて見えたものを見つけた。
理科室にあった実験に使うガラスのフラスコだね。
教室に入ったことはあるけどまだ実験をする学年じゃなかったし、火薬みたいな臭いとかガラス瓶の標本が怖くて、目に入らないように大きな机の上をジッと見ていた。
何かで丸く焦げた跡や 誰かに宛てた刻み込まれた文字…
ジッと見てて先生の声が聞こえなかったこともあったよ。ずいぶん前のこと…
明るいところで見るフラスコはキレイだ。
他の名前も知らないビンたちも雨水が中に入るのは嫌いなのか机の下でひしめきあっている。
「ここって、なにかの研究所だったのかなぁ?」 そんな気がした。
不思議な絵を見つけた。
茶色の板に文字とか丸とか線がいくつも書いてあり、乗り物か家みたいなものが貼り付けてある。
道なのかな?それとも川?もしかするとどこかの地図かもしれないね。
「ゲイジュツ」とかは私わからないし…回りに転がってるものたちは、とても黙り込んでいて話相手になってくれそうもないから、いたたまれなくてそこを離れた。
道をしばらく歩く。
こんな山奥なのに街と一緒でカチカチの道。
山は、なぜだか何かにおびえてるみたいに静まり返ってた。
クマなんか出ないよね?
そう思ったら回りが気になる…
木立の奥に何かいるような気がしてきた。
いや…何かいるよ 何かが!
木の間から白っぽいものが少し見えた。
しばらく様子を見ていたけど動く様子はない。
怖い気持ちと反対に興味が先立ってそっと近づく…
「あっ!なんだ。テレビだ!」
そこにあったのは、真っ白いテレビ。
こんなさびしいところにポツンと置いてある。
近くにはバラバラになった機械もあった。
どうしてこんなところにテレビが置いてあるんだろ?
「失礼だな!あんな下賎なものと一緒にしないでくれ?!」
「ごめんなさい…あの テレビに似てるもんだから…」
テレビにしては、かなりツンとしてると思った。
「君には、小難しいだろうけど僕はコンピューターだ。見間違えは勘弁してくれよ。」
「何をするもの?」
うーっ なんだかバカにされてるみたいだ…
「14!」 ということにしといた…
「中学生ならパソコンは常識だろ? 化石級に古い頭の持ち主らしい」
蹴っ飛ばしてやろうかな… でも正直、見たことあるけど触ったことなんかない。
「いや!知ってるよ!知ってます!パソンコくらい!」
「パソコン! パーソナルコンピューターだよ」
とほほ…自爆した
「まぁ 落ち込むことは無い。そんな知能の低い君たちをサポートするために僕らがいるようなものだ。でも基本的な接し方は、勉強しておかないといけないよ。今の時代、僕らと組まないと生き残っていけないんだからね。」
「?…それは、どういう意味だい?」
「だって…幽霊だもん!」
「そんなプログラムは僕にはないよ。どこの国の出身だろうか?」
えっ変なこと言うなぁ…プログラムったって運動会の話なんかしてないのに…
えらそうな口ぶりだけど、壊れてるんじゃないんだろうか。このコンピューター…
(つづく)
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コメント
"コンピューターシティー”という言葉が実に古くさく、なぜか深い記憶につきささります。
壊れてないチャップマンフラスコがもったいないですね、
ここは元々何だったのかわかったような気がします。
投稿: カナブン | 2008年10月12日 (日) 22時21分
そんなに詳しいあなたは科学者?
ん~っ古臭くないはずなんだけどな…
投稿: ねこん | 2008年10月13日 (月) 20時40分