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2008年7月14日 (月)

0の丘∞の空④ 緑の石

Dscf0661_2 おしゃべりなセキタン(石炭)に聞いた道をさかのぼっている。
この道を行ったら大きな家がふたつ並んでいて、そのどちらかに探してる人がいると言うのだけれど…道はどんどん寂しくなってきたよ。
こんなところを歩いていたら、お化け…いや、何か出てきそうだな…。

私の知らない昔、ここは人がたくさんいた街で家やお店もたくさん並んでいたそうだけど、今はそんなこと全然分からないほど寂しさが落ち葉みたいに積もってしまったようだ。

ガサガサッ…!

「ひっ?!」 な…なに?

Kuma ヤブの中から出てきたのは大きいクマ!
ぬいぐるみのクマとは違って見るからに怖そうな顔をしている

─途中にずるがしこいクマもいるかもしれないから気をつけてね─

そうだ…聞いてたんだ! イヤだ!食べられる…!shock

「ん…?なんだカスミか…腹の足しにもならんな!カスミがこんなところで何してるんだ?」

「私…ナギサです。『カスミ』じゃない…」weep

「んぁ?俺のひと吹きで吹っ飛ぶんだから『カスミ』だろうが!さては丘の上の家に行くんだな?」

「知ってるんですか?まさかクマさん…その人を…」coldsweats02

「ハハハ…アイツはもう、煮ても焼いても食えんよ!お前、アイツのところに魔法でも習いに行くんだろ?うまくいったら俺様が美味しく食べてやるから来な!ガハハ…」

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クマは身をひるがえしてヤブの奥へ去っていった。
あーっビックリした。『食べてやる』なんてごめんだよ!sad
でも帰りに会ったらヤだな…
なんで歩いてきちゃったんだろう…
ハチミツばっかり食べてるんじゃないんだろうな…クマって

Dscf7269 道を登りきると広い草原に出てきた。でも草原と遠くにある山と木しか見えない。
「あれ…まちがったのかなぁ」
クマに驚いて違う道に入ったのかもしれないね…。
振り返って道を戻ろうとすると…

「あーっ!あった!あれだーっ!」happy01

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大きな横長の建物がふたつ丘の上に並んでいる…でもボロボロになってとてもかわいそうな姿。回りを草原に囲まれて、ここに前からいたというよりも、どこからかここに運ばれたみたいにポツンと立っている。
ホントはこの回りにも他の家もたくさん並んでいたんだろうか。
なんとなく想像できない…

とにかく、あそこに私の探している人がいる!

Dscf7361 遠くから見た以上に壁はボロボロ。なにかのお菓子みたいにも見える。
もう片方は、まだきれいな壁をしているけど同じところにたっているのにずいぶん違うんだなぁ…

左の壁がきれいな方へ行ってみる。入口が見えないので窓から失礼。あれ?床がない。あちこちから草のつるが家の中を覗き込んでいる。

Dscf7258「こんにちはーっ」 返事は返ってこない。この雰囲気だと、やっぱりいないのかもしれないな…。

─お前、アイツのところに魔法でも習いに行くんだろ?─

クマさんはそう言ってた。どこかには、いるんだろうか。広い家だし、ふたつあるから、もうしばらく探してみよう。

行く先で、いろんなお家の話を聞いてきたけれど向こうから話しかけられることはあっても私から話しかけて応えてくれる家ってあまりない。家も無口なところもあるんだろうか?

あちこち見て歩く。家は人が暮らしていた名残を少しづつ見せている。ここに暮らしていた人たちはどこへ行ってしまったんだろう。
ここには人がたくさんいて、街があった。
あのセキタンを必要とする人たちのため、ここに住んだたくさんの人達が地面の下のずっと深いところで仕事をしていたそうだ。

Dscf7374 落書きやシールの跡がある。私みたいな子どももいたんだね。
近くには学校もあったかもしれない。
あの『渡れない橋』が渡れた頃に“セキタン”をたくさん積んだ汽車が行き来してとてもにぎやかだったんだろう。

Dscf7262 この世の中は私の知らないことのほうがたくさんあって、それを見て回りたくて出てきたけれど、人の目が怖いから自然と寂しいところをたどる旅みたいになっている。
ここまで来て「生き返る方法」の話を聞いてあわてて飛びついた。
だけど私はそうして何をしようっていうのだろうか?

無くした時間を取り戻す?
─取り戻せる?この家みたいにただ取り残されていくだけじゃないだろうか?
うーん…私、学校ちゃんと行けなかったから、あまり頭良くないみたいだし、わかんないなぁ…でもカズ君と会える日の不安はなくなりそうだから、それだけでも気持が軽くなれそうだよ。

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始めの建物はくまなく回ったけど、ここには誰もいないみたい。
隣へ行ってみよう。

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Dscf7408 壁のブロックがカスカスになって、あちこちに穴も空いている。
ずいぶん長い間、雨や風に耐えてきたんだろうなぁ…ここにいた人はここのことは忘れちゃったんだろうか?ここでの思い出のことなんか…
2階へ向かう階段の途中に子どもの絵が見えた。女の子が描いたようだ。私も部屋の壁に描いて怒られたことがあったよ。ずっと小さい頃で何を描いたかも覚えてないけど…

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Dscf7402 「うわぁっ!」

壁の絵に気を取られて階段を上りきったところで足元に骨が転がっているのを見て驚いた。

「何?なにがあったの?」

壁沿いに避けるように回り込みながらその骨を見ていたらどうやら人の骨ではないようだったけど他にも骨がいくつか散らばっていた。
これは、さっきのクマの仕業かな…たぶん

「骨が気味悪いのかい?」

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Dscf7265 声にハッとして辺りを見まわした。いる!あの人が!
でも見えるところには誰もいない。確かに声がしたけど。
突き当たりの部屋の影に隠れているのかな?そっと近づいていく。
部屋の入口あたりに緑色の大きな石が落ちていて(こんな大きな石を誰かが投げ込んだ?)その向こう側の部屋に誰もいなかった。
ガラスどころか枠も無い窓や壁の穴から風がゆるやかに吹き込んでくる。

「どこにいるんだろう?」 でも確かに声はしたよね。気のせいだった?

「こっちだよ」

Dscf7302 今度は後ろから声がした。部屋に入るときは回りにいなかったのに…
あれ?向こうから私は見えているの?

「どこにいるんですか?!」

「さっきからここだよ!」

すぐ近くで声が聞こえる。ホントにすぐ近くで─

苔むした入口には、これもまた苔がびっしり付いた緑色の大きな石があるだけで、脇の部屋にも誰もいなかったはずなのに…

…石?

「やっと気づいたようだね」

話しかけてきていたのは、なんとその石だったんだ…

(つづく)

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