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2008年5月17日 (土)

名前のない馬 ①

Nagisa_right

わたしはナギサ
当てもなく風に乗って旅する幽霊。

すれ違う風に潮の香りがしてきた。
ほんの少ししか離れていなかったのに懐かしさを感じる。
海のそばにいると考えることもなかったけれど、この香りは私にとってたいせつなものだ…。

同じ香りでも場所によって少し変化するみたいだ。
渡り鳥が旅をできるのも、こんなことを感じ取っているからできるのかもしれないね。

Sky

「あれっ?」 今…大きな動物とすれ違ったような気がした。

あれは…たぶん馬…?
そうだ!うま!馬が飛んでたよ!!…でも…私も飛んでるから別に普通か…。
どこへ行ったんだろう。私と一緒で旅してるのかな…?

潮の香りに誘われて海まで出た。

Sea1

「やっぱり海だよねー。うん!うみ!海!」

いつかこの海の果てまで行ってみたい。『風乗り』を教わったとき、ずっと上の気流に乗ればずっと遠くまで行けると聞いたけど、どこまで行くのかわからないらしいから怖くてできない。
低いところだと、風の勢いを捕まえてひんぱんに乗り換えないとならないから、いつもあやふやになって落っこちそうになるんだ。

わたしはやっぱり向いていないんだなぁ…でもいいや!今でも充分だ!
海に会ったら力が湧いてきた。

「また来るね!」 海から来る風を見つけて飛び乗り、山の方へ向かう。

「あれは…なんだろ?」

山のてっぺんあたりに変わった形の不思議な建物がある。
急いでいるわけじゃないし…降りてみよう…。

私の姿は、大抵の人からは見えない。
でも、たまに見える人がいるようで、すごく変な目で見られる。
それが耐えられなくてなるべく隠れるようにしている。

Nagisa_fall

人がいないかどうか確認しながらゆっくり舞い降りた。
どうやら人は、いないらしい。

「へーっ すごく変わったお家だね。」

「変わってて悪かったわね!」

「わっ…すいません!口がすべって…悪気じゃないんです…」
うっかり口に出したので、このお家の気に障ったようだ。

「…蠅みたいにまとわりついてきたから何かと思ったわよ」

「ごめんなさい!すいません!」

「まぁ、そのへんの悪ガキと同じじゃなさそうね。いいわ!許してあげる。」

「ありがとうございます。あの…すごく…その…ステキですね!」

「無理しなくていいの! どうせ放り出された身だからさ…」

なんだか色々あったみたいだ。気をつけて話さないとまた怒らせてしまうかも…

Pan018

「あのーっ 聞いていいですかぁ?」

「アタシが何かってことでしょ? 馬の葬儀場よ!」

「えっ?馬の?」 さっき空ですれ違った馬のことを思い出した。

「あんた!飛んできたんだったらこの辺は、馬がたくさんいるのは、見てきたでしょ?」

Dscf8137 「あ…はい…」 ホントは海に気を取られて見てなかった…

「この辺の馬は、うまくいくと大スターで、人間が一生かかってもできないほどの大金を稼ぐのヨォ。子どものあんたにゃ分からないだろうけどさ」

「それって『競馬』っていうのですか?」

「おや!分かるの? 見かけによらず、ませた女の子ねぇ…ともかく、そういう『お馬様』だから人間並みの扱いなわけでアタシが作られたってワケ!」

ちょっと思った。このお家…男か女か分からないよ。
しげしげと見上げて、そう思ってた。

「アタシの体がそんなに気になるの?」

「いえっ!そんなわけじゃ…」

Dscf8143 「アタシをその辺のモルタルや見せかけの建材と一緒にしないでよ!めっきり錆に強いガリウム鋼板製だからね。」

「あのぅ…『コウバン』ってなんですか?」

「知らないの?要するに鉄板よ!だからって、その辺の缶詰野郎と一緒にしないでよ!」

Dscf8132_3 あーっ何だかここにいるの辛くなってきた…

「あのー ありがとうございました。私これで…」

言いながら横目で風を探した。でも、こういうときに限って風が来ない…

「なにも急がなくてもいいじゃないさ。久々に話の分かりやすそうな娘が来たんだから、ゆっくりしてきなさい!いっつも騒ぐことしか能のないガキに比べりゃ可愛いものだわ」

うっ…困ったなぁ… どうしよう…

(つづく)

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コメント

あれっ、これ椿の看板物件じゃない。いつのまに。
こっちは牛だらけだから、たまには馬刺しもいいね。


投稿: カナブン | 2008年5月18日 (日) 01時08分

なぎさちゃんとねこんさんが出会う日も近いのでは?・・・その前にカナブン師匠かもしれませんね。

投稿: アツシ | 2008年5月18日 (日) 02時40分

カナブン師匠様:ねこんも行動範囲広げていますからね。牛関係ばっかりなもんですから。

アツシ様:それも面白いですね。誰かとはニアミスさせようとは思ってます。
アツシ様と会わせましょうか。

投稿: ねこん | 2008年5月18日 (日) 07時28分

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