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2008年5月 5日 (月)

Brand New Wave Upper Ground ①

─暗い部屋で思い出に浸ってると いつかホントの幽霊になっちゃうよ─

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暗い部屋の中でひとり考えてた

隣のカズ君が引っ越して、ずいぶん経っちゃったね。
たまに夜の海へ行くけど、カズ君と自転車で走った月夜が懐かしい…。
考えてると悲しくなるから、そんなとき口にハッカ飴を放り込むと心の中のモヤモヤが霧になって飛んでいくみたいでスッキリできる。
それは私にとって、心を洗う呪文かもしれない…

できるなら どこか遠くへいってみたい。

カズ君 新しい暮らしに慣れた? わたしもあれからいろいろあったよ…

バチバチバチバチ…
大粒の雨が窓を破ろうとガラスに当たってくる
カクッ…カクッ…  なに?あの音? 天井裏で変な音がする

次の瞬間! バリバリバリ…!
怖い!イヤだ!どうしたの?
部屋の真ん中に大きな何かがバサッと落ちてきた
ただ怖くて部屋の隅で小さくなっていたわたし。

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朝が来て、鳥のさえずりに気が付いて外を覗くと昨夜の嵐が嘘みたいに治まってきれいな青空が広がってた。
道に錆付いた鉄板が散らばっている。
あれ? いつもより部屋の中が違うような気がした…
振り向いてビックリ! 天井の板が1か所抜け落ちて、その上に大きな穴が空いている。
そこから光が差し込んで床に光の束を作っていた…

Dscf4705 「えぇっ?! そんな!」

もし、あの光に入っちゃったら、闇の中で生きている私は、あっという間に蒸発して消えてしまうだろう。
しばらくその怪物とにらみ合っていて、もっと大変なことに気が付いた。

「動いてる!こっちに…」 

怪物はゆっくりと私のほうに近づいてくる。

「誰か助けて…!」

あまりのことに動転して外に助けを求めようとして窓にへばり付いた。
外には麦わら帽子をかぶった小さな子が陽射しの下、お母さんと楽しそうに歩いてる。

Dscf1052 そうなんだ。光が怖いのは、私だけ。
それに私の声も姿も人には、わからないんだ。

わたし…幽霊だから…

こうなったとき、パパとママからも見えなくなったらしくて、すごく悲しかった。
だけど、カズ君だけが私を普通の女の子のように見てくれた…。

「カズ君助けて!」 といっても、それは…。

カズ君が来てくれる日までは、消えたくない!助けて神様!
震えながら祈るけど怪物はどんどん近づいてくる。

もう、逃げられない… カズ君ゴメン!待てなかったよ…
ホントのことも言えなかったね…

ギュッと目を閉じて覚悟した。

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あれ? あきらめて光に包まれるままにされていたけど、何ともない。
光が指先でにじんできれいだった。

「あったかい…」 
こんな感じはいつ以来だろう?
少なくとも生きてた時からずっとなかったと思う。

見上げたら屋根の穴の向こうに青空が見えてた

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周りを伺いながら家の外へ出てみる。
ドロボウなら暗がりでする事を私は昼間からしている。
外では、私にハッカ飴をくれた大家のおばさんが一生懸命に嵐の散らかしたものを片付けている。
急に立ち上がって、こっちを見たのでドキッとした。けど、やっぱり私が見えないみたい。

Dscf7068 さっきまでこの世の終わり(?)みたいに思っていたのにすごく気分がいい。
また、太陽の下に出られるなんて嘘みたいだよ。
おや?やっぱり私には影ができないんだな…でもそんなのどうでもいいや!
真っ青な海を見ながら歩いていると…さっきの麦わら帽子の子だ。お母さんに手を引かれてこっちにくる。
かわいいねー…あれ? こっちを見てる? 見てる!…変な目でずっと私を追っている。この子には見えてるんだ。
黙って私を見る目に耐えられなくなって、慌てて防波堤の向こうに飛び降りた。

なぜ? 私が見えるの?
カズ君も私が見えてた。普通に触れてた。
あの時は、話ができたことで舞い上がっていたから何も思わなかったけど…
カズ君もこんな私が幽霊なんて知らなかっただろう。

とにかく、家に戻ろうと防波堤の上を覗くと中学生らしい女の子がふたりこっちに来た。
なんとなく見覚えが…たしか学校で同じクラスだった子だ! へーっ大人になったんだなぁ…いいなぁ…

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「知ってるー? この辺、幽霊出るんだってさ!」

「えーっ ホントー? そんな話きいたことないよー」

え…? まさか…私のこと?

「ホントだってさ!先週の夜に防波堤に座って海を見てる男の幽霊を見たって聞いたよ」

「イヤだー! そんなん聞いたら通れないじゃん!」

えーっ? 男? じゃぁ私じゃないよ。ここんとこ外に出なかったし…
でも、なんか気になることを聞いたな…
私のほかにこのあたりに幽霊がいるんだろうか?

…なんか気になる 会ってみたいな

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夜も更けて、車の通る音も聞えなくなった。
気がつくと屋根の穴から音楽がかすかに聞えてくる。
そっと外へ出て音のするほうを探してみた。
ある家の2階の窓が開いていて、そこからラジオの音が漏れているみたいだった。
せっかく外へ出たので、海の方へ行ってみた…

「先週の夜に防波堤に座って海を見てる男の幽霊を見たって聞いたよ─」

そうだ!そんな話を聞いたっけ…今夜はいるのかな?
防波堤に寄りかかって下を見ると…いた!誰かいる!普通の人(生きてる)にも見えるけど、どこか違う…

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勇気を出してそっと近づいていった。
声をかけようかと迷っているうちに向こうが振り向いてドキッとした。

Img_0224 「やあ!こんばんは」

「あの…私…見えるんですか?」

「もちろん見えるよ。君も見えるからここに来たんだろ?」

私より年上で日焼けしてるみたいに黒っぽい人だ。

「わたし、ナギサっていいます 聞いたんです。ここに男の人が出るって…」

「そっか…ここにも見えちゃう人がいるんだなぁ。うっかりしたね。僕の名はサトシだよ」

「ナギサ君はどこから来たの?」

Img_0230 「えっ?ずっとここですけど…近くに家があるので。どこから来たんですか?」

「ずっと南の方だよ。いろんな海が見たくて旅してるんだ」

たしかにこの辺の人の雰囲気じゃないと思った。

「旅ってどうやってしてるんですか?」

「風にのるんだよ。僕は生きてたときからサーフィンしてたからお手の物だよ。風の波を乗り継いで色んなところに行くんだよ。板がいらないからもっと自由かな? この間の嵐の夜以来、風が静まったから南に戻る風が出るまでこうして待ってるんだ。」

「風に乗れるんですか?私にはマネできないです」

Dscf7574 「コツを覚えたら簡単だよ。ずっと上の方のジェット気流に乗ればよその国に行くのもアッという間さ。それじゃ味気ないから下の風を乗り継いでいくんだ。風の先に乗って、次の勢いのある風に順番に乗り継いでいくと飛ぶみたいに自由に行けるよ」

「私にもできますか? それ…」

「もちろんさ 教えてあげようか?」

「はい!ぜひ教えてください!」 風に乗る自分を思うとなんだかときめいた。

「少し離れたところに人のあまりこない浜があるから明るくなったらそこででも…」

「明るいところってなんでもないんですか?私、光の下はずっとダメだと思っていたから…」

「テレビかなんかの見過ぎだよ。吸血鬼じゃあるまいし…」

「ずっと…5年くらい家の中にいたんです…」

「ハハハ… へーっ それじゃーホントの幽霊になっちゃうよ!」

そう言われて、なんだかすごく恥ずかしかった…
『風に乗る』 ってどんな感じだろう…

(つづく)

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