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2008年4月22日 (火)

ハッカ飴 ①

ハッカ飴は夏のかけら 汗ばむボクらも溶けてゆく
王様と王女さまみたいな ボクらの恋は実るかな…

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ハッカ飴を見かけると手を伸ばさずにいられない。
その水晶みたいなかけらの中に思い出が閉じ込めてあるようで、つい光に透かしてみる…そんな癖がある。

Uni1「あっらぁ~カズちゃん! 見違えちゃってぇ~ すっかり大人になったねぇ!」

「もう20歳ですよ 10年ぶりくらいです」

「ご両親はどうしてる? お元気なの?」

「はい!やっと仙台のほうで住み家が落ち着きました」

「転勤が多かったからねぇ 落ち着けてよかったわぁ カズちゃんは今どうしてるの?」

「今、大学生ですよ。夏休みなんで久しぶりにこっちを回ってみたくて…」

うちは、親父の特殊な機械のオペレーターの仕事の関係で引越しが多かった。
今だと親父の単身赴任って時代だけど、うちはいつも家族は一緒で小学生のころ、短い間だったけどここにいたことがある。
そのときお世話になった借家の大家であるオバサンは、白髪も増えたけど元気なところは変わりなく安心した。
あのころは、両親とも仕事だったので、遅くなるときはちょくちょくオバサンの家でご飯を頂いたことも、この間のようだ…

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Dscf6154 「あら そう 今日はどこへ泊まるの? うちで良かったら…」

「宿、取ってるんですよ …それにしても まだあの家残ってるんですね」

「もうあんなにボロだから、役場からも言われるし、うちの人にも危ないから処分してって言ってるんだけどね…すっかり物ぐさになっちゃったもんだから…」

「ちょっと覗いてみていいですか?」

「いいけど 崩れそうだから気をつけなさいよ。遊んでた子が怪我したこともあったから」

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Dscf6175  ボロボロの2軒続きの借家の手前の部屋がうちの3人家族が入居していたところ。覚えのある落書きがあった。
10年程の間で、こんな竜巻にでも見舞われたみたいに変わり果ててしまった…。
父さんの現場の仕事は、1~2年くらいで、もう引越しみたいな暮らしが長かった。でも、オバサンに、ずいぶん可愛がってもらったし、海の見えるこの町は特に思い出深い。

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Dscf6177 それと ここでは特に思い深い出来事があった。
ちょうど小学3年生に上がる頃、この町に来て、新年度早々に回りが「見慣れないやつがいる」って視線がグサグサッと刺さってくる感じが嫌だった。
それなりに話しかけられもしたけど、なんだか億劫がって、会話もあまり続かず、当然クラスの中でも孤立した感じになるのも当然。

「どうせまた引っ越すんだし…」

Dscf4733 そんな気持が友達を作るのを避けていたのかもしれない。
だからもっぱら、オバサンにもらったお下がりの自転車で海辺へ行って遊んでばかり…
やっと自転車に乗れるようになったのにこんなに思いっきり走れることは、今まで無かったから嬉しかった。
でも当時、工事のトラックの往来も多くなり、学校の生徒との事故もあったことから、少し控えるように言われて、家でひとりでテレビを見たりマンガを読んだりで過ごす日も多くなった。

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Oshiire 初夏のある日、押入れの奥に積んである本の山を崩して選んでいたら隅の壁に穴を見つけた。ネズミでも開けたんだろうか?向こうから、うっすら光が漏れてくる。
隣を除いて見たい気になって、押入れの中で寝そべってその穴から向こうを見てやろうとしたけどうまくいかない…悪戦苦闘しているうちに突然、

「そこに誰かいるの?」

「ぅわっ!」 
急に壁の向こう側から声がしたので、ビックリして体が跳ね返った。

「誰かそこにいるのね?」

「え…? いや、何もしてないよ」

「別に怒ってないよ…誰なのかなーって思って…この穴からこっちを見えてたでしょ?」

「なにも見えなかったよ!!」

「ほーら やっぱり見ようとしてたんだぁ」

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声の感じで、同じ小学生だと思った。

Dscf6182 「お前誰だよ!」

「わたし ナギサ! 君は?」

「…カズノリ」

「『よろしく』っていうのも変だね。顔も会わせてないのに… カズ君、何年生?」

Dscf6173 「4年だよ」

「じゃあ 同じだ!」

「えっ? 何組?」

「わたし…学校行けないんだ…  病気だから…カズ君、よく海に向かって自転車で走ってるね。よく窓から見てたよ…」

「ふーん 病気か…大変なんだなぁ…」

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「ねぇ? たまにこうして話し相手になってくれる?」

「俺がそっちに行こうか?」

「ママが鍵してるから帰るまで出られないんだ… それに…わたし明るいところに出ちゃダメだし…」

「いいよ 話し相手やるよ!」

「ホント?嬉しい これ、お近づきの印ね!」

隅の穴から小さな白い指が覗いてこっち側に何かを置いた。

「なに?これ?」

「ハッカ飴 わたしの大好物!」

「うん ありがと!」

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それから押入れ越しの奇妙な友達関係ができた。
むしろ、その時が楽しみで学校からいそいで帰ってくるようになり、学校のことや前に住んでいたところのことなんか沢山話した。
俺ってこんなに喋るやつだっけ?というくらい。
ナギサはいつも楽しそうに聞いてた。
あまり自分のことは話さないけれど、いつも家の中にいるから話すことはあまり無いんだなって思ってこっちは聞かなかった。

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でも ナギサってどんな子なんだろう? 頭の中で想像が膨らんでくる。
窓越しに顔を見るくらいできないことなかったと思うけど、その時は思いつきもしなかった。

(つづく)

※一部の画像を『北海道廃墟椿』カナブン師匠より御提供頂きました。 

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コメント

中三のころ通っていた学習塾は、講師が塾の運営のためだけに借りていたとても古い家でした。ある時、机の下に違う時間帯に通っている一つ下の女子が書いた落書きを見つけ、私がそれにコメントを書いたことから簡単な文通が始まりました。勉強そっちのけでノートの切れ端に他愛もないことを書いて、襖の角やゴザの下に挟んだりして楽しいひと時を過ごしました。同じ中学だったので次第に面が割れてきましたが、学校では互いに話すことはせず、私の卒業までその関係が続きました。
さて卒業式の日、私は不覚にも大泣きしてしまい、下級生が見送る中を猛ダッシュで駆け抜けました。彼女がはじめて私に何か話そうとするのが視界の隅に入りましたが、恥ずかしくて更にスピードを上げてしまいました。ごめんなさい。

・・・という過去の出来事を思い出しました。

投稿: アツシ | 2008年4月22日 (火) 03時30分

それ、すごくいい話じゃないですか。
切なくて わかっててどうにもできなくて…

投稿: ねこん | 2008年4月22日 (火) 07時35分

アツシさんの話ナイスです。
原作アツシ・脚色ねこん でルイドロUPできそうな話ですね。

ルイドロームな世界は読者の心の奥に眠る淡い記憶を呼び覚ますんですね。
しかし水平線ど真ん中切りの海の写真は恥ずかしいです、エヘヘ。

投稿: カナブン | 2008年4月22日 (火) 12時29分

catホントに照れ屋さんですね。
これで本人が写りこんでいたら絶命ですよ。

ルイドロームってビデオドロームみたいだな。

投稿: ねこん | 2008年4月22日 (火) 13時51分

お腹に手紙は入れませんでした。

投稿: アツシ | 2008年4月23日 (水) 00時46分

catビジュアル的には凄いけど難解ですね「ビデオドローム」
クローネンバーグって元々そうですけど。

投稿: ねこん | 2008年4月23日 (水) 07時28分

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