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2008年4月 6日 (日)

蒼い戦士たち ④

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Dscf3227 タクには、3つ年上の兄貴がいて江別のほうの農業系大学へ進んでいたが、向こうで自分の道を見つけて故郷に戻ってこなくなった。
だからタクが当たり前のように跡継ぎということになっていたのだろう。
時代の変化の中、農業経営の難しさは素人が志せるようなものではないらしい。
現役の農業人たちがその生業を見切ったとき、見切らねばならなくなったとき「地産地消」とか「食料自給率」なんて言葉は、閉校記念碑の碑文のように意味が風化して重さがなくなっていくようだ…

Dscf2763 「タクはデビューに乗りたかったんだ あいつもそれが夢だったから… あいつの腕ならどこでやっても無理じゃなかっただろ?」

「あぁ…確かに もっと話すべきだったかもしれないよな…」

「でも、あいつは行かなかったさ。 俺が先に 『行かない』 といったことに気を使ったんだろ それにあいつの家の経営が行き詰ったのは、あの時から見えてたらしいし、親も無理は期待してなかったらしいよ…でもタクは自分の夢をかなえるためにここに残る者の方を考えると行けなかったんだな」

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Dscf2772 「もめた日にタクが飛び出したホントの訳は、リョージの罵声じゃなくて あそこにいたナチの悲しそうな姿を見てられなかったんだそうだ そう言ってた」

「それって…」

「んー… お前と付き合っていたナチにタクも惚れたってことだよな」

「…」

「お前さぁ ナチに一度も連絡しなかっただろ?」

Dscf4716 「ああ… しないつもりじゃなかったんだけどさ…」

「まぁ とやかく責めんよ 事情もあるだろし…ともかく、あいつらは結果として惹き合ったんだと思うよ…そんで…子どもができたんで入籍だけして、ナチは大学中退ってことさ」

そっか… そうだな…3年もの間にはいろんなことが…。

「それから…子どもが生まれて間もなかったけど 職探しにタクは札幌に出て、後からナチと子どもを迎えに来た…そんで今はむこうにいる」

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東京に出てあっという間に過ぎていった3年が急に重みを増してのしかかってきた気がした。
そう 小さい頃、母さんが枕元で読んでくれた「浦島太郎」みたいに 軽々しく思っていた時の流れが、その本当の正体を現して後悔で僕を取り殺そうとしているかのようだ。

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Dscf4711 「タクが札幌に経つ日、シゲに『すまない』って言付かったよ それと『遠慮しないで歌ってくれ』とさ」

「遠慮?」

「CD聞かせてもらったけど『RUINS』でやった曲だけはパワーダウンするんだよな お前さ 俺たちみんなでやってた曲だから何か後ろめたさみたいのが出るんだよな タクも感じてた」

確かに その曲はレコーディングでも引っかかって何度も録り直した。音が変わったせいで違和感が出たくらいに思ってた。でも『RUINS』やみんなのことが頭に浮かんでいたと思う。

「ところでさ リョージはどうしてる? 途中から脱退した風だけど…」

「いや…他のメンバーと合わなくなったらしい 止めたんだけどさ 今はどうしてるか…」

Dscf3120 「あいつは喧嘩っ早いからなぁ 俺とタクが始終もめてたからさ あいつはまとまりのなさそうなところほど逆に冷静になるやつだからな… シゲ、お前も俺とタクは仲が悪いと思ってただろ?」

「え? どういう意味?」

「シゲも腫れ物に触るように感じてたろけど あれが普通だったからなぁ俺たちさ 言い訳もしなかったけど…俺、小3までいじめられっ子で登校拒否してて、見かねた親が山村留学させたところがタクのいた小学校なのさ 今じゃ廃校になったけど」

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山村留学した先でヒロに一番接してきたのがタクだったそうだ。
口数の少ないあいつがヒロより話すやつだったというのは、すごく意外に感じる。
そこから卒業して町の中学へ進み、タクが自分の兄貴の影響でドラムをやってたことからヒロもバンドに憧れてベースをやりはじめた。
『RUINS』のリズムラインはこの頃から始まって、高校で僕とリョージに出会ったわけだ。

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Dscf2294 「あの学校のあたりも寂しくなったな 閉校のときは12人だけになったらしいから… 学校も体育館以外は潰して公民館になって、いまじゃタクの家を含めて廃屋だらけみたいになっちまったけどな。近くの川へザリガニとかカエルの卵を取りに行ったっけなぁ」

そこまで言うと ヒロはベースをつかみ、黙ってまたリズムを刻む。 

「『RUINS』の頃はみんな蒼かったな…俺も今じゃ しがない豆腐屋家業だけどさ… なんとかやってるさ…」

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ギターの音が「泣く」という表現をすることがあるけど、静かに刻まれるベースの音こそ切なく泣いている。
心臓の鼓動のように…

ヒロが口に出さないで隠している寂しさが伝わってきた

(つづく)

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コメント

一番わがままなキャラクターは先輩がモデルでしょうか。
私の人生になかったスチュエーションです、これからは第二の青春をエンジョイしたいとおもいます。

投稿: カナブン | 2008年4月 9日 (水) 12時15分

誰がワガママだって~?
そいうこと言うと空手使いますよ。

第2の人生はヘビメタに生きますか?

投稿: ねこん | 2008年4月 9日 (水) 12時21分

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