« ルナ・シーの筆感 | トップページ | けっこん しようね »

2008年3月 8日 (土)

カメラ!カメラ!カメラ!

Dscf0999

カシュ-ン… カシュ-ン…

Dscf1003誰もいない廃墟の中に響くシャッターの音
力なく伸びきった空気が一瞬、縮こまる

カメラの目は不思議だ
同じ場にいながら後でその画像を見ると
自分の見ていたものと違うような気がして
不思議な気がする

カメラは人類の発明の中で一番優れたものだ

自分は見ていただけ
カメラは時間を切り取った…

 

 

ギギィーッ…

音を忘れた場所にいて、急に床がきしむ音にびっくりした。
あわてて振り返ると人が…。

Dscf1015  

 

あ…すいません。 いちおー断って入ってるんです…

いいんですよ。 ところで、ここで何してるんですか?

いや…写真撮ってます。 こういったところが好きなので…

こういったところって?

まぁ…いわゆる「廃墟」っていうものなんですけど。こんな風な崩れかけた建物とか廃線の橋脚とか、工場施設とかなんですけど…そういうのを撮って回ってます。

Dscf1004

廃墟ってどこがいいんですか?

どこかって…どこなんでしょうね…何となくですよ。

変なものに取り付かれそうじゃないですか?怖くないんですか?

怖いって…昼間来てますし… 昔はそんなこと思ってましたけどね。今は全然考えないです。山奥の廃屋で冬眠中の熊を見て逃げたことありますけど。怖かったのはそれくらいでしょうか。あータヌキにも階段ではちあわせになったことありますよ。動物園とか剥製では何度も見てましたけど生は初めてでしたね。ついで言うとヘビも嫌です。車のアンテナに巻きついてたんで、3mくらいの棒を持ってなんとか追っ払いましたけど、口開けてました。

そういうところが好きだったら借りて住んでみたらいいんじゃないですか?

いやーちょっとー…極論言いますね…みもふたもないですよ。そういうこと言うと空手使いますよ。

極真でもやってるんですか?

いや…冗談です。冗談! やってませんって!
住むとか何とかは、それが家とか建物だって考え方だからですよ。それを自分とか他の人とか同等の「存在するひとつのもの」と思ってみたら違って見えるんじゃないですか?

Dscf1014

Dscf1010 えーわかんないなぁ…

洋楽聴いたって対訳がないとチンプイですけど「いいなぁ…」って思うじゃないですか。
それと同じで「廃」な空間に身を置いていると、 意味はともかく癒される感じってあるんですよ。個人差はあるでしょうが。

でも、不気味って感じもあるでしょう? そっちのほうが強いんじゃないスか?

不気味って言うけど、かつて暮しや賑わいのあった生きた場所だったから、それは感じるでしょう。夜道を歩いていて自分の靴音が反射して聞こえてきただけで、勝手に気配を感じるようなものです。
本当にそんな悪霊みたいなものがいたら、人間よりも敏感な鳥や虫なんか全然寄り付かないでしょう。

すると「廃墟」は死んでいるから「屍」ってことになりますか。

それは少し違うかなぁ…死んだってより停止してるって例えのほうが合ってますよ。

「癒し」っていうけど、それはどこから来るんですか?

そうですね。まず日常の時間とは隔絶されたところがあるから、動かない静かな空間は瞑想的ですよ。それにまず、物欲や人間関係のしがらみに開放された場所って感じますから、無心になれるんですよ。日々の中で、何も考えないでいられることって、そうそうないですからね。 だから好きなんですよ。 無理強いはしませんけど。Dscf1011

へぇ~ でも、勝手に入ったりしたら、いくらなんでも怒られるでしょう?

ですから…近くに住んでいる人がいたら挨拶するんですよ。500円くらいの菓子折りなんか持って。「お願いします~」って…
それは変わり者とは思われますよ。「こんなボロ撮ってどうするの?」とか言われますから。
持ち主じゃなくても一応ことわっておいたら、自分に何かあったら様子くらい見に来てくれると思います。近くに車がいつまでもあったらだけど…。
そういうことしておくと「うちでカレー食ってけや!」とか言われてごちそうになることもありましたけど。
さすがに人里離れてたら断りようがないですけどね。

Dscf1019 それで…食べてくるんですか? 廃墟でカレーを。

だから~その廃屋のご近所でですよ。ようするにー 離農跡なんですよ。そこは!元の主はいないんですけど、土地は近くの農家が畑にしてるんで、家もそこの所有ってことです。
無断で入ったりして見つかったら、そりゃー怒られますから始めに断るんですよ。
そういうステップを踏むと異常にやさしいんですよね。帰りに「新ジャガ(新物のジャガイモ)」を抱えるほど持たされたりして。
そういうことがあると単なる廃墟回りでも人情の温かみ感じるんですよ。またこなくっちゃなーって…でも昔話が長いんで臆します。

ふーん 何だか面倒っすね… Holgashot

さっきから色々聞いてきますが、お宅いったい誰ですか? おっきいカメラと三脚持って…

わたしですか? わたしは、廃墟を司る「神」です。

(アホか? こいつ…)

色々聞かせてもらいましたから、ご褒美に街でコーヒーでも…

宗派違いそうなので遠慮しときます…さよならー

|

« ルナ・シーの筆感 | トップページ | けっこん しようね »

コメント

さりげなくルイドロの歴史を凝縮した内容ですね。

←色々な人に当てはまります(師匠含む)。


投稿: カナブン | 2008年3月 9日 (日) 19時29分

そうですね いろいろ…
最後の方の傍若無人な台詞は思い当たるのですか?
これは引きます。

話の中ではカメラが高級になっていく傾向があります。

投稿: ねこん | 2008年3月 9日 (日) 19時56分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: カメラ!カメラ!カメラ!:

« ルナ・シーの筆感 | トップページ | けっこん しようね »