« けっこん しようね | トップページ | 蒼い戦士たち ② »

2008年3月17日 (月)

蒼い戦士たち ①

聞える 目を閉じると
魂が揺れるほどの歓声が…

Dscf5339_2

聞いていたDEENのアルバムの最後の曲 「蒼い戦士たち」がイヤホンから流れだしたころ、車窓の景色は故郷の色が濃くなり始めてきた。
この景色を見るのは実に3年ぶりになる。

Dscf5558 3年前もこの眺めを見て旅立った。数年程度では、どこもほとんど変わってはいないようだ。それでも新鮮な気持に心躍るのは、いかに自分が故郷を忘れていたかということなんだろう。

高校の頃から続けていたバンドの傍ら、ダメモトであちこちに送っていたテープが、某プロモーターの耳にとまるという幸運に恵まれた。
夢に見ていながら、夢にも思わなかった現実。
でも4人の仲間の気持は、それで分裂してしまった…

僕とリョージは夢行きの電車に乗り
ヒロとタクは自らの意思で残ることにした

Dscf5342 僕らは、ちょうどリズムとメロディが分断してしまったかのようだった。
上京後は今まで思いもしないことを色々経験した。プロモや売り込みの取材で気の休まる余裕もない毎日ながらも、それが講じて爆発的とは言わずも3年で思っていた以上の評価を得られたのは喜ぶべきだっただろう?

ここに至るまでには「勝つより大事なこと」「負けるより悔しいこと」の体験。
そしてリョージも自分の進むべき道に軌道修正して僕の前から消えた。
それも辛かったが、それ以上にいつも頭の片隅にあって自分を苦しめてきたことがある

自分は『裏切り者』なんだ… ということ

Dscf5337 そんな気持がいつも脳裏にあったから今回の帰省もどこか後ろめたい。
改札を抜けてから駅の南口でそそくさとタクシーへ乗り込む。ここに来てまでそうするほど顔が売れていると自惚れたわけじゃないけどサングラスをしながらも目線がうつむきぎみになってしまう。

「●●の方へお願いします」

とりあえず懐かしの我が家へ…
春とはいっても日陰には名残雪の塊がポツポツ目に付く風景。
それを一生懸命砕いて路上へばら撒く老人は、通行の迷惑など意に介していないかのようだ。

車は、隣町へ至る橋を越えて眼前に見覚えのある砦が見えてきた。
主のいない砦。いつかそこへ皆で入ったことがあった… 

Dscf4205  

「いいよなー ドラムは荷物が少なくってよー 棒っこ2本だもんな」

「なんだよ!自分の相棒連れられないモンの身になっていってんのか? うっとうしいなら表に立てかけとけよ!」

ヒロが入口にベースのヘッドを引っ掛けてグチり、ドラムのタクがやり返す。

「シッ!ちょっと静かにしとけや…騒ぐとこじゃねぇんだからよ。ムードねーだろ?」

住宅街の狭間に鎮座する無人の要塞。そこに入ってみようと言い出したのは、リードギターのリョージ。
先陣をきって中へ入り、後に続くリズムパートをたしなめる。
一番遅れて周囲を気にしながら中へ入る僕がシゲオ。その頃からボーカルと若干ギターを弾いていた。

Dscf0919

Dscf3416 練習場の帰りによく見かけていたその砦は、倒産したアミューズメント施設。
川近くにそびえ立つ要塞のようでいつも気になっていた。
現役の頃に一度、親といっしょに来た記憶がある。
往年は、近隣や郊外からも若者が連夜集い、いわゆるナンパスポットだったそうだ。当時でも終焉の日から10年を越える。

創始者は、畑違いの業種から娯楽業界へ参入し、一代で地域にグループを展開して当時は地元で最も成功した人として賞賛された。
バブルとは無縁と思えた北海道でも、今考えてみると大いに恩恵は受けていたのだろう。多くの金融機関が当時、これらの砦を築き上げることを可能にしていたのはやはり、当時の時勢だったようだ。

いまや「夢の跡」となった砦に行ってみようとリョージは言い出した。

Dscf0935「何かこう現実離れしたとこから、ひらめきがあるかもしんねーからよ。」
それを真に受けたわけではないけれど、ヒロもタクも反対しなかったので寄ってみる事にした。倒産した当時は裁判所の管理下に置かれたが、今は依託管理先もわからない。
ただ荒らされていくだけの無防備な要塞になってしまったようだ。

駐車場は、隣接する家の窓から丸見えなので正直ビビる。それよりも間近に来てみてアスファルトのひびをこじ開けるようにして伸び上がる雑草に囲まれ、音も無いまま虚ろに立ち尽くす巨大な二棟を見たときの威圧感は、初めて経験した。
これが交通の激しい通りに面した場所とは信じがたい。

「シゲオ!何してんだよ 早く入れよ!」

「あ… あぁ…」

入ったところに見える白亜のシンボルタワー。サイバーな感じがあるけど、よく見るとスクラップ部品を使っているようだ。奥には、思ったよりゲーム機とかのモノが残っている。ただし、ガラスが割られたり、部品が剥がされたりで、その壊されようから人が随分入ってきたことは想像できる。
散乱する利用者カード 景品獲得の記念写真、相性テストの判断結果…思い出は無造作に色あせる。
バラ撒かれたゲームコインは「これが全部、お金だったら…」というよりお金の価値が空しく感じるような光景だ。

Dscf0982

Dscf4213_4 「いやーっ俺の部屋に置きてぇな これ、電気入れりゃ使えるかなぁ…」

「タクの部屋6畳だろ? 入んねーって! 牛舎に置くんか?」

「牛舎は余計だろ?! 豆腐屋が何言ってんだよ!」

「やめれって!平和な会話できんかな! まったくお前らよー」

火花を散らすふたりの声ににイライラしたリョージがカラオケのカウンターを物色しながら、ふたりより大きな声で怒鳴る。

Dscf0929_2 ヒロとタクはいつも喧嘩腰の話をする。
いつもどちらかが 「辞める!」と言いださないかといつもハラハラしていた。
大抵、神経質なリョ-ジがたしなめる役に回り、最悪の状況は回避できていた。

「全部残っているかと思ったけど、結構運び出されたりしてんだなぁ」

「そらそうさ 倒産が決まる前に情報が取引先に伝わるらしいから、裁判所の管理に落ちる前に業者があわてて回収するんだとさ」

リョージは、おかしなことに情報が早い。そのためかバンドの活動も先頭に立ってやってくれる。結局のところ親分肌なんだな。

一触即発な関係ながら6年一緒にやってきた。

(つづく)

|

« けっこん しようね | トップページ | 蒼い戦士たち ② »

コメント

廃墟サイト特有の一物件紹介的な観念にとらわれず、
ルイドロームなフィルターを通した独自の表現方法に感心します。

以前は、サイト更新過労死するんじゃないかと心配していましたが、
一年以上経って、いい意味で落ち着いたでしょうか。

投稿: カナブン | 2008年3月19日 (水) 20時44分

ルイドロームって「ビデオドローム」みたいですね。
情報や画像では、師匠やよそ様にかないませんから…
違う側面から「廃墟」を表現したいです。
今年は「愛」のワンテーマで。

これも師匠の愛の賜物ですね

「廃墟」は決して武骨な気難しやさんでは、ないのでしょう

投稿: ねこん | 2008年3月19日 (水) 21時41分

「ビデオドローム」のラストの廃船は気持ち悪いです。あそこで愛を見つけるのは至難の業でしょう。

投稿: アツシ | 2008年3月20日 (木) 02時18分

見つけてみたいですね。
クローネンバーグとかホドロフスキーの映画は具体的に見せるからハードな印象ですが、「愛」はありました。
クローネンバーグなら「旋律の絆」
ホドロフスキーなら「サンタ・サングレ」が好きです。
かなり屈折していますけど…

投稿: ねこん | 2008年3月20日 (木) 06時56分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 蒼い戦士たち ①:

« けっこん しようね | トップページ | 蒼い戦士たち ② »