物言わぬ雄弁者の群れ【其ノ三】
泣けない目玉は、目玉ではない。
泣けない目玉は、笑いもできない。
(シゲチャンランド公式写真集より)
シゲチャンランド内に点在する建物は、牛舎・サイロ・母屋・資材庫・飼料庫などがありますがそれらには「手」や「鼻」、「口」などの人体パーツの名が付けられています。
現在、広大な敷地内に新たに建てられたものが年々増殖しています。
大西重成氏は、立体造形に表現の主体を移し、それらの仕事をこなすうちに其の膨大な作品群すなわち「あいつら」が誕生しました。
「東京」の暮らしと今後の生涯のステップを考えたとき、一冊の洋書と出会ったそうです。
ハワード・フィンスターの「パラダイス・ガーデン」。
アメリカ・ジョージア州の牧師でフォーク・アーティストでもある彼が、庭にジャンク材で寺院・教会・ボトルタワー・天使の像等が溢れる庭園を創造した写真集です。
その本との出会いが大西氏に「東京でできないこと」へと熱意を駆り立てました。
その想いがここ北海道の津別町に「シゲチャン・ランド」として現実のものとなりました。
私設美術館ということですが表現もさることながら空間も一つの作品となるこのランドは、美術館というよりも「あいつら」のコミューンの様相を強く感じます。
作品も自由なら展示も「あいつら」が自由に散っている雰囲気で個性的な「あいつら」の生息域に我々が訪れたような気になってきます。
作品は素材や表現方法だけではなく、公開する空間演出もまた重要なものだと考えさせられます。
これらの作品の一部が昨年初頭に帯広市美術館の企画で出張(?)してきましたが、見慣れた場所と違って妙に不似合いに思ったものです。
プレゼントには驚きと歓喜が必要です。
この真っ赤なビックリ箱は、常習癖をもよおすような魅力にあふれています。
美術・芸術の小難しい後付理論などいらない。当世流行のリサイクルなんてチャチなものでもない。
まるで始めからそうなるべくして生まれたもののようだから…
「鼻」を離れて「目」の館へ。
白が基調の屋内には大きな連中が並んでいました。
壇上に整然と並ぶこの空間は見世物小屋的な雰囲気。
素材も元々生命をもっていた流木や倒木などなので生命感・皮膚感があって、実在する生物のようにリアルな感覚のものがここに並びます。
素材は「収集」というよりも「捕獲」に近いかもしれません。
朽ち跡は体に。焼け焦げは顔に。自在に伸びた根や枝があたかもそういう体であるかのようです。
こういう素材がその辺にいとも簡単に転がっているのでしょうか?
『あーあれは●●湖で見つけたんだよ』
大西氏の屈託ない語り口は表現者というより悪戯好きな子といったほうがふさわしいような気がしました。
(つづく)
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コメント
初めまして、検索しているウチに辿り着きました。
シゲチャンランド・・・興味深いです。
またお邪魔いたします。
投稿: denen-kurashi | 2008年4月10日 (木) 10時59分
denen-kurashi様>いらっしゃいませ
5月1日~10月末の間、開館しています。
機会がありましたらぜひ行ってみてください。
強烈にカルチャーショックを受けますよ。
公式ホームページ:
http://www9.plala.or.jp/wl-garden/
投稿: ねこん | 2008年4月10日 (木) 11時14分