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2008年1月 5日 (土)

物言わぬ雄弁者の群れ【其ノ五】

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海岸にヨタヨタと転がっていた流木。
畑に棲家を奪われて寝そべるだけの雑木の根。
雪解けのぬかるみで呑気に錆びたトタン板。
実っても誰にも歓迎されない歪な瓢箪(ひょうたん)。
律儀に働いていつのまにか老いぼれた鋸の歯。
夜会の席で幸せそうに抜かれたフランスのシャンパンのコルク。
明け方の酒場で眠たそうに捨てられたメキシコビールの王冠。
カーブもかからないほど擦り減ったゴムのベースボール。
遠足の児童にも引率の先生にも拾ってもらえない地味で華のない貝殻。
最後に飛んだ空を草むらから見上げていた鳥の羽。

ザワザワと群れるキュート。ケラケラと慄えるセンチメンタル。
静止したまま大騒ぎする形、色、気配。果てもなく謳い黙々と氾濫するバラエティ。

(シゲチャンランド公式写真集より)

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廃墟サイトでここを扱うのもいかがなものですが、元廃墟。今は熱い空間。
そこは、異形の見世物小屋ではなく、個性が一人歩きしたサーカス小屋。

Dscf1742_2 廃墟であった農場は、悲しみと喪失感であふれ返っていましたが、今では『あいつら』があふれて、いたるところの物影に隠れています。
夢も喜びも、そしてチャンスも本質は足元に転がっていながら探し続けるのが人なのかもしれません。
手塚治虫氏の『火の鳥』が無限の力を持ちながらたった一つの小さな愛を手に入れられないように…
人が打ち捨てて見向きもしないようなもの達が、ここでは人を感動させ、喜ばせ、泣かせます。誰もが見覚えがあって、暮らしの側にあったもの達。久しぶりに出会ってずいぶん立派になったね…というような驚きと、遠いどこかで無くしてしまい懇情の別れとなったものとの再会のような感激に包まれて、『あいつら』は声なき声で語り返すのです。

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ここですべてを見せてしまうわけにもいかないので紹介しきれない大部分は機会があれば是非行ってみてください。
『あいつら』が貴方を鑑賞し、声なき語りを投げかけてくる様を経験してみてください。

近くには、貴方の反応に「ニッ」と子どものように笑うシゲチャンがいることでしょう。
アートに哲学はさほど重要ではありません。要は体験することです。

《シゲチャンランド》 
北海道網走郡津別町字相生
開館期間:5月1日~10月31日  休館日:毎週 水・木・金曜日
開館時間:10:00~17:00

※館主シゲチャンこと大西重成氏は、カメラ(特にオールド物)が大好きです。その話だと大変盛り上がります。カメラ談義に華を咲かせるのもまた結構です。

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Dscf1834 『廃』は『無』ではない
万物は決して『無』から生じたものでもなく、捨てられても『無』になることはない
朽ち果てても燃え尽きても、それは形をかえて見えなくなっただけです。
それは、我々があの「1000の風」になるように…
このランドの「あいつら」もひとつの形の変わり方。
目に止まる「そいつ」はあなた自身なのかもしれない。

おなじようにドライブのみちすがら見かける「廃」はまだ現役なのです。時代の語り手として…
その語り口から見えてくるのもまた自分自身の姿。
でも明確な答えはなかなか見つからないのです
            

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コメント

 御健勝で 御活躍と推察
廃墟 情報・記事・創作を 折々に拝読しあり。

愚爺こと イササカ体調不良にて、暫時 休業中デス。
08_5/4.. 最新記事にではなく、、 過去(ランド関連_に コメント書き込みマス 
 

投稿: ∋(◎v◎) | 2008年5月 4日 (日) 06時13分

∋(◎v◎)様 お久しぶりです。
体調不良とのことで、心配しています。
今は充電期間ということで体調回復にご留意ください。
会いに行ければなーと思います。

今年も近々ランドへ行ってきます。
冬場に2回ほど前まで行きましたが、足跡があったので∋(◎v◎)さんが来たのかと思いました。

投稿: ねこん | 2008年5月 4日 (日) 17時46分

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