がんばれ みはるちゃん
「みはるちゃん」は、小学生だけど学校へは行きません。
学校の近くの横断歩道にいて、みんなの行きと帰りに乱暴な車がいないかどうか見張り続けているのです。
朝も夜も 雨の日も そしてこんな雪の日も 暑い夏や凍てつく冬さえも…
そんな「みはるちゃん」にみんなは『おはよう!』と言ってくれます。
そうではない子もいましたが多くの子ども達に「みはるちゃん」は愛されていたようです。
みんなのその声に応えられないのは「みはるちゃん」の心の切ない部分でしたが、みんなの笑顔がそれを支えていました。
みはるちゃんには、片思いの彼がいました。いつも道をはさんだ横断歩道の向こう側に同じような大事な仕事をしている「まもる君」です。
でも、みはるちゃんは、とっても恥ずかしがり屋さんなので一度も「まもる君」に話しかけられませんでした。
…でした。 そう「まもる君」はどこかへ引っ越してしまったようです。
一度も想いを伝えられないまま、「みはるちゃん」の前から消えてしまいました。
悲しい出来事はそれだけではなく、今度はいつも「みはるちゃん」に声をかけてくれていた子達がもうここへは、こないことになってしまったのです。
「みはるちゃん」 学校がなくなっちゃうんだよ…
毎朝「おはよう!」「さよなら!」を言ってくれる同じ黄色の帽子を被った女の子が教えてくれました。
このあたりには、昔は家がたくさんあったのにいつのまにか数えるほどに減ってしまいました。家が減ってしまうと子ども達も減ってしまうそうです。それで学校が学校であり続けることができなくなってしまったのです。
「さよなら『みはるちゃん』」
「さよなら…」 黄色い帽子の子も泣いていました。
「みはるちゃん」は泣きません。泣かないのです。
どんなことがあっても泣けないのです。
でも心の中は誰よりも悲しかったのです。
それからずーっと長い日が流れました。
すっかり広々となってしまった街の跡。誰もこない道。
相変わらず「みはるちゃん」を見てスピードを緩めていく車はありましたが、側まできて話しかけてくれる人はいません。「上げた右手もなんだかくたびれてきた…」
意味もなく立ち続けて、とても悲しくなります。
そんなある日、「みはるちゃん」の前に黄色の車が止まった。
「みはるちゃん、こんにちは!」
大人の女の人が笑顔で目の前に来ました。 『はてな?』
おや?ぼんやりとした記憶の中の黄色い帽子の女の子の笑顔とこの大人の人の顔が何だか重なってきた…。
「みはるちゃん」は今日も元気に立っている。
真っ直ぐつきあげた右手は忘れかけた大事なものに手が届いたような気がして力が入ります。
「わたしも あんなふうに なれるかなぁ」
この間のきれいな女の人を思い出します。
たぶん きっと それは まちがいなく 叶うことでしょう
そのときは「みはるちゃん」も笑顔の素敵な女の子に生まれ変わっているはずです。
がんばりやさんのこの子なのですから…
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コメント
先輩、この子に恋をしましたね。
この写真を撮ってる先輩の姿を想像すると・・・
投稿: カナブン | 2008年1月28日 (月) 22時39分
みはるちゃんは、微妙に表情を変える子です。
気がつきましたか?
投稿: ねこん | 2008年1月28日 (月) 22時45分