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2007年12月10日 (月)

鋼の鳥 ①

普段と環境の違うところへ行くと妙に落ち着かないことがあります。
街の喧騒の中で暮らしているとキャンプ場の静かな夜がかえって気になってしまいます。
ヤン富田という実験的な音楽家(海外ではスティールパン奏者としても知られる)のアルバムで一定の間隔の無音状態を音楽として聞くという試みがありましたが、全くの「無」を意識してしまうことはあるようですね。

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Dscf8790 それとは逆に静かな環境で生活していると些細な音が気になってしまいます。夜寝ていると冷蔵庫のモーター音さえ気になったりします。その反面、夏の暑い夜、窓を開けていると外から聞こえるカエルや虫の音は気にならなかったりするので環境の急激な変化が人によってストレスになりうるということです。

少し晴れ間が覗くも雨粒交じりの初秋。『ルイン・ドロップ』を始めて、早くもこの場所にくることになるとは夢にも思いませんでした。
 よもやメジャーな物件…はて?廃墟でメジャーとは変ですね。廃墟は廃墟です。赤瀬川源平氏風に言うならば現代遺跡。

そこを垣間見てきました。

しかし、終始気になっていたのが飛行機の爆音。大きな空港が近く、ほぼ真上を着陸態勢で入ってくる旅客機のエンジン音は、この辺りで暮らす人には、もう気にならないものになってしまったのでしょうが、ねこんにとっては結構ストレスでした。
もう、前世では爆撃機に追いつめられていたかと思うほどオドオド…
事前に知ってはいたことですからまぁしかたないでしょう。熊に会うよりは、ずっとましですから…

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湖に面するホテル。しかし、雑木がだらしなく伸び放題で建物を囲い込んでいるため湖は見えません。かつてはそぐ側に見えていたのでしょう。その正面に立って2階建ての間口…さらに上に小さな窓が見えますから3階建てでしょうか。思ったよりも小さな間口に正直ビックリ。『観光ホテル』という名には似つかわしくないその様子に先行きが少し不安になってきました…

『ゴーッ』 また1機滑走路を目指す機影が真上を通り過ぎていきます。

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Dscf8796Dscf8802 真っ暗…まではいかないが暗いロビー。窓に板が打ち付けられていることもありますが、決して明るい部屋ではなかったようです。ロビーの雰囲気は、ホテルというより旅館の面持ちです。小さな間口から想像できなかった奥まで続く長い廊下を見て、期待が膨らんできました。床はあちこち抜け落ちているようで波打っています。
『ずいぶん長いこと放置されていたんだろうな…』 そう思いましたが意外な文書を発見。

『温泉の水質試験結果書』
同ホテルが検査依頼して採水検査した年が平成5年。同年閉鎖されたとしても建物がいくら古いとはいえ、14年程度でこれほど朽ちていくものでしょうか?

Dscf8797 以前、別件で閉鎖されてから数年程度の温泉旅館の内部が温水バルブが閉じられておらず、温泉の湿気が管内全体にまわり、火事現場のような状況になったところを見たことがありますが、それと同じことがあったのでは?と想像しました。
 建物が古いとはいえ、このレベルは秘湯の湯治場ではごく普通の光景なので建物の古さが旅館の衰退の原因ではないのでしょう。帳簿では外湯のお客さんは多かったようです。

波打つ床を確かめながら進んだ先に階段がありました。階上には客室、当時宿的な雰囲気ですが温泉好きには、この雰囲気もかえって風情があります。後付けの配管パイプがあちこちに見えているのは、ややいただけませんがそれは目をつぶりましょう。

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各部屋を回っていると布団部屋風のところ…ここに梯子っぽい小さな階段がありました。
外から見えた小さな窓の部屋のようです。屋根裏の倉庫かな?

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Dscf8837 『えーっ!』 何やら凄いことに。部屋の壁には一面に新聞や雑誌が貼り付けられています。
 北海道、特に戦後開拓期には、掘っ立て小屋同然の家が多く、極寒の中ただでさえ薄い壁に断熱防寒の目的で新聞紙を幾重にも貼りこんでいくということが良くあり、そのような家も見かけることがありましたが、ここは少し事情が違うようにも見えます。

丁寧に、しかもしわや曲がりを気にした作業は、ロバート・ラウシェンバーグのコラージュアートを見るようです。防寒目的と言うよりも壁紙的に張りこまれたのかもしれません。

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中にVAN創始者の故・石津謙介氏出演の広告が目に止まりました。
晩年の入院中でも病院着は拒み、肌触りの良いブランドのシャツを身に着けていたそうです。知ったときは既に老人の顔でしたが、若い頃を見たのは初めてです。

こういったものを無造作に貼り潰さず時代を語るPOPな壁面に、この部屋の主はただ者ではないな…と思いました。
(つづく)

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コメント

ここ、ブームなんですか?

投稿: カナブン | 2007年12月11日 (火) 21時58分

ムーブですよ。
同業は考えることが同じってことでしょう。
それぞれに解釈が異なるんで面白いですね。
うちは、とかく固くなりがちですけど、たまには脳天気なこともしてしまいます。

投稿: ねこん | 2007年12月11日 (火) 22時28分

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