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2007年12月30日 (日)

物言わぬ雄弁者の群れ【其ノ一】

“ルイン・ドロップ”年末年始企画Dscf1681

ナニカガ ジット 生キテイル
   アフレルヨウニ 其処ニイル
       
(シゲチャンランド公式写真集より)

人生…人生を語るには、まだまだ青二才に過ぎないが其れを承知で、人生最大の驚きと言うか驚愕に近いこの出来事は、ここに来るまでなかったのかもしれない。

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Dscf1721 数年前のことになります。
遠出のドライブとか、週末一泊旅行で主に札幌方面に行くことが多かったので、道東を走ってみることにしました。
そもそも道東に足を伸ばさなかったのは、小学校の社会見学と称した1泊旅行で要所をほぼ回っていたことと会社の旅行でも数回、一帯を走っていたからです。

さほど遠いところではないのに自分で走るのは、初めてに等しい。
それは、近場にいる友人のようなもので会おうと思えば何時でも会えると思っていて全くいかないのと同じです。

GWの喧騒は、外したかったので6月に有休を当てて出発。生田原町(現在遠軽町と合併)の「チャチャワールド(木工おもちゃの博物館)」へと…
あいにく、「蝦夷梅雨」と呼ばれる時期で日程の間、霧雨に悩まされました。どのみち屋内施設が目的だったのと「おもちゃ」が中心ながら大人気なく楽しめるところです。

初日は、北見市で一泊。翌日阿寒回りで帰ることにしてのったり車を走らせます。
相変わらずの霧雨は、むしろ雨といっても良いほどで近くの植林をまとった山もぼんやりしか見えません。

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Dscf1679 津別町に入り、旧国鉄相生線線終着の「相生駅」、現在は道の駅「あいおい」となっているところで駅舎や客車を見たあと阿寒湖畔へ向かおうと国道を南下。
その途中、霧の中から突如として普通ではない真っ赤な牧場が浮かび上がりました。
この辺りの町のほとんどが林業を主幹産業としていますが、安価な輸入材などによる製材業の低迷で主幹産業とは言えないものになりました。
それでも各町、思考をめぐらせて木工クラフトなどで町の活性化に貢献しています。

Dscf1713 そんな「愛林の里・津別町」にも酪農業は少なからずあり、営農は続けられますが国立公園が近いことと植林地が多いことからエゾシカの出没があり、作物の食害も多いことから畑に隣接する山地との境界にネットフェンスが延々と張られており、畑が隔離されているような印象があります。
農業は自然との闘いであり、其の相手はなにも鹿だけではなく、バッタの大発生によるものそして、霜などの冷害に悩まされます。豊作になったとしても卸価格のダウン。牛乳も卸価格は現在まで低迷を続けています。
戦前戦後に入植した人々もやがて離農していき、かつての10分の1かそれ以下の戸数にまで減少。この辺りを走っていても時折、廃墟と化した酪農家跡が見られます。

霧の中から現われた農場は一際、変わっていました。
牛舎・サイロ・資材庫などすべてがナナカマドの実のような真紅に彩られていて、緑の山や草原に囲まれています。
入口の「シゲチャン・ランド」の文字と牛舎の屋根の「極楽美術館」の文字が目に入り、ちょっと興味を持ちました。

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駐車場には数台の車。牧場を取り囲んだ柵には、これでもかと言うほど多種多様な廃物が打ち付けられています。元々ここにあったと思われるものや他所から持ち込んだようなものなど…。
霧雨の中、様子を見に伺うと人の気配の感じられない静かな牧場。チケット売り場なるものはありましたが、誰もいません。建物の間には高い位置に張られたロープには様々な色の裂布が等間隔で結ばれて風にたなびいています。
顔のような「モノ」があちこちに転がってユーモラスで「へっ面白そうだな…」と奥のほうへ進みます。各建物のドアが見えて其の中のひとつを見てみることにしました。ドアがふたつ上には「右手」「左手」。となりの牛舎には「鼻」と筆で書かれています。

「???」とりあえず「左手」を…
「!!!」中には建物同様、赤系色彩でインドの方の派手な祭壇のようなものが高い天井に届かんばかりにうず高く積み上げられていました。

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それを見たとき、直感「ここって…ヤバイところじゃない?」と感じました。
美術館と称した妙な宗教施設。そんな印象と共に自称教組の経営者なんかを想像していました。

其のとき、既に背後の方から砂利を食む靴音が近づきました…
脳裏には、法衣を着てつかみどころのない威厳に満ちたサイババチックな姿が浮かびました。

(つづく)

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