骨董 元気会
「3丁目の夕日」の続編が評判です。
昭和最後の年から20年の年月が流れようとしていますが、既に時代は「昭和」を懐かしんでいます。
静かながらも世の中はレトロブームで、混沌とした平成の世に、つい前時代に想いをめぐらせてしまうのでしょうか。
昭和風居酒屋。昭和グッズを扱う店。戦後の高度経済成長期において良くも悪くも色々なものが生まれてきました。
戦争も全共闘も南沙織もたのきんトリオもエリック・クラプトンもテクノミュージックもスターウォーズも口裂け女もツチノコも思いつくものすべてが詰まったパンドラボックス。それが「昭和」なのです。
昭和がこんなにまで愛されている背景は、今現在、目にするものの多くが昭和を出発点としているからでしょうか。
悲惨な戦争期、それを外して昭和を語れませんが、戦後の闇市・バラックの頃から高度経済成長期を迎え、石炭増産、オイルショック、発展の夢と世紀末の不安感。メンコとファミリーコンピューター。昭和のキーワードを思いつくだけでもいかに激しい時代だったかが感じられます。
平成生まれの世代が成人を迎えようとする今、昭和の残した大量の遺跡に何を思うのでしょう。
その昭和の過程、まだ庶民の娯楽がせいぜい近郊の海・山・川だけだったような頃、この山岳地帯の迫る奥地は、がむしゃらに働き続けた世代の保養地として賑わっていました。
現在は、地域の観光ガイドには載るものの訪れる人も少なくなったようです。キャンプ場も不便な奥地より張り芝で電源設備もある公園のようなオートキャンプ場が栄えて、この地のバンガローも多くが朽ちだしています。キャンプ情報誌などで、ここはやたらと熊が出るような紹介をしているのも問題ですけど。
かつて、このあたりは開拓の鍬が入ってから多くのいくつかの集落を併合して村となりました。時代が昭和に入り、近隣村と共に帯広市へ合併になりました。
日高の山々が眼前にそびえるこの地域も現在は、離農が相次ぎ、古いサイロが遺跡のように点在。
その反面、近年になってからドロップアウト組が第二の人生の地として、半自給自足の生活を楽しむ小さな住宅も増えてちょっとした集落があります。
この地域の古くからまとまった集落を形成していた地域にこの家があります。
看板(?)を出したのは、時代は平成に入っていましたが、もう一昔前のことで街のタウン誌で見かけて行ってみました。
「骨董と食事?」なんだか奇妙です。今でこそアンティークレストランなるものもありますが同じ意味でも言葉自体で印象が変わります。(蛇足ですが「古本と大判焼き」という店もありました)
外観はどう見ても今時の民家。それも比較的新しめで和とも洋とも言い切れない…
外壁には、古い日本酒の看板や手書きの文字。普通の玄関横にペプシ(ビン用)の自販機が置いてあるのが違和感を誘います。
「まぁ、ここが入口なんだろうな…」ドアを開くと明らかに今時の住宅の玄関。ランドセルとかグローブが放り出してあってもおかしくないような感じです。
何やら紐が下がっていて
『紐を引いてお待ちください。店主がすぐ参ります』とあります。
ガランガランと鐘の音が響いて、奥から『いらっしゃいませ!』と威勢の良い声。
現われたのは…丁度、今のマイク真木の髪と髭を黒く染めて、作務衣を着せた感じの人。
通された6畳ほどの和室は3方が天井まで骨董品で囲まれて先客のいた居間は、壁全面に大量のホーロー看板やゼンマイ式柱時計が並び、それぞれが微妙にずれた時を刻んでいます。
『今日は仕込みをしていなかったもので、ザルうどんだけで申し訳ないのですが…』
申し訳というより、脅迫っぽい強い口調に『あっ、それでいいです…』と、つい…
『かしこまりましたご主人様!(メイド喫茶か?雰囲気は冥途)』
ガサの大きいラジオや蓄音機、おすし屋さんのカウンタにあるようなガラスケースの中にはたくさんの時計。本棚にあるのは、古いアサヒグラフとかノラクロ。
『それは自由に見ていただいてかまわんであります。』
今度は軍隊調。 あがってきたザルうどんは、ホントのザルに入ったものでコシがあってツルツルのいい感じ。
手の空いた主は、先客(地元の人かな?)と談笑中。
「ずいぶん古いものを集めているんですね」
「古いものが好きなんですよ」
「エビスを置いているんですね」
「私はエビス以外認めません」
いっやーヘタに何か聞かなくて良かった…会話下手ですね。
それだけが問題ではないのでしょうが…
メニューによると、ここでは毎週土曜日限定の『元気会』という宴会企画がありました。
『19時~元気がでるまで』
日本酒とエビス飲み放題。屋外メニューと五右衛門風呂。予約制。うーんどういう内容だったんだろう。
現在、庭には五右衛門風呂が残っていますが辺りは雑草の伸びるままに放置されています。あれから20年近い年月も経っていますから…
近所で農作業中の御宅へ主の所在を確認すると、『しばらく見ていないですね…』
家の周りの雑草や無用なところへ根を下ろした白樺の木の高さから考えても長いこと放置しているようです。大好きな昭和の残影を残して何処へ出かけているのか…
過ぎた時代の思い出は甘く切ないものです。
その時代をリアルに過ごしていた頃は、辛いことも厳しいこともたくさんあったはずなのに…
そんな動乱も思い出にしてしまうほど、人の心は寛容なようです。
近い将来、「平成回顧」なんて時代もくるのでしょうか。
平成を象徴するものは何なのか?
今のところ思いつくのは「昭和」の模倣です。
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コメント
おはようございます。
最後のランドセルの写真には店主が写ってますね。
私が春先行ったときは店主が外で作業をしました、
ザルうどんも食えませんでしたよ。
投稿: カナブン | 2007年12月24日 (月) 08時23分
?何だ?この人影は…
投稿: ねこん | 2007年12月24日 (月) 09時15分
店主の肩と背中ですね、髪は短いですよ。
投稿: カナブン | 2007年12月24日 (月) 09時31分
困りましたね。
REEKさんは、休暇中で、連絡が取れません。
投稿: ねこん | 2007年12月24日 (月) 10時28分