屋根裏の散歩者 ①
廃墟や廃屋がいくら美しいと感じていても、始めて入るときは緊張が走ります。
中に何がいるのか…とか、見てはいけないものが…などとは考えないけれど、建物の構造が脆くなっていたり、スズメバチやらヘビがいたり、思わぬ穴があったり…
また、こんな風に人形が朽ちかけて横たわっていたりするとちょっとドッキリ。
かつて、この近くではカオリンという鉱物が産出される鉱山がありました。
戦前には金鉱として、戦中は水銀の採掘。戦後はカオリンやゼオライトを産出していたそうです。現在は鉱山は残っていますが採掘は休止されています。
ゼオライトとは結晶の中に微細孔を持つアルミノ珪酸塩の総称で、日本名は沸石(ふっせき)と呼ばれ、内部に水が含まれているため加熱すると沸騰しているように見えることから、ギリシャ語のZEO(沸騰する)とLITHOS(石)を合わせてZeoliteと名付けられました。吸着剤や園芸用土の添加剤(保水力と通気性向上のため)として利用されています。
一方、カオリンは別名カオリナイトと呼ばれ、触った感じはぬるぬるしています。高熱に耐える磁器や上質のアート紙の添加剤などの材料にされる。この成分が多いほど高温に耐える磁器の材料となります。吸水性が高い。
どちらも、現在は輸入品のほうが安価になり、あるいは工業生産品などの登場で採算性の合わないため、この鉱山のものが良質であったにも係わらず、産出は減っていきました。
この地域は、何も鉱山としてだけ賑わったわけではなく、古くから開拓に従事した人々の賑わいもありました。ところが山に近い一帯は、地中の岩盤が浅かったために深い耕作はできず、畑作には向かない地域も多かったようです。
そのため、牧畜業が発展していきました。そんな1軒がこの家だったのです。サイロの建材から割合近年までは、営農が行われていたように感じられますが、後継者の問題等で離農止む無しとなったのでしょう。
サイロは、およそ昭和50年~60年代頃で飼育頭数は成牛で50~70頭レベルでしょう。牛舎自体は、あまり原形が残っていませんが、もっと早い時代に大きいものを建設。サイロ建築前後は、まだ用が足りたため増床もしくは別棟で対処していたようです。現在は解体途中のためか無残な姿。
かつての住宅・牛舎・サイロなどを結ぶ家の往来もすっかり雑草に覆われてしまい、進むことが困難です。離農してからの年月の経過を感じます。
葉の表面がトゲトゲしていて衣服にまとわりついたり、服の上から肌を刺したりと悩まされます。どうにか住宅の前まで行くと… 意外とオープンな入口。ここも積雪で倒壊していた様子です。
本来の玄関口は隣になり、酪農雑誌や文庫本、新書などの古本が詰まれています。 生き物・自然相手の自営業にしては結構な読書家だったようですね。
崩れてオープンになったところは、元台所だったようです。近くに排水浸透枡があって踏み抜いてはいけないので要注意。(※郡部など上下水道の設備が無いところは、上水道は地下水の電動ポンプ汲み上げ、下水は地下に浸透処理するマンホールを埋めてありました。浸透力が落ちると新たに掘り直すことがあります。現在は地下水を汚染するため、あまり使われていません。)
どうにか中へ入ってみると、結構歴史の厚さを感じさせる造りです。 (つづく)
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コメント
一枚目の写真、人形が屋根裏の天井を歩いてるように見えます。
色がキレイなミシンがありますね。興味深い物件です、どんどんいきましょう。
投稿: カナブン | 2007年11月17日 (土) 16時26分
これ、実家のミシンと同型ですよ。
投稿: ねこん | 2007年11月17日 (土) 16時52分