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2007年10月 7日 (日)

閉ざされた聖地

今年の夏はキャンプへ行きましたか?
今年も暑い日が続き、いくら天気が良いとはいえ、カンカン照りの下では、かなりグッタリです。それでも通りがかった海沿いのキャンプ場は、大勢でごった返していました。
キャンプとなるとみんな別なんですね…

 キャンプ用品も充実して、専門店やホームセンター、スポーツ用品店では、シーズン近くになると特設コーナーを設けて、同じものでも毎年モデルチェンジ。『こんなのまであるんだ。』というものまで多種多様に取り揃えられています。
 ランタンとかストーブとかコッフェルなんて専門用語ばかりで素人にはよくわかりません。

 テントも昔学校の海キャンプで使った三角のものは無く、ドーム型の中で屈まなくても悠々立っていられるような大きなものや側面全体が網になったスクリーンテント、屋根だけのタープなど1軒でも2~3設営して、キャンプ場は難民キャンプのようにごった返しています。

 そうなると当然、マナー違反や酒の上でのトラブルが付いて回り、ねこんもキャンプへ行くとよほど厳しいところではない限り、身内や他人同士で小さなもめ事は必ずと言って良いほどあります。管理人が充実していれば大きくならないうちに沈静しますが、そうでもない場合は大喧嘩に発展することも無理からずあるようです。

そう、小競り合いは、あるものです…

Dscf4396  北海道のヘソと呼ばれる街の郊外にこのキャンプ場がありました。現在もそこはそのまま残っていますが、キャンプ場としての名は平成16年で消えてしまいました。
 一人旅の好きなキャンパーやバイカーには『南の石垣 北の●●』と呼ばれるほどで、『仲間と連絡を取り合わなくともここへ来れば誰かいる』というほど聖地と化したところです。さしてロケーションが良いわけでも設備が良いわけでもないのに仲間が集う場として確立したようです。
 常連利用者の大半が長期滞在で、キャンプと言うよりも夏季の滞在場で、昼間はバイトで誰もおらず、夜は伸び放題の髭と髪の男達が焚き火を囲んで酒盛り…
 それゆえ、一般やファミリーには近寄りがたい雰囲気があったようです。
彼らに悪意は無かったのでしょうが、やはり雰囲気として【仲間でないものへの無意識の威嚇】も否定できない事実だったようです。
 また、利用は無料で予約も必要ないとはいえ、長期滞在物の中で羽目をはずして個人用ポストを据えたり、洗濯機をこっそりテントに隠して使っていたりなどのこともあったようです。
 キャンプ場情報誌にも「近寄りづらい」などの記述が必ずと言っていいほどありました。

Dscf4386  閉鎖に至る理由をネットその他で探すと「恐喝事件」というのが出てきました。
実際に現地へ行った折に一帯の公園整備に携わる人に話を聞いてみました。

「事件?事件と言えるかどうかは何とも言えないけど、もめ事はあったさ。でも、それは後から付けたことだよ」

 このキャンプ場がキャンパーのメッカになったのは、けっこう古い話で、ここを縁に定住したものやここで知り合ってここを会場に結婚式を挙げたカップルも2組あったそうです。
そうした事実や仲間内の口コミで集いの場になったものの、キャンパー達は世情や長期滞在者の風貌から水面下では「不審者」的なレッテルを知らぬ間に張られていたようです。

Dscf4387

Dscf4390  場内には当時、滞在者向けに企業や農家から『バイト募集』の求人が張られたボードも据えられ、比較的うまくいっていたようです。
 見かけは悪いものの特に問題は起こしたわけではなく、過ごせていましたが当地議会で『一部の者が占拠している』『不審者では?ということなど近郊住民の不安がある(そのような誤解もあったらしい)』『現在の財政状況で無料開放とはいえ維持費のかかるキャンプ場がふたつあるのはいかがか?』といった質疑があり、住民を含めた閉鎖反対運動も盛り上がらず、当世の成り行きでは閉鎖やむなしとなってしまったのが真相らしい。

Dscf4393  常連者は、所詮、部外者で地域行政の決定事項に素直にしたがった形で幕切れとなりました。
背面では、ネット上で論議もありましたが、もはや手遅れだったようです。

 今や単なる野原になったキャンプサイトは、設備は残るもののキャンパー達は跡も残さず消えてしまいました。
 北海道の表には出ない魅力を道外に伝えたのは、これら目の敵にされたキャンパーやバイカーの無償の協力であったのもまた事実です。
 かつては地区行政や地域商工会、民営ドライブイン、商店、個人が管理していた素泊まり宿さえも閉鎖、老朽化、行政指導などにより激減しました。
 それが先なのか、旅人が激減したからなのか彼らの姿を見ることも少なくなったように感じます。

街の衰退の一端は、こんな小さな出来事が絡んでいるのかもしれません…

Dscf4388

インタビューに応じて思い入れたっぷりの話を聞かせてくれた作業員さん。もしかして貴方もここが縁で定住した方ではないですか?

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コメント

常連じゃないと入れない飲み屋、試された大地、いや北海道発信基地だったのか。
北海道不景気に連動してるようにも感じます。
ルイドロチックな好レポートです。

投稿: カナブン | 2007年10月 7日 (日) 23時32分

作業員の人の語りは尋常ではないほど熱かったよ。
閉鎖に関しては、無謀な感もありましたが、それだけ荒れていたのも事実で、致し方ないのでしょう。
私達も熱を入れすぎて、無意識に行き過ぎることには注意しなければなりません。

投稿: ねこん | 2007年10月 7日 (日) 23時38分

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