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2007年10月17日 (水)

窓を飛び出して ①

Cat017

私は猫です。名前は分かりません。
ただ、彼には『相棒』とよばれていたので、それが自分の名前なのでしょう。
母親の顔、生まれた場所、そのどちらも覚えていないのですが、物心付いた頃に数匹の仲間(兄弟なのか?)がいました。いつしかその仲間もどこかへ行ってしまい、孤独になりました。
かすかに記憶に残るのは、母らしき猫に首の辺りを咥えられて何処かの家に入って行ったことと、私に手を差し出してきた大きな黒い影。それだけです。

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Dscf9145  相棒は私とは違う生き物で、私よりもいろいろなことができました。
でも彼は私に対して、体等のものであるかのように接してくるので悪い気もしませんでした。何よりもそのときの私は、毎日水ばかりの食事でほとほと疲れ果てていましたから彼は救いの神だったのです。

Dscf9088  その日、強い雨が降り始めて私は雨を凌げるところを探していました。空腹で足取りもおぼつかないのでとりあえず静かな場所で休みたいと壁の隙間をくぐって1軒の大きな家を見つけて飛び込むと、大きな椅子の上でとりあえずホッとしました。食べるものを探していたので、ついいつもより遠くへ来てしまい、不安と空腹の体は疲れきってすぐに眠りについてしまいました。

いい香りに気が付いてふっと目が覚めると少し離れた椅子に彼が座って食事をしていました。
大きい体で長い手を器用に使って、彼は四角い箱から自分の口の中に何かをかき込んでいます。
それが何ともいい香りで、私は彼の気配を感じ取れなかったことも恥じることなく、彼を凝視します。

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Dscf9084 『おぅ!猫! 目が覚めたか?』 と彼が話しかけてきましたが、匂いに気が入っていて私は喉を『グゥ』と鳴らすだけでした。
『お前も腹が空いているのか? 口には合わんだろうが、半分やろう』
そう言うと彼は手に持っていた箱を自分の足元において、建物の奥へ消えて行った。それを見届けて私はそろそろとその箱へ近づいて香りを確かめると一心不乱に食を満たすことに集中。このとき、さっきの彼が近づいてきても全く気がつかなかったことでしょう。
 箱の中身がすっかり空になると体が温まったようで安全な場所を探すと、また深い眠りに堕ちました。  

 翌朝、騒がしくも聞きなれた大きな虫の音で目が覚めて、外へ出ると夕べの雨水溜まりで喉を潤して日向ぼっこをしていました。ここには、縄張りを誇示する連中もいないようで気が休まります。
『ガシャン!』という音に驚いて身構えると夕べの彼が奥から出てきました。両手に赤やら青やらの細長い物をいっぱいに詰めた袋をいくつも持っています。

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Dscf9090  彼は回りを見回して私を見つけると、
『猫! まだいたか! よっぽど腹が減っていたんだな…』
そう言うと、ネズミ色の体の彼は壁の隙間から出て、何処かへ行ってしまいました。
『ここで、一体何をしているんだろう…?』私は彼に興味を持って、この家を探検してみることにしました。

Dscf9119  上からは色々なものがぶら下がっていたり、奇妙なものが沢山散らばっていて私の好奇心を充分満たしてきます。山道のようなところを上へ上へと向かって行くとさっきの彼のいたらしいところが感じられました。
 その場所を突き止めることは容易にできましたが、大きな鉄の扉に阻まれて向こうを伺うことができません。それで、他の扉の開いた部屋を見たり、日当たりのいい場所で体を温めたりしているうちに1日経っってしまったようです。

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 陽が傾きかけた頃に彼が戻ってきました。隣のドアから様子を伺うと

 『こんなところにいたのか…もう、行っちまったと思ったよ』

 その日は、再び彼からのおすそ分けをもらい、ご満悦。
いつしか、彼と相棒同士の暮らしになるにはそう時間はかかりませんでした。

(つづく)

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コメント

予想外の展開です、いったいどうなっているのでしょう。

まさか最後はあの部屋のあれのようになってしまうのか?

投稿: カナブン(師匠) | 2007年10月17日 (水) 19時26分

にゃーん にゃんにゃん
物証から創作していますにゃん
たぶん、こうなんだろうなーって

投稿: ねこん | 2007年10月18日 (木) 09時09分

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