蕗の葉脈
かつて、道内の峠のなかでも難所とされていたこの一帯も時代を超えてすっかり様変わりしました。そこそこの車で1時間程度で通過できるのですから便利になったものです。
現在工事中の高規格道路の開通によっては、ここもまた忘れられていくのかもしれません。
峠を降りきったところに2本足では、道内最大のクマが反対車線をかっ飛ばしていく車に目を光らせています。ここはドライブイン兼物産館ですが、開業当時よりも少し寂しくなってきたように感じます。北海道旅行の人気の低迷、大口団体旅行よりも個人のオプショナルな旅が増えて、旅行会社とのタイアップも減少して閉鎖になったドライブインも少なくありません。
数十年前までは、通常一般道(道々や町道)で小さなドライブインとは名ばかりの食堂が充分、商売になりました。メニューを見ると味の選択肢が無い「ラーメン」があって、シェフにオーダーしてみると、味噌とも醤油とも塩ともつかない味のものだったりします。不味いわけでもないので食べていると丼の底に他所の屋号が現われたりしました。
こんな店のような小さなところは巨大ドライブインの出現や旅行のスピード化で次々、淘汰されていきます。
一見プレハブ、よく見るとやっぱりプレハブのものやガレージにしか見えないもの。国鉄払い下げの客車や貨車を改造したもの。そして、バス。
今回の物件もそうしたバスを改造したドライブインです。帳簿類は残っておらず、屋号は不明。正面の路線表示部に何か書かれていますがよく読めません。
峠を降りてきたばかりのお客をターゲットにしていたようですが、向かいに多くの駐車台数をカバーできる大型ドライブインができたために廃業したようです。駐車場だったとおぼしきところは、蕗やら雑草がはびこって車両乗り入れの引き込み線も分かりづらくなっています。
かなり旧型の丸みのある車体。バスとして現役時は、車掌が乗客に切符を切るというような光景が見られた頃のものなのでしょう。
以前、紹介した『バッタ塚ドライブイン』のように内部を完全改造し、客室も供えていたものと違って、バスは完全厨房だったようです。初めは厨房備品の投棄場所のように感じましたが、ここに据えてあったようです。立ち食い蕎麦の車内持込みたいな持ち帰り専門だったのではないでしょうか。
簡易ドライブイン、そして大型化、道の駅創設、路線の変換。短い歴史の中、多様な変化が続いています。昔通ったあの道はどうなっているのでしょうか…
車体の後に虫に食い荒らされて奇妙なほど葉脈だけになった蕗の葉の一群がありました。ここは、食い意地のはった虫達には充分現役のドライブインなのでしょう。
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