三賢者の虚ろな目 ③
窓もドアもあらかじめ外されていたらしい家の中は、ニオ積みの傘(刈り取った豆を乾燥を進めるため円筒形に積み上げて上に麦わらなどで作った傘をのせる。今はビニール製のものが主流で、わら製のものは見かけなくなりました)が大量に放置されています。
照明器具(蛍光灯)が残っているので思ったほど昔では、ないのかもしれません。
養魚業らしく魚網も残してありました。
ニオ傘自体は近隣農家が格納庫に使っていたのでしょう。既に風化しかかってボロボロです。家の構造自体は同年代の住宅と大差の無い造りですが、柱は若干細くなっているような気もします。内壁も裸ベニヤではなく、圧縮型の集製材が使われています。
所々にカレンダーの金具や良く分からないものが吊るしてあったり、生活跡はみうけられますが、商売や家族構成に係わるものは発見できません。もしかすると、この麦わらの下に何か残っているかも…と思いますが、さすがにここをほじくる気にはなりません。
とにかく麦わらに足をとられて歩きにくいので、他の窓から回り込むことにしました。
南側からだと屋内全体が見えます。3部屋+台所という間取りでしょう。天井近くには造り棚があります…
『え…?』
虚ろな顔が天井辺りからこっちを見ています。凄く不気味で普通の人間よりふた周りは大きな顔が… それもひとつではありません。
巨大なのが計3つ。 『うっわぁ~ これは引くな…』
スズメバチの巣です。彼らの巣は冬には廃墟になってしまうそうで、これらもそうして放置されたようです。そうとは分かっていても身震いがします。
昨年の夏、庭の野菜を手入れしていると妙にスズメバチを見かけるので近所に巣があるな…と思ってたらよりによって自宅の2階のテラスにありました。そのときで直径15㎝くらい。ちょうどこの年度から地区行政の「スズメバチ駆除」の補助金が廃止され、個人で駆除依頼すると出張ひとり6,000円~ほどするので自前で何とかしようと模索。
とりあえず敵の戦力調査を兼ねて夜、2階のテラスドアから棒で突っついて急いでドアを閉める…ということをしてみたら少なく見て30匹くらいは出てきました。
結局、薬局で専用の薬剤(噴射式で5m飛ぶタイプ。10メートル用もあり、噴射というより放水と言った感じです。しっかり持たないと手がブレます。)を購入しましたが、ここのは、そのときのサイズの4倍はあります。
虚ろな顔の賢者たちは、この家の中で無表情な視線を外へ投げ出しています。それは、忘れられた家の無言の主張だったのか…
この、忘れられた場所を天国にしているもの達がいました。湧水の豊かな生簀に『ゲーコ ゲーコ…』姿は見えませんがたくさんのカエルがいるようです。
あちこちにカエルの卵が輝いています。
バルブはこのカエルのために清らかな水を湛え続けているのでしょう。
そして、虚ろな目の三賢者は、そんなカエルたちを静かに見守る防人なのかもしれません。
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コメント
ヘビー級3連発、怖いな~
私も先日スズメバチと格闘しましたよ、もちろん勝ちました。
投稿: カナブン | 2007年9月21日 (金) 08時08分
師匠は、スズメバチと素手で戦えますからすごいですね。
今年は、ずいぶんスズメバチの巣と出会いましたが全て廃墟でした。現役と会わない事を祈ります。
ちょっとバームクーヘンみたいでおいしそうなんですけどね…
投稿: ねこん | 2007年9月21日 (金) 13時58分
以前、山中で蜂に追いかけられた時、獣のような速さで逃げ切りました。自分でも驚きました。
投稿: アツシ | 2007年9月21日 (金) 19時41分
人間、状況によっては凄い力を発揮できるようです。
でも、そのとき転んでいたら走馬灯のように思い出が回りますね…
投稿: ねこん | 2007年9月22日 (土) 01時10分