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2007年9月 1日 (土)

案山子 ①

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「元気でいるか 街には慣れたか 友達できたか
寂しかないか お金はあるか 今度いつ帰る…」 

『案山子』作/さだまさし より冒頭部抜粋

Dscf6688 空の青と大地の緑に覆われた視界。
 北の大地北海道に関わる雑誌、絵葉書などを見ていると良く出てくるのがこんな風景にポツンと立つサイロや牛舎。建物の際まで作物が植えられているようなら、そこは迷わず廃墟である。

 北海道らしい風景。側面から言っても「らしい風景」。農業の副収入として片手間で始められた酪農は、数十年で拡大して現在では酪農専業の家も多い。
 職業とは言ってもその規模拡大は尋常ではなく、50頭・100頭の飼育は当然で、乳価低迷(卸値単価は水やお茶にも劣ってきている)の昨今では、この規模でなければ成り立たない。
Dscf6689  その規模拡大は、組合機関の発展により融資が得られ可能になりましたが、新規就農では数億の資金がかかります。新参の志では、よほどの熱意が無ければ軌道に乗せるのは難しい商売でしょう。

 反面、古参は数代に引き継がれて経営が段階的に拡大されたものの、後継者不足や経営拡大の波に乗り切れないなどの理由で泣く泣く家を閉じることになった例も少なくありません。乳価も品質調査で等級がつけられて、上と下では奨励額が雲泥の差であるようです。

 これが「北海道らしい風景」の読み取られない側面です。

 幾重にも連なる丘陵地帯。青と緑の風景に一点、赤いものが二つ見えた。
モンゴルのパオ(移動式住居)かアフリカの原住民の家を想像しますが、家畜の飼料用タンクを逆さに伏せたものです。今はカーボンファイバー製の軽量で強靭な素材のものが一般的ですがまだ金属製が主流の頃のものです。
 赤錆に覆われて遠巻きには、赤い屋根のように見えました。

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 主は、この地を去る前に既に離農していたようです。家畜舎の崩壊の進行が著しいです。
錆びた小さな自転車を見かけたので子のいた様子はありますが後継者にはならなかったのでしょう。
 子にも意志があり、親もまた溺愛からか「辛い思いをさせたくない」と思いつ「一人立ちするまでは…」という心から無理強いもしないのでしょう。

 家畜舎から少し離れた所に緑に埋もれるように住宅があります。庭どころか幹線道までの間は全て雑草がはびこって、胸ぐらいまでの高さまで成長しています。
 茎が紙やすりのようにざらざらしたエゾゴマナ〈キク科〉がほとんどですが、見えない下のほうには、やはり鋭い棘をもつイシミカワ〈タデ科〉が絡み合って、なかなか前進できません。ジーンズをはいているとは言っても棘が足にチクチクとあたり不快な感じ。
 息を切らせながらどうにか玄関先に到着。戸口は開け放たれたまま放置されていますが、その前にカラマツの幼木が直径10㎝程度に育ち、枝を伸ばしています。

 どうにか玄関から中へ入れました。まだ他に開いている窓があるのか爽やかな風が通り抜けて湿気やかび臭さは残っていないようです。

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 引っ越したというより、荒らされたという感じがしました。ストーブの上のやかん、小さな丸ちゃぶ台の上には湯飲みと急須。家人は何処へ行ってしまったのでしょう?       (つづく)

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