からくり太夫と徒然草 ②
2階に上がってきました。建物の高さに無理があるようで少し天井が低くなっています。
かがむほどではありませんが無意識に上を気にしてしまうようです。
半分、通常の天井裏にあたるところに食い込んでいるので天井が微妙にカーブを描きます。窓もちょっと低くなって旅籠屋の二階部屋のようですね。
『一本刀土俵入』という有名なお芝居がありました。関取を目指すも巡業先をお払い箱になったふんどし担ぎの茂兵衛が空腹で我孫子屋にあらわれ、二階で酒をたしなんでいたお蔦とのかけ引きのシーン。そういう場を連想する窓です。目張りされていますが窓を開けると古の世界が広がっているような気がしました。
『徒然草』じゃなくて『一本刀土俵入』かいっ! と、つっこまれそうですが、あるんですよ。この文学の部屋に…天井に紙が1枚見えますね。
これが『徒然草』第92段『或人 弓射ることを習ふに…』の後半部分です。
よく受験生の指南に用いられる下りです。
全文は
或人、弓射る事を習ふに、諸矢(もろや)をたばさみて的に向う
師の云はく、「初心の人、二つの矢を持つ事なかれ。
後の矢を頼みて、始めの矢に等閑(なおざり)の心あり。
毎度、ただ、得失なく、この一矢に定むべしと思へ」と云ふ。
わづかに二つの矢、師の前にて一つをおろかにせんと思はんや。
懈怠(けだい)の心、みづから知らずといへども、師これを知る。
この戒め、万事にわたるべし。
道を学する人、夕には朝あらん事を思ひ、朝には夕あらん事を思ひて、重ねてねんごろに修せんことを期す。
いわんや、一刹那の中において、懈怠の心ある事を知らんや。何ぞ、ただ今の一念において、直ちにする事の甚(はなは)だ難き。
噛み砕いて解説すると
カルチャースクールでアーチェリーを習っている受講生が的を前に2本の矢を持つと心のどこかで「もう1本あるから…」という雑念が生じ、本人は心にも無いと思っていてもスクールの先生には見透かされてしまうものです。
廃墟物件探索も同じように「明日行こう」「来週こそ行こう」と心に誓っていてもそれを即実行に移すのは、ものぐさしてしまったりして、やっと行ったら物件は取り壊しで無くなっていましたとさ。ということもあるんですよ。
といったような類のことだったと思います。(噛み砕いたというより再構成)
まるで、ねこんとカナブン師匠の関係のようですね。
この結びの段落が受験生の志望校合格に向けてモチベーションを高めるために使われるようです。ここでも受験に向けて自己啓発していたようです。日本は「欧米化?」と言われていても、どこなかしなに日本人の血が残っているものです。
廃屋の闇の中で腕を組んで「うーん」と考えるねこん。
誰かに見られていたら、引かれそうです。
まぁいいじゃないですか…
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コメント
「もう1本あるから…」・・・
「まだ時間があるし」「いつでも行けるし」「先にこっちをやろう」・・・結局最後までやらない、やらなかったことに正当化した理由をむりやりくっつける、あーイヤですね!カナブンさん。
二本の矢、どちらも魂こめてやってみたいものです。
そんなわけで写真を使わない新たな廃墟表現を目指してます。
フフフ・・・
投稿: カナブン | 2007年8月10日 (金) 08時15分
なにか面白そうなことを考えているようですね
ヒヒヒ…
投稿: ねこん | 2007年8月10日 (金) 17時13分