カモミールの家
稜線がすぐ間近にせまる農村地帯
周辺農家のほとんどは人生の切替線に乗ってこの地を離れました
残った人が昔と変わらぬ実りのためにこの地でがんばっています
道沿いの家々だけではなく わき道を奥に入ると当時はいくつかの集落もあり
そこそこの人々が住んでいたようですが大半は朽ち落ちてしまったようです
現在残る最奥地(この先は林道になる)に爽やかな芳香に包まれた家があります
車の窓を開けて新しい風を感じながら走っていると覚えのある香りを感じました。
『何の香り?』 車を止めて香りの先を探してみると、どうやらこの一帯全体が香りに包まれているようでした。
『カモミール!?』 どうやらそのようですが近くにはカモミールは見当たりません。
川が近いため石がゴロゴロ転がる畑とは思えない荒地に雑草がたくさん生えています。少し歩いてみると足元にはびっしりと黄色くて小さな花が… 香りの主はどうやらこの花たちのようです。
正式な名は、コシカギク(またはオロシャギク)。キク科の野花です。 荒地や道端に多く、人のあまり入らないここでは群生していました。資料によるとレモンに似た香りと解説されていますが、むしろカモミールの香りですね。同じようにハーブティーにも使えるそうです。 カモミールティーは鎮静効果があり、寝る前に飲んだり、枕元におくと熟睡できるそうです。
向こうにある家は、荒地の小花が象徴するように廃屋です。 ちょっと寄ってみましょう。
雑草やら山菜が密生して庭の痕跡もありません。防風林のほかの庭木は一緒に持って引っ越したのか所々穴がある以外は、なにもありません。
周りの小屋にはさほど物は残っていませんでした。
塗装が剥がれて錆が浮いてきた屋根。そして土壁。
玄関から入り、中を伺うと…
わりあい片付いていますね。というか、食器棚には食器が並び、流しの荒い桶にもたくさんの食器が伏せられ埃をかぶっています。他にもそこそこのものが残っています。
テレビも大きめのものが置いてありますが表にアンテナは無かったのでほとんどのチャンネルは見ることはできないでしょう。もともと電波状況もよくないのでBSとかCSならいけると思いますが地上波で最初っから画質が悪いと結構普通に見てしまうものです。
外観は土壁でしたが、内装は化粧ベニヤが使われて近代的です。めくったカレンダーを丁寧に貼っているところは着物の女性がけっこう好きだったのでしょう。
農村地帯でありながらなぜかその香りというか雰囲気に欠けるような気もします。
物が残っている反面、生業的なものが見えないと言うか、人が住んでいたというより貸し別荘のような雰囲気がします。
もしかすると営林関係者の休憩所に転用されているのかもしれませんね。それにしても放置期間は長いでしょう。
表に芯まで錆びたような波トタン屋根の小屋があり、覗いて見ました。
ちゃんと据えられた形を見るのはひさしぶりです。隙間だらけの壁と節穴からこぼれる光が美しい。
屋内で釜戸を焚いていたため、隙間が多くしたのでしょうか。壁の上部や天井はススで黒くなり、焼けた香りが強く残っています。
今でも水さえ張れば使えそうです。
でも、ちょっと匂いはきついので外のコシカギクの香りが恋しくなりました。
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