モジリアーニの家 ②
【前回までのあらすじ】
試される大地北海道のどこかに存在する『理想郷の廃墟』を求めて旅するルイン・ドロッパーのねこんが今回到達したのは、かつて炭鉱で栄えた町の跡であった。
しかし、悲しい性のなせる業で寄り道心が首をもたげてつい、一軒の廃屋を探索することになる。
そこには、はたして捜し求める『廃財宝』が眠る屋敷なのか?
そして、すっかり怖気づいてネット拒否してしまったTA(ターミナル・アダプタ)の忠誠心は蘇るのか?
しかし、ここで大きな壁にぶち当たることになる。それは、階段の存在しない幻の2階。
場所に不釣合いな厳重な装備とはいえ、梯子までは用意していないのであった…
やる気のないTAは、本日病院送りにするとしてハシゴとは言ったもののどう見ても窓枠にしか見えないモノを試してみました。 弱冠心持たないものの体重は支えてくれそう。
もし、段が抜けてドッシーン!とかなるとそのはずみで家全体が牛乳パックのようにつぶれてしまうでしょう。
とりあえず、回りの斜めになった柱を押してみて変に動かないことを確認して2階を目指します。なんとかハシゴ替わりは応えてくれそうです。
2階に到達して目の前をよぎったのは、一抱えほどの大きさのスズメバチの巣。
『ギャーッ!』 とは言わないまでも破格の大きさにかなり尻込み。でもどうやら現役ではなく、これも廃墟のようです。
2階全体が部屋になっているわけではなく、自分の今いるところは柱の剥きだした未施行部分。2階は1階に比べて未完成というか中途半端な造りで終わっている家は、ずいぶんな数を見てきました。下に比べて壁が仮設のような中途半端な造りです。もともと2階建てではない家を自分で改築した名残とも思えますが…。
天井を抜かないように柱を伝って奥に広がる部屋へ入ります。小学生の頃に探検と称して家の天井裏で遊んでいたことを思い出します。廃屋系の方は機会があったら押入れに開口部があると意外と天井裏が物置にされていて古い雑誌や日記の山があったりしますので探してみてください。(そんな人はいないか…)
入ってみた部屋は下から見たように窓は無くなっていますが階段が見当たらなかったことから入る人もいなかったようで、家主がいた当時のものがたくさん散乱しています。古い雑誌の山、それもモード系のものが多く、家人はお洒落に敏感なタイプであったようです。
ほかに衣類、ニッカウヰスキーの瓶、アルマイト製の水筒、茶箱など。荒らされたわけではなく、適当に荷物をまとめて去っていったのでしょう。 子どもがいたという痕跡が見つからないので、後継者問題、それが離農の原因と思われます。
かつて、この家の前の通りは奥地に炭鉱があったことから最盛時はかなりの交通量もあったことでしょう。炭鉱史などによると近場の学校までトラックをスクールバス代わりに子どもを満載して往復したこともあったそうです。当然この家はそのときの子どもたちの脳裏にも残っていることでしょう。既に五十代くらいにはなっていることでしょうが…
物や家が見た回りの物の記憶を読み取る装置があったらいいなーって思いました。
今は記憶の残照を見るに過ぎませんが…
モジリアーニの絵みたいに平然と傾いた家。その壁や床には、たしかに古の何かがへばりついています。『木のぬくもり』とかいうのはそんな何かの心がしみこむような風合いに人の心(本能)が何かを感じているからなのかもしれません。
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