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2007年7月 3日 (火)

雪割姫 ②

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Dscf1970  この城跡のようなところには人影は無かった。雪割姫は、いつしかこの小さな探検を楽しんでいたのかもしれない。自分の生きる意味に使命とか宿命とか運命とか、そんなしがらみはなかったのに、いつもと違った目覚めの夢が何か誘惑めいたものをはらんでいたのだろうか…

Dscf1972  城跡というがそのようなものを姫は、それほど見たことがない。
少し覚えているのは、いつかの春の時。こんな感じの奇妙な石積を住処にしていた古木の話を聞いたときのことでした。住んでいたというより生まれながらにそこにいて、すっかりよりどころにしていたようでした。

Dscf3206 ここには、昔たくさんの『人間』がいて、狭い谷間に固まって暮らしていた。
彼らは毎日、決まった時間に集まって穴倉に閉じこもり、黒い石を大事に集めていた。

木を倒し、山を崩しながら黒くて新しい山を作った、自分達の顔も真っ黒にしながら煙が空を灰色に変えていても、楽しくて仕方が無いように笑っていてね…

やがて、空が元の色を取り戻し始めた頃、人間は悲しんで青空を呪い始めた。彼らにとって青空が帰ってくることは山の死を意味するらしく、多くの人間はここから去って戻らなくなった。
我らには、かえって住みやすくなったが、辺りにあるのがその『人間』の城の跡だよ。

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 四角くて穴だらけの壁の中から姫を見下ろして古木は、そう言った。
回りの木や草達は『人間』遺跡を物珍しげに覗き込んだり、拠所にしてのしかかったりしていたが、石の壁自身は姫の語りかけに答えるものではないようでした。古木の話は良く分からなかったが、自分とは違う仕事をする者たちには興味を持ちました。
 しかし、人の計りきれない年月のほんの一時期だけに生きてきた姫にとって人の命はあまりにも短すぎたのかもしれません。

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Dscf1992  ここの城跡には黒い石は見えませんでしたが、ここで生きていた『人間』達は砂や石を集めていたようです。宝物の袋みたいなものも隠してありますが、なぜ大事にしていたのか姫には理解できません。

 白い大地は、姫の心の異変に気がついたようでしたが、ただ黙って見守っているようです…

(つづく)

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