雪割姫 ①
凍てつく北の冬に春の訪れがやってきた
『雪割姫』の目覚め
彼女は雪の中から誕生し、命の調べを歌い、春の訪れを宣言する
見渡す限り無のような白い大地はその歌で無限の命を現出させていく…
毎年、大地が春色に覆われたのを見届けると姫は再び眠りに付く
「次の目覚めは、どんなところなのだろう」と期待に胸をふくらましながら…
「ここは…いったいどこ?」
雪の白は、いつもと同じだったのだが見慣れないものが回りには累々としています。
姫は歌うことも忘れて辺りを彷徨いだしました──
ここがいつからこのような状態になったのかは分かりません。話に聞いたときには倒産していたようで、それが既に十数年前。真意のほどは不明です。閉鎖されたことには、かわりないでしょう。聞いた話と見たものからコンクリートプラントであったようです。
西は国道に面し、東は一角に工務店がありますが河川が横たわり、南北は、これが奇妙なことに新興住宅地にはさまれた孤立地帯です。
後に建物は解体された様子ですが、今だ残る多くのもの・新たに加わったもの、それらを「雪割姫」の目線で見て行きましょう…
姫は、赤茶けた大きな目の男に出会いました。
「ここは、いったいどんなところなのでしょうか?」
「残念ながら、わたしには何もわからないね…」
男はかなり老いて目もかすんでいるため、回りのことを全く知らないのだ。
主人に雇われて長い間、荷物を運ぶ仕事をしていましたが体が思うように動かなくなり「迎えに来るまで、ここで待っているように」と言われ、もうずいぶん長い時間が経っている様でした。時折、血の気の多い若者が来てひどい痛手を負わせているようだが、忠実に生きてきた赤茶色で小柄な老人には、黙って受け入れる他になかったようだ。それは、自分の運命を悟っていてのようだがそれ以上のことは語ろうとはしない。
『生命の息吹』しか知らない姫にとっては、おそらく理解できないことであろう。
老人に軽く会釈すると姫は先を進んだ。途中、自分が何だったか分からなくなったものたちが固まったり、散りぢりになって一帯にたむろしている。
彼らは、何も答えず考えることすらも止めてしまったようだ。
近くには、まだ「春の訪れ」の宣言もしていないのにヒョロヒョロと伸びていたり、ずんぐりしているおかしな植物が気ままに生えている。これも姫の言葉には答えなかった。
いつしか姫は、この土地のもつ毒気にあてられたのか自分の使命も忘れてしまったかのように雪の荒野の中を彷徨う。
しかし、ひとつには今まで考えることもしなかったが、自分という存在と宿命に対して初めて向き会ったような気がしていた。
それは春という季節だけに生きてきた自分への疑問であったのかもしれない。
やがて、向こうに古い城跡のようなものが見えてきた。
春の訪れは少し伸びたようです。『雪割姫』の旅が長引いてしまい今年の春は、あわてて始まったようで、いつに無く暑い春でした。
(つづく)
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コメント
これほど美しく涙するシーンは見たことがありません。
廃屋の中で微笑み続けるシアン化アイドル、雪割姫はそれらを越えるインパクトと感動を与えてくれました。
いつか雪割王子が現れることを祈り・・・
王子人形って見たことないなぁ。
投稿: カナブン | 2007年7月 2日 (月) 14時56分
リカちゃんの彼氏で「ケン君」というのがいたように思います。
お母さん、お父さん、双子の妹もいたような記憶があります。
ねこんはバービー派ですが、師匠はシルバニアファミリー派ですか?
投稿: ねこん | 2007年7月 2日 (月) 18時01分
シルバニアファミリーって何かと調べたら、師匠をおこちゃま扱いするのもいい加減にしてください。
師匠の場合、ちょっとアダルトでボディコンなお人形が好きです、UPしたらカナブン嫌いがまた増えるので見せたいけど見せれません。
投稿: カナブン | 2007年7月 3日 (火) 12時22分