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2007年7月 1日 (日)

コンクリートの海 祈りの島 ④

Dscf3980  たった2日間で終わった明治5年12月。あわただしく故郷へ戻った工夫たちは、再び丸山に戻ることはありませんでした。

 開拓使入植以前の札幌はうっそうとした原生林で空も見えないほどです。
 開拓者たちは、この樹木を取り払うことから始め、ところかまわず切り倒して焼き払いました。
 さすがに開拓使は樹木の切り過ぎを懸念し、このままでは札幌は丸裸になってしまうということで、明治4年に特定の樹木の伐採を禁じます。6年には「道路両側の十間幅の樹木は特に支障のあるもののほかは伐採を禁ずる」との令を発布。
 特に丸山と藻岩山は豊富な樹木に覆われた美しい山であり、明治4年に落成されていた札幌神社の神域でもあることから樹木の伐採禁止から石材採掘も禁止されるのは当然の成り行きなのでした。

Dscf3939_1 丸山に変わる採石場は明治6年に現在の南区川沿地区で硬石が、8年には石山地区で軟石が発見され、石工が募集されましたが、今回は丸山採掘と別の組が呼ばれて丸山の仮安置された「山神」はそのまま放置され時代を越えることになったのです。

Dscf3944  そして昭和21年、大師堂世話人に発見され、石屋の造った神様は木材屋によって祀られるという数奇な運命をたどったのです。

 丸山はその後、八十八ヵ所が整備されます。北海道各地に入植した人たちの大半は仏教徒であり、西国三十三観音霊場や四国八十八ヵ所霊場の存在は知っていたことでしょう。
 生涯に一度は、こうした霊場を参拝したいという熱望は持っていましたが、当時、北海道に渡ってくると遠く離れた地の巡礼は、費用・時間・健康の面からそう簡単にはいきません。それで代わるものとして西国・四国両場のご本尊を模した石仏を安置し、参拝したのでした。
 開拓事業が安定し、生活に余裕が出てきた大正期以降、各地の有力者が奉加帳を作って善意の寄進を仰ぎ、豊かな人は1戸で1体。余裕の無い人は共同でと資金を拠出して霊場が形成されていきました。
 先人の想いが現代人に伝わるものばかりではありませんが、山道を行く人には寄進者の名を刻んであることから墓所であると思い込み、あるいは水子供養の奉納と誤解釈して本来の意図とは違う方向に認識されつつあります。本家両霊場も現在は略式で巡るバスツアーやDVDでお遍路旅などというものもあるそうです。
 もちろん正式な順路八十八番までの1400キロあまりを歩いて参拝するスタイルも現在まで受け継がれています。

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Dscf3920 Dscf3928 この巡礼、いわゆる「お遍路」の始まりは身の悪行を悔い、御仏の許しを乞うため高名な弘法大師の姿を求めて四国を巡った衛門三郎という人に単を発します。
 彼が病に倒れ、命が尽きようとするとき、枕元に大師が現われて現世の罪を許しました。
 「なお願いがあるか」との大師の言葉に三郎は「自分が家の世継ぎに生まれ変わりたい」と答えると大師は三郎の手に「衛門三郎再来」と書いた小石を握らせたといいます。

 三郎没後、数十年経って家に生まれた子どもの手には遍路の大願成就の証である小石が入っていたそうです。その石が現在も八十八ヵ所51番の愛媛県石手寺に寺宝として保管されているということです。

 現在、札幌市丸山は、市民・観光者の憩いの場であり、山道も気軽に登れる山として賑わい、人々は採石の切羽跡に腰掛け都市高度成長の証であるコンクリートの大海に感動のため息を漏らしています。それは、同じ場所から開拓の進む札幌樹海を眺めた石工夫たちのものと同じだったのでしょうか。

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コメント

ここホントいいですね、真面目に写真撮りに行きたくなってきた。
行きたいところがどんどん増えてくるな、こんど札幌行ったらリンゴストアに行かないでここ直行します!
もう廃墟は卒業しましょう、これからは正統派の時代です。

投稿: カナブン | 2007年7月 1日 (日) 21時07分

師匠、えらい揺れてるではないですか。
廃墟系はサブカルから分離しましょう。
廃墟=史跡 廃屋=文化史
自分サイズでね…

投稿: ねこん | 2007年7月 1日 (日) 21時50分

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