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2007年4月10日 (火)

マルタの男

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 霧雨とはいえ、凍りつくほどに冷たい山沿いの晩秋。いつもの秋の楽しみも急激な気温の変化で一気に終わってしまいました。気温の降下に逆らうように暖色系に彩られた紅葉も消え、木々の幹が山肌に浮き出した血管のように見えます。
 ここは、地元の山岳地帯に国の『第二次林業構造改革』の認定を受けて創設された自然公園に併設されたレストハウス。公園とは間に横たわる渓流に架かる橋で結ばれ、パークゴルフ場、バーベキューハウスなどが併設されています。
 公園の方はこの年のシーズンはオフしていますが、レストハウスはすでに長い期間オフの状況です。

Imga0163  この建物に『勤労青少年健全育成事業認定施設』との肩書きも見えますがその真意はよくわかりません。当時、観光資源の模索と娯楽の少ない町の状況でオープン時の休日は広い駐車場も満車で、正面の幹線道が山中という場所の雰囲気にそぐわないほどの路上駐車(数百メートル)が続くほどの賑わいになり、レストハウスも席待ち1時間、オーダー待ち1時間も普通でした。入店は主に地元業者が選定され、メニューは一般的なものでしたが、明らかに里とは異なる大自然に手が届くようなところでラーメンを食べるのもおつなものでした。

Imga0161  町内外から人が流れ込み、公園も設備を増設し、キャンプ場としても人気の場所になり、かつ秘湯と名高い温泉へも十数キロという場所でしたからそれなりにリピーターも付いていました。その時勢の中、レストハウスの経営が思わしくなくなったのは、利用客が休日に集中し、平日に一般客を流入させることが困難な場所であったことでしょうか…

 営業は、公園に併設ということからオンシーズンのみでしたが、十数年後にはイベントが関わらなければ集客は困難な状況でした。ひとえにレジャーの多様化、そして最もダメージなのは地元の利用が減少していたことなのでしょう。第3セクター事業などにありがちな宿命。それでも地元の出店業者は充分健闘してくれました。その後新たな出店業者の公募となりましたが有効な打診にはめぐりあえなかったようです。

Imga0160  現在、公園も維持管理の面から再検討され、地元ネイチャー団体によって新展開しているようです。かつて、町民でにぎわったレストハウスは非常灯が点灯していることから建物としては生きているようですが、タイルや外壁塗装も剥がれはじめ当時の面影を残す周辺設備と共に静かに朽ちはじめているように見受けられます。

 前記の団体に関わって『自然学校』のようなものが催されたのか倒木で作られたオブジェたちがレストハウスのあちこちに座して寡黙な時間を過ごしています。
 ここにいた『マルタの男(侍?)』は聞こえぬ声でこの館の栄華を語る…。

 霧雨はいつのまにか雪。ニュースより早く見た雪は緩やかな風に舞いながらも、重く寂しい初雪でした…

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コメント

いつもコメントありがとうございます。
ひょっこり遊びにきました。
マルタの男が私的にツボにはまりました。
ひょうきんな顔とポーズなのに
朽ち果てているという姿が
またなんとも味がありますね。
私も人の廃墟は見るのが好きですけど
自分が廃墟になった姿を想像することもあります。
あぶない趣味かもしれませんが
そういうのもなんとなく楽しくなります。

投稿: ユカ | 2007年4月16日 (月) 12時44分

あ~っユカさん! いらっしゃいませ。
こちらこそ、いつもコメントのご返事、ありがとうございます。
ねこんもこの世界は浅いのですが廃墟には、『亡骸』ではなく『現代遺跡』の感覚であたっています。その荒れ様から異界の雰囲気もあり、その感覚が好きなのかも知れません。
 自分の印象深かったものを取り上げているので廃墟限定という内容でもありませんが、時折覗いてください。

投稿: ねこん | 2007年4月16日 (月) 19時23分

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